第三者管理者方式 徴収額は月額1,000~2,000円/戸 マンション管理協
高松氏(左)と谷氏
マンション管理業協会(理事長:高松茂・三井不動産レジデンシャルサービス会長)は5月16日、恒例の記者懇親会を開催。マンション管理適正管理評価制度の登録件数は4,370件(3月末で4,180件)に伸びており、今年度末までの目標1万件にあと10か月で約5,600件に迫ったこと、同制度で★5つのマンションは、市場価格より11%のプレミアムが生じていると分析した横浜市立大学の公開シンポジウム傍聴レポートなどを報告した。
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記者は2点質問した。一つは同制度について。昨年6月の総会後の懇親会で、同協会副理事長・小佐野台氏(日本ハウズイング社長)が「一言だけ皆さんにお願いしたい。2年後のマンション適正管理評価件数を1万戸にするには、会員354社の管理件数の1割で達成できます。ちょうど1割、たった1割(爆笑、拍手喝采)で達成できます」と呼び掛けた。今年はどのような挨拶を予定しているか聞きたかったのだが、小佐野氏は欠席されていたので、「(壇上の)皆さんの中で目標の1割を達成された会員はいるのか」と。
事務局は「1割達成はいますが、登録しているのは348社のうち62社」と回答。高松梨状は「一般会員への浸透が課題。今年の総会では1堀を達成した一般会員を表彰して披露したい」と話した(これに★5つ制度を採用し、未達の★1つか2つの大手会員会社の社名を公表するのはどうだろう)。
もう一つは、第三者管理者方式について(理事の方もメディアの方も「第三者管理」と認識しているようだが、国土交通省の方針に従って「第三者管理者方式」に改めたほうがいい)。おおよそ次のように質問した。
「国土交通省は近くガイドラインを公表するが、同省のアンケート調査結果によると、この方式を採用している会社48社のうち60%が報酬の設定を行っていないと報告している。これは問題。テレビショップで〝今すぐ申し込めば配達料無料〟と呼び掛けているのと一緒。担当者の業務を管理会社自らが評価していないことで、(時間とお金がかかる)理事会を軽視するものではないか。それと、居住者はこの第三者管理者方式をどのように受け取ればいいか」
高松理事長は「当社(三井不動産レジデンシャル)は新築マンションに採用しているが、きちんとフィーを明記している。既存マンションへ採用する場合は1,000円以下/戸にしている。無料はありえない。居住者のメリットは〝時間をお金で買えること〟」と語った。
また、同協会副理事長・谷信弘氏(長谷工ホールディングス・長谷工コミュニティ代表取締役会長兼社長)は「当社グループも積極的に第三者管理者方式を採用しているが、居住者が気軽に意見や提案ができるアプリが好評。管理受託とは別会計で、戸当たり1,000~2,000円」と話した。
高松氏や谷氏の話から、大手はどんぶり勘定にしていないのは安心したが、第三者管理者方式には問題が山積している。
監査や利益相反規定があいまいだとか、議決を経ないで行うことができる発注額を定めていない、マンションに欠かせないコミュニティ形成にどう対応するかなどだ。
第三者管理者方式の1戸当たり月額報酬が1,000~2,000円、10年間で120万円というのは悩ましい額だ。マンションの規模や管理組合の規約にもよるが、だれも無報酬の理事会役員になりたくない。理事としての職責を全うできない、お金を払ってでもいいから他の人にやっていただきたいという人が現れるかもしれない。しかし、理事は権利であり義務だ。これをお金に換算して売買することができるのかという問題もある。
高松氏は居住者のメリットとして「時間を金で買える」と話した。けだし名言だ。三井不動産レジデンシャルの2023年3月期の分譲マンションの戸当たり単価は8,554万円だ。これくらいの額のマンションを買える人にとって月1,000円を払えば、理事会役員にならなくてもいい安心感がずっと担保されるのなら、お安いものだ。
しかし、時間をお金で買えない年金生活者が多数派を占める高経年マンションはどうなるのかの疑問もわいたが、それ以上の質問は控えた。管理組合に取材すべきことだから。
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協会事務局の配慮だろう。懇親会のレイアウトがこれまでと変わっていた。従来は縦長の短辺に理事の皆さんが並び、長辺に記者が並ぶというものだったが、それが逆転していた。おまけにマイクまで席に用意されていた。各理事と記者団の距離はぐっと縮まった。視力が眼鏡をかけても0.2で、耳が遠くなった記者はとてもいいと思った。
しかし、質問者は記者をはじめみんな高齢者。何を聞いているのかさっぱりわからない人もいた。マンションは二つの老い、つまり建物と居住者の課題を抱えるが、これにメディアの老いも加わった。足腰が弱っているのはわかるが、テレビや新聞報道を元ネタにした質問はいかがなものか。知らないから聞くのはいいが、どのような回答が返ってくるかわからないことを聞いてはならないのは記者の基本だ。事前にしっかり勉強して、問題提起できるようにすべきだ。
記者が第三者管理者方式について質問したのは、懇親会に参加された方はお分かりだろうが、大和ハウス工業が第三者管理者方式をテーマにした業界向け勉強会を開くので、メディアとしてどのようなことに注目すべきかを尋ねるためだった。報酬が1,000~2,000円/月というのは大きなヒントになるはずだ。長文だが、国土交通省のガイドラインを記者の方々も読んで勉強会に臨んでいただきたい。
レイアウトが変わった懇親会
オープンハウスGr 2024年9月期2Q 戸建ては増収も利益率低下し減益
オープンハウスグループは5月15日、2024年9月期第2四半期決算を発表。売上高6,027億円(前年同期比11.3%増)、営業利益557億円(同20.0%減)、経常利益583億円(同13.6%減)、純利益519億円(同16.8%増)と増収、営業・経常減益となった。
戸建て関連事業は、販売は計画通りに推移したものの、市中在庫の調整により売上総利益率の低下等の影響があり、売上高は3,275億円(前年同期比10.7%増)、営業利益は314億円 (同10.7%減)となった。
マンション事業は、物件引渡しが第4四半期に集中するため、当第2四半期引渡しを迎えた物件は多くはないものの、販売契約は順調に進捗している。売上高は55億円 (同79.1%減)、営業損失は19億円(前年同期は41億円の営業利益)となった。
2024年9月期は、売上高1兆3,000億円(前期比13.2%増)、営業利益1,240億円(同12.9%減)、経常利益1,200億円(同12.4%減)、純利益925億円(同0.5%増)を見込む。
〝わが国のイーロン・マスク育てよう〟B2B特化型エクイティ型プログラム 三菱地所
同社の丸の内スタートアップエコシステム概念図
三菱地所は5月14日、世界有数のアクセラレーターである米国シリコンバレーをベースとするAlchemist Accelerator LLCとのパートナーシップのもと、日本におけるスタートアップを対象としたアクセラレーションプログラム「Alchemist Japan」を今秋開催すると発表した。B2B(BtoB)分野特化型のエクイティ型(出資を伴う)プログラムとしてはアジア初上陸となる。
Alchemistは、B2B分野に特化したシードステージのスタートアップを支援するアクセラレーターで、650社以上の企業に投資し、60社以上のEXIT企業(M&AやIPOによる出口を迎えた企業)を輩出。優れた技術や世界を変えようとする志を持つスタートアップを対象としている。
三菱地所は、スタートアップ・エコシステムの形成に向け、丸の内エリアにおいて成長企業やイノベーションを生み出す拠点やイノベーションの創出を支援するプラットフォームを運営、新しい事業を生み育てるエコシステムに必要な多様なプレイヤーを巻き込みながら活動を展開しており、Alchemistの誘致を通じて一層のスタートアップ・エコシステム強化を図る。
また、内閣府の「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」や、東京都の「Global Innovation with STARTUPS」には海外VC・アクセラレーターの誘致がうたわれており、JETROが内閣府・経済産業省・東京都の協力のもと誘致を推進している。
「Alchemist Japan」第1回プログラムは、東京・大手町にあるビジネス支援施設「Global Business Hub Tokyo」で実施されるもので、ファンドからの投資、コーチング、メンタリング、レクチャー、および国内外のファウンダーネットワークへのアクセスが可能で、日本・シリコンバレーのベストマッチングを目指し、両地域のメンター、講師、事業者がスタートアップをサポートする。さらに、グローバルでの活躍可能性があるスタートアップのためのプログラムとして設計されており、準備が整い次第、自動的にサンフランシスコで開催される6カ月のプログラムへ参加可能となる。
募集開始は2024年6月1日(土)、締め切りは7月15日(月)。募集対象は日本発で世界をめざす日系スタートアップならびに世界各国のスタートアップ。募集者数は9~12社。出資額はAlchemist Accelerator Fund から1社あたり約100,000US ドル(予定)。プログラム期間は2024年9月から約3か月間(予定)。
記者会見(大手町フィナンシャルシティ グランキューブで)
協業各者
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記者は、すごいことが始まりそうだと胸ワクワク、押っ取り刀で駆けつけたのだが、会見場に現れた記者は10人いたかどうか。肩透かしを食らった。登壇したのは、三菱地所イノベーション施設運営部長・島田映子氏、日本貿易振興機構(ジェトロ)イノベーション部次長・樽谷範哉氏、Alchemist Accelerator創業者・CEOのRavi Belani氏、Managing Director for Alchemist Japanの眞鍋亮子氏。
4氏が話した中身はちんぷんかんぷん、さっぱりわからなかったが、Ravi Belani氏の英語は同時通訳で日本語に訳されたので、皆さんが何を言わんとしたかはほぼ完ぺきに理解した。わが国が世界の潮流に掉さすこともできず、よどみに浮かぶ病葉であるかを4氏は話した。B2B(BtoB)は圧倒的に遅れており、世界には通用しないこと、Alchemist Acceleratorが提供するプログラムは、わが国から世界に羽ばたこうとするスタートアップを資金面で援助し、わが国の「イーロン・マスク」を生み出そうというものだ。
島田氏(左)と樽谷氏
Ravi Belani氏(左)と眞鍋氏
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わが国経済社会はバブル崩壊をきっかけに転落した。「平成元年、日本経済は“山”の頂上にいた。当時の世界時価総額ランキング上位50社中、日本企業が32社を占めていた」(ダイヤモンド社)のに、今はトヨタ自動車1社のみだ。世界経済はすべてGAFAに支配されているといわれている。一方で、「ガラパゴス」としてわが国と国民は世界から嘲笑されている。
記者はそのことを20年近く前に身をもって思い知らされた。RBA野球大会の取材で中国に行った。北京大学と清華大学それぞれの付属小学校でわが国のRBA野球選手が小学4年生に野球を教えるプログラムがあった。記者は、つけ刃で覚えた中国語で生徒に語り掛けた。
生徒から何と答えが返ってきたか。「Do you not speak english」-全身から冷や汗が噴出した。負けたと思った。子どもたちは英語がペラペラだった。数年後の2010年、GDPは中国に抜かれた。いまはドイツにも追い越され、インドにも抜かれるのは必至という。
GDPだけが国力を測るモノサシだとは思わないが、世界に羽ばたけないのは、大陸に小エビのように反り返ってへばりつくわが国の地政学的な問題と、だからこそ生き残れたかもしれないガラパゴス=日本語だと思う。母語を大切にし、同時に英語、または中国語を日常的に話せるような教育が欠かせないと思う。
しかし、その一方で英語をすんなりと受け入れられない別の小生がいる。中学1年の最初の英語の授業だ。昭和24年生まれの小生はそのころ、ヒロシマ・ナガサキ・オキナワ・パンパンを知っていた。少し勉強ができたのか級長に祭り上げられた小生にに向かって英語の先生は「Stand up!」とだしぬけに命令した。わが国とわがクラスが馬鹿にされたように感じ、起立を拒否した。先生は激怒した。それ以来、英語=アメリカが嫌いになった。同時に、英語・アメリカコンプレックスから抜け出せなくなった。コカ・コーラの誘惑には負けたが、いまでもハンバーガーやフライドチキンはほとんど食べない。
4氏に聞きたい。「コケコッコー」はどうして「cock-a-doodle-doo」なのか、「光陰矢の如し」はどうして「time flies like an arrow」なのか。英語の擬音語は理解できないし、美しい大和言葉はどこの外国語に変換はできないと思う。タイ語はいいですよ。「こんにちは」は「触っていいか(サワッディー・カー)」です。その通り話したらタイの大学の学長からハグされた。
三井グループ25社売上88兆円「三井みらいチャレンジャーズオーディション」発表(2024/3/20)
「彩」「祭」「才」と「愛」をつなぐ三菱地所「SAAI(サイ)」新東京ビルに移転(2023/11/17)
スタートアップと大企業を結ぶイベントに2,100名「住友不動産ベンチャーサミット」(2023/10/25)
大和ハウス リブネス事業 買取再販軸に4000億円に拡大 事業用にも対応
大和ハウス工業は5月15日、業界動向勉強会(不動産ストック事業篇)を開催。住宅ストック事業ブランド「Livness(リブネス)」についてこれまでの実績、今後の展開などを説明するとともに、これまでの「住宅リフォーム」「買取再販」に加え、事業用物件にも対応する新ブランド「BIZ Livness(ビズ リブネス)」を同日立ち上げ、2023年度実績3,537億円を2026年度までに4,000億円に増やすと明らかにした。
「リブネス」は2018年1月、同社グループ全体で戸建て・マンション・事業施設を含む不動産の売買仲介・買取再販・リノベーションなどを行う事業として立ち上げたもの。持家を中心に新設住宅着工が減少する中、既存住宅のリフォーム市場は拡大しており、また新築マンション流通量を既存マンションの流通量が上回るなど伸びしろがあり、空き家の増加に伴う顧客の相談が増えているのに対応するのが狙い。現在、100人近くのリブネス専任スタッブが在籍している。
実績は年々増加しており、2023年度は売上高3,537億円を計上。うち住宅系が2,604億円(73.6%)で、建築系が933億円(26.4%)。内訳はリフォームが1,730億円、買取再販が1,425億円、その他が283億円、仲介が99億円。このうち買取再販はグループ全体で戸建て111棟(39億円)、マンション444戸(241億円)、同社単体では戸建て104棟(36億円)、分譲マンション23戸(8億円)。
今後は「リブネス」で培った再生ノウハウを事業・商業施設にも拡大するため「BIZ Livness(ビズ リブネス)」を立ち上げた。遊休資産の有効活用や収益性を高める施設への再生、工場⇔倉庫などにも対応する。第7次中期経営計画では、最終年度の2026年度までに「リブネス」と「ビズ リブネス」を合わせ4,000億円に増やす計画。
4,000億円のうち住宅系はほぼ横ばいの計画であることについて、同社東京本社経営戦略本部リブネス事業推進部部長・平井聡治氏は「マンションの買取再販は競争が激しく、無理をしないというこということ。リノベマンションで実績が豊富なコスモスイニシアが連結子会社から外れたのも大きな要因」と語った。
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買取再販は、参入障壁はほとんどないことからリーマン・ショック後に激増した。改修費に100万円、200万円をかけただけで、その数倍の利益を上乗せして販売していた業者は少なくなかった。「買取再販」という言葉を聞いただけで嫌悪感をもよおした。記事に責任が持てなかったからだ。
それでも、コスモスイニシアのリノベマンションだけは取材してきた。「コスモスイニシア」「リノベ」「RBA」で検索していただければ数十本がヒットするはずだ。なぜかといえば、同社は1戸1戸、手抜きせずコンセプトを明確にして販売してきたからで、新築マンションの商品企画を考えるうえでとても勉強にもなったからだ。
買取再販市場は今、どうなっているか知らないが、大手・中小が入り乱れ全員参加型の市場を形成しているはずだ。玉石混交市場だろう。
そんな市場に大和ハウスが力を入れるという。コスモスイニシアと激しい仕入れ競争を行うのかと平井氏の話を聞いていた。しかし、そんな展開にはならないようだ。平井氏は「これまでコスモスイニシアさんと一緒に仕事してきた。勉強もさせていただいた。これからもコスモスイニシアさんのレベルを確保していく」と語った。
平井氏の説明の中で〝さすが大和ハウス〟と感心したことがある。平井氏は、リブネス事業は環境・SDGs、ESGの観点からも重要な事業と話したうえで「断熱改修はしっかり行う。これは(芳井)社長の指示」と話した。
勉強会後に確認したら、断熱改修は戸建て対象で、マンションの単板ガラスサッシは共用部分なので改修は想定していないとのことだったが、二重サッシを採用して対応していくことに前向きな考えも示した。リノベマンションの課題の一つは断熱性能をどう引き上げるかだ。
驚愕!用賀12分敷地91坪、建坪52坪で25,800万円大和ハウス・リブネス戸建て(2024/5/15)
驚愕!用賀12分 敷地91坪、建坪52坪で25,800万円 大和ハウス・リブネス戸建て
世田谷区瀬田のリブネス戸建て
大和ハウス工業は5月15日、住宅ストック事業ブランド「Livness(リブネス)」のリノベーション戸建て工事がほぼ完了したのに伴う報道陣向け見学会を行った。東急田園都市線用賀駅から徒歩12分の第一種低層住居専用地域に位置する築17年の邸宅をリノベしたもので、土地面積は91坪、延べ床面積は52坪で、価格は25,800万円。レベルの高さと価格の安さに驚愕した。
物件は、東急田園都市線用賀駅から徒歩12分、二子玉川駅から徒歩16分、世田谷区瀬田4丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%、最低敷地面積80㎡)に位置する敷地面積303.57㎡(約91.82坪)、床面積:173.78㎡(52.56坪)。竣工は2006年10月(築17年)で、施工は桧家住宅。販売価格は25,800万円(税込)。
同社の家事シェアをコンセプトに、水回りを2階から1階へ集約し、家事効率を向上させるため回遊動線を確保し、外国人の購入も想定して純和風の6畳間を多目的に利用できるモダンな和風に、アクセントウォールに環境に配慮し再生材料アップサイクル材を多用しているほかは、既存の高級材のカバザクラ材の無垢フローリング、ウッドデッキ、現しの天井化粧梁、樹脂サッシなどはそのまま残しているのが特徴。
同社の本社からバスで移動したため、現地はよくわからかったが、周りの街並みなどから判断して土地代だけでも坪300万円(現地は幅員4mのいわゆる旗竿地なので少し安いはずだが)とはじいた。30坪で1億円だ。マンションなら坪単価650万円はすると考えた。つまり650×52坪=33,800万円だ。これに土地の広さ91坪を考慮したら、新築戸建ては4億円でも安いのではないかと予想した。
リノベなのでそこまでは無理としても、あまりにも価格が安いのに、「値段は記事に書きますよ。変更するつもりはありませんね」と念押しした。
驚いたのはまだある。同社東京本社経営戦略本部リブネス事業推進部部長・平井聡治氏は「土地価格は22,764万円、建物は2,760万円、消費税は276万円)。改修費は建物が1,600万円、外構が600万円の合計2,140万円」と明らかにした。外構にここまで経費をかける分譲戸建ては皆無だろう。
この現地見学会に先立ち、同社は業界動向勉強会(不動産ストック事業篇)を開催。平井氏が約1時間にわたって同社のリブネス事業のこれまでの業績や今後の展開などについて説明、質疑応答にも丁寧に応えた。この勉強会の模様は、機会を改めて紹介する。
リビング(床はすべて無垢のカバザクラ材)
アップサイクル材の壁
キッチン(床はカバザクラの無垢材)
階段室
既存の庭(手前はソメイヨシノ)
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エントランス(Before⇒After)
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ワークスペース(Before⇒After)
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和室(Before⇒After)
平井氏
明和地所 2024年3月期 増収減益/中期計画2027 パワーファミリー・富裕層向け強化
明和地所は5月13日、2024年3月期決算を発表。売上高712億円(前期比14.3%増)、営業利益49億円(同16.3%減)、経常利益39億円(同20.0%減)、純利益27億円(同37.0%減)と増収減益。分譲マンションの売上総利益率が前期比で低下し減益。2月に公表した通期修正予想を上回って着地。年間配当は40円(前期45円)と減配。
分譲マンションの引き渡しは804戸(前期比64戸減)で、売上高は494億円(同6.6%増)、セグメント利益は42億円(同22.7%減)。
流通事業は、中古マンションの買取再販173戸(前期比59戸増)の引渡しを行ったことなどから売上高152億円(同60.0%増)、セグメント利益は5億円(同123.7%増)となった。
2025年3月期は売上高790億円(前期比10.9%増)、営業利益47億円(同5.5%減)、経常利益36億円(同9.8%減)、純利益25億円(同10.1%減)を見込む。分譲マンションは通期売上計画500億円に対し8割が契約済。
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同社は同日、2025年3月期から2027年3月期までを計画期間とした「中期経営計画2027」を公表。27/3期に売上高880億円、営業利益55億円、経常利益41億円を目指す。
分譲事業は、首都圏の世帯年収1,000万円以上の共働き世帯と富裕層の世帯数が5年で1.4倍に伸びていることなどから、好立地に厳選した仕入れ手法の多様化や建て替えへの取り組みを強化する。
流通事業は、27/3期に売上高337億円を目指す。買取再販は、分譲事業と同様に好立地の仕入れに注力し、上質なリノベーションを行い、パワーファミリー・富裕層向け販売を強化する。
フージャースHD 2024年3月期決算 増収増益 不動産開発、CCRCなど順調に推移
フージャースホールディングスは5月14日、2024年3月期決算を発表。売上高864億円(前期比9.0%増)、営業利益89億円(同6.1%増)、経常利益75億円(同4.4%増)、純利益48億円(同5.5%増)と増収増益。主力の不動産開発事業に加え、CCRC事業の利益率の向上、不動産投資事業の売却棟数の増加によって、中期経営計画(対象期間:2022年3月期~2026年3月期)に対し、順調に推移した。
不動産開発事業は売上高508億円(前期比1.9%増)、営業利益41億円 (同35.2%減)。分譲マンション経常戸数は1,066戸(同80戸減)、シニア向けは256戸(同31戸減)。
CCRC事業は、シニア向け分譲マンション「デュオセーヌ横浜川和町ガーデン」などの引き渡しにより売上高120億円(同8.2%減)、営業利益21億円(同40.6%増)。
2025年3月期は売上高970億円(前期比12.2%増)、営業利益94億円(同5.1%増)、経常利益80億円(同5.3%増)、純利益51億円(同6.1%増)を見込む。年間配当は58円(前期は55円)と増配を予定。
飯田グループHD 2024年3月期 売上高は前期並みも利益半減 戸当り営業利益146万円
飯田グループホールディングスは5月14日、2024年3月期決算を発表。売上高1兆4,391億円(前期比0.0%)、営業利益591億円(同42.2%減)、当期利益556億円(同47.8%減)、純利益372億円(同50.8%減)と、売上高は前期並みだったが、営業利益率が4.1%(同3.0ポイント減)となるなど利益はほぼ半減、1戸当たり営業利益は146万円。
戸建て分譲事業は、販売棟数は前年同期比で333棟減の40,493棟で、平均価格は3,006万円で前年同期比39万円増/棟となった。期末未契約在庫数は24,639棟。
マンション分譲事業は、販売戸数は計画1,900戸に対して160戸減の1,740戸で、平均販売価格は前年同期比65万円/戸増の3,964万円。売上総利益率は21.2%で前期比0.3ポイント増。
2025年3月期は、売上高1兆5,490億円(前期比7.6%増)、営業利益752億円(同27.1%増)、当期利益440億円(同18.3%増)を見込む。年間配当は90円(前期は90円)と据え置きを予想。
中期的な事業環境に対する認識として、国内における戸建分譲事業は、従来の主要ターゲット層が減少傾向にあり、限られた市場を競合企業と奪い合う厳しい事業環境が続くものと認識、2030年3月期をターゲットとして、従来の戸建分譲事業中心の経営指標から、資本収益性を意識しつつ、事業ポートフォリオの拡大を推進するための経営指標に切り替え、収益構造の変革を図るとしている。
環境、都市、住宅、税制への取り組みに重点 不動産協会・吉田理事長
吉田氏(ザ・オークラ東京で)
不動産協会は5月14日、第64回定時総会後に懇親会を開催し、吉田淳一理事長は次のようにあいさつした。
本日は、ご多忙中にもかかわらず、日頃からご支援、ご協力をいただいております関係省庁や友好団体、報道関係の皆様、多数のご出席をいただき、誠にありがとうございます。まず本日、当協会の定時総会が滞りなく終了いたしましたことをご報告させていただきます。
さて、わが国の経済は、緩やかな回復基調にあり、賃上げの実施に伴う経済の好循環の実現が期待されますが、ウクライナやパレスチナ紛争の長期化、インフレの進行、金利の上昇傾向、海外経済の下振れ懸念など、先行きについては不透明な状況にあります。
また、能登半島地震は甚大な被害をもたらしたことから、防災への取組の重要性を再認識させました。安心・安全なまちづくりの一層の加速が求められます。その一方で、少子化・人口減少といった構造的な問題にも直面しており、少子化対策は喫緊の課題です。GXやDXの取組が官民を挙げて推進される中、様々な社会課題の解決を経済成長のエンジンに変え、イノベーションの創出により我が国の国際競争力を高めることが重要です。
こうした観点から、今年度は以下の活動に重点的に取り組んでまいります。第一に、環境政策に関する取組です。2050年カーボンニュートラル達成に向けたサステナブルなまちづくりに取り組んでまいります。そのために、排出削減・経済成長の両立の更なる加速、GXの推進、並びに、新たな課題解決への共創を後押しする環境整備を図っていきます。
そうした中で、省エネへの取組深化、再エネ利用への取組加速・課題解決、まちづくりGX推進への取組支援及び中高層建築物における木材利用の普及促進、ネイチャーポジティブ、サーキュラーエコノミーといった新たな社会課題への対応促進などを図ってまいります。
第二に、都市政策に関する取組です。都市再生の推進により、レジリエンスの強化とともにまちづくりGX及びDXを加速させ、国際競争力の向上を図ることが重要です。まずは多様な災害に対し、都市の強靱化のための施策を検討するとともに、ハード・ソフト両面での取組を進めます。
また、質の高い都市緑地創出の推進や、面的エネルギーネットワークの支援促進とともに、都市の魅力を高める多様な機能集積を図ります。さらに、建築費が高騰しており、再開発などの重要な都市再生プロジェクトが頓挫する懸念がありますので、支援の拡充が求められます。
第三に、住宅政策に関する取組です。多様化する住宅ニーズに対応する環境性能に優れた良好な住宅ストックの形成を目指します。災害に対して安全安心で持続可能な住まいを目指し、耐震・防水性能の向上に取り組みます。
老朽化したマンションの建替を促進するために、マンション建替え円滑化法の改正に関連する諸課題に対応します。併せて、良質な住宅ストックの形成のために、適切な管理の実現を図ります。少子化などの社会課題に対応し、子育て世帯などへの支援措置の充実に取り組んでまいります。
第四に、税制改正に関する取組です。住宅ローン減税等の重要な項目に加え、GXやDXの加速やイノベーション創出、経済社会構造の変化などに伴う課題に対応した政策推進に関連し必要な税制の検討を行い、令和7年度税制改正要望をとりまとめます。
その上で、要望の実現に向け、必要なデータを的確に収集し、効果的かつ機動的な活動を行っていきます。
その他、不動産業の事業環境の向上を図るために、国際化への対応や物流が抱える課題への対応など、幅広く必要な活動を行っていきたいと考えています。
不動産協会としては、これらの活動を通じ、魅力的なまちづくりや豊かな住生活の実現、さらには我が国経済の成長に貢献していきたいと思っております。
本日ご参集の皆様方に、引き続き当協会へのご支援・ご指導をお願い申し上げまして、私のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
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吉田理事長のあいさつを聞いてうれしかったのは「質の高い都市緑地創出の推進」を掲げられたことだ。同協会の新年会や懇親会は欠かさず取材しているが、「都市緑地創出」に言及されたのは初めてではないか。
吉田理事長としばし歓談した。話はSDGsのバッジに及び、記者と同じ木でできたバッジはどこから入手したのか聞いたところ、MEC Industryが端材を活用して制作したものだという。同社が設立されたのは2020年1月なので、胸にこのバッジをつけられたのはそれ以降のはずだ。記者は2020年1月にAQ Group(当時アキュラホーム)から頂いてからつけている。ほぼ同じころからか。
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前不動産協会理事長で三井不動産代表取締役会長・菰田正信氏ともしばし話し合ったが、菰田氏のすごさを改めて知った。同社の「決算数字は非の打ちどころがありませんが、昨日決算発表があったケイアイスター不動産の1戸当たり営業利益はいくらだと思いますか」と聞いたところ、「100万円」と菰田氏は答えた。同じ質問を同社広報担当者にした。「1,000万円」の答えが返ってきた。
正解は150万円。菰田氏はケイアイスターのことはわからないはずだが、当たらずとも遠からず。広報担当者は大外れで、「勉強不足」と恥じたが、そんなことはない。同社のマンション、戸建ての1棟当たり単価は8,000万円を超える。営業利益率を最低10%とすれば1,000万円予想はありうる答えだ。
これは、世の中を鳥瞰的にみている経営者と、与えられた役割を果たそうとするスタッフの違いだ。
乾杯の音頭を取った菰田氏
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もう帰ろうと思っていたころ、「牧田さん」と声をかけられた。伊藤忠ハウジング取締役経営管理グループ長兼監査課長・西健悟氏だった。RBA野球大会で面高さんや杉山さんが活躍していたころの監督さんだ。
伊藤忠ハウジングがんばれ!西さんをドームに連れていけ!可能性は低いが、ゼロではない。
西氏
再開発進む大山駅圏で普通借地権付き 単身者・DINKSに照準 タカラレーベン
「レーベン板橋大山ART BLANGE」
タカラレーベンが分譲中の「レーベン板橋大山ART BLANGE」のモデルルームを見学した。東武東上線大山駅圏は大規模再開発タワー・定借マンションが相次いで供給されており大激戦だが、この物件は普通借地権で相対的に価格が安く、単身者・DINKSをターゲットにした商品企画が奏功。販売は順調に進んでいる。
物件は、東武東上線大山駅・中板橋駅から徒歩8分、板橋区仲町の第一種住居地域(建ぺい率60%、容積率254.52%)に位置する6階建て全32戸。専有面積は57.27~71.72㎡、5月半ばに分譲予定の第1期3次(戸数未定)の予定価格は5,600万円台~7,900万円台(最多価格帯6,500万円台)、坪単価は約330~340万円。竣工予定は2024年8月下旬。施工は丸運建設。デザイン監修はウイ・アンド・エフ ヴィジョン石倉雅俊氏。
4月下旬に販売開始した第1期10戸は完売。これまでの来場者数は150組。
現地は、ハッピーロード大山商店街を中心に再開発進んでいるエリアから一歩入ったところ。物件は2075年1月末まで期間52年の普通借地権付きで、底地権者は乗蓮寺。建物は内廊下方式を採用、敷地南側は同じレベルの建物が隣接していることから、住戸は東向きと西向きが中心。角住戸比率は65%。北側斜線制限を利用したルーフバルコニー付き6戸や専用庭付き4戸など20プランを用意。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2400ミリ、食洗機、床暖房、浴室タオル掛けなど。
同社マンション事業本部首都圏・中部支社 営業推進部 第4営業部次長・橋本勝成氏は「販売は極めて順調に推移しています。底地権者の乗蓮寺さんは、当社の本社があった中板橋のときからお付き合いがあるお寺。よほどのことがない限り契約を更新して住み続けられること、相対的に価格が安いこと、逆に規模が大きくないこと、池袋に6分と近いことなどか単身者やDINKSに評価されています」と話した。
モデルルーム
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橋本氏と初めてお会いしたが、旧知の仲であるように打ち解けた会話を交わすことができた。身長186センチの長身で年齢は41歳。自ら「原チルドレン」と紹介し、広報担当者は「トップマネージャー」と補足した。
「原」とは、同社取締役兼常務執行役員マンション事業本部 東日本支社長の原忠行氏のことで、記者は20~30年前、島田和一社長(当時は常務か)に「うちのトップ営業マン」と紹介されたのを覚えている。その「原チルドレン」というくらいだから、人の心をたちどころにつかむのは天性のものか、原氏の後釜を狙っているのか。橋本氏は、「大山」の次に分譲する「与野」の物件も担当しており、話を聞いているので1週後には紹介したい。
モデルルームは、同社の〝十八番〟でもある派手なものだった。しかし、以前と比べて角が取れており、見学者は最初は驚くだろうが、そのうちに受け入れられるはずだ。この種の〝非日常〟の演出はどんどんやったほうがいい。
橋本氏には、この〝タカラモデル〟を開発したのは、〝レディー・ガガ〟こと同社取締役兼執行役員事業開発推進室 室長・高荒美香氏であることを話したのが、橋本氏は入社したてのころか知らなかった。第一弾の「巣鴨」をはじめ、これまで〝レディー・ガガ〟を5~6回紹介した。アクセス数はトータルして3万件に達している。「大山」や「与野」よりはるかに多いはずだ。一つだけ記事を添付する。〝業界のレディー・ガガ〟を知らないのは〝もぐり〟だ。高荒氏は新しいビジネス開発を担当しているそうだ。いつ発表されるのか。楽しみだ。
外観デザインはモノトーンが基調で、南側は壁のように屹立し、北側は斜線制限を生かした段状としている。その対比が面白い。これは石倉氏によるものだろう。
模型(北側)
模型(左が東側、右が南側)
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