千代田区の主張は根拠希薄 イチョウの倒木・枯死は少ない 「街路樹が泣いている」
伐採が予定されている3期の街路樹(ケヤキもかなり多い)
街路樹の倒木・枝の落下による事故について考えてみた。今回の神田通りの道路整備計画だけでなく、すべての道路整備について当てはまる問題であり、街路樹をどう考えるかの本質的な問題がここにあると考えるからだ。
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令和4年1月31日に行われた千代田区の企画総務委員会で木村委員の「今回のこの計画だけれども、まず沿道住民の声を聞かなかった。これ致命的ですよ」という問いに、小川環境まちづくり部長は「区としての判断は、やはり安全に通行ができるといった歩行環境、道路環境の整備というものが、やはり今回の整備に関しましては優先すべきことであり、その安全性、利便性を犠牲にして木を残すという選択にはなかなかならなかったというのが現状でございます」と答えている。
また、須貝基盤整備計画担当課長は「車道とかは構造的に硬いものがあるので、なかなか根が張れる範囲というのは道路の中では限られてまいります。なので、あくまでも本当に道路の附属物ということで、これを言うとまた怒られてしまうんですけれども、まずは道路というのは本当に安全に通れるということが第一なんですね。木がかわいそうだとか、それももちろんございます。ただ、万が一それが倒れ人の命を痛める、そういうことになったら、そのときは本当に責任を取るのは私たち行政でございますので、その辺は踏まえてご理解いただきたいと存じます」と語っている。
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皆さんは、このやり取りをどう受け止められるか。道路の安全性、利便性を犠牲にして街路樹を残していいのか、万が一、倒木や枝の落下によって人の命が痛めることになったらだれが責任を取るのかと区側は主張している。管理者責任を問われるからだ。
記者は、ごもっともだと思う。歩道空間は危険に満ちている。車はしょっちゅう突っ込むし、雪や落ち葉に足を取られたり、敷石につまずいたりするのは日常茶飯だし、横からはコンクリの塀が襲うこともある。上からは車や看板、タイルなどだけでなく人が降ってくることもある。
今回の神田警察通りの問題は、街路樹を残すのか、伐採・撤去するのかは、行政の判断一つにゆだねられていることを改めてわれわれに突き付けた。須貝氏が語ったように、道路法と道路交通法には「街路樹」の文言は一つもない。あくまでも「附属物」「物」の一つだ。代替物などいくらでもあると。
これに対し、住民らは伐採せずに整備するよう区に求めた住民監査請求(2022年4月21日)を行っており、また、伐採工事が行われたことに対しては、22万円の損害賠償を区に求める訴えを東京地裁に起こした(2022年5月6日)。
ここでは住民監査請求と損害賠償請求については触れない。街路樹の倒木・枝の落下がどれほど危険かに絞ってみる。
ネットで調べたら、とても興味深いレポートが見つかった。2009年3月発行の「ランドスケープ研究」(日本造園学会)の細野哲央氏・小林明氏による「東京都道における街路樹による落下直撃事故の実態」だ。
レポートは、昭和63年度から平成19年度の都の事故発生報告書をもとに倒木などによる事故と判断できるもののみを抽出したもので、「原因となった樹種が明らかな69件の内訳は、ケヤキが29件(42%)で最も多くを占めていた。ケヤキの発生件数の半数を割ってエンジュ13件(19%) が続き、それにプラタナス6件((9%)、ヤナギ5件(7%)、イチョウ3件(4%)が続いていた」としている。
そして、平成18年4月現在の東京都道の街路樹約16万本の上位樹種は1位のイチョウ約2万8千本((18%)、2位プラタナス約2万2千本(14%)、3位トウカエデ約1万8千本(11%)、4位ハナミズキ約1万5千本(10%)、5位ケヤキ約1万本(6%)などから判断して、「植栽本数が多いほどその樹種が原因となる直撃事故も多いという関係にはないということができる」としている。
両氏は、「突然に樹木の枝が落下したり樹木の幹が倒れかかってくるという事故の性格のため、被害者自身の注意によってこの事故を回避することは極めて難しいといえる。このようなことから、落下直撃事故の発生を防ぐために道路管理者に期待されている役割は非常に大きいと考えられる。特に、ケヤキの枝による事故の発生数上位3路線では、いずれも樹高が高くなり大径木となっていたことから、そのような路線については重点的な安全管理が必要であるといえる」「直撃事故では、ケヤキの枝折れ、エンジュ・プラタナスの倒伏、ヤナギの幹折れなど、樹種によって発生しやすい態様のあることが示唆された」と締めくくっている。
KANDA SQUAREの公開空地
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レポートからケヤキによる事故が多いのはよく分かる。樹高が高く、箒状の見事な樹形を描くからだ(伐採が予定されている神田錦町3丁目のケヤキも見事)。その一方で中木のエンジュやヤナギが多いのは驚いた。
さて、今回問題になっているイチョウ3件(4%)だ。捉え方は様々だろうが、極めて少ないと考えることは可能だ。
区は2期で整備するイチョウ32本のうち2本は移植可能としている。記者も確認した。樹齢にして数年も経っていないはずだ。つまり、この2本はこの数年間の間に何らかの事情で伐採されたと思われる。仮に32本は植えられてから50年とすれば、病死・枯死の確率は極めて低いことが分かる。区の主張はガラガラと音を立てて崩れる。前回書いた記事(イチョウの独白)の正当性を証明できたと思うがいかがか。区の主張は根拠希薄だ。
ぶった斬らないで 神田警察通りのイチョウの独白 続またまた「街路樹が泣いている」(2022/5/11)
ぶった斬らないで 神田警察通りのイチョウの独白 続またまた「街路樹が泣いている」
神田警察通り道路整備Ⅱ期工事区間(右側は「錦町トラッドスクエア」)
記者はこの30年間、街路樹と親交を深め、会話を交わしてきた。以下は神田警察通り道路整備Ⅱ期工事(白山通り~千代田通り)に植わっている街路樹のイチョウの独白だ。
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お願いだ。ぶった斬ることだけはやめていただきたい。雨にも負けず 風にも負けず 雪にも夏の暑さにも負けぬ 丈夫なからだをもち 慾はなく 決して怒らず いつも静かに笑っている-この言葉こそわれわれの姿そのものだ。あなたたちの先達は巧みにわれわれを利用し、街路樹としてたくさん植えてきた。事大主義の匂いがしないわけではなく、ちまちました街並みにわれわれのような巨木を選んだのに異論はあるけれども、そんなに間違いではなかったことを皆さんはご存じのはず。都市計画は100年先、200年先を見通して実施するものだから。
美点をひけらかすのはやや気が引けるが、われわれがもっとも自慢できるのはその性格のよさだ。サクラのようにひねくれておらず、真直ぐに伸び、雨にも風にも夏の暑さにも冬の寒さにも耐え忍び、車の排気ガスや騒音、身勝手なあなたたちの強剪定にもめげず成長してきた。樹齢は50~60年だろう。人間にすれば少年少女か。成長途上の段階だ。樹高は20mだって30mにも伸びるだろう。仲間には千年以上生きているものもいる。この先数百年は生きられるだろう。
劣悪な環境を是認し、ストレスは右から左へ受け流し、気を病むこともなく医者知らずだ。あなたたちのように風向きによって右や左に傾くことはしない。葉っぱだって裏も表もほとんど変わらない。正直そのものだ。
容姿だけではないぞ。われわれの利点はたくさんある。二酸化炭素を吸い酸素を吐き出す。お金持ちも貧乏人も賢者も愚者もあまねく平等に樹陰・緑陰で包み込み、地表温度を20度くらい下げているではないか。樹形は見事な円錐形を描き、秋にはまっ黄色に染まってあなたたちを楽しませてきた。火災時には防火壁の役割も果たしてやる。フルスピードで車が突っ込んできても跳ね返す自信はある。
だからわれわれは品格を兼ね備えた長寿、安産の木と崇められ、大学のシンボルマークに採用され、神社仏閣の神木となっているではないか。東京都をはじめ自治体の木としても使用されているではないか。
まだあるぞ。知らない方も多いだろうが、「たらちねの 消えやらで待つ 露の身を 風よりさきに いかでとはまし」と謳われた「たらちね」こそわれらの「垂乳根」のことを指す。「垂乳根」とは、樹齢数百年以上の老木の枝に垂れ下がる突起物のことだ。何? あなたのおっぱいも垂れ下がってきた? いいんだ。もう役割を終えたんだから。大きいから垂れ下がるんであって、大きいことはいいことだ。わが貧乳のかみさんじゃなかった雌株なんぞは全然垂れ下がっていないぞ。
品性を欠く下品なことを言ってしまったが、効能はまだある。葉っぱは血糖値や血圧を下げる効果があることから漢方薬として売られているではないか。幹は生板として利用されているし、実(種子)は料亭の茶わん蒸しに入っている。炒った銀杏はサファイアのような輝きを放ち、酒の肴として重宝されている。
何? 落ち葉の始末に困る? 滑って転ぶ? 銀杏が臭い? 馬鹿云っちゃいけない。これほど皆さんの役に立っているのに文句があるのか。どの木よりも高くそびえ、たくさんの葉っぱを付け、一挙に葉を落とし、種子が強烈な匂いを放つのも全て数百年生きるための知恵だ。だからこそ太古の昔から死に絶えることなく生き延びられてきたのだ。受忍義務という言葉を知らないのか。惻隠の情はないのか。罰が当たるぞ。
他の樹木の批判などしたくないが、われわれの代わりとされるヨウコウザクラの樹高はせいぜい10mと聞く。背丈はわれわれの2分の1か3分の1しかないぞ。赤紫色の美しい花を楽しませてくれるのは1週間ぐらいだ。花が散ったらただの中木、雑木だ。樹陰・緑陰など期待できない。われわれの代わりが務まるはずはない。横綱と平幕くらいの差がある。(これは言い過ぎか)
道路整備区域に入っている神田税務署、神田警察署、それに共立女子大、正則学園、錦城学園などの関係者へ一言。都市計画などない時から建っているのだろうから言っても詮無いことだが、どうして道路・街路に背を向けて、敷地いっぱいに建てたのだ。周りのデベロッパーなどが整備した再開発ビルはみんな総合設計制度を利用して立派な公開空地を確保したではないか。今度建て替える時はこの制度を活用していただきたい。
役所にも一言。4車線から3車線にして歩行者や自転車利用者の利便性を高める計画には大賛成だ。しかし、街路樹を道路の附属物としてしか認識していないようでは沿道の賑わい創出、ウォーカブルな街づくりは絵空事に終わる可能性が大きい。せっかくの公開空地を区民に開放し、屋台も飲酒も喫煙も可能にし、イベントをたくさんやるようにしなければならない。
おっと、忘れていた。70年安保を経験したあなた牧田さん、「とめてくれるなおっかさん 背中のいちょうが泣いている」この言葉の意味を知っているはずだよね。日和ってんじゃねえぞ。しっかりした記事を書け(大きなお世話だ=記者)。
「錦町トラッドスクエア」の公開空地に設けられている池の鯉
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千代田区の延長約1,360m、道路幅員22mの神田警察通り通り道路整備計画の2期区間(白山通り~千代田通り)の実施が決まった。整備区間は総延長約230m、幅員22.0mで、現況の車道4車線16.6m(4車線+停車帯2)、歩行者・自転車通行空間1.7m、植樹帯1.0mを整備後は車道11.5m(3車線+停車帯1)、植樹帯1.4m、自転車運行空間1.5m・2.0m、樹木0.6m、歩行者2.0mにするもの。歩行者・自転車通行・植樹帯は現況5.4mから整備後は10.5mとなる予定。
計画では、街路樹のイチョウ32本のうち幼木の2本が移植され、残りの30本が全て伐採されることが決まった。すでに4月25日には2本が伐採された。代わりにはヨウコウザクラが植えられることになっている。工事は令和5年2月24日までの予定。
「神田警察通りの街路樹を守る会」などの住民は、区の強行伐採に反発し、工事時間の夜8時から翌朝の6時までイチョウにより沿い監視活動を行っている。
整備済みの神田警察通り道路Ⅰ期工事(左は学術総合センター)
ウクライナ支援活動開始 サンフロンティア アートオフィス「AYOTSUYA」
「Ukraine CaféHIMAWARI オープンイベント」
サンフロンティア不動産は5月10日、同社が運営するアートオフィス「AYOTSUYA(エーヨツヤ)」にオープンした「Ukraine CaféHIMAWARI」を通じ、日本に避難しているウクライナの人々をサポートする活動を開始したと発表した。
「Ukraine CaféHIMAWARI」は、公益財団法人日本YMCA同盟が、日本に避難しているウクライナ人のための交流・学びの場として5月1日にオープンした施設。同社はYMCAの来日サポートに賛同し、社員らの寄付金などの支援活動を行ってきた。
5月8日(日)のキックオフイベント「Ukraine CaféHIMAWARI オープンイベント」にはウクライナからの避難者24名、在日ウクライナ人4名、同社のスタッフ・関係者26名、合計54名が参加した。今後も支援活動を行っていく。
〝日本初 全てがアート〟 サンフロンティア不 シェアオフィス「A YOTSUYA」(2020/11/28)
業界初 屋上・外壁からの漏水18年保証 CO2排出量38%削減 三井不レジ「志木」
「パークホームズ志木コンフォートテラス」
三井不動産レジデンシャルは5月10日、業界初となる屋上・外壁からの屋内漏水18年保証の高耐久部材をマンションに採用すると発表した。これにより試算上、国土交通省ガイドライン推奨周期と比べて60年間で大規模修繕工事回数を2回減らすことが期待されるとしている。第一弾の「パークホームズ志木コンフォートテラス」を7月から分譲開始し、今後順次展開する。
高耐久部資材は、建物外皮の劣化抑制効果が期待される①タイルはく離・はく落防止性能が優れる外壁タイル張りに「有機系接着剤」②屋上アスファルト防水に「高反射塗料」③耐候性・耐久性にすぐれた外壁シーリング材-の3点セットからなる。
これにより、マンション業界では初めてとなる新築時の屋上および外壁から屋内への漏水保証について、現行の10年間から18年間に延長し、大規模修繕工事を長周期化することで、運用段階のライフサイクルCO2排出量を約38%削減できるとしている。
「パークホームズ志木コンフォートテラス」は、東武鉄道東上線志木駅から徒歩7分、埼玉県新座市東北1丁目に位置する8階建て135戸。専有面積き56.66 ~83.24㎡。竣工予定は2023年11月上旬。施工は長谷工コーポレーション。販売開始予定は2022年7月中旬。
なぜだ 千代田区の街路樹伐採強行 またまたさらにまた「街路樹が泣いている」
ブルーシートに覆われた伐採済みのイチョウ(右側の緑地帯は興和一橋ビル)
ウクライナ国旗と一緒にイチョウに添い寝する参加者(8日、午後9時ころ)
またまた、さらにまた「街路樹が泣いている」-東京都千代田区が4年4月25日から神田警察通り道路整備Ⅱ期工事を再開し、工事区間に植えられている32本のイチョウのうち二本が伐採されたことを受け、「神田警察通りの街路樹を守る会」のメンバーなど住民が工事時間帯の夜8時から翌日の朝6時まで、抗議の監視活動を行っているのを取材した。
記者が取材したのは5月8日夜8時過ぎから翌日の午前2時過ぎだった。参加者は20~30人くらいか。若い方もいたが記者のようなおじいちゃん、おばあちゃんが中心だった。それぞれがイチョウの傍に折り畳み式の椅子に座り行き交う車などを監視していた。なかにはイチョウに添い寝するように寝袋にくるまっている人もいた。
参加者は「私は14代目。みんな昔から住んでいる人ばかり」「区の言うことは信用できない」「家で缶ビールの蓋を開けたら、仲間からイチョウが伐採されたことを知らされ、自転車で5分かけて駆けつけた」「第一期でできたことがどうして第二期でできないのか」などと怒りをあらわにしていた。
寝袋の方も眠っていたわけではなかった。「(区に)騙されていたからね。トラウマになっちゃった。(行き交う車は)みんな(工事車両)怪しいと思った」と語った。
この日(9日)は工事が行われないと判断したのか、監視活動は午前2時過ぎに解散された。
工事が行われたら一部始終を見届けようと駆けつけた記者が予約していたホテルに帰ったのは2時半ころだった。酒もかなり入っていたが、半覚醒状態でなかなか寝付かれなかった。風呂にも入らず、歯も磨いていなかったのを朝8時ころ起きて初めて知った。飲み残しの缶ビールは半分残っていた。
なぜ、なぜ。なぜ。イチョウ伐採問題は決着がついていたのではないか。樋口高顕区長は「現在の一致点が見出せない状況が長く続けば、意見の対立を深め地域に亀裂を生じさせることにもなりかねないと認識」「(令和4年4月25日から神田警察通り道路整備Ⅱ期工事を再開したのは)行政として苦渋の決定」というが、意見の対立を深め、地域に亀裂を生じさせたのは区側であり、「苦渋の決定」は修復しがたい禍根となるのではないか。プーチンのウクライナ侵攻と変わりないと言ったら失礼か。
2日間かけて区議会企画総務委員会の議事録や経緯などをチェックしたが、怒りは正常な思考を停止させる。何から書いていいか分からない。五月雨式に書くことを決めた。
街路樹に関する記者の記事を調べたら、千代田区の記事も含め100本近く見つかった。参考になる記事を添付した。ぜひ読んでいただきたい。
神田警察通り道路整備Ⅱ期工事区間(右側は安田不動産「錦町トラッドスクエア」)
イチョウの幹には死刑宣告と同じ意味の「撤去」と書かれた張り紙が張られている
歩道のイチョウ(確かに歩道は広くはない。樹高20~30メートルに育つイチョウと釣り合わないのも事実)
整備済みの第1期工事区間(右側の緑地帯は防災センター、左側は共立女子大)
ネガティブにならざるをえない 無残な街路樹 ネイチャー・ポジティブを考える(2021/11/27)
またまた「街路樹が泣いている」 千代田区 街路樹伐採で賛否両論(2016/9/8)
千代田区「説明不足だった」 「豊洲」と同じ様相 神田警察通りのイチョウ伐採問題(2016/10/8)
会議用天板に杉の無垢材を活用した硬くて軽い「Gywood®」提案 ナイス
メラニン化粧板の天板(左)と「Gywood®(ギュッド)」
ナイスは5月2日、メラミン化粧板などの会議用テーブルの天板をスギの無垢材を活用した「Gywood®(ギュッド)」による無垢の板材へ交換する提案を開始したと発表した。
「Gywood®」は、一般的に軟らかいとされる針葉樹の無垢材の表層部を高密度化することで板厚を薄くすることに成功し、軽量化も図られているのが特徴。脚部のデザインも自由に選択でき、今回のような会議テーブルの天板交換などの提案も可能となった。
内装材の木質化の効果は科学的に証明されており、「Gywood®」はテーブルの天板のほかフローリング、階段板、学習机、キッチン面材などへの活用が進んでいる。
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「Gywood®」は記者も実物をみて触ったことがある。コストの問題もあるだろうが、CO2削減やSDGsの観点からすれば爆発的にヒットしてもおかしくないと思う。
国産針葉樹の特長保持しながら傷つきやすい難点解消 ナイス 無垢の新素材開発(2018/6/6)
第2回グリーンインフラ優秀賞受賞 フージャース「つくば」のマンション
「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園
フージャースホールディングスは4月28日、グループ会社のフージャースコーポレーションの「デュオヒルズつくばセンチュリー」が第2回グリーンインフラ大賞「生活空間部門」優秀賞を受賞したと発表した。
グリーンインフラ大賞は、国土交通省が事務局を務める「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」において、グリーンインフラに関する優れた取組事例を表彰し、広く情報発信することを目的に令和2年度に創設された表彰制度。第2回グリーンインフラ大賞では、全国から応募のあった27件の取組事例から、国土交通大臣賞(4件)と優秀賞が発表された。
「デュオヒルズつくばセンチュリー」は、茨城県つくば市の公務員宿舎跡地開発。産官学及び地域との連携の下、敷地境界線をシームレスにつないだ空間設計、開発地隣の公園(つくば市所有)の緑化リニューアルを行い、公園とマンションの敷地境界を取り払い、エリアに地元で人気のベーカリーカフェを誘致。公園の価値を維持する仕組みづくり及び地域コミュニティの場の創出のためのボランティア団体「つくばイクシバ!」を立ち上げ活動を行っている。公園利用人数は、リニューアル前後で283%増加した。
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とてもいい表彰制度だと思う。同社の「デュオヒルズつくばセンチュリー」は見学取材しており、記事にもしているのでぜひ読んでいただきたい。このような取り組みが全国に広がることを期待している。「公園」を住民から切り離すことしか考えていない自治体には刺激となるはずだ。
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「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」が発行した令和4年3月版「グリーンインフラ事例集」には100を超えるプロジェクトが掲載されている。デベロッパーが参画したプロジェクトも10件はある。分譲マンション事例はフージャースコーポしかないはずだ。
気になったのは、プラットフォームの会員構成だ。会員は都道府県と市町村の一号会員、関係府省庁の二号会員、民間企業、学術団体の三号会員、個人の四号会員からなり、2022年1月現在、一号は81、二号は9、三号は404、四号は838の合計1,332会員(設立当初は409会員)と増えてはいるのだが、一号会員は少なすぎる。全都道府県が会員になっているとすれば、市町村会員はわずか34にしか過ぎない。
何かにつけ官主導ではうまくいかないのは分かるが、都市公園などは各自治体が管轄していることを考えれば市町村会員が圧倒的に少なすぎる。各市町村を参画させることが課題ではないか。
「街のシンボルになる」来場者 公園との垣根なくしたフージャース「つくば」に感動(2021/4/28)
6.6%増の86.6万戸 令和3年度住宅着工/基本性能・設備退行に触れぬ識者・メディア
国土交通省は4月28日、建築・住宅着工統計を発表。令和3年度の住宅着工戸数は前年度比6.6%増の865,909戸となり、3年ぶりの増加となった。利用関係別では、持家は281,279戸(前年度比6.9%増、3年ぶりの増加)、貸家は330,752戸(同9.2%増、5年ぶりの増加)、分譲住宅は248,384戸(同3.9%増、3年ぶりの増加)。分譲住宅の内訳はマンション102,762戸(同5.0%減、3年連続の減少)、一戸建住宅144,124戸(同11.4%増、2年ぶりの増加)。
首都圏は総戸数297,152戸(前年度比4.0%増)で、内訳は持家61,265戸(同9.1%増)、貸家126,574戸(同6.8%増)、分譲住宅107,831戸(同1.5%減)。分譲の内訳はマンション48,819戸(同11.2%減)、一戸建住宅58,061戸(同8.5%増)。マンションは3年連続減。5万戸を割るのは平成21年度の34,506戸以来12年ぶり。
都県別マンションは、東京都29,216戸(同12.1%減)、神奈川県10,758戸(同0.7%減)、埼玉県4,823戸(同13.6%減)、千葉県4,022戸(24.0%減)となり、4都県とも減少した。
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国土交通省の建築着工統計調査から過去10年間の木造と鉄筋コンクリート造の坪単価の推移を見てみた。坪単価は工事費予定額で、工事が着工から完成までに要した実際の工事費ではなく、一般にこの種の統計は低めに現れる傾向を持っているが、木造と鉄筋の単価推移を概観するのに参考になる。
木造は、平成24年度の52.2万円から令和3年度は56.9万円となり、過去10年間で9.0%の上昇。一方、鉄筋は平成24年度の63.7万円から令和3年度は94.8万円へ実に48.8%も上昇している。
巷間では、マンション価格が上昇しているのは、大手を中心とするデベロッパーが利便性の高い用地取得にシフトしているからで、価格上昇にも関わらず市場が堅調に推移しているのは供給不足によると喧伝されているが、記者はそう思わない。
価格上昇はもちろん、建築費の上昇も大きな要因だが、規制が緩やかな土地代が高い商業系や工業系用途での供給を増やしているためで、マンション適地はむしろ減少していると考えている。供給不足というのも当たらない。ストックの増大、人口減少の現状を考えると、戸数減少は当然だと思う。
そんなことより、マンションも戸建ても基本性能・設備仕様レベルがどんどん劣化・退行していることに注視しないといけないのに、識者もメディア誰も何も言わない。こちらも退行か。
坪1300万円でどうか 旧逓信省庁舎跡地の三井&三菱「三田ガーデンヒルズ」
「綱町三井倶楽部」庭園からの完成予想図
三井不動産レジデンシャルと三菱地所レジデンスが4月25日に発表した旧逓信省簡易保険局庁舎跡地(1929年竣工)の大規模マンション「三田ガーデンヒルズ」に注目している。今年最大どころか、両社が2007年に分譲した定期借地権付き「広尾ガーデンフォレスト」以来の究極の億ションになるとみているからだ。
物件は、東京メトロ南北線・都営大江戸線麻布十番駅から徒歩5分、都営三田線芝公園駅から徒歩10分、港区三田一丁目の第二種住居地域・第一種文教地区に位置する敷地面積約敷地面積 25,246.㎡、14階建て他全1,002戸。専有面積は29㎡台~370㎡台。竣工時期は2025年3月。設計・施工は大成建設。
分譲マンションとしては港区最大となる敷地面積約25,000㎡で、両社が共同で「ガーデンヒルズ」を分譲するのは「広尾ガーデンヒルズ」以来38年振り。敷地南側にジョサイア・コンドルが設計した歴史的建築物「綱町三井倶楽部」を望む立地であるのも特徴の一つ。
国内最大規模となる全戸ZEH-Orientedを取得する予定で、電気・ガスともに CO2排出量実質ゼロとなるサービスを導入、太陽光発電と中圧ガスを利用したオンサイト発電を有事の際にも活用するなどレジリエンス機能も強化する。
この他、帝国ホテルと提携したコンシェルジュをはじめワークスペース、ジム、ゴルフラウンジ、サウナや岩盤浴、シアタールーム、ミュージックルーム、カフェラウンジ、 バー、レストラン(店舗)などの共用施設、サービス提供を予定している。
設計デザインは、東京ミッドタウン日比谷を手掛けたホシノアーキテクツがメインで、新丸ビルを担当したロンドンを拠点に国際的活動を行う建築設計事務所ホプキンスアーキテクツが国内マンションのファサード・デザインに初参画。旧逓信省簡易保険局庁舎を一部保存・再生する。起伏がある敷地を利用して既存樹を含む植栽約130種による約7,700㎡のランドスケープを計画している。
中庭
旧逓信省簡易保険局庁舎階段室
旧逓信省簡易保険局庁舎 入口
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現地の旧逓信省簡易保険局庁舎は入ったことはないが、何度も眺めてはため息をついた。〝ここにマンションが建ったらどんな素晴らしいものになるか〟と。目の前はジョサイア・コンドルが設計した数少ない現存建築物「綱町三井倶楽部」があり、三井不動産レジデンシャル「パークマンション三田日向坂」「パークマンション三田綱町」のほか、アパの高級賃貸マンション「THE CONOE三田綱町」、イタリア大使館、オーストラリア大使館、三田共用会議所、元神明宮(元祖神社)、赤羽小学校、都立三田高校などがある。
麻布十番駅近くでは約1,450戸のマンションを含めた「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」も進行中だ。
両社は今秋に販売サロンを開設すると発表した。メディア見学会も行われるはずだが、いつものように単価予想を試みる。ズバリ坪単価は最低1,300万円、1,500万円もあると見た。
根拠は、これまで分譲された大規模億ションのなかでもっとも住環境に恵まれており、最高レベルの基本性能・設備仕様が期待できるからだ。
比較する物件はないが、現地に近接する三井不動産レジデンシャル「パークマンション三田日向坂」(18戸)が参考になる。2011年竣工物件で、リストグループが開発した高額物件に特化したAI査定システム「mAI List(マイリスト)」が昨年の価格上昇率トップに上げたマンションだ。分譲当初の平均価格約2.4億円(平均面積128.24㎡)から約4.0億円へ坪単価は625万円から1,022万円へ1.6倍に上昇している。
もう一つ、2014年分譲の三井不動産レジデンシャル「パークマンション三田綱町」(98戸)もある。坪単価725万円で瞬く間に完売した。ネットで調べたら、現在の中古価格は1,000万円を突破している。「THE CONOE三田綱町」も坪単価1,000万円超で分譲されると思われたが、急きょ賃貸に変更された。
これらより低くなることはありえない。ただ、戸数が多く、目先の社会経済動向も読みづらいので坪1,500万円となると自信はない。1,300万円くらいが妥当ではないか。自信はない。外れたからと言って責任は取らない。
帝国ホテルイメージ
究極の億ション 三井&三菱 「広尾ガーデンフォレスト」(2007/2/23)
三井不レジ・日鉄興和・三菱地所レジ・首都圏不燃公社 麻布十番近接の2.5ha再開発(2020/9/19)
「麻布霞町」を超えるか 三井不レジ「パークマンション三田綱町ザ フォレスト」(2014/7/4)
歴史は繰り返す――バブルから何を学んだのか「広尾ガーデンヒルズ」分譲開始は坪251万円(2008/10/27)
コンドルが設計した「綱町三井倶楽部」を観た 三井デザインテックがセミナー(2015/10/22)
価格15億円以上 本物志向の白が基調 リスト「広尾」ホームステージングイベント
現地建物
リストグループのリストインターナショナルリアルティ(LIR)は4月28日、渋谷区広尾で販売中の住宅のホームステージングイベントを開催。高級外車のランボルギーニ、世界的アーティストのアートを展示するとともに、女性若手ソリストユニット「MUTIA(ミューティア)」による特別演奏も行った。イベントはメディアにも公開された。
物件は、東京メトロ日比谷線広尾駅から徒歩16分、渋谷区広尾3丁目の第二種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率300%)に位置する土地面積約247㎡(約74坪)、建物面積約328㎡(約99坪)。構造は鉄骨造3階建て。南西側幅員9.9m道路に接道。建設年月は令和元年6月。価格は15億円以上になる模様。
LIRは、オークションハウス「サザビーズ」を起源とする世界最大級の高級不動産ブランド「サザビーズ インターナショナル リアルティ®」の日本国内における独占営業権を取得後、世界70以上の国と地域に広がるネットワークを活用し、国内外の富裕層向け不動産売買取引を行っている。
2階エントランス
LDK
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現地は広尾駅からはややあるが、中層マンションやオフィスなど閑静な街並みを形成しており、東京女学館に近接。広尾ガーデンヒルズ、日赤、聖心女子大などにも近い。
1階はピロティ・駐車場(4台)と約81㎡の事務所。2~3階の住宅部分は5LDKで、カラーリングは壁や面材など白で統一。床は大判の磁器質タイルやナラ材を多用。2層吹き抜けのLDK天井高は約6.5mで広さは35畳大くらいか。リビングにはバイオエタノールの暖炉、キッチンシンクはディスポーザー機能付き。冷蔵庫はドイツリープヘル(LIEBHERR)製。鍵・レバーハンドルはウエスト。〝シンプル イズ ベスト〟-本物志向のオーナーの品格が伝わってくる。
価格は15億円以上とのことだが、その価値はあると見た。現地に近い広尾3丁目の地価公示は坪420万円(容積率150%)だが、現地は容積率300%なので単純計算するとざっと坪840万円で、土地代は約6.3億円だ。
1階事務所は見学しておらず、建物の建築費、内装費、設備費などはよく分からないが、坪300~400万円以上くらいではないか。建物だけで3~4億円だ。
土地代と建物価格を合計すると10億円くらいになり、都心部の眺望のいいマンションは坪2,000万円の事例も少なくないことを加味すると、オークションにかけたら20億円の値がついても驚かない。バブル期の最高値44億円を付けた「ドムス南麻布」の半値以下だし、やはりバブル期には「広尾ガーデンヒルズ」の中古は坪2,000~3,000万円もした。白が基調なのでどのような好みにも合わせられる。
システムキッチン(左が大型冷蔵庫)
トイレ(TOTO)と浴槽(これほど美しい浴槽は見たことがない。足がすくんだ)
屋上
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住宅価格を当てるのは得意だが、車のことはさっぱり分からない。猫に小判だ。展示されていたランボルギーニなる車は3,500万円で、最高価格のものは4億円と言われても、同業の記者の方が「僕の車の10倍」とため息をつこうと、「あっそう」という他ない。
それでも好奇心旺盛の小生は、「大丈夫、走りださないから」と担当者に勧められるままに運転席に乗ってみた。仰天した。座席といいフロントといいすべてが本革で覆われていた。ステッチはこの前見た三菱地所ホーム広報担当者のそれとは比べようのない微細な細工が施されていた。天井は人工皮革のアルカンターラとか。トランクにたくさんの皮見本(全部で60種)、ステッチ(全部で50種)が置かれていたのにもびっくりした。ドアを開けると地面に「Lamborghini」の文字が浮かび上がった。足元を照らすためだという。
ディーラー担当者によると、車はフルオーダーで生産するとかで、年間生産量よりオーダーのほうが多く、注文してから届くまで2年くらいかかるそうだ。需要が多いのは中国で、その次が北米。わが国は5番目だそうだ。
なるほど。車も金余りの世界経済を反映しているようだ。マンションと同じだ。二極化が進んでいる。車の減価償却期間は6年(マンションは47年)というのにもびっくりした。売れるわけだ。
ランボルギーニ
ハンドル(左)と機器類
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「MUTIA(ミューティア)」が演奏したのは「リベルタンゴ」「アメイジンググレイス」「パイレーツ オブ カリビアーン」。赤と黒の衣装も白い内装によく映えた。
演奏する「MUTIA(ミューティア)」