三井不「移動商業店舗」PJを始動/国や自治体の道路・公園占用緩和措置利用すべき
「移動商業店舗」プロジェクト
三井不動産は12月15日、車両と店舗が一体となった「移動商業店舗」プロジェクトを始動させると発表した。
すでに2020年9月から、10業種11店舗の事業者とともに首都圏のマンション4か所と日本橋・福徳の森でトライアルイベントを実施している。
「THE TOYOSU TOWER」管理組合理事長・菅谷武史氏は「様々なお店がマンションの近くに来ることで、便利なサービスによる生活利便性の向上と、豊洲にはない新しいお店との出会いにつながり、共働き・子育て等で忙しい居住者の楽しみの1つになりそうです」とコメントを寄せている。
同社は「移動商業店舗」プロジェクトを通じて、自宅やオフィスなどの身近な場所でリアルな買物を気軽にできる体験と、思いがけない魅力的なコンテンツ(店舗)と出会える体験価値の創出に取り組み、将来的にはホテルなど様々な移動式サービスに広げていくとしている。
◇ ◆ ◇
いい取り組みだ。同じではないが、三菱地所は9月、新宿三丁目の所有地で「バスあいのり3丁目テラス」開業した。
記者はコロナ感染を避けるため徹底して「三密回避」を実践している。取材などで外出しても、コンビニでお握りと缶ビールを買って野外で食べるか、一番安全と思われるホテルを利用するようにしている。
国土交通省や東京都、各自治体も飲食店を支援するため道路や公園の臨時使用に関する緩和措置を取っている。
国交省は6月、新型コロナ拡大を受け、テイクアウト、テラス営業のための道路占用許可を緩和した。東京都は7月、飲食店などを支援するための緊急措置として、都立公園内での占用許可の基準を緩和した。このほか、世田谷区、杉並区、江戸川区なども独自の〝キッチンカー(移動販売車)〟を行っている。
ところが、記者が知らないだけかもしれないが、国交省の緩和措置を受けて営業している店舗など見たことがないし、キッチンカーも見たことがない。なぜなのか不思議でならない。せっかく国や自治体が支援に乗り出したのだからどんどん利用すべきだと思う。〝夜鳴きそば〟〝屋台ラーメン〟はなくなったのか。爆発的にヒットするのではないか。商店街ぐるみで取り組めば知恵もわくはずだ。
出店テナントの様子
築84年 都内に現存する唯一の木造見番建築物見学会 青木茂建築工房が設計監理
「港区立伝統文化交流館」
青木茂建築工房が設計監理を担当した港区の旧協働会館「港区立伝統文化交流館」の見学会が12月14日行われた。コロナ禍のため1回30名の来場制限を行ったにもかかわらず、15日と合わせ8サイクル全240名が全て満席となった。(写真★は記者、それ以外は交流館ホームページから)
施設は、JR田町駅から徒歩8分、港区芝浦1丁目に位置する木造2階建て(既存棟)RC造2階建て(増築棟)延べ床面積約550㎡。
昭和11年に建設された既存棟は、「目黒雅叙園」の棟梁である酒井久五郎が手がけた都内に現存する唯一の木造見番建造物(「見番(けんばん)」とは「置屋」「料亭」「待合」からなる「三業」を取りまとめ芸者の取次ぎや遊興費を精算する施設)。
正面玄関には銅板葺きの唐破風(からはふ)をつけ、檜舞台のある「百畳敷」の大広間、木製引戸の卍崩し、階段支柱の擬宝珠(ぎぼし)などの技巧が凝らされた優美な姿を留めている。
第二次世界大戦中に芝浦花柳界が疎開し、戦後は「協働会館」と名を変え港湾労働者の宿泊所として使用された。2階は日本舞踊の稽古場、集会のために貸し出されていた。
老朽化のため平成12年に閉鎖され、一時は解体が決まったが、平成21年に港区指定有形文化財に指定され、地域の請願を受けて2年に及ぶ改修工事を経て、伝統・文化を次世代へとつなぐ「港区立伝統文化交流館」として令和2年4月に開館した。
改修に当たっては、文化財的価値を保存するため曳家で約8m移動させ、新たな基礎・耐圧盤を整備し、さらに耐震性を担保する補強工事を施したうえ、公の施設として活用するため増築部分にエレベータ、トイレ、スロープなどを設置した。
誰でも自由に利用できる1階は、建物や地域の変遷が分かる展示室をはじめ情報コーナー、飲み物や軽食を提供する福祉喫茶を設けている。予約制の2階は様々な用途に使えるようになっている。
見学会に臨んだ青木氏は「文化財としての価値を損なわないよう再利用できるものは極力残した。補強壁などは違和感のないように工夫も凝らした」などと語った。
青木氏★
◇ ◆ ◇
写真をご覧いただきたい。外観は84年前に建設されたままなのだろう。内観は置屋、料亭そのものでないので絢爛豪華とは言い難いが、装飾を施したガラス戸、擬宝珠などに往時がしのばれる。芸者さんなどが稽古を行った檜舞台付き「百畳敷」は、最大天井高は3.1m(10.23尺、今のマンションはせいぜい2.45m=8尺)、間口は8.7m(4.785間)だった。
今は使用されていないが、昔のままの和式水洗トイレも見せてもらった。タンクに水を貯め、ひもを引っ張ると水が流れる立派なトイレだった。本来の「掃き出し窓」も見た。文字通り箒でごみを外に吐き出す小窓だった。
驚いたのは、内観はあきらかに補強したと思われる壁などが設置されているのに違和感は全くないことだった。
そのことを青木氏に話したら、「キーストーンと同じ。力が加わるところに補強を施すから違和感がなくなる。単なる装飾ではない」と話した。けだし名言。建築の魔術師はいうことが違う。
青木氏はまた、「私はこれまでも結構木造のリファイニングを手掛けてきた。寺の設計も行ったくらい。それにしても昔の大工は凄い。100畳の無柱空間を造り、曳家も日常的に行ってきた」と語った。
◇ ◆ ◇
記者はこの日、別の取材もあり、空いた2時間を渋谷東武ホテルの「勉強カフェ」で本を読んで過ごした。コーヒーなど飲みたい放題で、ホテル内の喫煙室も利用でき1,100円だった。
この「交流館」は、改装工事(本工事+エレベーター工事)に約4.5億円かけた価値はある。弁当などの持ち込みが可能で、コーヒーが150円、軽食も注文できる。「密」も回避できそうだ。お勧めしたい。
当時の洋式トイレ★
補強壁★
掃き出し★
★
不快な臭い芬々 〝住みやすい〟街ランキング調査 無聊をかこつ記者のつぶやき
この前、どこかのテレビ局が、〝住みたい〟ではなく〝住みやすい〟街ランキングで「川口」がトップになったと報じた。
そのまま見過ごしてもよかったのだが、新型コロナの影響で現場取材が極端に減った分だけストレスがたまり、無聊をかこつ小生の胡乱な神経を刺激するものがあった。以下は暇に飽かせて調べた住みたい街やら住みやすい街についての小生なりの見解だ。もちろん人それぞれ。誰がどこに住もうが住みたいと考えようと勝手だ。それに異論をはさむ意図は全くないことを最初に断っておく。
この〝住みやすい街〟は、アルヒ(ARUHI)の「住みやすい街大賞」のことで、①住環境②交通利便性③教育環境④コストパフォーマンス⑤発展性の5つの項目について住宅評論家などが審査して発表しているものだ。
これによると2021年のベスト10は①川口②大泉学園③辻堂④有明テニスの森⑤大井町⑥たまプラーザ⑦小岩⑧花小金井⑨千葉ニュータウン中央⑩浦和美園の順だ。
前年2020年のベスト10は①川口②赤羽③たまプラーザ④柏の葉キャンパス⑤入谷⑥王子⑦武蔵小金井⑧小岩⑨ひばりが丘⑩東雲で、2019年は①赤羽②南阿佐ヶ谷③日暮里④川口⑤柏の葉⑥勝どき⑦南千住⑧千葉ニュータウン⑨小岩⑩矢向の順だ。
冒頭に書いたように〝そうなの〟と受け流してもいいのだが、川口、赤羽が選ばれるのになぜ浦和、大宮、所沢はないのか、浦和美園、矢向、辻堂、東雲などと同レベルの街は数百か所はあるのではないかという疑問が沸々と湧いてきた。一方で坪単価400万円もするたまプラーザが上位にランクされる…この選定の根拠がまったく理解できない。
また、この大賞にはシニア向けも紹介されており、2021年は①武蔵小山②南大沢③平塚がベスト3だ。
南大沢がシニア向けというのも不思議だ。ここには葬儀場も老人向け施設もあるが、坂も多くバリアフリーに問題がある。アウトレットパークもシニア向け商品は少ない。
わが街・多摩センターのほうが南大沢と比べたらポテンシャルははるかに勝ると小生は思う。駅前のスーパーはものすごく安いし、金がなくても散歩する公園などに事欠かない。とはいえ、シニア向けに選ばれたら猛反発する。判断するのは他ではない、消費者だからだ。
どうもこの大賞は、他のランキングに対抗するためか差別化を図るためか、あるいは選者の趣向の反映なのか判然としないが、恣意的というか政治的な不快な臭いが芬々とする。デベロッパーの影もちらほら見え隠れするといっては失礼か。どこそこのラーメン、餃子がおいしいなどというB級グルメ紹介サイトと同じかそれ以下だ。
これよりは、いわゆるMAJOR7の全国のマンション購入意向者約78万人を対象にした「住んでみたい街アンケート」のほうが〝王道〟を行くような気がする。あれやこれやの前提条件をつけずストレートに消費者に聞いているからだ(結果としてMAJOR7が分譲するエリアが上位にランクされることはあるが)。
その最新の第32回の結果はどうか。①恵比寿②目黒③吉祥寺④自由が丘⑤横浜⑥品川⑦中目黒⑧表参道⑨二子玉川⑩代々木上原がベスト10だ。以下、⑪広尾⑫四ツ谷⑬代官山⑭東京⑮麻布十番⑯豊洲⑰飯田橋⑱渋谷⑲青山一丁目⑳茗荷谷㉑たまプラーザ㉒池袋㉓荻窪㉔鎌倉㉕中野㉖みなとみらい㉗代々木㉘学芸大学㉙高輪ゲートウェイ㉚市ヶ谷㉛白金台㉜三鷹㉝新宿㉞三軒茶屋㉟新浦安㊱目白㊲浦和㊳田町㊴神楽坂㊵白金高輪がベスト40だ。
これと似たものでは、リクルート住まいカンパニーの関東圏に居住している20歳~49歳の7,000人を対象にした「SUUMO住みたい街ランキング」調査がある。
2020年では①横浜②恵比寿③吉祥寺④大宮⑤目黒⑥品川⑦新宿⑧池袋⑨中目黒⑩浦和がベスト10。以下、⑪渋谷⑫東京⑬鎌倉⑭中野⑮表参道⑯自由が丘⑰赤羽⑱二子玉川⑲さいたま新都心⑳武蔵小杉㉑船橋㉒北千住㉓立川㉔たまプラーザ㉕柏㉖川崎㉗海老名㉘荻窪㉙三軒茶屋㉚藤沢㉛千葉㉜桜木町㉝三鷹㉞上野㉟津田沼㊱秋葉原㊲舞浜㊳みなとみらい㊴つくば㊵青山一丁目がベスト40。
このほかのランキングも紹介する。長谷工アーベストはWEBアンケート形式の「住みたい街(駅)ランキング」を発表しており、今年の首都圏ランキングでは、①横浜②吉祥寺③大宮④浦和⑤立川⑥三鷹⑦恵比寿⑧品川⑨池袋⑩船橋の順でベスト10入りしている。
大東建託も「住みたい街(駅)ランキング」を発表している。①吉祥寺②横浜③恵比寿④みなとみらい⑤鎌倉⑥自由が丘⑦中目黒⑧新宿⑨大宮⑩池袋の順。
LIFULL HOME'Sは「買って住みたい街」ランキング。2020年のベスト10は①勝どき②恵比寿③三鷹④北浦和⑤東京⑥八王子⑦浦和⑧町田⑨二子玉川⑩大井町の順。
まだある。東洋経済新報社の「住みよさランキング」だ。安心度、利便性、快適性、富裕度の4項目20指標を全国の自治体ごとに数値化し、順位づけしているものだ。
2020年は①野々市市(石川)②文京区③武蔵野市がベスト3。ベスト10のうち6市が石川、福井県。首都圏では渋谷区が13位、21位に新宿区、23位に立川市、24位に台東区、29位に豊島区がランクされている。
◇ ◆ ◇
以上、様々なランキングを紹介した。東洋経済のランキングは調査指標に問題があるといいたいのだが、言い出したらきりがない。ここでは言わないことにする。ランキング全体で共通するのは、選ばれた街(駅圏)のマンション坪単価は一部の郊外を除き300万円を突破することくらいか。
注目したいのは東京だ。過去のランキングを調べていないが、少なくとも10年前までは20位にも入っていないはずだ。住む街として認識されていなかった「東京」を日本の中心地としての地位を不動のものにした三菱地所はさすがというべきか。
記者も懐具合や家族、仕事のことを考慮に入れず、住みたい街をあげるなら真っ先に東京駅を中心に日本橋、銀座を選び、その次に赤坂、青山、六本木、神楽坂、神保町、大森、三浦半島などを選択する。わが多摩センターは年寄りには結構つらい。
東京、日本橋、銀座は文句なし。どうして三菱地所は東京駅周辺でマンションを分譲しないのか不思議だ。坪3,000万円でも安いと思う。神保町は本好きにはたまらない街だし、大森は「馬込文士村」を散歩したいからだし、三浦半島は海が好きだから選ぶ。
吉祥寺は選ばない。いいのは井の頭公園周辺だけで雑多な街だ。自由が丘は何度行ってもよく分からない街だ。
〝穴場〟などはないが、強いてあげるなら、どこのランキングにも一駅も選ばれておらず、割り負け感が著しいわが京王線と東武スカイツリーライン(東武伊勢崎線)、京急線だ。
京王線は2022年度の完成を目指し、笹塚駅-仙川駅間の道路と鉄道との連続立体交差事業を行っている。25か所の踏切をなくし、この間の7駅は高架駅となる。そうなれば一挙に利便性が高まる。
東武スカイツリーラインはとっくに複々線化がされており、日比谷線、千代田線、つくばエクスプレスとの接続もされている。遅延がもっとも少ない沿線の一つだ。
山がちの海岸線を走る京急線は、車窓からの光景が目まぐるしく変わりすっかり遠足気分にしてくれるのがいい。真夏に制服姿の青臭い防衛大の学生に出会うと性的興奮を覚えるし、せわしなく行き交う船が止まって見える観音崎ホテルからの眺望は全てを忘れさせてくれる。
JRと並行して走っているためか、負けてなるかと予定時刻より早く着きすぎて国交省から目玉を食らったというのもほほえましいではないか。
成長が見込める街(駅)では京葉線南船橋をあげたい。穴中の穴はここだ。いま三井不動産レジデンシャルが駅前でマンションを分譲しているが、坪単価は204万円だ。東京駅まで約30分。これほど安いエリアはまずない。
隣接する駅前の市有地約45,242㎡の再開発計画も決まった。三井不動産グループが商業、物販、飲食、サービス、公園のほかマンションも建設する。ここも劇的に変わるはずだ。
もう一つ。記者は街(駅)のポテンシャルを左右するのは①ホテル②デパート③緑環境、歴史・文化を感じさせる施設の3つだと考えている。ホテルは冠婚葬祭機能を備えたもので、デパートは最近流行らないので大型商業施設に置き換えてもいい。緑環境は街路樹や公園など、歴史・文化施設はコンサートホールなどだ。
この3つを満たす街(駅)は、山手線ターミナルなどを除くと意外と少ない。東京都は立川、八王子、神奈川県は横浜、みなとみらい、川崎くらいで、埼玉県と千葉県は皆無だ。(わが多摩センターはかつてこれを満たしていた)
まだまだ書きたいことはあるが、この辺でやめておく。言いたいのは〝住めば都〟だ。消費者の方々は雑音に惑わされず賢明な選択をしてほしいということだ。
過去最多の都の新型コロナ感染者 第1波-第2波-第3波でどう変わったか
東京都の新型コロナ感染拡大が止まらない。12月10日は602人となり、これまで最多だった12月5日の584人を上回る過去最多を記録した。感染経路不明者も62.3%と6割を超えた。
年代別・性別では、40代男性が77人となり、11月21日の69人を上回る過去最多となったほか、30代男性の85人、50代男性の54人も2番目の多さとなった。70歳以上の感染者は63人で10.5%となっている。
◇ ◆ ◇
新型コロナ感染者は東京都だけでなく全国でも過去最多水準で推移していることから、Go Toトラベルなどキャンペーンとの関連性が取りざたされているが、キャンペーン以前でも東京都の経路不明者は50%を超えており、そもそも政府はキャンペーン利用者を追跡調査などしていない。因果関係が不明になるのは素人でも分かることだ。
それでも何らかの手掛かりがつかめないか。記者は緊急事態宣言前の3月31日までの第1派521人、第2波の真っ盛りの8月7日の461人、そして12月10日の602人の都の感染者のデータを比較してみた。
別表・グラフがそれだ。これによると、第1波では20代から70代まで感染者は幅広く分布しているのが分かる。60台以上は171人で、全体の32.8%を占めた。
第2波は、緊急事態宣言の効果か、感染者の属性が大きく変化した。8月7日は20代と30代が突出しており、全体の感染者の65.9%を占めている。60代以上は36人で7.8%にとどまっている。7~10月は若年層が感染者の半数を占めるというこの傾向が続いた。
そして今回。何よりも絶対数が増加し、第1波と同じように各年代への広がりが顕著だ。60代以上は103人、比率も17.1%となり、第2波の3倍近くに増加している。
このように第1波-第2波-第3波(と呼べるのか)は似ているところもあれば全く異なるとも受け取れる。Go Toキャンペーンとの関連性は分からない。〝見えない敵〟に立ち向かうためにはデータは少なすぎる。
積水ハウス「絹谷幸二 天空美術館」12/19から特別展示 二女・香菜子氏との合作も
絹谷幸二・絹谷香菜子「生命(いのち)輝く」2017年200号(1940×2590)
積水ハウスは12月11日、同社が設立・運営する「絹谷幸二 天空美術館」(梅田スカイビル タワーウエスト27階)で特別展示「天空(そら)をいろどる いのちのつながり」を12月19日(土)から2021年6月28日(月)まで開催すると発表した。
絹谷幸二氏と日本画家である二女・絹谷香菜子氏が、親子で描き上げた合作「生命(いのち)輝く」のほか、「般若心経」をテーマとした対となる「自画像・夢」「漆黒の自画像」を初出品する。
新登場の画家とつながるVR(バーチャル リアリティ)体験もできる。
◇ ◆ ◇
絹谷幸二氏がNHKの絵画教室の講師をされていたころだから、もう30年以上も昔からのファンだ。当時は小生でも手が届く値段だった。二束三文にしかならない絵画をたくさん買ったのが悔やまれる。
二女の絹谷香菜子氏の合作を同社リリースで初めて見た。たしかに絹谷幸二氏のタッチとはどこか異なる。全体的にたおやかな雰囲気が伝わってくる。
サンフロンティア 客室天井高2.65m「日和ホテル東京銀座EAST」 安眠グッズ提供
「日和(ひより)ホテル東京銀座EAST」
サンフロンティア不動産は12月10日、同社グループが運営する「日和(ひより)ホテル東京銀座EAST」の客室タブレットサービス「tabii(タビー)」による「超安眠ルーム」を期間限定で提供すると発表した。
and factoryが提供し、ホテル全室に導入している客室タブレットサービス「tabii(タビー)」を通じ睡眠コンサルタントの友野なお氏監修の「睡眠五感」、「視覚」「聴覚」「嗅覚」「触覚」「温熱感覚」など様々な安眠グッズを提供する。
大浴場入り口
露天風呂
◇ ◆ ◇
記者は、ホテルで寝るときはほとんど酔っぱらっておりすぐ眠ってしまうので安眠グッズなるものに全く関心はない。「お客さん!チェックアウトですよ」とたたき起こされたこともしばしばある。しかし、同社のホテルは一度も見たことがないので見学をお願いした。
施設は、JR京葉線・東京メトロ日比谷線八丁堀駅から徒歩4分、東京メトロ有楽町線新富町駅から徒歩3分、都営浅草線宝町駅から徒歩4分、中央区新富1丁目に位置する敷地面積約551㎡、11階建て延べ床面積約3,716㎡。客室数135室設計・監理は松田平田設計。施工は三井住友建設。付帯設備はレストラン、大浴場・露天風呂、スカイテラスなど。開業は2019年12月。
客室は、全135室のうち94室が琉球畳、41室がカーペットタイプ。18㎡のダブル・ツインが中心で、デラックスツインが21㎡。靴を脱いでゆったりとくつろげるのが特徴だ。
まず「日和(ひより)」について。「日和見め!」と叱声を浴びせられるような気がしないわけではないが、小さいころは「ええ(いい)日和やなあ」というのがあいさつで、日和山があり観光名所となっているのでいいネーミングではないか。
強調できるのは天井高の高さだ。案内していただいた支配人の平山和行氏によると、1階のラウンジ、レストランは4.5m、客室は2.65mだった。これは〝売り〟の一つになるはずだ。最近の宿泊特化型ホテルの客室は2.5mあれば高いほうだ。
デザインは、外国人利用者を意識したのだろうが、和をモチーフにしたデザイン、歌麿の絵画、琉球畳などを多用しているのも納得だ。
最上階に大浴場・露天風呂(外から覗かれないようになっていたが)があり、屋上のスカイテラスでは京橋、東京、城東エリアが展望できる。
最近は女性客が増加していると聞いたが、これも納得だ。
スカイテラス
客室 スタンダードツイン
明大特任教授&アークブレイン代表・田村誠邦氏 「建築サバイバル塾KSJ」受講者募集
建築家・青木茂氏と親交があり、明治大学研究・知財戦略機構特任教授でアークブレイン代表取締役・田村誠邦氏が、建築設計者、工務店経営者、建築営業マンなどの建築系の実務者のための実務講座「建築サバイバル塾KSJ」を開講するとのメールが届いたので紹介します。
記者も、これまでの経験から建築士などの方々が「士」として自立するためには消費者の潜在的なニーズを掘り起こし、デザインする必要性を強く感じています。
◇
田村氏は、これまで「同潤会江戸川アパートメント」など多くの建築物の再生事業に携わっており、森ビルのアーク都市塾の専任講師として、事業収支計画を軸に建築関連分野の実務知識を教え、延べ500人以上のプロを育成し、さらに2015年から3年間、建築設計者や工務店経営者、建築営業マンなどを対象とした「クライアント・アドバイザー養成塾」という社会人向けの塾を実施し、延べ100名近いプロを養成してきた。
今回、塾を開講するのは、「建築業界は、オリンピック効果もあって、バブル以来の好景気に沸いていましたが、本格的な縮小社会の到来と新型コロナの影響により、かつてないほど厳しい状況に直面している」「新築需要全体が縮小する中では、これまでの集客や受注のやり方を繰り返すだけでは、需要縮小の波に飲まれてしまう。建築の専門家が建築のことだけを知っていれば済んだ時代は、とうに終わった」などという危機感が背景にある。
そうした中、建築士などが自立するには、顧客の本当のニーズをきちんと把握し、それに応えることによって顧客との信頼関係をしっかりと築くことが大事であり、そのためには建築に隣接する不動産や税務、法務、事業収支やファイナンスなどについても、クライアントの質問に答えられる程度の専門知識やノウハウを身につけておくことが極めて重要」という。
田村氏は「私も66歳になり、あと何年、現役でいられるかわかりません。そうした中で、私がこれまで40年以上にわたり培ってきた建築と不動産の中間分野の実務ノウハウやスキルをもう一度あますことなく次の世代の方々に伝える場を、ぜひ、つくりたいと思う」とメッセージを寄せた。
「建築サバイバル塾KSJ」の顧問に青木茂建築工房主宰・青木茂氏と東京大学大学院工学系研究科建築学専攻特任教授・松村秀一氏を迎え、創造系不動産代表取締役・高橋寿太郎氏を塾長補佐に、また、近畿大学建築学部准教授でSPEAC取締役・宮部浩幸氏をアドバイザーに迎える。
開講に当たって青木氏は「建築家の仕事は多様な対応を迫られる。建築の技術のみならず法律、環境、世界の経済界の動き等を熟知しなければ建築家として大成は叶わない。田村誠邦先生は建築の経済の第一人者である。氏から学ぶことにより新しい知見を得ることを確信している」とコメントを寄せている。
また、松村氏も「巨大な新築市場が長く継続していた建築界では、専門分化は究極まで進んでいるし、ある専門に特化して技を磨いた職人的な存在を讃える傾向も強い。しかし、ストックが飽和状態を超え市場環境が一変した今日、必要なのは建築と不動産、技術と経営等、複数の専門領域を軽々と同時にこなし得る知識とセンスを持った人材だ」とコメントしている。
「建築サバイバル塾KSJ」の詳細と「オンラインセミナー&個別相談会」の案内は次のURLで。
http://www.abrain.biz/kobetsu/
「旧耐震マンション 何も検討しない」選択肢はない アークブレイン・田村氏(2014/1/6)
JR貨物 マルチ型物流施設「東京レールゲートEAST」着工へ 三井不が事業パートナー
「東京レールゲートEAST」
日本貨物鉄道(JR貨物)は12月10日、東京都品川区のマルチテナント型物流施設「東京レールゲートEAST」を2021年1月に着工すると発表。事業パートナーとして三井不動産が事業参画する。
JR貨物は、「JR貨物グループ中期経営計画2023」で「総合物流企業への進化」を掲げており、今回の「東京レールゲートEAST」と先行稼働した「東京レールゲートWEST」(2020年2月竣工)と併せてJR貨物グループ各社の機能を結集し、入居テナントに対する集荷・配達・保管・荷役・梱包・流通加工などの一貫した物流サービスの提供が可能になるとしている。
事業パートナーの三井不動産は「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)」を旗艦ブランドとして国内外で40物件展開しており、「東京レールゲートEAST」では開発計画の企画立案、テナント誘致を行い、竣工後は施設の運営・管理を行う。
施設は、首都高速湾岸線大井南ICから約2km、東京都品川区八潮3丁目の東京貨物ターミナル駅構内に位置する敷地面積約76,493㎡、鉄骨造(一部CFT造)5階建て延床面積約174,404㎡。BCPは免震構造・72時間対応非常用発電機・24時間有人管理。施工はフジタ。竣工予定は2022年8月。
東京貨物ターミナル駅構内
まだ残る疑問 積水ハウス 地面師グループによる詐欺事件「検証報告書」公表
積水ハウスは12月7日、弁護士の菊地伸氏を委員長とする「積水ハウス総括検証委員会」による「分譲マンション用地の取引事故に関する総括検証報告書」を公表した。
取引事故とは、2017年4月から6月にかけて、地面師グループによる詐欺行為により品川区西五反田の土地所有者ではない第三者と約63.8億円の売買契約を締結した結果、法務局から売買契約は無効、登記申請が却下され、同社は支払い済みの約55.6億円の損害金を特別損失として計上した事案だ。損害金が巨額で、わが国を代表するハウスメーカー・デベロッパーのプロがもはや死語と化したと思われる「地面師」に騙されるという前代未聞の事件であることからメディアでも大きく報じられた。
その後、事故は意外な展開を見せる。2018年1月24日に行われた同社取締役会で、当時の代表取締役会長・和田勇氏は不正取引を防止できなかった責任は阿部俊則社長(現会長)にあるとし退任を要求したが、逆に和田氏が辞任させられる事態となり、この内紛劇もまたマスコミの餌食となった。
さらにまた、和田氏らは今年4月の株主総会で阿部俊則会長ら現取締役の刷新を求め、和田氏を含めた11人の取締役候補を株主提案したが、1人も選任されず否決され、会社提案の現取締役が選任された。
同社は、今回の取引事故で起訴された犯人グループ全員に対する第一審有罪判決(10名中6名が確定)が本年6月までに言い渡されたことを受け、詳細な事実経緯などについて株主、顧客、取引先などステークホルダーに対する説明責任を果たすことを目的に、今年9月に総括検証を行う外部専門家による総括検証委員会を設置した。
「総括検証報告書」(以下「検証報告書」)は、2018年1月24日付の「調査報告書」も含め100ページ以上にわたるもので、事件の概要、原因分析、再発防止策の実効性検証、事件発覚後の同社の対応の検証などについて詳述している。
原因分析では、「本件取引は、第三者(H1の個人会社)を介して地主(X氏)から物件を購入する取引である。H1及びその個人会社には信用すべき取引実績がないのであるから、積水ハウスは、H1及びその個人会社の信用に依拠することはできず、真の所有者からの真正売買であることを自らの責任で判断すべき立場にある」にもかかわらず、本人確認を怠った東京マンション事業部、取引をチェックする立場にあるはずのマンション事業部、稟議手続を担当する不動産部、回付先である法務部、経営企画部、経理財務部も物件特性を踏まえた審査を行ったとは認められないと指摘。
「結語」として「本件取引事故は、絶好のマンション用地を好条件で入手できる機会に、マンション事業本部及び東京マンション事業部が前のめりになり、取引特性を踏まえ慎重に確認することなく、様々なイエロー又はレッド・フラッグを取引妨害の証と信じ込み、決済に至り大きな損害を招いた事例である。本件取引事故を引き起こした積水ハウスの構造的要因として、縦割意識の強さ(本社又は他部門の干渉を嫌い、縦割りのトップダウンの意思決定に異議を唱えにくい企業風土)、牽制機能の弱さ(牽制権限の不明瞭さ、牽制する職責への自覚の欠如、牽制するための専門性の欠如)、及びリスク意識の低さ(リスク意識を高めるための方策の不足)を見ることができた」とし、「積水ハウス経営陣は、その視線を内側のみに向けることなく、ステークホルダーに対しても真摯に向き合って説明責任(アカウンタビリティ)を果たすという強い意識をもつことが望まれるところである。本検証報告書を機に、改めて本件取引事故の反省を出発点に、構造的問題を解決するに足る十分な再発防止策を実施しているか、アカウンタビリティを果たすだけのディスクローズ・対話ができているかを自問し、新しい事象の発生の都度、足らざるを補っていくことが期待される」と締めくくっている。
また、2018年報告書が指摘した経営陣の責任については、「本件取引事故は積水ハウスないしその関係者が引き起こした不祥事事案ではなく、地面師グループによる詐欺被害を防止し得なかったという事案である。(中略)上記被害を防止し得なかった原因は積水ハウスの当時の稟議システム、社内環境や内部統制、あるいはリスク意識の希薄さといった点に認められるのであって、一部の業務執行取締役のみ重い責任を問われるようなものではなく、過去から本件取引事故まで積水ハウスの経営にあたった者の共通の問題である」とし、「取締役としての任務懈怠に該当するとの評価の根拠が明らかにされておらず、責任を議論する前提が欠けている。単に『審査が不十分であった』『最後の砦である』というだけでは、法的責任の根拠たり得ない」として退けた。
◇ ◆ ◇
今回の「検証報告書」は、裁判が継続中ということもあってか明らかにされていない問題点もいくつかある。
中間業者(検証報告書ではH1)がどのような役割を担ったかについて触れられていないのがその一つだ。
2018年報告書では「稟議時点の中間業者が、相手方の申入れで変更されているが、新しい中間業者は、当初の中間業者の㈱●●(H1)から●●㈱(H2)というペーパーカンパニーに変更され、代表者も女性に変わっている。これに強い疑問を持つべきであった。
なお、●●の2名の女性取締役の内、代表取締役●●の夫の背景調査はなされておらず、取締役●●の夫は、●●元代議士である。そして、この会社は事件後に繋がりを消すためのペーパーカンパニーであり、このような会社は、絶対に、当社の取引先であってはならない」と、強い調子で批判している。(●●は検証報告書に添付された資料のまま)
しかし、今回の検証報告書では「A1営業次長は、H1が実質的に決定権を持っている会社ならそれで構わないと考え、積水ハウスはこの変更に同意した」としか記述されていない。
これが、いわゆる牽制機能の弱さ、リスク意識の低さに由来すると言われればその通りなのだろうが、釈然としないものを感じる。
真偽のほどはともかく、同社は「H㈱の所在するビルの一室はOの後援会、P党代表、詐欺集団の混在する悪評高き事務所である」旨のメール(リスク情報)を得ている。O、あるいはPは元国会議員のはずで、この段階でどうして詳しく調査しなかったのか疑問は残る。解明すべきだと思う。
さらにまた、偽X(詐欺師グループ)の代理G1弁護士はどのように事件と関わっているのかも不明だ。
検証報告書には「偽Xは現地に現れず、代わりにG1弁護士が鍵を持参してやってきた。G1弁護士は、病院に行かないといけないので建物内覧の現地に代わりに行ってほしいとX氏(偽Xのことか=記者注)から依頼されたと説明し、持参した鍵で、本件不動産の建物の勝手口の南京錠を開錠して建物内に入った」とあり、東京法務局も「登記申請書類の一つであるG1弁護士作成の本人確認情報に資料として添付されていた国民健康保険被保険証の写しが偽造されたもの」と断定している。G1弁護士もまた騙されたということなのか。
もう一つ、検証報告書では、調査に同社役員ら約20人へのヒアリングを行ったとしているが、2018年報告書の作成に関わった4人のうち2人からのヒアリングを行っていないこともどうしてなのか。
検証報告書は、2018年報告書がより踏み込んだ原因分析を行わなかったのは「極めて残念」としているが、どうして2018年報告書が2018年1月24日開催の取締役会の直前に再発防止策の検証・協議及びその内容の答申を2017年調査委員会の目的から除外したかの理由について触れていないのも疑問として残る。
◇ ◆ ◇
読者の皆さんは「地面師」をご存じか。記者は小説などで知っており、実際にだまし取られた人の話を聞いたことがある。検証報告書には同社の用地取得関係者ら44人にアンケート調査しており、このうち約半数の人が「地面師の言葉は知っている」と答えている。
「詐欺師」がいかにすごいかは、黒岩重吾「詐欺師の旅」(角川文庫)を読んで頂きたい。本物の詐欺師は自分が詐欺を働いていることを自覚していないという。
朝日新聞が創業以来の大赤字に 人員削減不可避(篠原勲氏のOSI会員向け記事転載)
企業文化研究所理事長・篠原勲氏が12月7日付でNPO法人OSI研究会会員向けに発信した記事を転載します。
篠原氏は1942年生まれ。「会社四季報」編集長、「週刊東洋経済」論説委員、編集局次長、取締役営業局長・取締役広告局長、鳥取環境大学教授などを歴任。著書は「強い会社は軸がブレない」(定価:1,500円+税/発行・発売:第三企画出版)、「『武士道』と体育会系〈もののふの心〉が日本を動かす」(定価:本体1,500円+税/発売:創英社・三省堂書店)など。
◇ ◆ ◇
スマホの普及に伴い新聞が急激に売れなくなってから久しい。日頃のニュースは新聞ではなくテレビやスマホを見れば十分ということなのだろう。通勤電車の中で新聞を広げている人はほぼ姿を消した。周囲に気兼ねしながら新聞を広げて読むのも気が引けるらしい。それに購読料が読者の収入に比べ割高感があることも新聞が売れなくなった理由の一つである。共稼ぎが増えたため主婦など家族も家で新聞を読む人が少なくなった。
新聞業界を取り巻く環境が厳しさを増す中で、朝日新聞が「創業以来の大赤字、渡辺雅隆社長が来春退任」とのニュースが流れたことから、朝日新聞の凋落ぶりが話題になっている。朝日新聞社は、「2020年度決算が経常損益で約170億円の創業以来の大赤字に陥る見通し」だという。2020年9月中間期の売上は1,390億円(前年同期比22.5%減)、営業損益92億円の赤字(同6億円の黒字)、純損益は繰り延べ税金資産の取り崩しにより419億円の赤字(同14億円の黒字)だった。
新聞部数では、読売新聞が2020年上半期時点で771万部(ABC部数)とトップの座を守っている。朝日新聞は516万部で2位にある。ちなみに全国紙では3番手が225万部の毎日新聞、4番手が213万部の日本経済新聞、5番手が133万部の産経新聞という順番だ。
それにしても、今から10年ほど前までは、読売新聞が約1,000万部の部数近辺で安定していた。それが急落に転じたのは2014年頃からだった。近年は新聞業界全体で見ると毎年200万部のペースで発行部数は減少をたどっている。
もっともそうした中にあって朝日の落ち込みが目立つ一方、4位の日経新聞は経済情報を目玉にしてその存在感を増している。株式市場の堅調もあり直近では毎日新聞と日経新聞の部数が僅差で入れ替わったという話もある。2019年度の日本経済新聞社の連結売上高は3,568億円で、朝日新聞社の3,536億円を抜き、発行部数では日経が朝日の半分以下でも、広告収入などの面で日経が朝日を凌駕しているのがその理由だ。
朝日新聞社が公表している財務データによると、朝日新聞社は不動産事業で安定した利益を上げていることが分かる。2020年3月期の決算データでは連結従業員数6174人が関わるメディア・コンテンツ事業(新聞はこの中に含まれる)の売上は3345億円、セグメント利益は19億円となっている。では不動産事業だが、売上高385億円、セグメント利益は68億円を稼ぐ。つまり、朝日新聞にとってオフィスビルの賃貸事業がメディア・コンテンツ事業を下支えしていることになる。
朝日新聞社が170億円の創業以来の大赤字となり、渡辺雅隆社長が来春で責任をとって退任する(後任は中村史郎副社長)とのニュースにもかかわらず、同社で経営改革の話題が表面化しないのが周囲の興味を引く点と言える。コロナ禍で多くの企業が様々なコスト削減策を打ち出し生き残り策を模索しているが、朝日新聞社にはそうした動きが見られない。
その理由はどこにあるのか。それには、「新聞社は民間企業でありながら社会の公器である」という意識と甘えが社内に強いことがあるという。特に、編集者とか記者は「会社の業績悪化は経営者が責任を取ればよいことであり、現場のジャーナリストがとやかく口を出す問題ではない」という自尊心が強く、経営側もそれを抑えられないようだ。
しかし、いくら編集者や記者がその仕事に誇りを持っていても、赤字続きでは企業は行き詰まる。もちろん、他に新たなる収益源が加われば、先行きの不安も解消しよう。しかし、今の朝日新聞に新商品、新分野は期待しにくい。となると、先はジリ貧が待ち構える。
朝日新聞社は株式を公開していないため、その内実は上場会社に比べ表に出てこないことが多い。しかし、有価証券報告書の提出企業のため従業員の給与水準を公開しているので、それによると朝日単体では従業員3,966人の45.4歳の平均給与が1,229万円(2020年3月31日現在)と、一般企業よりもかなり待遇が良いことが分かる。
と言っても、この給与水準は他の大手新聞社や大手テレビ局の社員の平均的な給与と比べても特別高い訳ではない。ただ、朝日の場合、新聞販売部数の減少や広告収入の落ち込みを考えると、この高給がいつまで持つのかということである。
すでに新聞業界においては地方紙と毎日、産経のような下位企業で社員の給与水準の見直しが進んでいる。データが公表されていないので、正確ではないが、毎日新聞・産経新聞の平均的な40代社員の年収は800万円前後と推測されている。
朝日新聞は1879年(明治12年)に、大阪・江戸堀(現在の大阪市西区)において創立された。「朝日」の由来は、「旭日昇天 万象惟明」にあり、「毎朝、早く配達され、何よりも早く人が手にするもの」との意味から名付けられた。その後、1882年(明治15年)に、政府と三井銀行から極秘裡に経営資金援助を受け、経営基盤を固めてきた。
東京に進出したのは1888年(明治21年)。東京に本社を置く「めさまし新聞」を買収し、「東京朝日新聞」に改題、大阪は「大阪朝日新聞」に改題してスタートした。 株式会社朝日新聞社に改組したのは1919年(大正8年)だった。
1945年(昭和20年)の日本の敗戦は、朝日新聞に対して戦争責任明確化を求めることになる。これにより、村山長挙社長以下幹部が辞任後、村山長挙と上野精一が公職追放となる。また、その後、朝日新聞の名声に大きな傷跡を残したのが誤報とされた「吉田証言」(慰安婦問題に関する記事)や(福島原発に関する)「吉田調書記事」を巡って「新聞業界全体の信頼を大きく損なわせた」と朝日新聞が詫び謝罪した事態である。
なお、朝日新聞社は2023年度までに社員計300人規模の希望退職の実施の検討に入ったとの情報も。まずは100人以上を対象とした具体案を労働組合に示した。一部の管理職などを除き、来年3月31日時点で勤属10年以上の45歳以上65歳見満の社員が対象となる。年収や年齢に応じて、希望退職特別一時金として最大計5,000万円を支給し、再就職支援会社のサービスも受けられるようにするとの計画だとされている。
在宅勤務やデジタル化の流れもあり新聞の購読者もこれまでとは違った生活の在り方に変わっていくことになるだろう。かつては花形職業であった新聞社の編集者や記者の仕事も今後は大きな変革の荒波に揺すぶられるのは避けられない。