三井不 一時預かり保育「YASMO」 アルファコーポに事業譲渡
三井不動産は3月25日、ママ・パパ用休息室併設の一時預かり保育「YASMO(ヤスモ)」事業を同日付でアルファコーポレーションに譲渡したと発表した。
YASMOは、三井不動産グループが2018年度に創設した新事業提案制度「MAG!C」から生まれた事業で、2024年1月にYASMO武蔵小杉を店舗開設し、運営を行ってきた。
アルファコーポレーションは、YASMO武蔵小杉のオープン当初より保育サービスを担当してきた事業者。同社の専門性を最大限に活用し、同社のサービスとして継続することが最適であると結論付けた。
大人も子どもも〝我慢〟しないコスモスイニシア一時預かり施設有楽町に開業(2025/3/10)
三井不「MAG!C」発〝孤育て〟支援ママ・パパ休憩室付き一時預かり保育施設開設(2024/1/13)
1990年比の住宅地変動率 100以上は12道県49市町村 令和7年地価公示
令和7年の地価公示の調査対象となっている全国1,377区市区町村のうち、1990年比で変動率が比較可能な市町村は755で、変動率が100以上の市町村は12道県49市町村しかない。755市町村の6.5%だ。別表に紹介した。
49市町村を道県別にみると、もっとも多いのは福岡県と沖縄県でそれぞれ10市町村。次いで愛知県の8市町、北海道と宮城県の6市町、三重県と熊本県が2市町。他は茨城県、山形県、新潟県、大分県、長崎県が各1市町。
どうしてこの49市町村はバブル期の地価を上回っているのか。調べる余裕はないが、単なる偶然ではないはずだ。それぞれの地域資源を生かし、企業を誘致し、雇用を創出し地域の活性化につなげているからではないか。地方創生のヒントがここにありそうだ。
首都圏商業地地価上位50区市変動率ベスト・ワースト50区市地価公示(2025/3/24)
首都圏住宅地地価回復率ベスト3は墨田、文京、茅ヶ崎市最悪は越生町、東金市など(2025/3/22)
50代を中心とした未婚者 「くらしに満足」42% うち6割は女性 旭化成ホームズ調査
旭化成ホームズのLONGLIFE総合研究所は3月25日、「50代を中心とした未婚者のくらしに関する調査」結果をまとめ発表した。昨年5月の第一弾「50代のくらしに関する調査」に続く、ミドルライフ研究会の調査研究第二弾。調査対象は現在未婚で一人暮らしの45~64歳(ミドルシングル)の計1,600人(男女各800名)。
これによると、現在のくらしの満足度については、10~6点が42%、4~0点が29%。満足している人42%のうち、女性が約6割を占めている。
満足しているミドルシングルの価値観を見ると、「一人の時間を有意義に過ごせている(78%)」、「自分の人生は自分で決めてきた(76%)」、「今のライフスタイルが自分に合っており今後も大切にしたい(75%)」と回答。「どちらでもない・不満(現在のくらしの満足度5~0点)」の人と比較すると、一人でのくらしに価値を見出して楽しんでいることがうかがえる。また、「一人でいても寂しいとは感じない(75%)」とシングルであることで孤独や寂しさを感じているわけではない。
くらしの満足度の高いミドルシングルはどのようなことを実践しているのかを3つの健康的観点(身体的健康(からだ)・精神的健康(こころ)・社会的健康(交流))で調べたところ、「からだ」面では「休息をしっかりとる(71%)」「規則正しい生活をしている(58%)」と回答。運動の機会を持つ・サプリなどを意識的に飲むなどの積極的な行動よりも基本的な生活習慣が大事だということがうかがえる。
「こころ」面でも、目標や計画を立てる・知識や経験を積極的に得ることよりも、「自分なりの楽しみを見出している(72%)」「自分に合った気分転換方法がわかっている(68%)」と満足度を高める自分なりのポイントがあると回答している。
「交流」面では、新しい交流をどんどん求めるよりも、つかず離れず気楽なつながりや旧友とのつながりが満足度の高さのポイントと考えられるとしている。
同社は昨年、人生100年時代を迎え、人口動態の変化や婚姻率の減少が進む中、ミドルシングル(45歳~64歳の未婚・一人暮らし)が増加しており、この世代のくらしの実態を研究するためミドルライフ研究会を立ち上げた。
2020年の国勢調査によると、未婚率は30代が38.5%、40代が25.6%、50代が19.4%、60代が11.4%となっている。
首都圏 商業地地価上位50区市 変動率ベスト・ワースト50区市 地価公示
対1990年の地価公示と比較可能な首都圏商業地の地価上位50市町は別表の通り。このうち東京都が23区など36区市を占めている。神奈川県は川崎市(23位)、横浜市(28位)、鎌倉市(39位)など5市、埼玉県は川口市(31位)、和光市(43位)、和光市(50位)の3市、千葉県は市川市(15位)、浦安市(22位)、船橋市(36位)など6市。
トップは東京都中央区で坪3,397万円、1990年比の変動率は53.8%。2位は渋谷区の2,780万円で変動率は50.6%、3位は千代田区の2,186万円で変動率は37.8%となっている。
対1990年比の商業地の変動率上位50区市の内訳は、東京都28区市、神奈川県9市、埼玉県7市、千葉県6市。トップ3は三郷市61.3%、寒川市60.5%、習志野市58.0%。三郷市の変動率を押し上げたのは、2005年に三郷中央駅が開業したためと思われる。寒川町は神奈川県の中央部に位置、工場も多く製造品出荷額は県内の市町村の中で10番目。
対1990年比商業地変動率下位50区市の内訳は、埼玉県19市、千葉県15市、東京都10市、神奈川県6市。変動率ワースト3は千葉県の茂原市4.8%、木更津市7.4%、君津市7.8%。このほか、都県別でもっとも変動率が低いのは、東京都は東久留米市の13.1%、神奈川県は厚木市の10.5%、埼玉県は久喜市の9.0%。
◇ ◆ ◇
首都圏の地価公示価格をバブル期の1990年(平成2年)と比較することが適当かどうかわからないが、バブル期の地価がいかに〝異常〟であったかを示すためと、〝異常〟ではあったがそれが事実であり、現状との乖離を明らかにする意図があったため、「変動率」ではなく敢えて「回復率」という言葉を使った。
対1990年比の首都圏の令和7年住宅地、商業地、全用途の回復率(変動率)はそれぞれ54.8%、36.8%、57.9%であるように〝半値戻し〟に過ぎないことが明らかとなった。しかも、この数値はすべてを足してその数で割ったもの、つまり撹拌したものであるため区市町村間の格差を覆い隠すことになる。
それぞれの表は、その格差を明らかにした。対1990年比の商業地の変動率が30%以上は40区市にとどまっており、50区市は20%を下回っている。
10年前の2015年(平成27年)比では全国の住宅地は33.6%、商業地は67.6%。全用途で53.2%上昇はしているが、物価高と消費者マインドの低下もあり、デフレ脱却宣言は当分ないとみた。
「グラングリーン大阪」南館 21日オープン 23日までの来街者70万人超
「グラングリーン大阪(GRAND GREEN OSAKA)」オープンセレモニー
三菱地所を代表とするグラングリーン大阪開発事業者JV9社は3月21日、「グラングリーン大阪(GRAND GREEN OSAKA)」南館のグランドオープンセレモニーを開催した。
グラングリーン大阪は、約4.5haの都市公園「うめきた公園」を中心に、ホテル、商業施設、イノベーション施設「JAM BASE」など、さまざまな用途施設で構成された街づくりで、2024年9月に先行まちびらきを迎えて以降、1,000万人を超える来街者があるる。
今回の南館は、55店舗のショップ&レストラン、2つのホテルやオフィス、ウェルネス施設、MICE施設などの多彩な機能を兼ね備えた複合施設。関西国際空港や新大阪駅にも繋がる西日本最大のターミナル駅「JR大阪駅」に直結し、世界中からビジネス・観光を誘引する。
セレモニーで開発事業者を代表して三菱地所・中島篤社長は「来月には大阪・関西万博が開幕するが、今回の南館はそれに先駆ける開館。三つの大きな特徴があり、一つ目は体感価値を重視した商業施設。55の店舗では世界の食通をうならせる大阪の、関西の、日本の飲食店のほか、物販施設、天然温泉も兼ね備えたウェルビーイング、ウェルネスなどの健康増進施設などで構成されており、それぞれユニークな体験価値を提供する。2つ目は二つのホテルが入居すること。今回の開業で3つのホテルが揃うことになる。いずれも上質で個性的なもので、安らぎとくつろぎを提供していく。三つ目は大阪エリアでも有数な規模を誇るオフィス。世界のビジネスを牽引する企業が入居する。このほか『JAM BASE(ジャムベース)』などとの連携によりイノベーション、新しい価値を提供できると確信している。今後も北側の公園と2つの住宅の完成を目指しており、大阪から日本へ、さらに世界に向かって価値を提供し、情報を発信し、運営していく」とあいさつした。
グラングリーン大阪南館グランドオープン広報事務局は当日の「グラングリーン大阪」全体の来街者は15万人を超え、23日までの3日間で70万人超にのぼったと発表した。
中島氏
グラングリーン大阪 ゲートタワーオフィスロビー
「うめきた公園」大屋根
◇ ◆ ◇
東京ドームシティの年間来街者は約3,800万人なので、1日平均10万人だ。オープン初日の来街者がそれをはるかに上回る15万人超に驚いた。
ChatGPTによると、1日あたり15万人を超えるイベントはスポーツ、音楽フェス、宗教行事など珍しくはなく、わが国では東京ビックサイトで行われるコミックマーケット(コミケ)は1日当たり約20万人(近年は少し減少傾向)を動員するという。
阿波踊りと比較するのはどうかと思うが、昨年の第65回東京高円寺阿波おどりは8月24日・25日の2日間で観客は94万人だったという。
だが、しかし、問題は人数ではない。来街者がどれだけお金を使うかだ。三越伊勢丹ホールディングスの2024年度の総額売上高は1兆2,800億円だ。同社は年間来館者数を公表していないが、新宿伊勢丹だけで二千数百万人といわれている。来館者1人当たりの売上高は1万円くらいではないかと記者は予想している。
「グラングリーン大阪」はどうか。公園を利用するだけならタダだが、ホテルに泊まれば数万円、一杯1万円のコーヒー店もある。1人当たり消費額は最低5,000円、均すと1万円くらいではないかとはじいた。つまり70万人×1万円=70億円が3日間で消費されたと計算するが、当たっていないか。
テープカット
〝負けたらあかんで東京に〟返上「グラングリーン大阪」南館3/21オープン(2025/3/17)
首都圏住宅地地価 回復率ベスト3は墨田、文京、茅ヶ崎市 最悪は越生町、東金市など
全区市町村の回復率の表はこちら( 文書3.pdf 文書4.pdf 文書5.pdf)
令和7年地価公示は全国平均で全用途平均・住宅地・商業地とも4年連続で上昇し、上昇幅が拡大した。デベロッパー各社も「用途を問わず利便性の高いエリアを中心に、地価の上昇基調が継続する可能性がある」(東京建物・小澤克人社長)「景気回復の影響が全国的な地価上昇に波及した結果」(三井不動産・植田俊社長)「交通ないし生活利便性に優れたエリアや、インバウンド需要が見込まれるエリアでの地価上昇が顕著であった。また、オフィス市場においては空室率低下と賃料上昇の傾向が継続し、地価の上昇に反映されている」(三菱地所・中島篤社長)などと、堅調な住宅・不動産市場の反映であるとコメントした。
また、実態を正確に反映しているかどうかについては異論もあるが、「地価公示は、不動産の取引動向や中期的な展望を反映したものであり、様々なマクロ指標と合わせて今後も重要指標のひとつとして注視していく」(野村不動産・松尾大作社長)との声もあるように、社会・経済状況を映す鏡でもある。
問題は今後どうなるかだ。前回の記事で紹介したように、九州や北海道ではリゾート人気や半導体企業進出などでバブル時の価格を大幅に上回っているところもあるが、全用途の平均価格はバブル時の価格の〝半値戻し〟にしか過ぎないことも注視したい。記者は、いつ、誰が〝デフレ脱却〟を宣言するか注目しているのだが、三井不動産・植田俊社長も「デフレから脱却し成長型経済へ向かう『時代の転換点』」という表現にとどめ、慎重な姿勢を示している。
今回は、いまの住宅・不動産市場は異常なのか正常なのか、考えるうえで参考となるデータとして、バブル崩壊直後の1990年(平成2年)と2025年(令和7年)の首都圏住宅地の地価公示を比較可能な約150の首都圏の区市町村の回復率をみた。
合併などで消滅したり誕生したりした区市町村(大宮市、浦和市、さいたま市、東東京市など)は除外したが、これによると、1990年の地価を100とした場合の上昇率(以下、回復率)は東京圏全体で54.8%となっており、東京23区も1990年の坪428.3万円から2025年の坪254.6万円へと回復率は59.4%にとどまっている。
地価公示の数値は、調査地点の数値を単純平均したもので、スポット的にはバブル時の価格を上回っている地点はあるかもしれないが、少なくとも約150市町村の住宅地価格はバブル期の5~6割にとどまっていることに注目したい。
回復率ベスト3は、墨田区88.6%、文京区81.1%、茅ヶ崎市80.9%。上位30区市町村のうち東京都は16区市、神奈川県8市町、埼玉県6市町がランクインし、千葉県はゼロだった。
一方、回復率ワースト3は、埼玉県越生町18.2%、千葉県東金市18.7%、富津市19.0%。ワースト30の内訳は埼玉県16市町、千葉県14市町で、東京都と神奈川県は1つもない。
このほか主だった区市町村の回復率をみると、住宅地地価トップの千代田区は1990年の坪2,996.4万円に対し2025年は坪1,083.4万円。回復率は36.2%にとどまっている。港区は47.9%、世田谷区は59.0%、最近の上昇率アップが目立つ流山市は54.9%、わが多摩市は36.3%、鎌倉市は47.7%、千葉市は36.3%、柏市は40.0%、所沢市は40.8%など。
◇ ◆ ◇
このデータをどう解釈するかだが、墨田区がトップとなったのは意外だった。墨田区といえばスカイツリーを中心とした商業地が目立つが、住宅地の評価もつられて上昇したのか。文京区は通勤・通学の利便性と文教地区としてのブランド力、茅ヶ崎市は駅前再開発やリモートワークの普及が評価されたと考えられる。5位の川口市は「住みやすい街ランキング」の影響もあるかもしれない。総じて、利便性の高い準都心エリアの地価回復が目立つ。
一方、ワースト30の大半は埼玉県と千葉県の郊外住宅地だ。毛呂山町、小川町、杉戸町、鳩山町、幸手市、佐倉市、酒々井町、我孫子市、四街道市などバブル期に戸建て供給地として注目されたエリアだ。バブル崩壊ではしごを外され、その後の社会・経済状況の劇的変化により、通勤圏外として見放されたままだ。
いずれにしろ、首都圏の住宅地価格は35年かけて半値まで回復した。このペースが続き、毎年2%ずつ価格が上昇すると仮定した場合、元の水準に戻るのは35年後の2060年になる計算だ。バブル期は〝異常〟ではあったが、元に戻るエリアはごく少数で、過半が消滅するほうに賭ける。
東京建物、三菱地所、野村不、三井不 デベロッパー4社の地価公示コメント
地価上昇基調が継続する可能性 つねにマーケット重視
東京建物 小澤克人社長
今回発表された地価公示は、地域や用途によって差はあるものの、全国全用途平均で4年連続上昇、上昇幅も拡大した。分譲マンション市場の堅調さの持続に加え、国外からの観光客の増加によりホテルや店舗需要が好調であったこと、オフィス需要の回復基調が鮮明となってきたこと、さらには再開発の進展により利便性や賑わいの向上が期待されるエリアが増加したことが背景にあると考えられる。
オフィスマーケットは、好調な企業業績などを背景に業容拡大、人材確保を目的とした好立地・ハイグレードオフィスの需要は引き続き底堅く、空室率も低下傾向にある。特にワーカーの心身の健康に着目したウェルビーイングへの対応やサステナビリティに配慮した高付加価値のオフィスビルの需要は今後も一層増大すると見ている。当社は、本社を構える東京駅の東側、八重洲・日本橋・京橋エリアを中心に複数の再開発事業を地権者の皆様と推進しているが、八重洲で進める「TOFROM YAESU TOWER」ではオフィスフロアのコンセプトを「ウェルビーイング」とし、ワーカーのウェルビーイング向上をサポートする機能を多数実装する予定である。これらウェルビーイング向上施策に加えて東京駅前という立地特性を多くの企業さまからご評価いただき、竣工が来年であるにも関わらず、隣接する街区「TOFROM YAESU THE FRONT」と合わせたオフィスフロアの内定率は既に約60%に達している。
ホテルや商業施設においてはインバウンド観光客の増加などにより、東京・大阪・京都をはじめとした観光地・全国主要都市を中心にホテルの稼働率や飲食店舗の売上が増加するなど、今後も拡大が期待できる。当社においては昨年、ヒルトンのフラッグシップ・ブランド「ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ」として京都初進出となる「ヒルトン京都」を河原町三条にオープンした。313の客室を有するラグジュアリーホテルであり、先斗町や祇園至近という利便性も相まって、京都観光の拠点の一つとして大変ご好評をいただけている。
物流施設は、ECの拡大や人手不足などを背景とした企業側の物流拠点網の再整備に伴う需要が底堅く、今後、需要の拡大が期待できる。当社は今後、千葉県船橋市で冷凍・冷蔵物流施設、神奈川県厚木市で危険物専用倉庫併設の物流施設開発に着手するなど、さまざまなニーズに対応した競争力の高い物流施設を提供していく。
分譲マンションマーケットは、建築費の上昇や住宅ローン金利の動向など懸念はあるものの、共働き世帯(いわゆるパワーカップル)や富裕層からの利便性が高く良質な住宅への需要は依然として高く、特に都心部においては価格の上昇基調が継続している。一方で郊外においては需給のバランスにより価格上昇が落ち着き始めているエリアも見られ、エリアによる価格トレンドの強弱が出始めている状況である。
金利については日銀の金融政策による動向を引き続き注視すべき状況にあるものの、それほど大幅な上昇にはならないと見ており、当面不動産市場への影響は少ないと思われる。その他、地政学的リスクや為替変動の影響、国内外の物価動向や人手不足問題等、今後の景気への不安要素もあるが、経済活動がさらに活発化し、原材料上昇分の製品価格転嫁や賃金の上昇などがさらに進むことで、用途を問わず利便性の高いエリアを中心に、地価の上昇基調が継続する可能性がある。
当社としては、地価動向には引き続き注視するととともに、いつの時代もマーケットを重視し、お客様のニーズを的確に捉え、お客様にご満足いただける商品やサービスの提供を通じて、人々が安全・安心・快適に過ごせるまちづくりを推進していく。
不動産の本質的な価値を高める取り組み加速
三菱地所 中島篤社長
令和7年の地価公示では、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4 年連続で上昇し、上昇率も拡大した。特に、交通ないし生活利便性に優れたエリアや、インバウンド需要が見込まれるエリアでの地価上昇が顕著であった。また、オフィス市場においては空室率低下と賃料上昇の傾向が継続し、地価の上昇に反映されている。
住宅需要は堅調で、分譲マンションの価格が引き続き上昇を続けているほか、賃貸マンション等を含め今後も好調が続くものと見込んでいる。当社事業では、昨年発表した「ザ・パークハウス 武蔵小杉タワーズ」の販売が順調に進んでおり、大阪エリアでも「ザ・パークハウス 心斎橋タワー」など、交通利便性の高い好立地の物件は人気だ。
商業地に目を向けると、インバウンド需要の増加を背景に、ホテル事業やアウトレット事業も好調を維持。当社が空港事業を手掛ける宮古島エリアでウルトラ・ラグジュアリークラスのホテル「ローズウッド宮古島」が本年3月に開業したほか、2025年度中には当社グループの三菱地所ホテルズ&リゾーツが運営する「ロイヤルパークホテルズ」ブランドの運営客室数が6,000を突破予定。今後も積極的に全国各地のインバウンド需要を取り込んでいく。
オフィス市場では賃料の上昇が進む。丸の内エリアの空室率は昨年12月時点で1.97%と低水準を維持しており、当社グループの事業戦略として、各企業の経営資源たるオフィスへの付加価値提供を進め、賃料水準の底上げに一層取り組んでいる。また、昨年9月には大阪駅前の「グラングリーン大阪」が先行開業し、既に多くの来場者を迎えているが、本年3月21日には南館のオフィス棟が開業し、本格的な街の稼働が始まる。みどりとイノベーションをコンセプトに掲げるプロジェクトとしてここからが真価を問われる局面であり、求められる価値を徹底的に考え、提供していく。
日本経済では賃上げの定着や日銀の追加利上げなど、グローバルレベルのインフレを前提とした大きな動きがある。こうした時代の流れを味方につけ、不動産の本質的な価値を高める取り組みを加速させ、業界全体の成長へとつなげることで好循環を生み出していく。
ハード・ソフト両面で価格上昇に見合う商品の開発に注力
野村不動産 松尾大作社長
今回の地価公示は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇幅が拡大した。一方で、資材費や労務費を含む建築費の高騰が当面継続すると想定されるため、各事業セクターは厳しい事業環境にある。当社としては、動向を注視しながら、多様な用地取得方法の推進や、ハード・ソフト両面で価格上昇に見合う商品の開発等により今後も対応していく。
住宅市場に関しては、建築費の上昇により、厳しい事業環境が継続する見込みのため、急激に供給量が増えるとは考えづらい。しかし、昨今の賃上げ率拡大とそれに伴う世帯年収の増加により住宅取得意識は継続して強く、需給のバランスは当面崩れないと見ており、利便性の高い都心物件や郊外の駅地価物件などを中心に、売れ行きが依然好調である。住宅ローン金利は上昇傾向がみられるが、世帯年収の増加に伴い、現時点では顧客の購入マインドへの影響は軽微である。今後も引き続き動向を注視してゆく。
オフィス市場に関しては、出社や採用の増加により、当社主力ブランドのPMOに加えてサービスオフィスのH¹Oでもテナント企業の拡張移転ニーズが増えている。また、インフレ局面において、賃料増額へのテナント企業の理解は得られる傾向がある。2025 年に東京での新規供給が集中するため、一時的にマーケット全体で影響が出る可能性があるが、23 区全体のマーケット規模と過去からの供給量に鑑みると、需給バランスが急激に悪化するとは考えにくい。
ホテル市場に関しては、高い水準でインバウンド顧客の利用が続いており、当社運営ホテルにおいても直営ホテルとグループのUDSが運営するホテルが共に好調。「フェアモント東京」も開業することから、市況の活性化しているタイミングで多様なホテルタイプを提供することが出来る。
物流市場については、EC市場の需要増加と運転手の労働時間規制により人手不足が課題。一方で拠点分散の必要性により、賃貸ニーズは拡大している。当社では首都圏に加えて中間物流適地での事業拡大や、物流施設の開発のみならず、カテゴリーマルチの深化や物流オペレーションの自動化機器導入などの商品企画により、顧客ニーズを踏まえた付加価値を今後も提供していく。
今年2月末にはいよいよ「BLUE FRONT SHIBAURA」TOWER Sが竣工。3月には竣工式と、同日にJR浜松町駅から芝浦エリアをつなぐ緑のアプローチ「GREEN WALK」も開通。7月にはラグジュアリーホテル「フェアモント東京」、8月にはオフィスフロア、9月には商業店舗と順次開業を予定しており、当社の本社移転も予定している。オフィスフロアでは1フロア約1,500坪の都内最大級の「テナント企業専用の共用フロア」も提供する。他にも、多様な働き方に対応した多くのワークスペースを用意し、立地特性である空・海・緑に恵まれた自然環境を活かした水辺ならではの新しい働き方を当社自らが実現していく。
2030年をターゲットとする野村不動産グループビジョンに「まだ見ぬ、Life & Time Developerへ」を当社グループで掲げている。 そこに暮らす、働く、時を過ごす一人一人のお客様の生活「Life」や時間「Time」をさらに豊かにしていくために、新たな付加価値を創造し、お客様に多様な付加価値を提供できる不動産関連商品・サービスをこれからも提供していく。
地価公示は、不動産の取引動向や中期的な展望を反映したものであり、様々なマクロ指標と合わせて今後も重要指標のひとつとして注視していく。
デフレから脱却し成長型経済へ向かう「時代の転換点」
三井不動産 植田俊社長
今般公表された地価公示では、全国の全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。三大都市圏、地方圏ともに上昇傾向が続き、地域や用途により差があるものの、全体として上昇基調が鮮明となりました。景気回復の影響が全国的な地価上昇に波及した結果といえます。経済活動の活性化に伴い需要が創出され、日本の産業競争力強化、そして国富増大に結び付いているといえます。
都心部においては、大規模再開発事業が進展するエリアの地価上昇が顕著となりました。大規模再開発事業は、日本の国際競争力の強化に貢献し経済成長を牽引する役割を果たしており、我が国の未来を担うものとして、一層その必要性・重要性を高めています。また、オフィス空室率の低下や賃料が上昇傾向にあり、継続する住宅マーケットの好調さや、活況なインバウンド等から商業・ホテルの需要が堅調であり、地価上昇に反映されました。
地方圏では、引き続き、半導体関連企業の進出が進む地域や、物流施設需要が高まる地域での地価上昇がみられます。各地域の特色を活かした産業創造を進展させ、新しい時代の新しい形での地方創生が求められています。
世界では、トランプ政権の政策等のインパクトが各国経済および日本の経済・企業に与える影響をはじめ、様々な地政学リスクが懸念されます。日本経済においては、継続する賃上げにより賃金・物価の好循環への確度が少しずつ高まっています。日銀の利上げにより「金利のある世界」が戻り、デフレから脱却し成長型経済へ向かう「時代の転換点」にいます。
デフレの時代は付加価値が正当に評価されてきませんでした。付加価値を評価し、物価と賃金のプラスの連鎖を生み、成長型経済の実現につなげたいと考えます。
当社グループとしては、このような転換点を大きなチャンスととらえ、付加価値の創造力において圧倒的な力を発揮していきたいと考えています。「不動産デベロッパー」の枠を超えた「産業デベロッパー」として、日本の国際競争力の強化・新産業の創造に貢献し、新たな社会的価値と経済的価値の創出を両輪で実現してまいります。
令和7年地価公示 1990年の〝半値戻し〟 住宅地上昇率1位は2.4倍の沖縄・北中城村
流山おおたかの森駅(国土交通省ホームページから)
国土交通省は3月19日、令和7年地価公示(1月1日時点の地価)を公表。令和6年1月からの1年間の地価動向は、全国平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇幅が拡大した。
三大都市圏では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇幅が拡大。東京圏及び大阪圏では上昇幅の拡大傾向が継続しているが、名古屋圏では上昇幅がやや縮小した。
地方圏では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇。全用途平均・商業地は上昇幅が拡大し、住宅地は前年と同じ上昇率となった。地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)では上昇幅がやや縮小したが、その他の地域では概ね拡大傾向が継続している。
◇ ◆ ◇
地価上昇は続いているが、最も地価が高かったバブル期の1990年(平成2年)の地価水準と比較すると、令和7年の全国全用途の地価は50.1%で〝半値戻し〟であることが分かる。当時を知る高齢者の方はみんな〝異常〟であったことを認めるはずだが、いまの住宅・不動産市場が〝正常〟なの〝異常〟なのか分かる人は記者も含めてほとんどいないのではないか。
また、1990年と比較が可能な2025年の住宅地の価格でもっとも上昇率が高い区市町村は沖縄県の北中城村で、坪13.2万円から31.9万円と約2.4倍に上昇した。2位は約2倍の熊本県菊陽町、3位は1.8倍の北海道千歳市。
ベスト10のうち最北の北海道と最南の九州の9市町村が独占した。これらの地域はバブルの影響をほとんど受けていなかった地域でもある。
大阪一等地マンションは坪1,000万円沖縄の「村」は坪250万円でも人気大和ハウス(2024/9/11)
民泊も可能大和ハウス「沖縄」/増加する分譲ホテル・コンドリゾマンの行方は(2024/2/20)
2月の訪日外客数326万人 2月として過去最高 日本政府観光局
日本政府観光局(JNTO)は3月19日、2025年2月の訪日外客数は3,258,100人で、前年同月比で16.9%増となり、2 月として過去最高、初めて300万人を突破したと発表した。最多は韓国で847,300人(前年同月比3.5%増)で、中国722,700人(同57.3%増)、台湾507,300人(同1.0%増)。
一部市場で旧正月(春節)休暇が2月初旬まで続き、旅行需要の高まりがみられたほか、前月に引き続きスノー需要が高まる時期である中、豪州と米国を中心に訪日外客数が増加したことが押し上げた。
ベトナムで単月過去最高を更新したほか、19市場(韓国、台湾、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、インド、豪州、米国、カナダ、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、北欧地域、中東地域)で2月として過去最高を記録した。
グローバル不動産投資 2030年度にAuM10兆円に拡大 三菱地所
中島氏(三菱地所本社で)
三菱地所は3月19日、グローバル不動産投資市場に関する記者懇談会を開催し、代表執行役執行役社長・中島篤氏と執行役員投資マネジメント事業部長・稲川純路氏が、同社の投資マネジメント事業と市場動向について説明した。
中島氏は「当社は2001年に日本初のJ-REITを上場し、不動産投資事業に25年間取り組んできた。現在、国内外4拠点の連携を強化し、AuM(Assets under Management:運用資産残高)は目標の5兆円を達成。新たに2030年度末までに10兆円を目指す」と述べた。
稲川氏は市場動向について、「2023年末時点で機関投資家の不動産運用額は上位20社で約9,118億ドル。シンガポールのGIC Private Limitedは2年間で595億ドルから1,001億ドルに増加。日本ではゆうちょ銀行が18位にランクインし、298億ドルを運用している」と説明。また、投資ファンド運用会社では米国のBlackstoneが5,860億ドルで首位を独占し、3位のPrologisは2年前の1,011億ドルから2,188億ドルへ増加するなど、業界の寡占化が進んでいるとした。
米国市場では、物流施設はコロナ禍で需要が急増したが、供給過多や建設コスト高騰により調整局面に入っている。一方、賃貸住宅市場は人口移動の影響で一時的に空室率が上昇したものの、サンベルト地域への人口流入と経済成長により堅調な需要が続いている。
三菱地所は、ファンドやREITを活用した「ノンアセット事業」と、海外事業グループと投資家の出資による「ハイブリッド・モデル」を推進し、リスク分散と投資機会の拡大を図る。2020年度に策定した「長期経営計画2030」では、ノンアセット事業を成長領域と位置付け、当初の5兆円目標を2022年度に前倒しで達成。2023年3月には新たに2030年度末までにAuM10兆円、事業利益3,500~4,000億円、EPS200円、営業利益300億円を目標に設定した。
2025年3月期2Q時点のAuMは約6兆円で、国内23,500億円、海外36,500億円(米国29,000億円、欧州4,500億円、アジア・パシフィック3,000億円)。
今後は、グローバルな機関投資家から支持されるトッププレーヤーを目指し、商品の国際展開、商品ラインアップ拡充、投資家向け営業体制の強化を進める。投資マネジメント事業のプラットフォームは「Mitsubishi Estate Global Partners(MEGP)」として展開中。
同社の強みとして、日本市場における機関投資家との関係、ハイブリッド・モデルによるシナジー効果、デベロッパーマインドを活かした起業家精神によるアルファの創出を挙げる。また、成長中の米国子会社TA Realtyはデータセンター事業に進出し、全米で2.5GW規模の開発案件を進めている。