2台駐車可能のガレージ付き163㎡ 大成有楽不 富裕層向け賃貸「白金長者丸」
「UNUS.白金長者丸」
大成有楽不動産は4月23日、富裕層向け高級賃貸マンションの新ブランド「UNUS.」(ウヌス)の第一弾「UNUS.白金長者丸」のメディア向け見学会を行った。目黒駅から徒歩5分の邸宅街として知られる1低層に位置する、2台駐車可能な専用ガレージ付き163㎡など全16戸。車を運転しない記者は唖然、茫然するほかなかったが、価格25億円の「グラングリーン大阪」の事例もあるので、お金持ちには支持されるのだろうと思った。
物件は、JR・東急目黒線・東京メトロ南北線目黒駅から徒歩5分、品川区上大崎二丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率150)に位置する敷地面積約1,053㎡、地下1階地上3階建て全16戸。専用面積は58.68~166.66㎡。坪賃料は2万円台~。竣工は2025年5月。設計・監理は陣設計。施工は北野建設。
「UNUS」はラテン語で、「ひとつの」「唯一の」意味。「UNUS.」には「日常(USUAL)」と「非日常(UNUSUAL)」の狭間にある唯一無二の特別な空間を提供する想いが込められている。
現地は、閑静な邸宅街の一角。道路を挟んだ敷地南側は大田区の「みどり大賞」受賞している賃貸マンション、北側は大建ドムスとともに高額マンション〝ペアシティ〟として知られた東高ハウスが売主で、施工が竹中工務店の1993年竣工の「ミュゼ白金長者丸」23戸。
専用面積163㎡の住戸のプライベートガレージは広さ約47㎡。床は石張り、電動シャッター、空調機、スロップシンク、電気自動車充電器付き。居室の中から車がみえるようにしている。このほか120㎡台のメゾネット4戸など100㎡超は10戸。
主な基本性能・設備仕様は、リビング天井高2620ミリ、ZEH-M Oriented、フィオレストーンキッチン天板、食洗機、食器棚、親子ドア、ナグリ調ドア仕上げ、タンクレストイレ、幅800ミリトイレドア、天カセなど。
同社投資開発本部投資開発事業部 事業室(第一)係長・野澤徹氏は「2014年に賃貸マンション事業を開始してからこれまで約30棟の実績を積み上げてきましたが、新シリーズはピン立地の唯一無二の立地にふさわしい富裕層向けとしました。大型ガレージ付きの賃貸は希少性が高く、内覧の予約が約10件入っています」と話した。
プライベートガレージ(完成予想図)
プライベートガレージ付き住戸のエントランス
◇ ◆ ◇
現地に着いたとき、40年近く昔のバブル発生の頃の出来事が蘇った。現地の少し先に1987年竣工の5階建て「ヴェラハイツ目黒ガーデン」79戸があるが、公庫融資対象外だったため、ほとんどの住戸を不動産業者が買い占めたのを取材したことがある。坪単価は1,000万円を超えていたはずだ。
今回の物件は、目黒駅から徒歩5分の1低層だ。分譲マンションが取材フィールドの記者は土地を見るとマンション価格に置き換えるのが習い性になっている。すぐ単価を予想した。最低で坪1,500万円と評価したのだが、ガレージ付きは希少価値を考慮して坪1,800万円、グロスで8.9億円とはじいた(もっと高いか。坪2,500万円もありうる)。不動産鑑定士(後で知ったのだが)の野澤氏は笑うだけで何も話さなかったが、瞬時に頭の中でそろばんをはじいていたはずだ…〝狂乱地価〟は始まったばかりだ。少なくともこれからの数年間、不動産鑑定士のそろばんは役に立たない時代がやってくると記者は考えている。アッ、肝心のガレージ付きの賃料を聞き忘れた。〝8.9億円で購入したい〟人が現れたらどうするのだろう。破格の値で売るのか、低い賃料で貸すのか、難しい選択だ。
エントランス(正面は世界最高級のスウェーデン産の黒御影石のモニュメント)
女子大近接する高台一等地大成有楽不学生賃貸「文京護国寺」満室稼働へ(2025/2/27)
〝ぶっ飛んだみどり〟だけでない「グラングリーン大阪」タワマンに絶句(2023/10/23)
今後の市場動向を測る試金石&ベンチマーク 1低層の大型 阪急阪神不「荻窪」99戸
「ジオ荻窪」
阪急阪神不動産が5月上旬に分譲する「ジオ荻窪」99戸の現地を見学した。駅からの商業エリアを抜けた1低層に位置する大規模物件で、善福寺川に隣接。意匠設計に著名な会社を起用するなど、首都圏初の常設総合マンションギャラリー開設の第一弾にふさわしい意欲的な物件だ。価格次第で圧倒的な人気を呼ぶ可能性があると見た。
物件は、JR荻窪駅から徒歩12分、杉並区荻窪二丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率41.69%、容積率99.98%)に位置する敷地面積約7,013㎡、4階建て全99戸。5月上旬に分譲する第1期(戸数未定)の専有面積は54.93~84.61㎡、価格は未定。竣工予定は2026年3月下旬。売主は同社のほか相鉄不動産。販売代理は阪急阪神不動産。施工はファーストコーポレーション。設計・監理・デザイン監修は長谷建築設計事務所。
現地の従前は企業社宅。敷地北側は善福寺川、南側は区立中学。三方に接道。建物はコの字型の3棟構成で、ZEH-M Orientedのほか「いきもの共生事業所認証(ABINC認証)」を取得済み。
住戸棟から独立した木造のエントランス棟を設計した三井ホーム、地元産材のブナの木工家具などで知られる飛騨産業、業界に先駆け照明器具のLED化を実現した遠藤照明、わが国を代表するランドスケープ企業の石勝エクステリアなどとコラボしているのも特徴の一つ。
完成予想図
完成予想図
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この記事は、先日書いた同社の常設総合マンションギャラリー「ジオ ゲストサロン 新宿」の記事と一緒に読んでいただきたい。その記事では「ジオ荻窪」の分譲単価予想は坪700万円としたが、現地をみて同社はそこまで高値追及しないと読んだ。
駅からの大半は1低層の住宅街というのはいいのだが、一休みしてタバコを吸い、酒を飲んだりする飲食店やカフェなどがないのは難点だ。(都市計画法34条1号店舗と同様、1低層での用途規制は緩和すべき)
しかし、商品企画には相当力が入っており、同社の首都圏での記念碑的物件になると確信した。設計・監理・デザイン監修は長谷建築設計事務所のほか、それぞれの分野のプロを起用していることにそれが読み取れる。
長谷建築設計事務所のホームページに紹介されているマンションの作品の中で記者が見学取材したのはモリモト「ディアナコート浜田山」のみだが、素晴らしいマンションだ。記事を添付したので読んでいただきたい。
基本性能、設備仕様レベルも、サロンで見学した通りだろうから間違いなく水準以上だ。細かいことだが、トイレドアノブは壁面まで後退させており、浴室タオル掛けも2か所ある。住戸プランは平凡な田の字型でなく、横入り玄関タイプが多い。これも強調材料だ。
価格がいくらになるか、売れるか売れないか、今後の市場動向を測る試金石でもありベンチマークになる可能性を秘めたマンションだと思う。
現地
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同社は4月22日、これからの100年間も「お客様から真っ先に選ばれるサービスや体験」を提供し続けるデベロッパーとなることを目指す「DXビジョン」の具現化の一つとして、新たなプロジェクトチーム「FUTR LABO」を同日設立したと発表した。
今年度の主な取り組みは①ウェルビーイング×オフィスワーカーアプリの実装検討②ビッグデータ×不動産で未来を創る商業施設とオフィスのバリューアップへの挑戦③インバウンド×長期滞在 滞在価値を革新する次世代住環境プロジェクトの3つ。
あふれる本物の緑デジタル技術駆使した仕掛けも阪急阪神不新宿に常設モデル(2025/4/17)
自社社宅跡地公園借景取り込むプラン秀逸旭化成不レジ「荻窪大田黒公園」(2018/1/19)
三菱地所レジ他「武蔵小杉」反響1万件超 うち7割は都内 26日からモデルルーム案内会
「ザ・パークハウス武蔵小杉タワーズ」
三菱地所レジデンスは4月22日、東京建物、東急、東急不動産(事業比率は非公表)とともに開発を進めている武蔵小杉最大級の50階建て2棟1,438戸の免震タワーマンション「ザ・パークハウス武蔵小杉タワーズ」のメディア向け内覧会を行い、モデルルーム事前案内会を4月26日(土)から、販売は8月から開始すると発表した。建築家・隈研吾氏がデザイン監修を務め、「大地から生える二本の大樹」をコンセプトにした「まち一体型複合開発」として整備するのが特徴。物件エントリー数は10,000件を突破しており、人気を呼ぶのは必至だ。
物件は、JR・東急東横線武蔵小杉駅から徒歩3分~4分、川崎市中原区小杉町一丁目の第一種住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する敷地面積約20,172㎡、50階建て〈サウス〉719戸と〈ノース〉719戸の合計2棟全1,438戸。〈サウス〉の専有面積は44.07~136.04㎡、価格は未定。販売開始は2025年8月下旬。竣工予定は2027年9月下旬。〈ノース〉の専有面積は44.07~133.64㎡、価格は未定。販売開始は2026年2月。竣工予定は2028年5月中旬。施工はフジタ。デザイン監修は隈研吾建築都市設計事務所。フューチャリティ、内原智史デザイン事務所なども参画している。
現地の従前は、日本医科歯科大学武蔵小杉キャンパスで、「小杉駅周辺まちづくり推進地域構想」に基づき再整備されるもの。全体をA・B・Cの3つの地区に分け、今回のマンションはC地区に該当する。
主な基本性能は免震構造、ZEH-M Oriented、BIO NET INITIATIVE(ビオネット イニシアチブ)、ABINC認証など。スーペリアタイプの主な設備仕様は、リビング天井高2650ミリ(50階のエグゼクティブは3000ミリ、44~49階のデラックスは2750ミリ)、ディスポーザー、食器棚、食洗機、シーザーストーンキッチン天板、タンクレストイレ、浴室タオル掛け2か所、ミストサウナ、戸別宅配ボックスなど。共用施設はスカイビューラウンジ、ゲストルーム、コワーキングスペースなど。
緑をふんだんにあしらったランドスケープデザイン、本物の木を多用しているのも特徴の一つで、エントランスの(サウス)には石川県能登産(予定)の杉集成材、(ノース)には茨城県産(予定)の杉無垢板を、共用部のデザインウォールに天然木をそれぞれ採用。スーペリアタイプのLDは突板フローリング。
昨年9月からのエントリー数は10,000件を突破しており、うち7割は都内居住者。
グランドエントランス(サウス)デザインウォールは天然木
完成予想図(公開空地)
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このマンションについては、同社が昨年9月に行った記者会見の記事を参照していただきたい。
武蔵小杉エリアには今回の2棟を含め14~15棟のタワーマンションが林立している(うち10棟は南口か)。ほとんどが商業地域立地なので日影は考慮されないし、お互い〝お見合い〟状態で、眺望が確保されているわけでもない。
今回の物件は、マンションのほか高齢者向け住宅、医療施設、保育所、スポーツジム、スーパー、ドラッグストアなど「まち一体型複合開発」として開発されており、他のタワーマンションとはやや異なる。まちに開かれた共用空間・コスギコミュニティパークやコスギプロムナードなどランドスケープデザインが素晴らしい。
さて、価格はいくらになるか。この日、取材前に周辺の街並み見て回り、2つのシアターを見終わった段階では、平均単価はひょっとすると坪700万円の大台に乗るかと思った。
しかし、物件説明、3つのモデルルームを見学し終わって、冷静に判断してそこまではいかないという結論に達した。第一の理由は自己日影だ。建物は一団地認定を受けているので、〈サウス〉の真北に位置する〈ノース〉の日照は考慮されず、日影の影響を受ける。さらに〈サウス〉もまた、駅北口で予定されている三井不動産レジデンシャルのタワーマンションの日影の影響を「少なからず受ける」(同社)のは評価を下げざるを得ない。〈サウス〉1棟なら坪700万円もあるかもしれないが、全体として均すと650万円くらいではないか。(記者は昨年9月、同社が記者発表会を行った時点で「坪単価はボトムで550万円とみた」と書いたが、ほぼその通りになるはずだ)
3つのモデルルームでは、ドアはカチッと閉まらなかったが白を基調にした73㎡のスーペリアタイプがとてもいいと思った(ターゲットにぴったり)。全体としてオプションはともかく、突出した仕様にはなっていない。これも坪650万円とはじいた理由だ。
マンションと関係ないが、取材の帰り、関係者から「下丸子が近い。三ちゃん食堂がある」と聞いたので立ち寄った。昭和の居酒屋だ。30坪くらいしかないのに、60人くらいの客で満席。昼間からみんな飲んでいた。席でタバコも吸えた。
73㎡のモデルルーム
103㎡のデラックスモデルルーム(このテーブルは100数十万円か)
シアタールーム
販売センターエントランス(〈サウス〉のエントランスもこのようなデザインウォールが採用される)
現地(敷地北側から)
コンセプトは大地に生える二本の大樹監修は隈研吾氏三菱地所レジ「武蔵小杉」(2024/9/28)
タカラレーベンなど6社 中央区の桜川公園 Park-PFI事業に選定
「つむぐ桜の森パートナーズ」完成予想図
MIRARTHホールディングス(ミラースHD)は4月21日、グループ会社のタカラレーベンを代表とする企業グループ6社による「つむぐ桜の森パートナーズ」が東京都中央区の「中央区立桜川公園官民連携事業(Park-PFI事業)」に選定されたと発表した。
中央区は2022年度に「公園の魅力向上に向けた官民連携方針」を策定し、桜川公園を対象に官民連携事業について検討してきており、都市公園法に基づく公募設置管理制度(Park-PFI)を活用し、桜川公園全体の再整備を行うこととなった。桜川公園の面積は約5,113㎡。主な公園施設として多目的広場、遊具、花壇などがある。
事業の実施に当たって「つむぐ桜の森パートナーズ」は、「安全で快適な遊びと憩いの場の形成」「桜川公園周辺エリアをつなぐ緑の魅力向上」「地域コミュニティの場の創出」を実現するとしている。
地方自治体・企業会員100人超が参加 第5回健康街づくりフォーラム
「健康街づくりフォーラム総会2025」(ホテルニューオータニ)
金指氏
健康街づくりフォーラム(主催:生涯健康社会推進機構・構想日本)は4月21日、「健康街づくりフォーラム総会2025」を開催。フォーラムでは国会議員の小泉進次郎氏、鈴木憲和氏、深澤陽一氏3氏による地方創生をテーマにしたトークセッションのほか、北海道ニセコ町・片山健也町長と茨城県行方市・鈴木周也市長による事例紹介が行われた。100人を超える地方自治体・企業関係者が参加した。
フォーラムの冒頭、生涯健康社会推進機構理事長・金指潔氏(東急不動産ホールディングス取締役会長)は副理事長の新井一氏(順天堂大学前学長)、史上最年少市長誕生として話題になった元三重県松阪市長で顧問の山中光茂氏(しろひげ在宅診療所院長)を紹介したあと、「少子高齢化をはじめ様々な社会課題は待ったなしの状況。今ほど官民学が一体となって課題解決に向かうことが求められているときはない」とあいさつした。
「健康街づくりフォーラム」は、自治体だけでは解決が難しい地域の健康・医療・介護の課題を複合的に考え、政策立案段階から自治体と企業が同じテーブルで協議し、企業のノウハウや強みを活かした官民連携による解決策を目指す政策プラットフォーム。2025年3月末の会員は全国44自治体と29企業。今回の総会は5回目。
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この種のフォーラムの取材は難しい。誰が何を話したかを簡潔に記事にするのは相当の技術が必要になる。ましてや今回は国会議員3氏のトークセッションが目玉だ。ミスは許されない。3氏や片山氏と鈴木氏が何を話したかは必死でメモしたし、テープにも収めた。資料は配布されなかったので、スクリーンに映し出された画像もカメラに収めた。国会議員と首長、直接民主主義と間接民主主義、自治体と政治家の関係、地域コミュニティへの政治家の関わり方など興味深い話が出た。
しかし、政策よりも党派性を前面に出す職業政治家は好きではないし、距離を置いている。ほとんど記事にしたことはないので、今回も書かないことにする。
それぞれの選挙区である横須賀市・三浦市、山形県米沢市・西山町、静岡市市清水区・富士宮市、ニセコ町、行方市などの魅力、課題など興味のある方は調べていただきたい。
ごく少数の参加メディアには資料は配布されなかったことに対して、いつも取材で一緒になるC記者は抗議をしたが、メディア対応は主催者の勝手だし、取材しない選択肢は記者の側にもある。小生は誘いがあった取材にはNOと言わないことにしている。今回取材したのは、金指氏が好きだからだ。Cさん、メデイアは一部を除き、主催者にも読者にも歓迎されない、信用されないことを考えた方がいい。
プラントハンター×国境なき医師団×三菱地所「熱帯植物から覗く世界」イベント
左から西畠氏、石山氏、牧野氏
三菱地所は4月20日、「熱帯植物から覗く世界」トークイベントを行った。同社が主催し、国境なき医師団(MSF)が企画・協力し、そら植物園が特別協力して2025年4月10日(木)~30日(水)まで「Marunouchi Bloomway(丸の内ブルームウェイ)」で開催している写真展「熱帯植物から覗く世界」の一つとして実施したもので、同社丸の内運営事業部・牧野圭氏(35)、プラントハンター・西畠清順氏(45)、国境なき医師団メンバーとしてコンゴ民主共和国で約1年間活動した石山友莉佳氏(28)が語り合った。会場には定員いっぱいの約120人が集まった。
「Marunouchi Bloomway」は2024年、三菱ビルと丸の内二丁目ビルの各1階の通路や外構部に花壇やベンチを設置し、東京駅と丸の内仲通りをつなぐ公園のような空間を整備したリニューアルプロジェクト。
写真展は、写真家集団マグナム・フォトの写真家らによるコンゴ民主共和国(旧ザイール)の写真33点の展示と、西畠氏が代表を務めるそら植物園によるアフリカ熱帯植物の花壇を組み合わせたもの。
写真展「熱帯植物から覗く世界」© Newsha Tavakolian /Magnum Photos
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西畠氏の作品を観るのは、三井不動産「パークシティ大崎」、東急不動産「日々やパークフロント」、三井不動産「三井ガーデンホテル五反田」に次いで4度目だ。今回は、過酷な条件の中で生き抜いている植物の強さに圧倒された。
トークイベントでは西畠氏は魅惑的なフレーズを連発した。「牧野くんは熱い。熱量がすごい」「世界中の植物を愛している。愛がソーシャルビジネスにつながる」「(参加者からの在来種と外来種の問題についての質問に)本質的な問題です。植物は子孫を残すため〝遠くへ行きたい〟が基本。自然の摂理です」などだ。
石山氏は〝闘士〟を想像していたのだが、普通の女性だった。大学卒業後、IT企業に就職。2024年にボランティア休暇を取得して、国境なき医師団に初参加し、サプライ・アクティビティ・マネジャーとしてコンゴ民主共和国で活動したという。
フランス語が話せるからコンゴ(公用語)に派遣されたのだろうが、多くの反対を押し切って参加したという。「(コンゴに)ないのは平和だけ」「このような仕事(MSF)がなくなればいいと思う」と話したのがぐさりと肺腑をえぐった。
牧野氏は、今回の企画を実施した背景について「ビジネスは本質的には、気づきとか変化、他社のレンズを取り込むことだと思う。植物はその気づきや変化などを教えてくれる」とし、「私たちの世代を集めた研修がありまして、エリアマネジメントをどうするか、これからの日本をどうするか、資本主義とは何かなどのおこがましいテーマでめちゃくちゃ缶詰にされたのですが、最後に国境なき医師団の事務局長の講演がありまして、大きなものを見過ごしていたことを気づかされました」と語った。
写真展「熱帯植物から覗く世界」(以下同じ)
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コンゴについて。記者の中学生のときの好きな教科は地理で、当時の世界約100か国の国名と首都名を丸暗記した。中国は中華人民共和国、ロシアはソビエト社会主義共和国連邦、南朝鮮は大韓民国、北朝鮮は朝鮮民主主義共和国だった。コンゴは複雑で、地図ではコンゴ共和国(首都:プラザビル)に隣接するコンゴ民主主義共和国(首都:キンシャサ)との国境線は明確ではなく、色もはっきり図示されていなかったはずだ。
あれから約60年。今回配布された資料には「アフリカ大陸で2番目の面積を持つコンゴ。歴史的な民族対立や、天然資源を巡る対立、周辺国の介入などにより、特に東部で数十年にわたり不安定な情勢が続いています。複数の武装勢力とコンゴ軍との戦闘が激化し、2024年11月時点で国内避難民の数は670万人に上りました。戦闘による負傷や子どもの栄養失調、性暴力の被害など、医療援助へのニーズは高く、国境なき医師団は全活動国・地域の中で最大規模の援助をコンゴ民主共和国で行っています」とある。
国境などない植物、薬にも毒にもなる植物に愛を込めるプラントハンター、国をめぐる人間界の争い、国境を越える医師団の活動…一切の差別がなくなり、国家が死滅するのを記者は夢見たことがあるのだが…。
「Marunouchi Bloomway」外構
丸の内・仲通り
丸の内・仲通り
記者か好きな三菱一号館(3階の喫煙所から。右下のカフェ&バーでワインを飲むのが楽しみの一つ)
業界初?都心の眺望風呂付き西畠氏監修のガーデン付き三井不「五反田」ホテル開業(2018/6/16)
日比谷公園の緑取り込む東急不「日比谷パークフロント」竣工同社の勢いまざまざ(2017/5/26)
「沖縄への熱い思い」 関東沖縄経営者協会会長・新垣進氏が講演 OSI研究会
新垣氏
人材派遣会社オールビズチャンネルの代表取締役社長で一般社団法人関東沖縄経営者協会の9代目会長を務めている新垣進氏(70)は先月、MPO法人OSI研究会(代表:松岡嘉幸氏)の勉強会で「沖縄への熱い思い」をテーマにした講演を行った。新垣氏は沖縄県東風平町(八重瀬町)で生まれ、生後3か月で川崎市に移住したが、ウチナーンチュ(沖縄県出身者)の意識が強く、約160社が加入する同協会の活動に力を注いでいる。OSIは明治大学名誉教授・百瀬恵夫氏らが中心になり2003年6月に設立されたNPO法人。沖縄の自然保護、環境保全及び自然と人間との調和が全てに優先することを基本理念に掲げ、様々な活動を行っている。
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記者は、別の取材と重なり勉強会には出席できなかったのだが、内容は2021年1月から6月まで13回にわたって琉球新報の連載コラム「南風」に掲載された新垣氏によるものと変わらないはずなので、記者の感想などを交えながら、講演内容を紹介する。
コラムの掲載が始まったのは、コロナ禍が真っ最中にあった2021年1月。それから最終回の6月まで全13回すべて「沖縄万歳!」で締めくくられている。沖縄礼賛コラムでもある。コラムは大きな反響を呼び、手紙がたくさん寄せられたという。
だが、しかし、ウチナーンチュはもちろん「ナイチャー」(沖縄県外出身者)は、これを単なる底抜けの楽観主義と受け取るわけにはいかない。
戦争では本土の生贄になり、終戦後も本土復帰が実現した1972年まで27年にわたって米国の支配下に置かれ、今もなお経済を基地、公共事業、観光に依存していることから3Kと揶揄されている現状を考えると、〝沖縄万歳〟にはもっと深い意味が込められている。
いったいこの深い意味が込められている楽観主義はどこから来るのか。それは新垣氏の叔父の故・古波津英興氏(1907-1999年)の影響が大きい。2001年に発刊された「民権の火よ永遠に: 古波津英興追悼集」(沖縄民権の会)を新垣氏から借りて読んだのだが、多くの方が古波津氏の楽観的なものの考え方に触れている。古波津氏もまた同郷の社会運動家・謝花昇(1865-1908年)の影響を強く受けている。
謝花-古波津-新垣を結びつけるのは東風平町(八重瀬町)出身ということだ。ここに通底しているのは、一言でいえば反骨精神ではないか。厳しい現実を直視し、それでもなんとか現状を打破しようとする前向きな考え方が根底にある。次のような記述がそうだ。
「かれこれ25年前の41歳の時にはどん底。半年間はため息ばかり、多分一生分のため息をついていたかな。輝いていた目も死んだ魚の目のようになっていったんだ」(5月13日付「南風」)「人間ね人生の途中では何があっても最後に笑えばいいんだよ」(同)
「このコロナ禍で沖縄は今大変だよね。こういう時は無理せず身をかがめ、今できることに集中し、元気に嵐が過ぎるのを待つんだ。沖縄には切り札の観光があるからね。観光の力は日本一、コロナが終息したら必ず一番に復活する県になるよ。国際通りは人で一杯になりどこのホテルも満室、飛行機も満席。もちろん離島も含めどこの観光地もにぎわうよ」(同)
コロナが終息したいま、沖縄は新垣氏が予想した通りになりつつある。別表は、令和7年の地価公示で、バブル期の1990年と比較可能な755市町村のうち、住宅地の変動率が100以上の市町村を示したものだ。わずか12道県49市町村しかない。トップは沖縄県の北中城村で、坪13.2万円から31.9万円と約2.4倍に上昇している。
この他、沖縄県は9位に糸満市、10位に与那原町、13位に宜野湾市、18位に沖縄市、19位に那覇市、41位に石垣市が入っており、49市町村の実に8市町村にのぼる。
◇ ◆ ◇
新垣氏の反骨精神が見事なまでに表現されているのは次の記述だ。
「私の中学卒業の文集に寄せた題名は『差別』。子供ながら真剣に考え、書いたその文章は力作だった。生涯、差別と向き合って生き抜いた叔父の古波津英興の影響が大きい。小学生の頃に東京で開かれた叔父の講演会に行き、差別をテーマにした話を聞いたときの経験が骨の髄までしみ込んでいた。
『差別』の題名は中学の先生には衝撃的で、大問題になった。2度にわたり職員会議で議論された。理科と社会科の一部の女性教師からは『新垣君の卒業文集を読んだよ。いろいろ考えさせられたし勉強になったわ』と褒められた。だが、そんな先生ばかりではなかった。国語の授業で50代後半の男性教師は、『新垣、立て! あの文章はなんだ。誰が差別しているんだ』とめちゃくちゃ怒られた。
そんなことがあって、私の文章は卒業文集には載せないことが職員会議で決まり、他のテーマに変えるよう指導された。頭に来ていた私は、卒業文集にはあの国語の先生の似顔絵を描いた。テーマは『こんな大人にはなりたくない』と。同級生は、私の度胸にびっくりしていた。
私自身は強かったから差別された記憶はないが、同じクラスの沖縄出身の女の子はいじめにあった。私は、うまくかばってあげることができなくて、その後悔の気持ちが強くなって卒業文集に書いたのだ。差別はいけないと仲間には分かってもらいたくて。
本土に移り住んだウチナーンチュじゃなかったら分からない経験だ。でも、あの悲惨な戦争から立ち直り、差別した人でさえファンにしてしまうウチナーンチュはすごい。さすが大交易時代を築いた琉球王国の末裔。だからコロナにも絶対負けないよ。卒業文集にあの教師の似顔絵を描いた中学3年生の自分に万歳!本土の人を差別からファンに変えた沖縄県民万歳!」(4月15日付)
新垣氏が中学3年のときだから、1969年だ。沖縄が日本国に変換された1972年(昭和47年)の3年前だ。新垣氏は2月18日付「南風」でも「小学4年の時、自己紹介で、沖縄で生まれたと言ったら先生に外国人呼ばわりされショックを受けたよ」とも書いている。「本土に移り住んだウチナーンチュじゃなかったら分からない経験」がずしりと響く。
実は、記者にも新垣氏と似た経験がある。「差別」ではなく、アメリカコンプレックスだ。昭和24年生まれの記者は、小さいころ、日本軍の中国や朝鮮に対する蛮行の話と同時に、ヒロシマ・ナガサキ、駐留米国軍人の悪逆非道の行為を大人から聞かされていた。
中学1年の最初の英語の時間だ。英語の先生が級長の私に向かっていきなり〝Stand Up〟と命令した。かっとなった私は無視して起立しなかった。先生は激怒した。英語が嫌いになったのはそのときからだ。
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新垣氏のコラムは〝なるほど〟と合点がいくものばかりだが、どうしてもわからないことが一つある。次の記述だ。
「私の趣味は沖縄。毎朝シークワーサーを飲み、沖縄の新聞を読み、お酒はオリオンビールと泡盛、居酒屋の大半は沖縄料理店…」(4月21日付)
「わかるかな~。沖縄に行くとき羽田空港で缶コーヒーのジョージア買うんだ。当たり前だけど120円の味なんだ。でも那覇空港に降り立って飲むジョージアは千円の味に跳ね上がるよ。さらに車を飛ばし、田舎の東風平に着いてジョージアを飲むと3千円のうまさに跳ね上がるんだ。嬉しくて気分が高揚しているからなあ。わからないだろうなあ、ずっと沖縄に住んでいるウチナーンチュには(笑い)」(同)
沖縄に住んでいるウチナーンチュでもわからないのだから、ナイチャーの記者がわかるはずはないのだが、先にStand Upのことを書いた。コカ・コーラの清涼感には抗えなかったが(いまは全く飲まない)、アメリカ産のハンバーガー、ケンタッキーなどは今でもほとんど食べない。駐留軍の横暴な振る舞いは骨の髄までしみ込んでいる…ジョージアは何だろう。
新垣氏は昨年、沖縄の子ども食堂を支援する「毎月千円子ども支援プロジェクト」を立ち上げた。「できることから、できる範囲で」の発想で、法人でも個人でも毎月一律千円を口座から引き落とすもの。新垣氏は「私は決して無理強いしない。点を線としていきたい。千人集まれば年間1000万円。多くの人が貧困問題を意識し、賛同してくれればと願っている」と話している。
3月26日に行われた講演会後のOSI懇親会
OSIには百瀬氏や元住友商事社員で現理事長の松岡氏、元東洋経済「会社四季報」編集長の篠原氏をはじめ、沖縄海洋墓標会の真言宗僧侶、離婚騒動はやりたくないそうだが民事も刑事も手掛ける弁護士、河東碧梧桐研究の第一人者で「河東碧梧桐全集」(発行・短詩人連盟 発売・蒼天社)を著した來空(1931~2019年)の奥さんで書道家、現役の美人建築家、以前は掃き溜めに鶴だった元ANA社員…多士済々、豪華絢爛の方々が加入している。
入場者 1週間に約300人モデルルームではなく百瀬氏&篠原氏「絵画&墨書」絆展(2020/10/19)
書評日本のお弁当文化知恵と美意識の小宇宙権代美重子著(2020/5/8)
息つく暇なし津田三佐雄「南極(難局)物語」百瀬・明大名誉教授ら凍りつく(2020/1/15)
日本原産の作物は10種類程度秋草学園短大・中村教授 OSIで〝目からうろこ〟の講話(2019/2/26)
地域との共生・協創目指す 持続可能な物流拠点 IHI・野村不「Landport 横浜杉田」
「Landport 横浜杉田」
IHIと野村不動産は4月18日、地域との共生・協創もテーマの一つになっている大規模物流施設「Landport 横浜杉田」が竣工したのに伴うオープニングイベントを開催。〝幻の梅〟と呼ばれる地域の象徴である「杉田梅」の植樹式が行われたほか、キッチンカ―による防災食体験、消防・警察車両の乗車体験、物流施設見学、紙芝居などが行われ、多くの地域住民も参加した。
オープニングイベントで横浜市金沢区長の齋藤真実奈氏は「安心・安全の『防災協定』を締結していただいたのがとてもうれしい。このエリアは1,300社、3,600人が就業する市内随一の産業団地。区内には住宅、商業施設が集積し、歴史資産も残っています。居住者の永住志向も強く〝自慢の区〟です」と挨拶。
地域を代表して登壇した横浜市金沢団地協同組合理事長・榎本英雄氏は「50年前に埋立地に日本有数の団地が誕生したが、住環境は予想を上回るペースで変化した。交通問題への対処とともに、避難施設にしていただき大変ありがたいと」語った。
「杉田梅」普及の第一人者であり、「幻の杉田梅林 賑い復興“梅のまち杉田” 実行委員会」副会長の市原由貴子氏は「横浜杉田はかつて梅で栄えた街でした。その光景は歌川広重が描いております。大火、近年の宅地化などで梅の木は消えてしましましたが、その歴史、文化、名前は妙法寺の樹齢450年の杉田梅が示すように残っています。歴史・文化を継承していただくのは大変うれしい」と述べた。敷地内には樹齢10年超の成木が3本(接ぎ木)、苗木が30本植えられている。
主催者のIHI常務執行役員・二瓶清氏は「当社の旧会社・石川島播磨が飛行機などの工場として操業を開始したのは昭和12年(1937年)。2019年に閉鎖後は、地域貢献にも資するよう跡地利用を検討してきた。今後も継続して活動していく」と語った。
また、野村不動産取締役専務執行役員・黒川洋氏は「地域にとって思い入れの強い場所であることから、地域のために何ができるか考えてきた。施設は防災拠点とし、コミュニティ広場の整備、屋上菜園の整備、梅をイメージしたデザインなど、当社の物流施設ブランド『Landport』シリーズを代表する施設」と話した。
物件は、横浜シーサイドライン南部市場駅から徒歩4分(首都高速湾岸線杉田出入口680m)、横浜市金沢区昭和町に位置する敷地面積約71,034㎡、4階建て延床面積約163,409㎡。竣工は2025年3月末。設計・施工は五洋建設。満床稼働した。
施設は「オープン・シェア型物流施設」がコンセプトに、施施設利用者の×地域関係者×地域社会が豊かになることを目指す。敷地内に地域住民も利用可能な広場を整備し、区との協定による防災拠点を締結し津波避難施設とし、屋上菜園を設置している。
建物は免震構造を採用、BCP対策として72時間運転可能な非常用発電機、防災備蓄庫の設置など、サステナビリティの取り組みとして屋上の太陽光発電システムによるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)の最高ランクを取得予定。
左から齋藤氏、榎本氏、市原氏
左から二瓶氏、黒川氏
植樹式(左から五洋建設・清水琢三社長、齋藤氏、榎本氏、二瓶氏、黒川氏、IHI物流・川田基浩社長、市原氏)
イベント風景
イベント風景
◇ ◆ ◇
物流施設を見学する機会は多くはないが、物流業界は2024年問題(時間外労働規制)への対応、アナログ的な商習慣の改善が喫緊の課題だとされている。
この日、メディアに配布された資料「持続可能な物流拠点の未来」(流通経済研究所)には、物流業界が抱える問題点を指摘し、「トラックドライバーは、2027年には24万人不足」「2030年には物流需要の約34%が運べなくなる」「ドライバーの賃金は、2030年には2022年比で27%、輸送費は同34%それぞれ上昇」し、「何も手を打たなければ、現状の物流体制は維持できなくなる懸念」が示されている。
他方で、「Landport 横浜杉田 ファクトブック」には、「物流施設への嫌悪施設イメージ」として「(多くのデベロッパーが)『地域共生型の施設開発』に目を向け始めているが、地域とのトラブルを避けるためのある種のカモフラージュ的な地域連携に留まっており、まだその成功事例はごく少数であり、その型化・横展開は道半ば」とある。(赤字は資料のまま)
そして、記者が取材するごとに考えるのは〝物流施設は嫌悪施設〟かどうかだ。〝嫌悪施設〟は法律で決まっているわけではなく、定義もない。不動産流通促進センターが地域などとのトラブルを未然に奉仕するためガイドラインで示したものだ。この問題について、関係者は考えないといけない。
いわゆる嫌悪施設と呼ばれるものは、われわれが生きていくために不可欠なものばかりで、働く人はエッセンシャルワカーと呼ばれる-この矛盾、不条理に対して「何も手を打たなければ、現状の物流体制は維持できなくなる懸念」が現実のものとなるのは必至だ。
今から7年前の2018年、三井不動産常務執行役員ロジスティクス本部長・三木孝行氏(当時)が「もはや、後発ではない。嫌悪施設ではない」と語ったのを忘れない。
成木の杉田梅を背景に記念写真
成木の杉田梅(みがたくさんなっていた。実は大きく酸味が強いので梅干しに最適とか)
都内最大級の物流施設 23区希少の工専立地三井不・日鉄興和不「東京板橋」竣工(2024/10/3)
「物流施設」=「嫌悪施設」=「倉庫」なのか三井不ロジスティクス記者説明会(2024/7/12)
コモンスペース中央に全5棟 差別化できている コスモスイニシア「南荻窪」
「イニシアフォーラム南荻窪」2階リビング
コスモスイニシアが分譲中の戸建て「イニシアフォーラム南荻窪」を見学した。JR荻窪駅、西荻窪駅からそれぞれ徒歩14分の1低層エリアに位置する、コモンスペースを取り囲むように配棟されている3階建て。周辺は良好な戸建て住宅街。商品企画の差別化はできていると思う。
物件は、JR荻窪駅・西荻窪駅から徒歩14分、杉並区南荻窪2丁目の第一種低層住居専用地域(建ペい率50%、容積率100%)に位置する全5棟。土地面積は100.11~110.44㎡、建物面積は92.25~121.43㎡、現在先着順で分譲中の住戸の価格は1億3,780万円。建物は竣工済み。構造・規模は2×4工法3階建て。施工は三井ホームエンジニアリング。3月15日から3戸の分譲を開始しており、2戸は契約済み。
現地は、閑静な第一種低層住居専用地域の閑静な住宅街の一角。道路を挟んだ敷地北側は中学校と神社に隣接、南側は低層住宅街。主な特徴は、全5棟がコモンスペースに面している住棟配置のほか、ZEH水準、ゆとりある玄関・ホール、2階リビング天井高4m以上、ふるまい本棚、ロフト、ルームバルコニーなど。
ルーフバルコニー
玄関・ホール
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現地に着いたとき、すぐ思い出したのは2016年に見学取材した同社の「グランフォーラム石神井公園」だった。コモンスペースを中央に配した住棟配置が同じだったからだ。敷地全体を無電柱化し、インド砂岩による植栽桝やゲート、斑岩による舗装などもほとんど同じだった。
驚いたのは、同社の物件を含め周辺には完売済みの戸建てを含め十数か所で戸建て分譲現場があることだった。価格帯もみんなよく似ている。1億円は超えるが、2億円以上は少ないようだ。
同社の分譲戸建ては上段で紹介したように差別化は出来ていると思うのだが、他社物件を見ていないので何とも言えない。物件をたくさん見ないといけないということだ。
現地
現地
植栽帯
井の頭公園に2分 隣接地も公園 リビング天井高4m超 コスモスイニシアの戸建て(2024/10/23)
価格に見合う価値あり コスモスイニシア「グランフォーラム石神井公園」(2016/12/3)
高額注文住宅と規格住宅を車の両輪へ 野島秀敏・三井ホーム社長
野島氏(本社:新木場センタービルで)
三井ホームは4月17日、社長就任記者懇親会を開催し、4月1日付で社長に就任した野島秀敏氏が「注文住宅の会社から住宅事業+木造施設建設の会社へ」構造改革を進め、「木造建築のナンバーワンを目指す」と語った。同社の強みである富裕層へのアプローチを再強化する一方で、コスパ・タイパを重視する若年層に対応した規格住宅「三井ホームセレクト」を棟数ベースで注文住宅と同じくらいにする意向を示した。懇親会には約30人が参加した。
野島氏はまず、昨年5月に本社機能を「新木場」に移したことについて触れ、移転の大きな目的の一つとして「新木場は木造の会社が集積しており、昔からおつきあいしている会社もあれば、初めて接点を持たせていただいている会社もある。当社は木造建築のナンバーワンを目指しており、皆さんとうまく関係を構築するために飛び込んできた」と説明した。
注文住宅市場については、「マーケットがずっと縮小し続けており、業界として厳しい状況に追い込まれているのが現状だが、一方で、環境問題、脱炭素の流れの中で建物を木で作ろうという動きが強まっており、これをチャンスと捉えたい」と話し、「注文住宅の会社から住宅事業+木造施設建設の会社へ」構造改革を進めると話した。
そのため、「当社は25万棟の注文住宅の実績がある。そのノウハウを生かし、強みである富裕層向け高額注文住宅を再強化する。一方で、コスパ・タイパ、リセールバリューを重視する若い方向けの規格住宅(三井ホームセレクト)を昨年スタートさせた。試行錯誤の段階だが、できるだけ早い時期にこの両輪を回せるようにしていく。将来的には棟数ベースで注文住宅とセレクトの比率を同じくらいにしたい」と語った。
同社の木造建築の事例としては木造マンション累計受注棟数78棟のうちMOXIONが46棟に上っていることのほか、木造ニーズの高まりの中で学校施設、学生寮、ロードサイド店舗などが増加していることを説明した。
10ブースくらいある執務室(プレートに「KARIN」とあり、室内の机はカリン材)
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野島氏が話した中で、富裕層向け高額商品の強化と規格住宅の投入により、車の両輪を目指すと語ったことに注目したい。国交省のデータを待つまでもなく、持家の着工戸数は漸減するのは間違いない。縮小するパイの奪い合いになるのは必至だが、記者はデザイン性の高い同社の商品は競争力が高いと見ている。
規格住宅はどのようなものかよくわからないが、野島氏は性能を落とさずに、分譲マンションや分譲戸建てに流れている需要層を獲得できると話した。かじ取りが見ものだ。
9階本社オフィス(手前のテーブルはかなり高価)
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記者も野島社長に聞きたいことはあったのだが、質疑応答の時間が足りなかったのか、個別質問があったためか、たくさんのメディアの方が列をなしていたので質問をあきらめた(それにしてもみんな質問時間が長すぎる。ワンイッシューにすべき)。
聞きたかったのは、野島氏の入社は1988年だから、その直後にバブルが崩壊した。甘い汁は全然吸っていないはずだ。その後2013年に三井不動産レジデンシャルに異動するまでの25年間はどのような仕事に携わっていたのかだ。厳しい事業環境下にあったはずで、座右の銘と関係はあるのかどうか。また、慶大卒といえば、三菱地所レジデンスの宮島社長の2歳後輩だ。趣味も似ているのではないか(宮島氏はカヌーではなかったか)。交流はあるのかどうか、機会があったら聞いてみよう。
もう一つは、〝木造コンプレックス〟〝現しの呪縛〟について。この問題については記事を添付するので、読者の皆さんも考えていただきたい。「モクシオン稲城」を取材したとき、同業の記者の方が「これって鉄かコンクリか木造か分かりませんよね」との趣旨の質問をしたところ、同社技術研究所研究開発グループマネージャー・小松弘昭氏(当時)は「現しにしないといけないというのは木造コンプレックスの裏返し。木の性能、コストなど科学的・合理的なことのほうが大事」と言ったのを記事にしたものだ。
記者はこの小松氏の〝一喝〟になるほどとは思ったが、やはり「現し」は美しい。「美しいもののみが機能的」と語った丹下健三の意見に賛成する。野島氏の意見を聞きたかった。
さらに加えるなら新木場の地区計画についてだ。都は平成11年11月15日付で従前の用途地域・工専を準工業に変更し、なおかつ「新木場・辰巳三丁目地区 地区計画」を定め、約151haにわたり「木材関連をはじめとする多様な生産・流通機能と商業・業務機能などが共存できる複合地区の形成を図る」目的に適さない住宅や風俗系建築物、廃棄物処理場を不可とした。面積は約115haの皇居を上回る。
読者の皆さんもご存じなかったようで、この記事へのアクセス数は7,000件を突破した。記者は、貯木場の役割が終えたのだから、その景観を生かしホテルや住宅を可能にしたら「グラングリーン大阪」を上回る素晴らしい街ができると思う。あと10年もすれば、そのような案が浮上する気がしてならない。これは野島氏より三井不動産社長の植田氏に聞くべきか。「妄想」⇒「構想」⇒「実現」の可能性はあるかどうかだ。
野島氏は1963年生まれ。兵庫県出身。慶應大学経済学部卒。1988年、三井不動産入社。2013年、三井不動産レジデンシャル企画経理部長、2015年、同社東京オリンピック・パラリンピック選手村事業部長、2020年、三井ホーム取締役常務執行役員、23年兼三井ホームカナダ(株)代表取締役会長(現任)・兼三井ホームアメリカLLC取締役会長(現任)を歴任。2024年、同社取締役専務執行役員、2025年4月1日付で代表取締役社長に就任。趣味はダイビング(キャリア26年)、座右の銘は「寛仁大度」。
外貌の呪縛を解き放つか「現しを求めるのは木造コンプレックス」三井ホーム小松氏(2021/12/9)
第6のアセットクラス「三井のラボ&オフィス」住宅不可の新木場に開業(2021/7/8)