Sは10.5% 管理不全の恐れありDは0.5% マンション管理協 6.4万棟を仮評価
マンション管理業協会は3月30日、会員各社が受託するマンションを対象にした管理状態の仮評価調査結果をまとめ発表。建設年代が古いほうが管理に問題があることを調査結果は示している。
調査は、令和2年4月~12月にかけてアンケート形式で実施されたもので、回答会員社数は142社(会員社数358社)、回答総数は70,107棟(受託棟数118,386棟)。集計対象数は63,969棟(三大都市圏50,765棟、その他地域13,204 棟)。
仮評価ランクはS:特に秀でた管理状態、A:適切な管理状態である、B:管理状態の一部に問題あり、C:管理状態に問題あり、D:管理不全の恐れがある-の5段階で、調査の結果、全体評価ではS:10.5%(6,714棟)、A:54.6%(34,921棟)、B:27.3%(17,482棟)、C:7.1%(4,549棟)、 D:0.5%(303棟)となった。三大都市圏とその他の地域との差異はそれほど見られなかったという。
Sランクの年代別分布は、1979年以前:2.2%、1980年~1990年:10.9%、1991年~2000年:24.5%、2001年~2010年:31.8%、2011年以降:30.7%。Dランクの年代別分布は、1979年以前:30.4%、1980年~1990年:57.8%、1991年~2000年:7.9%、2001年~2010年:3.6%、2011年以降:0.3%。
1979年以前の6,790棟のS~Dの分布では、S:2.2%、A:39.4%、B:39.3%、C:17.3%、D:1.4%。
仮評価結果は、今後のマンションの管理の適切性が市場で評価される仕組みづくりのための基礎的データとなる。
トイレ紙1日使用量 男性3.5m 女性12.5m 年間排泄量15t 畢生のトイレ考Ⅱ
安藤忠雄氏の「神宮通公園トイレ あまやどり」(写真提供:日本財団)
前回は虚構の世界を中心に紹介したが、今回はトイレ専門家やジャーナリストが著した書籍をもとにトイレのあれこれを記す。
英「エコノミスト」誌の2008年ベストブックス選定図書に選ばれたローズ・ジョージ著・大沢章子訳「トイレの話をしよう 世界65億人が抱える大問題」(NHK出版)は世界のトイレ事情を知るのに参考になる。
建築家・芦原義信の秘書を10年間務めたという坂本菜子氏の「世界のトイレ快道を行く―コンフォートステーション1200件の実例から」(TOTO BooKs)は、外国30例、日本10例のトイレをカラー写真入りで紹介している。
平田純一氏著「トイレットのなぜ? 」(講談社)は、TOTOの専務を務められたいかにもトイレ専門家による説得力のある著作だ。えっ、そうなのと驚かされる事象が満載されている。
例えば尻ふき。紙が尻ふきとして使用されるようになったのは最近のことで、これまでは①指と水②指と砂③小石④土板⑤葉っぱ⑥茎⑦トウモロコシの毛⑧ロープ⑨木片⑩樹皮⑪布切れ⑫海草⑬雪などとある。
日本人男女1人当たりのトイレ紙の一日・年間消費量も紹介されている。平成6年度のデータでは男性は1日3.5m、年間で1,278m、21.3ロール、女性は1日12.5m、年間で4,563m、76ロール。消費するトイレットペーパーの長さは一日地球の22周分、年間で8,050周だそうだ。
五明紀春女子栄養大学教授が試算した人の一生(80歳)の総摂取量と総排泄量の数値も紹介されており、摂取量は水60トン、米6トン、小麦2.6トン、野菜7.5トン、卵3万7,000個などで、糞便は15トンとある。
中世の「シビン」では、「柄を持って前方から股の間に差し込み、大腿部で挟めば手を離しても落ちることはなく、立ったまま排尿できる。ベルサイユ宮殿の舞踏会やパーティなどに出席するときは、レディが一人で出掛けることなどはありえず…レディがもよおすと、召使いがそっと木製ケースからシビンを取り出し、レディは廊下の端などあまり人目につかないところで密かに済ませていたのではないか。もし立ったまま庭で排尿すれば、地面の状態にもよるが、尿は1メートル四方に飛散する。当時のスカートが大きく広がっていたとはいえ、裾が汚れることはまぬがれない…しかし、おまるやシビンの中身は、召使いがその場で庭に撒き散らしたのではないだろうか」と、面白おかしく論じている。
日本財団の「THE TOKYO TOILET(ザトウキョウトイレット)」プロジェクトの一つ「笹塚緑道公衆トイレ」を担当することになっている日本トイレ協会会長・小林純子氏編著の「心に響く空間―深呼吸するトイレ」(弘文堂、設計事務所ゴンドラとの共著)も面白い。
中でも、第Ⅱ部「トイレをめぐる対話」で、湘南ステーションビル平塚ラスカについて交通道徳協会会長・室賀實氏(元湘南ステーションビル社長)と同社元専務・佐竹明雄氏の対談は、あらゆる仕事にも共通する内容を含んでいる。書き出すとやめられなくなるので、最後の部分だけ紹介する。
室賀氏は、「コンセプトっていうのはデベロッパーが決めるもんじゃないんですよ。コンセプトっていうものは、結局土地のお客さまが決めるものだから、お客様にとって何が一番いいかというところに沿ってやっていくのが、駅ビルなりショッピングセンターなりのコンセプトにならないといけない。私たちは執事なんです」と語っている。
これに対し、佐竹氏は「トイレはその商業施設の経営哲学が結集した表現の場」とし、「メンテナンスはひとつの戦い。戦いは勝つか負けるかですが、トイレのメンテは果てしなき戦い。常に勝ち続けなくちゃいけない戦いなのです。負けたらアウト。これは経営の問題であり、社長ご自身の経営哲学の問題です」と返している。トイレを経営の問題と考えるのが凄いではないか。
TOTO「ウォシュレット 一体形ネオレストNX」(TOTO提供)
櫂 糞尿譚 陰翳礼讃 水琴窟 シカの糞…虚々実々 記者畢生のトイレ考(第1回)(2021/3/29)
安否確認イベントに過去最多65%参加 三菱地所レジ・コミュニティ 津田沼「奏の杜」(2021/3/14)
「美しい公衆トイレ発信できた」安藤忠雄氏/世界からオファー 日本財団PJ(2020/9/15)
素晴らしい槇文彦氏、田村奈穂氏、片山正通氏 日本財団 渋谷公園トイレPJ(2020/9/21)
〝駅なのか街なのか〟JR東日本最大規模の「グランスタ東京」8/3開業 トイレに注目!(2020/7/30)
マンション・戸建て トイレはTOTO、LIXIL、パナソニックがデッドヒート(2020/3/24)
デベロッパーも取り組んでほしい 「TOTO商品はすべてがユニバーサルデザイン」(2020/2/3)
東急リバブル 日本橋、松戸、上本町など売買仲介5店舗開設
東急リバブルは3月29日、新たな売買仲介店舗株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:太田陽一)は、4月1日(木)に売買 仲介店舗「日本橋センター」(東京都中央区)、「松戸センター」(千葉県松戸市)、「上本町センター」(大阪府大阪市)、「藤が丘センター」(愛知県名古屋市)、「博多センター」(福岡県福岡市)の5店舗を4月1日付で開設すると発表した。
5店舗はいずれも駅前ロータリーや大通り沿いに面するなど視認性の高い立地に位置する。今回の出店により、同社の売買仲介と賃貸仲介をあわせた全国のリバブルネットワークは202か所となる。
櫂 糞尿譚 陰翳礼讃 水琴窟 シカの糞…虚々実々 記者畢生のトイレ考Ⅰ
記者が一番好きな槇文彦氏「恵比寿東公園」トイレ(2020年9月撮影)
記者がもっとも好きな作家のひとり、宮尾登美子さんが亡くなってから7年が経過する(享年88歳)。1973年の第9回太宰治賞を受賞したデビュー作「櫂」には次のような衝撃的なシーンが描かれている。新潮文庫から引用する。
◇
喜和が息を詰めている目の前で、そのとき、一軒の門口から病み呆けているらしい老婆がよろよろしながら出て来たが、そこに立っている喜和に目をくれる気力もないのか、真直ぐ便壺の前に進んで行って、足を踏ん張り用便の構えになった。便壺の傍の竈には真黒な鋳物鍋が掛かっており、その下には枯れた小枝が白く枝なりに灰を残して通路にまで燃え退っている。
老婆は、年寄りらしい力ない小水の音をたてると、大儀そうに竈の下の火を繕ってからまた家の中へ蹌踉ながら入っていった。
喜和は、裏の姐さんには思わず目を伏せたけれど、今度はその場に釘付けになったまま、きっかり目を瞠いていた。
蟇痣のいっぱい浮いた、痩せた老婆の足のあいだから滴のように断続して落ちる小水、滴はその下に溢れた便壷から四方に飛び散り、煮物の鍋にも細かいしぶきになって降りかかった。用の終わり、たらたらと老婆の腿から脛を伝わった小水は、便壷から溢れ出た溜りの汚水に流れ込み、狭い通路を大雨の後のように濡らしている。老婆が紙の代わりに尻を振って着物を下したとき、垂れた股の肉が縮緬の袖を振るように小刻みに震えたことや、老婆がそのままの手で小枝を竈の奥へ突っ込み、さらには小水の散りかかった鍋の木蓋を摘んで、その丸い縁で鍋の中の煮物を均したことや、通路を引摺って入る老婆の、べっとりと濡れた着物の裾が和布のように裂け千切れていたことなど、それらのひとつひとつが退引ならぬしたたかさでもって、喜和は自分の目の中に打ち込まれる思いがした。
◇
このように微に入り細を穿つ女性の放尿シーンを描いた小説を記者は知らない。「4K」と呼ばれた「臭い」「汚い」「暗い」「怖い」不浄な「便所」を見事に活写している。
糞尿汲取業を描いた小説もある。昭和12年、芥川賞を受賞した火野葦平「糞尿譚」だ。笑えるようで笑えない悲喜劇小説だ。
主人公・彦太郎は30歳で糞尿汲取業を始めるが、やることなすことことごとく裏目に出て、政治家などの利権争いに翻弄される。ラストシーンは彦太郎の絶望的な悲しみが糞尿と共にぶちまけられる。青空文庫から引用する。
リヤカアの横にさしてあった長い糞尿柄杓を抜くと、彦太郎は唖然として見ている男達の中に、貴様たち、貴様たち、と連呼しながら、それを振りまわして躍りこんだ…貴様たち、貴様たち、と彦太郎はなおも連呼し、狂気のごとく、柄杓を壺につけては糞尿を撒き散らした。半纏男達はばらばらとわれ先に逃げ出した。柄杓から飛び出す糞尿は敵を追い払うとともに、彦太郎の頭上からも雨のごとく散乱した。自分の身体を塗りながら、ものともせず、彦太郎は次第に湧き上って来る勝利の気魄に打たれ、憑かれたるもののごとく、糞尿に濡れた唇を動かして絶叫し出した。貴様たち、貴様たち、負けはしないぞ、もう負けはしないぞ、誰でも彼でも恐ろしいことはないぞ、俺は今までどうしてあんなに弱虫で卑屈だったのか、誰でも来い、誰でも来い、彦太郎は初めて知った自分の力に対する信頼のため、次第に胸のふくれ上って来るのを感じた。誰でも来い、もう負けはしないぞ、寄ってたかって俺を馬鹿扱いにした奴ども、もう俺は弱虫ではないぞ、馬鹿ではないぞ、ああ、俺は馬鹿であるものか、…憤怒の形相ものすごく、彦太郎がさんさんと降り来る糞尿の中にすっくと立ちはだかり、昴然と絶叫するさまは、ここに彦太郎は恰も一匹の黄金の鬼と化したごとくであった。折から、佐原山の松林の蔭に没しはじめた夕陽が、赤い光をま横からさしかけ、つっ立っている彦太郎の姿は、燦然と光り輝いた。
◇
のっけから尾籠な話で申し訳ないが、紹介した「櫂」も「糞尿譚」も虚構の世界ではあるが、まったくの架空の話ではない。小生が小さいころは日常の世界だった。
「櫂」と同じようなシーンを目撃している。いわゆる女性の〝立ちション〟だ。5~6歳のころだったか。山の端から太陽が昇りかける朝まだき、田んぼの畔に腰を屈めたばあさんが何のためらいもなく着物の裾をからげ、用を足すと、小水は湯気を立てながらキラキラと黄金色に輝き、小さな弧を描いて田んぼに注ぎ込まれた。衝撃を受けたが、男は平気で立ちションしたから、それもありかと。
若い読者の方はご存じないだろうから、糞尿の肥料化についても触れてみたい。
江戸時代には「馬糞掻き」という職業があったように、牛馬の糞は肥料として人糞以上に重宝されていた。小生の実家でも牛を飼っており、牛舎から牛糞を集める作業を手伝ったことがある。人糞のような嫌な臭いはしなかった。それどころか、胸いっぱい吸い込みたくなるような芳醇な香りを放った。草や藁ばかり食べているからだろう。糞は敷き藁と混ざり合うことで発酵された。
発酵といえば、モンゴルの一般の家庭で作っている馬乳酒をもらったことがある。これが実においしい。牛乳や牛乳石鹸とも違う爽やかな香りがする。記者は〝処女の酒〟と名付けた。
匂いといえば、メジロもツバメも糞はあまり匂わないし、兵庫県相生市の小学生兄弟のカニ研究家によると、カニの糞は全然匂わないそうだ。記者はサザエの糞(内臓の部分)も馬糞ウニも大好きだ。
牛の話に戻す。ふすまや飼い葉など安上がりの餌(食事)に文句ひとつ言わず、田んぼを耕したわが家の牛は、年頃になると馬喰がやってきて売られていく。牛は屠殺場の匂いをかぎ取るのか、カッと目を見開き、四肢を踏ん張り、梃でも動かないぞと言わんばかりの姿勢を取るのだが、隣で肩を震わせる親父の意図を察したのか観念したのか、やがて尻尾を垂れてトラックに乗り込む姿を丑年の小生は何度も見ている。
人糞もまた貴重な田畑の肥料となった。便壷・甕から糞尿を桶に入れ、天秤棒を使って田畑に運ぶのはほとんど女性の仕事だった。
田の畔のあちこちにはその糞尿を一時保管する肥溜めが設けられていた。雑草が生い茂るとその所在は分からなくなり、小生は何度も肥溜めにはまったことがある。2018年に白水社から出版されたリチャード・フラナガン「奥のほそ道」(渡辺佐智江訳)には、虐待を受けたオーストラリア人捕虜が日本軍の強制労働収容所の「ベンジョ」で溺死する場面が描かれている。
何て人間は罪深い動物か。
◇ ◆ ◇
トイレを美しく描いた作品もある。今でも建築関係者のバイブルになっている谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」がその一つだろう。
谷崎は「日本の厠は実に精神が安まるやうに出来てゐる。それらは必ず母屋から離れて、青葉の匂や苔の匂のしてくるやうな植ゑ込みの陰に設けてあり、廊下を伝はつて行くのであるが、そのうすぐらい光線の中にうづくまつて、ほんのり明るい障子の反射を受けながら瞑想に耽り、又は窓外の庭のけしきを眺める気持ちは、何とも云へない」と記している。
谷崎が書いた昭和8年当時の「厠」(トイレは和製英語)は、高級旅館や豪邸にしかなかったはずで、庶民のトイレはみんな汲み取り式の4Kそのものだったに違いない。
とはいえ、谷崎が言うように「精神が安まるやう」な仕掛けは庶民の便所でも施されていた。
記者の田舎では、母屋と別棟の「便所」は「手水」(ちょうず)と呼ばれ、外には手水鉢が設けられることもあった。その上部に吊り下げられたタンクのひもを引っ張ると水が流れ落ち、手が洗える仕掛けだ。使用済みの水は、手水鉢から小石を敷き詰めた地面に流れ込み、ほどなくして得も言われぬ音を立てた。水琴窟だ。不浄な便所を浄化する装置だったのだろうか。
美しいといえば、皆さんは吉永小百合さんのレコード「奈良の春日野」をご存じか。〝鹿のフンフンフンフーン 黒豆やフンフンフーン 黒豆やフンフンフンフン〟というもので、確かB面だった。フンフンを連発しても美しく聞こえるのは吉永さんしかいない。
安否確認イベントに過去最多65%参加 三菱地所レジ・コミュニティ 津田沼「奏の杜」(2021/3/14)
「美しい公衆トイレ発信できた」安藤忠雄氏/世界からオファー 日本財団PJ(2020/9/15)
素晴らしい槇文彦氏、田村奈穂氏、片山正通氏 日本財団 渋谷公園トイレPJ(2020/9/21)
〝駅なのか街なのか〟JR東日本最大規模の「グランスタ東京」8/3開業 トイレに注目!(2020/7/30)
マンション・戸建て トイレはTOTO、LIXIL、パナソニックがデッドヒート(2020/3/24)
デベロッパーも取り組んでほしい 「TOTO商品はすべてがユニバーサルデザイン」(2020/2/3)
NTTUD、日土地、三井不など10社 6.5haの「内幸町一丁目街区」再開発に合意
NTT都市開発、公共建物、第一生命保険、帝国ホテル、東京センチュリー、東京電力パワーグリッド、日本電信電話、日本土地建物、東日本電信電話、三井不動産の10社は3月25日、令和元年に国家戦略特別区域会議で都市再生プロジェクトに位置付けられている「内幸町一丁目街区」のまちづくりの方針に合意したと発表した。
駅・まち・公園一体の都市基盤整備による開かれた街区の形成を図るほか、最先端技術を活用した国際ビジネス交流拠点の整備、高度防災・環境都市づくりを目指す。
該当するエリアは、それぞれ三井不動産、NTT都市開発、第一生命保険が主導する「北地区」(2.4ha)、「中地区」(2.2ha)、「南地区」(1.9ha)の合計6.5ha。北地区に位置する帝国ホテルは2030年度までにオフィス棟、2036年度まで新本館を整備する。中地区は2029年度までにオフィス、商業、ホテル、産業支援施設等などを、南地区は2028年度までにオフィス、商業、ホテル、ウェルネス促進施設などをそれぞれ整備する。
開発規模は、「六本木ヒルズ」(11ha)や「ミッドタウン六本木」(7.8ha)などには及ばないが、都心部では屈指の規模となる。
三菱地所「バスあいのり3丁目テラス」の課題/コンクリ打設工事 初めて見学
「バスあいのり3丁目テラス」
昨日(3月26日)、三菱地所が昨年9月に開設した都市と地方と生産者と消費者をダイレクトにつなげる屋外空間「バスあいのり3丁目テラス」を初めて自前で利用した。
場所は、新宿伊勢丹のすぐ裏。約70坪の敷地はオープンで、東邦レオが植栽を担当しているので緑にあふれ、新型コロナ禍で外食をやめた記者にとって願ってもない店だ。
これまでは、わざわざそこまで出かけるのもためらわれ利用していなかったのだが、昨日は年に1回の健康診断の日。「バスあいのり3丁目テラス」まで徒歩圏だったので行くことを前日から決めていた。
健診では頭だけでなく、血の巡りが悪くなる一方なので2度も採血され、聴覚調査では音はほとんど聞こえなかった。嫌なバリウムを飲まされる胃の検査では「ゲップしないで、ハイ、息を吸って、ハイ、止めて、そのままずっと」などと言われたので、ずっと息を止めたらこのまま楽に死ねるのか、そうなったら自死になるのか、検査する人は自殺教唆に問われるのかなどと馬鹿なことばかり考えた。
結果は昨年とほぼ同じ。糖尿はそのまま治療を続け、視力と難聴は直しようがないことを確認した。
健診から解放され、バブルのころまでは朝までよく飲んだ「新宿ゴールデン街」を通り「バスあいのり3丁目テラス」に着いた。
すぐ人気とかいう石巻のクラフトビール「巻風エール」と高知わら焼きカツオのスーパーフードサラダサラダを注文した。とてもおいしい。何しろ前日は一滴の酒も飲んでいない。五臓六腑に染みわたるとはこのことをいう。ビールを飲んでSDGs(いったい17項目の何番に該当するのか)に貢献できるのがいいではないか。
2杯目のビールを注文したら「SOBA DRY」(天童市)とあるではないか。とっさに「私は蕎麦が嫌い。あなたの傍ならいいが」とスタッフに告げたら、「いえ、蕎麦ではありません」(意味が通じなかったか)とやんわりといなされた。〆て3,000円くらいか。
課題も見つかった。タバコが吸えないのと、とにかくうるさいのだ。近くを走る新宿通りや花園通りの騒音は気にならないが、すぐ裏手のビルがのべつ幕なし〝ブーンブーンブーン〟とスズメバチのような音を立て、対面のビル工事現場(わがパソコンはビールとビルの区別がつかないのか、その都度スペルチェックを問う。〝ビルを飲む〟〝ビール工事〟などあるわけないではないか)ではキーン、ドドドッ、ガガガッ、バババッ…とこれまた休みなく耳障りな音をがなり立てる。店の中といえば、周囲の騒音を鎮めるのではなく、むしろ煽り立てる増幅するアップテンポの音楽が記者をいらいらさせる。
音楽など誰も聞いていない。「三菱地所と次にいこう」をエンドレスで流したほうがよっぽどいいと思うがどうだろう。それとも、敷地外の音をシャットダウンし、ウイルスも排除するテクノロジーは開発されないのか。
◇ ◆ ◇
オーライオーライ、ハイストップ ギギー レディガガー ブキューン ガー ブーン ンギャー ガリガリ…。
生まれて初めてオフィス建設工事中のコンクリ打設工事を見物した。「バスあいのり3丁目テラス」の隣だ。コンクリートミキサー車から吐き出される生コンはてっきりロボットがホースかなんかで注ぎ込むのかと思っていたがそうではなかった。総勢十数人の人が手作業で生コンをへらやスコップ、とんぼのようなものでかき出し、均していた。
ミキサー車からベルトコンベアーに移す際にこぼれだす生コンも相当量にのぼり、トレイに受けてそれを型枠にこれまた手作業で流し込む場面もあった。
この間30分。休む人など一人もいなかった。よくぞ休みなくへらやスコップ、とんぽを動かせるものだ(記者は4キロの鉄アレイを左右それぞれ30回上下させるのが限界)。みんな難聴にならないか心配になった。
ネットで調べたら、打設工事には清掃・型枠湿し(打設前・打設中)、打継部処理(ケレン・清掃)、打込み、敷き均し、叩き締め、バイブレータ掛け、荒均し、残コンクリート処理(こぼれ程度)、あと片付け・清掃(打設後)、生コン車場内誘導整理、打設工具設置手間(生コン車を除く)、打設後の散水養生…などの作業がある。コンクリート建築物の工事費が下がらないは当然だと思った。
人の声などほとんど聞こえないくらいうるさいのに、カラスの「バーカー」という鳴き声だけは難聴の記者に届いた。
◇ ◆ ◇
健診のために1日を棒に振ったが、ただでは起きないのが記者だ。都心の施設は音をどうして制御するか、工事現場の労働環境、労務費、機械化を考えるヒントを得た。
ヒメツルソバ
駅から7分で敷地60坪 素晴らしい フージャース「つくば吾妻」82区画 完売
「デュオアベニューつくば吾妻」
フージャースアベニューの分譲戸建て住宅地「デュオアベニューつくば吾妻」を見学した。つくばエクスプレスつくば駅から徒歩7分の公務員宿舎跡地に開発された全82区画で、1区画当たり敷地面積が約200㎡(60坪)以上の素晴らしい住宅地だ。
物件は、つくばエクスプレスつくば駅から徒歩7分、つくば市吾妻三丁目の第一種中高層住居専用地域、第二種住居地域(建ぺい率60/70%、容積率200%)に位置する全82区画。1区画当たりの敷地面積は約200㎡(60坪)以上で、価格は6,000万円台~8,000万円台。建物は2×4工法2階建て。施工・設計・監理はエステーホーム。販売代理はフージャースコーポレーション。
2018年から分譲開始され、すべて完売となった。
街並み
◇ ◆ ◇
取材を申し込んだのは、3月22日付でフージャースホールディングスが筑波大学建築デザイン専攻の学生アイデアを採用した3戸の住宅が完成したと発表したからで、プレス・リリースをコピペして書く記事に価値はないと判断し、そもそもこの住宅地がどのようなものか全然知らず、自分の目で確認するためでもあった。
現地は、つくば駅出口(A2)すぐの中央公園・中央図書館・美術館・つくばエキスポセンターを抜けた住宅地としては一等地。記者はつくば駅圏のマンションを10件くらいは取材しているが、このような低層住宅街が駅近にあるのは全然知らなかった。他の出口はみんな商業エリアだ。
住宅地にたどり着いたとき、その素晴らしさに圧倒された。何が素晴らしいかといえば、いかにも戸建て住宅街らしいゆったりしたオープン外構&電線地中化の街づくりだったからだ。最近見学するのは敷地が30坪、広くてもせいぜい40坪くらいのものばかりで、敷地が60坪もある最近の大規模住宅地は、小田急不動産の「南大沢」しか知らない。
ランドスケープデザイン・住戸デザインもいい。同社の戸建てのデザインが10年前くらいに一変したのはよく知っている。設計・施工を今回のエステーホームなど(他では津田産業)に切り替えたからだ。
街並みをみて、見学の目的の一つは達成された。今回を見逃していたら、ずっと知らないままになっていただろう。やはり記者は現場見学が大事だ。
中央公園
近くで咲いていたオオイヌノフグリ
◇ ◆ ◇
もう一つの見学の目的である学生さんのアイデアについて。これは、2018年、同大学芸術専門学群・建築デザイン演習および同大学院芸術専攻デザイン領域群・建築デザイン特別演習の一環として「住み継ぐ家」をテーマに企画・設計コンペを行い、39名の学生・大学院生の提案のうち優秀作3案を選び、その設計意図とデザイン提案を活かした住宅3棟を設計・施工したものだ。
最優秀賞に選出された染谷美也子さん(芸術専門学群3年生、当時)設計の「ハウス・オブ・プランツ」は、居間や食堂と庭の空間を一体としてデザインしたのが評価された。染谷さんの案は、東京建築士会開催の「第18回 住宅課題賞2018」の審査員賞である「高橋賞」を獲得している。
優秀賞に選出された安喜祐真さん(芸術専攻博士前期課程1年生、当時)設計の「土間のある家」は、玄関から台所にかけて土間空間を広く取った大胆なプランが、リュウ・T・ペニーさん(豪・クイーンズランド大学4年生・短期留学生、当時)設計の「本棚のある家」は、知的な仕事に携わる住民が多いと考えられるつくば市に建つ住宅ならではのアイデアがそれぞれ評価された。
この3戸のうち、染谷さんとリュウさんの提案住宅を見学した。安喜さんの提案を具現化した住戸はすでに入居済みで見学できなかった。
正直に書く。同社は不特定多数に売る建売住宅だから勇気がなかったのだろう。学生さんのプランは一部しか採用していないのは残念だった。
しかし、3人の方は悲観することなどない。みんな素晴らしいし、入選しなかった方も多分独創的な提案を行ったはずだ。入選することだけが目的でない。その過程が大事だと思う。
さて、「ハウス・オブ・プランツ」は、離れの子ども部屋(仕事場などにもなるはず)を提案しているのがいい。デベロッパーは良さを理解していても売れ残りを心配し採用するところは少ないが、記者はかつて、西武不動産が「所沢」の1億円以上の住戸に素晴らしい離れを採用したのを見学し、そのほかでもいくつか見ている。30坪の敷地では無理だが、この種のプランはもっと増えていい。
もらった資料では、染谷さんは2階に子供部屋とほぼ同じ広さの浴室を提案している。これは資料には記載がないだけで、浴室だけではないはずだ。何に使うのだろうか。
リュウさんの提案は記者も大賛成。家全体が書庫のようだ。しかし、リュウさん、造りつけの書棚を建売住宅で提案するわが国のデベロッパーはほとんど皆無です。どのような本を読んでいるか、人に知られたくない人もたくさんいます。これが課題だと思います。絵画、その他置物などにも対応できるといいと思います。
安喜さんの「土間」の提案は、ハスウメーカーやデベロッパーもよく行うプランだ。実際に建てられた住宅はリビング・ダイニングに面したところに「テラス」として設置されているので、安喜さんの意図とは少し違うのではないか。安喜さん、これも許してやっていただきたい。記者も「土間」は内と街や隣近所の人たちとの外を緩やかにつなぐ空間だと思っています。
リュウさんのアイデアを盛り込んだ住宅
安喜さんのアイデアを採用した住宅
大和ハウス 乱戦模様の投資用不動産事業に本格参入 新ブランド「ディーズバリエ」
大和ハウス工業は3月24日、投資用不動産として取得したオフィスビルや賃貸マンションなどの物件名称を新ブランド「D’sVARIE(ディーズバリエ)」とし、再生後売却する事業を展開すると発表した。
同社グループは2018年1月から、住宅事業ストックブランド「Liveness(リブネス)」を立ち上げ、既存住宅の売買仲介やリノベーション・リフォーム事業を展開しているが、オフィスビルや賃貸マンションなどの老朽化や空室増加、資産価値の減少などの社会課題を解決するため、不動産の選定・取得から建物の検査や品質管理、設計デザイン、工事までを実施。多様な既存不動産を市場ニーズに最適化させ、一棟まるごと投資用不動産として売却する事業を展開するとしている。
年間10棟、2025年度には売上高300億円を目指す。
◇ ◆ ◇
今回の新ブランドの立ち上げは、激戦の不動産再生事業に同社が本格的に参入するという宣言ではないかと記者は受け止めた。
先日(3月18日)、同社はオンラインで「記者レクチャー会」を開催したのだが、そのとき同社マンション事業本部事業統括部部長・角田卓也氏が「投資用の需要は、金融緩和の影響もあり、コロナ禍でも賃貸レジデンスの売買を中心に好調」と話したのに注目した。他のデベロッパーもコロナ禍でもあるにもかかわらず、投資用不動産事業が伸長しているからで、同社も乱戦模様のこの市場に割って入るのではないかと思った。
「D’sVARIE本郷ビル」
地価公示 コロナの影響受け6年振り全用途で下落 各社社長 コメント
全体では小幅の下落にとどまった 住友不動産・仁島浩順社長
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、入国規制や緊急事態宣言下の外出自粛等により、昨年前半は経済が停滞、後半は回復の兆候が見えながらも不安定な状況が続いた。
こうした中、商業地は国内外の来訪客が大幅に減少し、店舗やホテルなどの需要減退により三大都市圏を中心に大きく下落した。
一方、住宅地は在宅勤務などを機に住宅への関心が高まり、希少性の高い都心部や交通利便性に優れた近郊などで需要が堅調に推移し、全体では小幅の下落に留まった。
ハード&ソフト両面で高付加価値化 東急不動産・岡田正志社長
今回の地価公示では、全国の全用途平均は6年ぶりに下落に転じるなど、昨年までの地価の上昇傾向が全国的に広がっていた流れからは大きく変化した。用途別では住宅地は5年ぶりに、商業地は7年ぶりに下落に転じている。用途や地域によって変化の程度には差はあるものの、新型コロナウイルスの影響などで全体的に弱含みになっている。コロナ禍で商業施設や観光施設などが営業自粛や短縮営業をしたほか、消費者の外出自粛の影響による需 要の急減、そして外国人観光客の大幅減少による観光需要の激減が地価にも影響している。一方、「WITH コロナ」が続くなかで、テレワークやワーケーションなどの「新しい働き方」が広がるなどして、新たな需要も生まれている。
住宅地については中心部の希少性の高い立地や、交通利便性等に優れた近郊の地点では地価上昇が継続するなど、根強い需要がある。当社でもテレワークが増加している事実に着目し、共用部に個室型のワークブースを設けた「ブランズタワー所沢」、関西でも仕事場所として在宅ワークにも活用可能な「ユニットスペース」を初めて導入した「ブランズ大阪福島」など独自性の高い物件を展開している。オフィス家具大手のコクヨと連携して在宅勤務用のインテリアオプションの開発を進めるなど、「新しい生活様式」で求められる住まいを検討・導入している。
商業地では来街者の減少による商業施設やホテルの需要減退、そしてコロナ禍や景気の先行き不透明感などから全体的に弱含みで推移している。特に東京・銀座や大阪・心斎橋などの地価下落はインバウンド需要で地価が過熱気味だった場所がコロナ禍による需要喪失で修正されている一時的な現象と捉えており、「AFTERコロナ」の段階でインバウンドは復活し、これらの地域の地価は回復するとみている。また、近年、住宅地や商業地の地価上昇地点の上位に名を連ねている北海道・倶知安町では、当社グループはリゾート関連事業を展開しており、これまでインバウンド効果で地価が上昇を続けていたが、今回のコロナ禍でインバウンド需要が消失しても大きく地価が上昇した地点があった。これは「ニセコ」というこれまで培ってきた高いブランド力が高い評価を受け続けているためとみている。
オフィス関連では在宅勤務の広がりを受け、東京都心の代表的なオフィス街にある地点の地価が下落するなど影響が出ている。一部に「オフィス不要論」などの極端な意見も出ているが、組織全体の一体感を生み出す、社内外のあらゆる人と「コミュニケーションの活性化」ができるオフィスの存在は今後も必要不可欠であると考えている。そうした環境下、当社では緑の力に着目し、緑を効果的に取り入れたオフィスビルを開発・運営する「Green Work Style」を 推進しているほか、東京・竹芝に開発した最先端の都市型スマートビル「東京ポートシティ竹芝」ではリアルタイムデータと最新のデータを活用することなどで新しい都市型ワークスタイルを提案していく。また、このビルに本社を置く ソフトバンクとともに、最先端のテクノロジーを竹芝の街全体で活用するスマートシティのモデルケースの構築に取り組んでいる。また、従来型のオフィスに加え、都心オフィスのフレキシブルな利用を可能とする新サービス「QUICK (クイック)」を導入したほか、都内で展開している会員制シェアオフィス「ビジネスエアポート」の15店舗目を東京・田町に新設するなど、働く人のニーズに合わせた全方位型のワークプレイス提供を可能にし、オフィスの幅広い需要 に対応できるようにした。
当社が本社を置く東京・渋谷については多様な機能を持った街であり、その点を評価してIT関連などの成長企業が集積してきた経緯があり、現状、オフィス需要が極端に縮小するような懸念は抱いていない。2023年度竣工予定の「渋谷駅桜丘口 地区第一種市街地再開発事業」など、渋谷駅周辺を含む「広域渋谷圏」で新たな日常で求められるオフィス空間を提供していく。
今後の不動産市場については、国際情勢などのマクロ要因やコロナ禍の今後の動向などを注視する必要があるが、長期的な視点では市況を悲観的には捉えていない。中長期的には少子高齢化による単身世帯の増加や空き家問題、「働き方改革」によるオフィス環境の変化等、環境の変化が続くなか、ハードだけでなく当社グループの持つ幅広い事業領域を生かしたソフトサービスという付加価値を組み合わせて事業展開を進めていく必要があると考えている。
リアルとデジタル一体化街づくり推進 三菱地所・吉田淳一社長
令和3年地価公示は、全国平均では全用途で6年ぶりに、住宅地で5年ぶりに、商業地は7年ぶりに下落に転じた。国土交通省によれば、新型コロナウイルス感染症の影響等により、全体的に弱含みとなっているが、地価 動向の変化の程度は、用途や地域によって異なるとの見解が示されている。
先般、一都三県の緊急事態宣言が解除された。依然として先行き不透明な状況が続くが、新型コロナウイルス感染症との共存を踏まえながら、経済活動を着実に回復させていく必要がある。
当社グループにおいては、新型コロナウイルス感染症がもたらした本質的な変化を見極め、ポスト・コロナ時代のワークスタイルやライフスタイルに向けたまちづくりを推進していく。フレキシブルなワークスタイルに対応する商 品やサービスの拡充、個人や企業の交流が生むイノベーション・価値創造の追求、プライベートな時間を充実させる多様な目的をまちに用意、安心・安全とウェルビーイング(健康・快適・便利)を両立するサービス・技術の推進など、多様化するニーズに応える新たな価値を提案・提供していく。
また、上記取り組みを加速させる上で、新技術の導入や都市のデータ活用などDX施策を引き続き強化し、スマートシティの実現に向け、リアルとデジタルが一体となったまちづくりを推進していく。加えて、脱炭素などの国際的な課題解決にも積極的に取り組み、サステナブルなまちづくりを通じて、社会に貢献していく。
マーケットインの発想重視 野村不動産・宮嶋誠一社長
今回の地価公示では、全用途平均で6年ぶりに下落に転じた。ただし、変化の傾向・程度は用途や地域によって違いがある。都心部および近郊の交通利便性の高い住宅地や、地方主要都市では引き続き上昇が見られる一方、とくに国内外の来訪客増に支えられ地価が上昇してきた地域や飲食店が集積する地域では、比較的大きな下落が見られる。
住宅市場に関しては、新型コロナウイルス感染症拡大を背景とした雇用・賃金情勢等の先行き不透明感による需要者マインドの低下が懸念されたものの、価値観やニーズの多様化による新たな需要の拡がりもあり、新築・中古ともに堅調に推移している。都心・駅前立地への評価は依然として高く、供給量の少なさもあり価格が維持されているなかで、広さ・間数・環境等を求めてより外側のエリアへの動きも見られ、近郊エリアでも交通利便性・生活利便性に優れる 物件、郊外の戸建も非常に好調である。なお中古については好調に成約が進む一方で、今後に向けては在庫の不足が懸念される。引き続き市場環境を注視していく必要があり、より価値観やニーズの変化・多様化などに対応した商品の提案が求められる。
オフィス市場に関しては、空室率は少しずつ上昇しており、賃料については足元では大きな動きはないものの、コロナ禍による企業業績への影響の検証は継続していく必要がある。働き方の変容が進み、時間と場所を選ばないフレキシ ブルな働き方が可能な多様なオフィスが求められており、こうしたニーズに対応したオフィスの提案およびサービス提供が求められる。商業・ホテル市場に関しては、緊急事態宣言の影響もあり足元では厳しい状況が続くものの体験を伴うコト消費へのニーズは溜まってきており、需要の回復を注視したい。物流市場に関しては、高機能施設へのニーズ拡大継続を背景に、旺盛な投資意欲が継続するものと想定する。
コロナ禍での働き方の変容は、住まい方へも大きな影響を与えており、住む/働くだけではない新しい「住まい方」「働き方」が可能な場・サービスへのニーズが生まれている。社会や人々の価値観の大きな転換点にあって、当社は顧客や市場との対話を重視したマーケットインの発想で、DXを推進しサービスの高度化を図りながら、変わり続ける社会や顧客のニーズを的確に捉えた独創性の高い商品・サービスを生み出すべく、積極的な事業展開を続ける。
地価調査は、不動産の取引動向や中期的な展望を反映したものであり、様々なマクロ指標と合わせて今後も重要指標のひとつとして注視していく。
ZEH供給比率70%達成へ プレハブ建築協会 住宅部会 2020年度活動報告
プレハブ建築協会住宅部会(加盟20社)は3月23日、メディア向け2020年度の活動状況をオンラインで報告した。
「住生活向上推進プラン2020」の実績(9社)については、①住宅性能表示取得率は戸建て83.5%(目標85%)・共同住宅5.2%(同10%)②入居者アンケート総合満足度76.4%(同85%)③長期優良住宅認定取得率84.0%(同85%)④点検・修理等 履歴管理実施率92.0%(同100%)⑤ZEH供給率61.8%(同70%)⑥居住段階CO2排出量削減率45.9%(同70%)-などと目標を下回ったものの高い数値となった。
CS品質委員会の「信頼されるすまいづくりアンケート」調査結果では、「とても満足」33%(前回37%)と「満足」44%(同41%)を合わせ77%(同78%)となった。
環境分科会の環境行動計画「エコアクション2020(2011~2020年)」では、新築戸建てのZEH供給率を国の目標50%を大幅に上回る70%にしているが、7社全社が個社目標を達成すれば70%に達する見込みとしている(19年は7社のうち6社で個社目標を達成)。
ZEHの普及に伴い強化外皮基準を満たす戸建住宅の供給率が大幅に増加、高効率給湯器はほぼ標準化したほか、燃料電池の普及は前年同程度となり、やや頭打ちで、太陽光発電システムの設置率は2年連続で増加し、過去最高に迫る水準になり、HEMSは約6割、蓄電池も2割強の住宅で導入され、次世代スマートハウスへの進化が着実に進展したとしている。
工場生産に伴うCO2排出量は、2010年比▲8.5%(総量)となり、省エネ性能の向上に伴うCO2削減貢献量(累積)は排出量の約11倍となった。
このほか、住宅ストック分科会では、新しい生活様式へのリフォーム各社の対応について昨年8月と12月の2回ヒアリングを行い、新型コロナを経験したことで、潜在的なニーズを顕在化させる提案型リフォームに転換できるチャンスと捉えていることが報告された。
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へそ曲がりの記者は、以前から思っていることだが、嫌みな質問をした。CS満足度が77%に達しているのは結構なことではあるが、顧客は依頼に応えてくれると期待して発注するのだから満足度がそれなりの数値に達するのは当然だ。気になるのは回答率の低さだ。プレ協担当者は毎年50~60%と話したように、残りの顧客はどう考えているのか、むしろこの人たちから回答を引き出す工夫が必要だと思う。敢えて「不満」を引き出すようなアンケートに切り替え、その不満を解消する取り組みを行えば顧客満足度は飛躍的に増大するはずだ。
この質問に、ブレ協は新たな質問を検討していると答えた。期待したい。
もう一つ、「都内を中心に敷地規模が20坪以下の狭小住宅がものすごい勢いで増えている印象を受ける(住宅着工統計などでは戸建ての敷地面積については非公開)のだが、良好な住環境は担保されるのか危惧している。プレ協の会員は狭小敷地にも対応できるのか、データはあるか」の質問をした。
担当者は、「技術的には対応は可能だが、各社ともそれを売りにするような営業は行っていない」とのことだった。
この問題については、行政がデータを公表し、考えることができるようにすべきだと思っている。