住宅用地が工業用地として売却できる米国 大和ハウス2026年3月期2Q説明会

芳井さん(山﨑さんかそう呼んだので「さん」付けする)
大和ハウス工業は11月17日、「2026年3月期第2四半期決算 マスコミ向けスモールミーティング」を開催。同社代表取締役会長/CEO・芳井敬一氏、同社代表取締役社長/COO・大友浩嗣氏らが出席して、記者団の質問に答えた。
同社の2026年3月期第2四半期決算は、売上高26,309億円(前年同期比0.8%減)、営業利益2,213億円(同5.6%減)、経常利益2,053億円(同7.1%減)、純利益1,377億円(同11.9%減)となり、開発物件売却の減少などにより減収減益。
セグメント別では、戸建住宅事業は売上高5,412億円(前年同期比7.9%増)、営業利益234億円(同6.4%増)。賃貸事業は売上高7,031億円(同6.4%増)、営業利益750億円(同14.0%増)。マンション事業は売上高1,342億円(同1.0%増)、営業利益75億円(同44.2%減)。商業施設事業は売上高6,371億円(同3.8%増)、営業利益850億円(同8.1%増)。事業施設事業は売上高5,918億円(同17.5%減)、営業利益617億円(同26.2%減)。環境エネルギー事業は売上高652億円(同3.6%増)、営業利益78億円(同9.8%増)。
2026年3月期の業績予想(退職給付数理差異等償却額を除く)は、売上高56,000億円(前期比3.0%増)、営業利益5,100億円(同14.6%増)、経常利益4,610億円(同11.2%増)、純利益2,900億円(同13.4%増)に上方修正。1株当たり年間配当も前回予想の期末95円を100円に増配し、年間175円(2025年3月期は150円)とする予定。
◇ ◆ ◇
会場で受付をしたら、同社広報担当の方から「牧田さん、これをどうぞ」と、ワイヤレス受信機を渡された。耳が遠くなり、この種の発表会で芳井会長が何を話されたかさっぱり分からなかったことを同社の広報の方に話したことがあり、そのことを覚えてくださったのだろう。ワイヤレス受信機を利用したのは多分小生一人だったはずだ。そのお陰で、発表会の一部始終を聞くことができた。まずは同社広報に感謝申し上げる。
さて、何から書くべきか。決算発表があったのは先週の13日(金)だ。前段ではその数値をほとんどコピペしたのだが、そんな数値を繰り返しても「か・ち・も・な・い」。多分、誰も書かないことを以下に紹介する。
驚いたのは、米国の戸建住宅事業が好調に推移していることについて質問した記者に対し、芳井会長は「住宅用地として取得した土地が、データセンターになるかどうかは分かりませんが、たまたま工業用用地として売却できたからということ。勘違いしないで頂きたい。住宅用地がデータセンターになるということ、(米国の)ゾーニングがそうなっているという国であるということです」と答えたことだ。芳井氏は、米国での住宅用地は向こう10年分の72,000区画を取得済みとも語った。
なるほどと思った。米国の都市計画・建築基準法がどうなっているのか小生は分からないが、わが国では住宅用地として購入した土地が工業用地として売却されることはまずありえない(工業専用地域が、何でも可の準工業地域に用途変更された事例はあるが、ごくまれだ)。
小生はこれまで「嫌悪施設」について何度も記事を書いてきた。物流施設や墓地などが法律用語でも何でもない「嫌悪施設」として扱われ、重要事項説明書に明記し、説明しなければならないことになっている。データセンターも「倉庫」扱いになっており、「嫌悪施設」として扱われ、住宅系用途地域では建築することは小規模を除き不可だ。小生は「嫌悪施設」とは何か、もう一度原点に戻って考え直すべきだと思う。
記者団からは、決算短信の定性的情報には一言も触れられていない、リブネス事業についての質問も飛んだ。とてもいい質問だと思った。待ってましたとばかり、大友社長は「住宅系『Livness(リブネス)』とビジネス系の『BIZLivness(ビス リブネス)』の2本柱で展開しているが、目標としていた売上高4,000億円を昨年度に達成し、今年度は4,500億円に上方修正した。2030年代には1兆円に伸ばす道筋をつけていく。『BIZLivness(ビス リブネス)』は宝の山」と話した。小生も大きな柱の一つになると思っている。
同社には一言いいたい。社長は記者団の質問に対して「(当社は)プレハブのオピニオンリーダー」と話した。その通りだろうが、ハウスメーカーとかデベロッパーとかの垣根・バリアなどないと思っている小生は、同社は住宅・不動産業界の断トツのリーダーだし、そうあるべきだと思っている。
にもかかわらず、マンション事業の業績はいま一つだ。年度によって上下する売上高1,342億円はともかく、売上総利益率15.5%、営業利益率5.6%は低すぎるし、地方物件比率が高いことを考慮しても完成在庫が504戸(2025年3月期の売上戸数1,504戸)もあるのは信じられない。
劣悪なマンションを分譲しているわけではない。近年では「船橋塚田」「昭島」「大倉山」など素晴らしい物件を供給した。大和ライフネクストが2022年9月から開始している外部管理者サービス「TAKSTYLE(タクスタイル)」の導入実績は2025年9月末で174件に達している。業界のビジネスモデルになると思っている。

大友さん(芳井氏がそう呼んだから「さん」付けする)
◇ ◆ ◇
前段の冒頭に戻る。芳井会長はミーティングの冒頭、「いつもと違う。司会の山﨑さんは長年、私の秘書役を務めてきた。失敗しないかひやひやしている。『芳井さん』と呼ばれるのも久しぶり。自分が自分でないような気がする。山﨑さん、頑張って」と切り出した。
ものすごくクリアに聞こえた。ワイヤレス受信機を装着していなかったら、絶対聞き取れなかった言葉だ。小生は何のことかさっぱり分からなかったのだが、山﨑さんは「最初はとても緊張しました。大役を果たせられたかどうか…」と語った。
山﨑さんの肩書は「広報企画部東京広報グループ上席主任」とあり、これまで7年間、芳井氏の秘書を務め、今年4月に着任した。スモールミーティングの司会を務めるのは初めてのことだった。
皆さん、いかがか。口さがない同業の女性記者は「孫娘、初舞台」と称した。また、別の男性記者は「年齢からしたら、孫娘はありえない。親子の関係」と横やりを入れた。
小生はどちらの意見にも与しない。芳井会長は67歳。山﨑さんの年齢は不明だが、孫娘か実子かどっちでもいい。〝自分が自分でないような気がする〟-芳井氏の言葉は何となくよくわかる。
それにしても、デベロッパーの三井不動産、三菱地所、住友不動産の3社が束になってもかなわない、売上げが5兆円超の社長・会長の秘書の仕事とはどのようなものだろうか、コロナ禍では〝おじいちゃん(お父さん)に感染させちゃいけない〟というプレッシャーは相当なものだったはずだ。その任務・重責から解放されて、山﨑さんはほっとしているのか、それとも別離を悲しく思っているのか…小生だったら前者を取る。
ワイヤレス受信機(パナガイド)の値段を調べた。4万円もする。高い。買えない。各社にお願いだ。この種の発表会に希望者に配布してほしい。

山﨑さん(芳井氏がそう呼んだから「さん」付けする)

会場で手渡されたワイヤレス受信機
「MFLP船橋プレミアムフェスタ2025」来場者4000人超(2025/11/10)
墓地に隣接〝田の字地区最後の低単価物件〟タカラレーベン他「京都河原町五条」(2025/9/23)
物流デベと既存の倉庫業は手を組むことはないのか大和ハウス事業施設説明会(2025/9/10)
〝東京の軽井沢〟2年間で1・2弾758戸を早期完売大和ハウス他「昭島」(2025/10/25)
大和ライフネクスト第三者管理者方式183件月1000円/戸検討に値する額ではないか(2025/10/15)
オープンハウス2025年9月期決算 過去最高の売上高、利益 戸建事業の利益率上昇
オープンハウスは11月14日、2025年9月期決算を発表売上高13,364億円(前期比3.1%増)、営業利益1,459億円(同22.5%増)、経常利益1,394億円(同16.0%増)、純利益1,006億円(同8.3%増)となり、過去最高の売上高、利益を更新、純利益が1,000億円の大台を達成した。戸建関連事業のほか収益不動産事業、アメリカ不動産名などの営業利益率が大幅に増加した。
セグメント別では、戸建関連事業の売上高は6,763億円(前期比102.7%)、営業利益695億円(同136.9%)。営業総利益率は17.1%(同3.1ポイント増)。契約件数は3,878件(前期は3,356件)、首都圏戸当たり単価は4,870万円(前期は4,860万円)。
マンション事業は、売上高732億円(同82.0%)、営業利益80億円(同75.5%)、営業利益率は11.0%(同1.0ポイント減)、引き渡し戸数は1,450戸(同323戸減)。
収益不動産事業は、売上高2,186億円(同93.9%)、営業利益2,319億円(同131.4%)、営業利益率10.6%(同3.0ポイント増)。11月にはリノベによる初のホテル「「KÚON 箱根強羅」を開業した。
その他(アメリカ不動産等)は、売上高1,512億円(同124.5%)、営業利益157億円(同141.0%)。中古戸建てが堅調に推移した。
プレザンスコーポションは、売上高2,273億円(同113.4%)、営業利益287億円(同101.3%)、引き渡し戸数は5,869戸(同426戸増)、うちワンルームは4,244戸(同510戸増)。
2026年9期期予想は売上高14,850億円(前期比11.1%増)、営業利益1,700億円(同16.5%増)、経常利益1,600億円(同14.7%増)、純利益1,120億円(同11.3%増)。1株当たり年間配当は188円(前期は178円)に増配し、自己株式取得約250億円を予定している。
都心マンションのメルクマールとなる東京建物「乃木坂」1期1次20戸完売

「Brillia Tower 乃木坂」
記者が今年一番の注目物件と目している東京建物「Brillia Tower 乃木坂」が好調なスタートを切ったようだ。注目しているのは平均坪単価で、2,000万円と言われていることだ。すでに都心の一等地の、いわゆるヴィンテージマンションの坪単価は2,000万円を突破しており、かつてのバブル期がそうであったように、中古価格がメルクマールとなって新築価格を引き上げる構図が「乃木坂」の好調スタートで完成したと見ている。
物件は、東京メトロ千代田線乃木坂駅直結、港区南青山一丁目の商業地域、近隣商業地域、第二種住居地域に位置する敷地面積約2,901㎡、27階建て全102戸 (一般販売37戸、募集対象外住戸65戸)。64.66㎡~176.39㎡(2025年11月中旬販売開始予定の専有面積は65.32~124.63㎡(戸数、価格は未定だが、本販売期以降の総販売戸数17戸に対応)。竣工予定は2028年1月中旬。設計・施工は三井住友建設。デザイン監修はホシノアーキテクツ。
同社は2025年3月31日からエントリーを開始しており、これまでの反響数は約6,700件。10月に第1期第1次として20戸(専有面積64.66~176.39㎡、価格3.2億円~25億円、坪単価は非公表)を供給しており、これまでに全戸が成約・申込み済みとなっている。

1階ラウンジ
◇ ◆ ◇
記者は、都心のマンション坪単価3,000万円が普通だった〝ドムス〟をはじめとするバブル期を知っているので、今回の物件が坪2,000万円と聞いてもさほど驚かないのだが、今後の都心部の一等地マンションがこの「乃木坂」が指標になるのは間違いないと見ている。
同社はかつて、エポックメーキングとなる「Brillia Tower 池袋」「Brillia Towers 目黒」Brillia Tower 堂島」などを供給して。以後のマンション市場を一変させたことがある。これに「Brillia Tower 乃木坂」が加わったということだ。
大阪の市場を劇的に変えた 東京建物&HPL「ONE DOJIMA PROJECT」竣工(2024/5/18)
「敷地売却制度」を活用したマンション 東京建物「Brillia方南町」

「Brillia方南町」
東京建物は11月4日、マンションの建替え等の円滑化に関する法律(マンション建替え法)を活用したマンション「Brillia方南町」のエントリーを開始した。1973年に竣工した「秋元ビル南台住宅」を再生するプロジェクト。
「秋元ビル南台住宅」は1973年に竣工した事務所、賃貸住宅および分譲住宅からなる地上権付区分所有建物で、建物の老朽化や耐震強度の不足などに加え、権利者にとっては大きな負担となる借地権の更新協議を控えていたため、同社は事業協力者として権利者様とともに建替え検討を進め、2023年6月に敷地売却決議可決、2024年4月に敷地売却に至った。
事業は、マンションの建替え等の円滑化に関する法律(マンション建替え法)の「敷地売却制度」を活用するもの。東京都のデータによると、令和7年3月末現在、同制度を活用した事例は15件。
物件は、東京メトロ丸ノ内線方南町駅から徒歩5分、中野区南台五丁目に位置する敷地面積約4,137㎡、11階建て全179戸(従前は賃貸住宅56戸など)。設計はNEXT ARCHITECT&ASSOCIATES、川口土木建築工業。施工は川口土木建築工業。竣工予定は2028年4月。
首都圏マンションデベロッパーの動静を知悉するトータルブレイン杉原副社長に聞く
.jpg)
杉原氏(2021年写す)
記者はいま、もっとも首都圏マンションの市場動向を的確に把握している人はだれかと聞かれたら、真っ先に分譲マンション事業の市場調査から設計・監理まで幅広いサービスを展開しているトータルブレイン取締役副社長執行役員・杉原禎之氏(62)を上げる。記者とは見解が異なる部分もあるが、質疑応答の形で杉原氏からいろいろ話を聞いた。以下にレポートする。 -と( )の部分は記者。
まず冒頭に杉原氏のプロフィールを紹介する。トータルブレインは1999年10月、当時、マンションの川上から川下まで知悉していた長谷工グループ出身の故・久光龍彦氏が立ち上げた会社だ。杉原氏も長谷工グループ出身で、創業時からの幹部として活躍してきた。
杉原氏は、1963年4月28日生まれ。62歳。長崎県佐世保市出身。趣味は還暦を前に始めたゴルフ(スコアは非公表)とサウナ。酒は「汗を流した後のストレス解消に最適」の500ml入りビールを1日3缶(第3のビール)。22時過ぎには就寝し起床は5時、睡眠時間は6時間(久光氏は20時~4時だった)。朝の6時台には出社。自宅はバブル崩壊後の最安値圏にあったころの大手デベロッパーの分譲マンション(記者もよく知っているレベルの高い物件)。
主な業務は、自ら作成した「月例レポート」を小脇に抱え、1日2~3社、月間50社のデベロッパー担当幹部などを対象に1時間超にわたり説明すること。レポートは20ページ超、今年10月現在の通算発行冊数は「257」とあるから、同社が設立されたころから続けているのだろう。あらゆるデータを縦から横から、あるいは斜めから分析し、数値化・見える化する〝技〟は見事というほかない。デベロッパー50社の中には、一部大手デベロッパーが入っていないので、杉原氏は「カバー率は半分くらいではないか」と謙遜したが、マンションプレーヤーの数からしたらほとんど網羅しているはずだ。
ここからが本番(本当はデベロッパーの動静を聞きたかったのだが、デベロッパーも杉原氏も外に漏れては困ることは話さないはずで、記者もそこまでは踏み込まなかったが…)。
-いよいよマンション価格はバブル期に近くなりつつあります。都心部は坪2,000万円超、郊外・地方もこれからは坪300万円を突破するのは必至。いまの市場をどう見ているか。
杉原 コロナ以降、都心も郊外もマーケットは大きく変化している。建築費は上昇し戸当り4,000~4,500万円、土地代を含めると 郊外でも6~7,000万円の世界になっている。都心部では、コロナ禍を経て価格は2倍以上に上昇しているが、開発用地不足で供給が減少、良好な需給バランスを背景に パワーカップル、富裕層や海外投資家など購買力がある層が市場をリードしており、堅調な市場を形成している。港区の一部のタワーマンション高層階の中古価格が坪2,000~3,000万円の水準まで達しており、2015年分譲の「ザ・パークハウス千鳥ヶ淵」では坪3,000万円超の成約事例も見られる(これは驚き)。既に一部の希少な都心のマンション価格は、ニューヨークなどの海外の価格水準に近付いてきており、今後の推移に関しては、日本の国力(経済成長力)・為替・海外富裕層需要動向などとのバランス次第と考えられるが、今後の更なる過度な上振れ余地は限定的とみている。
一方 郊外部では、一般的な需要層が価格上昇についていけなくなっている。取得限界を超えてきており、駅前立地などを除き、デベロッパーも慎重な姿勢を見せている。新築価格は上昇しているが、中古マンションは坪100万~200万円で推移しており、都心ほど価格は上昇していない。23区に比べ 通勤アクセスが劣るため、フルタイムの共働きが難しく、購入予算が伸びないことと、賃貸家賃相場も比較的割安なため「借りるより買った方が得」となりにくいことが要因と考えられる。そのため、現在の建築コストでは郊外での新築マンション事業の推進が難しく、今後郊外部では中古マンション市場がマーケットを支えていくのではないだろうか。実際に中古マンションは 住環境が優れている物件が多く、物も良い。(記者も同感。バブル崩壊後の市場回復期にはデベロッパーは基本性能・設備仕様を充実させて差別化を図った物件が多い)
-私は、不動産経済研究所などのマンション市況レポートでは専有面積30㎡未満を調査対象外にしているのは理解できますが、令和6年のマンション着工戸数に対する調査捕捉率は41.5%で、東京、神奈川は3割台。高額物件のインナー販売、大規模、再開発、建て替えなどの供給比率が高まっている現在、市場は極端に縮小などしていないと思いますが、いかがでしょうか。
杉原 国土交通省のマンション着工戸数には賃貸も含まれており、1Rやリートなどへの一棟売りがかなり含まれているのではないか(この問題には深入りしない。杉原氏も含め関係者、メディアも不動研のレポートを鵜呑みにしている。分譲と賃貸の仕様は全然異なり、分譲仕様が賃貸に流れるのは限定的だと思う)
-外国人が投資対象としてマンションを購入するケースが問題になっています。私は憲法第29条「財産権は、これを侵してはならない」と、民法第206条「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する」の規定から、法的規制をかけるのは難しいと思います。ただ、再開発など公的資金・補助金が投入されている物件は、何らかの、例えば一定期間の転売を制限するとか、「専ら居住」の条件を付けたりするのは可能ではないかと思います。マンションの外国人所有者の代理人制度を導入するのは賛成です。この問題はいかがか。
杉原 マンションは商品であり、商品取引は自由であるべき。外国人の不動産購入制限は、国家の安全保障上必要な水源地とか自然保護地域などでの土地取引 等に限るべきではないか。それよりも、マンション購入後の運用や入居後の使用に関しては、そもそも日本人の購入・利用を前提にした 区分所有法、管理規約、仕様細則などを、外国人の購入・保有を前提にした法体系に変更すべき。管理費や修繕積立金の不払いや、民泊利用については、法的な対応が可能な罰則規定 等をしっかり定めることが必要ではないか。
-ホテルコンドミニアムも多くはないが、一定の市場を形成しているように思われます。今後、どうなるでしょうか。
杉原 今はリゾート地が中心だが、ホテルコンドの需要はむしろ都心にあると思う。訪日需要の集中する東京での運用・利回り期待、希少性から需要はあるはず。ビジネスホテルの不足から、ウィークリーマンション、マンスリーマンションも、長期出張対応 等で法人需要が増えるのではないか。デベロッパーも新しい収益源の柱として都心部などでの展開を考えるべき。
-最近は、どこのデベロッパーも予告広告では戸数も価格も「未定」で、分譲の直前にならないと公表しません。いっそのこと「価格は時価」にしたらどうかという声すらあります。不動産公取協は絶対認めないでしょうが、私はこれもありかと。どう思われますか。
杉原 寿司屋じゃあるまいし、それはダメでしょう。そんなことを許せば、業界はますます情報開示に後ろ向きになる。開発者側は原価上昇や需要を見極めるために価格設定に慎重で、価格の公表を引き延ばすのは理解できるが、住宅は生活に必要なインフラであり、他の高級品・嗜好品とは異なるのではないか。(「価格は未定」という商品はありえないという見解は記者と同じだが、この回答にはいささか驚いた。オークションはありだと記者は思う)
-コロナ禍を経て、メディア向けマンション見学会が激減しています。私はコロナ以前までは年間100物件くらい見学していましたが、最近は50件を下回っています。価格暴騰の一方で、基本性能・設備仕様の退化が目立ちます。面積縮小、天井高の低下、トイレはタンクレスからタンク付き、キッチンカウンターはオプション、浴室タオル掛けはなし…これをどう思われるか。
杉原 面積縮小は、家族構成、ライフスタイルの変化を考えたら仕方のないこと。天井高が低くなっているとか、設備仕様が退行しているとは考えていない。一方で、ZEH対応とかSDGs対応でコストもかかっている。一概に質が低下しているとは言えない(杉原氏の立場は理解できないわけではないが、これは相当な見解の違いがある。記者はこれまでレベルの高いマンションを中心に取材してきたが、それらと比べると明らかに質は退行していると思う。中古マンションに関する9月と10月の月例レポートには、各エリアで値上がりしている物件が1,000件は紹介されているが、記者は少なくとも3分の1は見学取材している
-ところで、杉原さん、総合地所が埼玉県人も知らない加須(かぞ)市でマンション見学会を行うのですが、ご存じか。誰も「かぞ」とは読めなくて「かす」と読む。
杉原 加須? 東武線じゃないですか? 宇都宮線にありました? えっ、古河の手前? (記者は地理が得意で、わが国はもちろん全世界の主な山や川や平野、特産品、首都、主要都市を高校時代に丸暗記していたので、加須は知っていたが、行ったことは一度もない。マンションが分譲されたことはあるのか。今年最大の注目物件だと思う。坪単価がいくらになるのか)
「月例レポート」携え1日2~3社、月50社駆け回るトータルブレイン杉原氏(2024/10/20)
「ピンコロ」久光さんさようならトータルブレイン・久光龍彦社長「お別れの会」(2020/2/12)
令和6年度首都圏マンション着工に対する不動研の戸数カバー率41.5%
マンション供給減=市場縮小ではない戸建ても底入れ・回復へ今年の分譲住宅市場
持家の減少続く首都圏マンション2年4か月ぶりの6,000戸超住宅着工
全て疑ってかかれメディア・リテラシーの基本原則を忘れていないか
首都圏マンション 28年ぶり3万戸割れそれでも市場は低調ではないその逆だ
10月の中古マンション・戸建て 成約件数・価格上昇続く 東日本レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は11月11日、令和7年10月の首都圏中古市場動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は4,222件(前年同月比36.5%増)となり12か月連続、坪単価は281.7万円(同13.6%増)となり66か月連続、価格は5,325万円(同12.4%増)となり12か月連続でそれぞれ増加、専有面積は62.39㎡(同1.0%減)となり2か月連続で減少した。在庫件数は43,669件(同4.8%減)と3カ月連続で減少した。東京都区部の坪単価は446万円となっている。
中古戸建ての成約件数は1,804件(同53.7%増)となり12か月連続増加、価格は3,801万円(同0.6%増)となり2カ月ぶりに上昇、土地面積は154.52㎡(同11.9%増)となり、2か月連続して増加、建物面積は103.09㎡(同0.002%減)となり3か月連続で縮小した。
外国人の反響3割 斜線制限受けるもLD天井高2.7m ポラス3階建て戸建て「船堀」

「リーズン船堀アイ・ラウンジ(REASON FUNABORI I-LOUNGE)」
ポラスグループ中央住宅は11月11日、江戸川区の分譲戸建て「リーズン船堀アイ・ラウンジ(REASON FUNABORI I-LOUNGE)」のメディア向け見学会を行った。埼玉・千葉を本拠にする同社としては珍しい狭小敷地の3階建て全10戸で、9月12日からの完成販売を行い、これまでに6戸を成約するなど、好調な売れ行きを見せている。厳しい斜線制限をクリアし、2階リビング天井高を2700ミリ確保下商品企画と、マンションとの価格的競争力もあることが人気の要因で、土地柄もあり外国人の関心も高いようだ。同社は今後、この種の3階建てを増やす意向だ。
物件は、都営新宿線船堀駅から徒歩16分、江戸川区松江4丁目の準工業地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する全10戸。現在販売中の住戸(4戸)の土地面積は71.50~79.94㎡、建物面積は99.46~109.54㎡、価格は6,490万~7,790万円。建物は2025年7月完成済。構造は2×4工法3階建て。施工はグローバルホーム。
建物の完成を待って9月12日から販売を開始し6戸を成約。反響数は192組。半数は地元で、約3割は外国人。
現地は、船堀駅北口の遊歩道「船堀グリーンロード」を抜けた町工場、2~3階建て住宅が建ち並ぶエリアの一角。敷地は北西側の幅員5mの道路に接道。敷地中央に幅員4.5mの私道(コミュニティ道路)を設け、建物は道路を挟んでそれぞれ5戸ずつ配置(1棟は2階建て)。主な基本性能・設備仕様は、カースペース・セミビルトインガレージ、2階リビング天井高2700ミリ(1・3階は2400ミリ)、食洗機、挽板フローリング、床暖房、ソフトクローズ機能付きドアノブ、外水栓、バルコニー水栓など。
同社戸建分譲設計本部設計二部参事・本堂洋一氏は、「23区で初めての3階建てで、高度地区、斜線制限を受けながら、設計には時間をかけ工夫を凝らした。外観や木を取り込むなど空間デザイン性も高めており、同業他社の3階建てと一線を画す建物に仕上げた。この種の3階建て供給エリアを都内で広げられるのではないか」と語った。
また、物件の企画・販売を担当する同社戸建分譲千葉事業所市川営業所主任・松田英明氏は「営業所は昨年11月オープン。江戸川区での分譲は2か所目。駅に近いマンションか駅からはややあるが戸建てかを検討されているお客様が多い。土地柄、外国人の方も多く約3割。翻訳アプリ、アンケート、フリー見学などコミュニケーションを取るのに苦心しているが、年収は1,000万円以上の方が多く属性が高いのが特徴」と話した。

本堂氏
◇ ◆ ◇
記者はこれまで3階建ての分譲戸建てを見学・取材したことは数えるくらいしかない。同社の3階建てを見学するのは初めてではない気がしたので、検索したら2017年8月に見ていた。ただ、3階建ては圧倒的に少ないはずで、年間2,700~2,800戸のうち数%とのことだった。
23区内の分譲戸建ては、低層住居専用地域などを除き3階建てが普通になっている。松田氏も話したように、23区内のマンションの坪単価は400万円を突破している。20坪で8,000万円以上だ。駅からの距離はともかく、価格的には十分競争力がありそうだ。

「船堀グリーンロード」
周囲の街並みに配慮大和ハウス 3階建て分譲戸建て「セキュレア文京目白台」(2020/6/29)
ペンシル戸建てと一線画す都心ど真ん中に3階建て分譲大和ハウス「四谷三栄町」(2019/6/29)
ポラス学生コンペ実物件化モデルハウスを公開 ミニ開発の難点を解消(2017/8/12)
環境配慮の紙の食器と〝ヴィーガン〟の食材に拍手喝采 三井ホーム記者懇親会

ケータリング会社提供
三井ホームが11月4日に行った記者懇親会の記事は先に紹介したが、記者は野島社長や他の方との懇談もさることながら、驚いたのはフロアには建築に関する専門書がたくさんあったことと、供されたつまみ類などを盛る皿などが紙の食器だったことだ。同社を通じてケータリング会社から許可が下りたので、紹介する。
紙の皿は、竹とサトウキビの繊維で作られた「wasara」だった。記者はこれまで、数えきれないほどのデベロッパー、ハウスメーカー、業界団体などの記者懇親会に出席してきた。圧倒的に多いのは一流ホテルなどだが、コップや皿が紙製なのも経験している。しかし、今回の「wasara」は初めてだった。ひょっとしたら食べられるのではないかとかじってみたが、硬くて無味無臭だった。デザインもなかなかいい。
提供された食べ物については、酒しか興味がない記者は何とも言えない。メニューには①ファラフェルとドライトマトとグリーンオリーブのピンチョス②うなぎとだし巻き玉子と胡瓜のピンチョス③焼き茄子のポン酢ジュレ いくら添え④紅ずわい蟹といくら・イカ墨ポテトのタルトレット⑤3種の手鞠寿司⑥ロースカツサンド⑦真鯛の昆布締めと蕪のカルパッチョ⑧じゃがいものニョッキ かぼちゃ豆乳クリームグラタン⑨nonpiのサスティナブルカレー⑩ヴィーガンカカオムース-などとある。このうち記者が食べたのは⑤⑥⑦⑨くらいか。
いま知ったのだが、動物由来の食品を使用していないヴィーガンメニューも取り入れられていた。これもいい取り組みだ。我々はバーチャルウォーターの考えを食卓に取り込むべきだとずっと考えてきた。ネットで調べたら、牛丼一杯で使用されるバーチャルウォーターは2,404ℓで、内牛肉が2,060ℓを占める。
この種のイベントは歓談するのが目的だ。高価な食材や食器など必要ない(やはりワインはグラスで飲みたいが)。環境や健康を優先する同社に拍手喝采。追随するところが増えてほしい。

「wasara」

「wasara」(ケータリング会社提供 )
「木造の建築物を建てれば最後は森になる」三井ホーム野島秀敏社長 記者懇親会(2025/11/7)
「MFLP船橋プレミアムフェスタ2025」来場者4000人超

「MFLP船橋プレミアムフェスタ2025」
三井不動産ロジスティクス本部が主催し、各テナント企業・関係者・テナントワーカーが協賛・協力して11月8日に行われた第4回「MFLP船橋プレミアムフェスタ2025」を見学した。記者が訪ねたのは午後2時過ぎで、地元船橋市の人気キャラクター「ふなっしーファミリー」が登場するスペシャルステージは黒山の人だかりができており、会場の至るところにパレットが椅子やテーブルに利用されており、段ボールのワークショップも行われていた。来場者は4,000人を突破した。
「MFLP船橋」は、これまでも数回取材している。単なる物流倉庫ではなく、「アイスパーク船橋」や広場、一般も利用可能なカフェ&レストランなども併設されており、同社がテーマとしている〝街づくり型ロジスティクス〟は実現されていると思う。
見学の目的は、不動産流通促進センターが〝嫌悪施設〟として例示している「倉庫」(ロジスティクスは「倉庫」でないという意見もある)敷地内で行われるイベントはどのようなもので、どのような人が参加するのかを確認することにあった。
訪れたのは午後2時過ぎだった。至るところにパレットが休憩スペースの椅子やテーブルとして利用されており、段ボールによるワークショップも行われていた。いかにもロジスティクス施設でのイベントだと感心もし、納得もした。
来場者は圧倒的に家族連れが多かったのだが、会場の一番奥に設けられていた「スペシャルステージ」は長蛇の列ができており、地面に敷物を敷いてイベントを待つ、年代にしたら40~60代の女性で溢れていた。
なにが始まるのか聞いたところ、船橋市の人気キャラクターふなっしーとそのファミリーが登場し、トークショーを行うとのことだった。どこから訪れたかも聞いた。地元の人もいたが、立川市、川崎市、流山市、墨田区など1~2時間かけて駆けつけた人も多かったのに驚いた。(皆さん、ご家族やお友達ですか)「いえ、〝なしとも〟です」(なしともって果物の梨ですか)「いえ、ふなっしーの友達です」(なるほど、ほとんどの人がふなっしーの布袋、人形を持っており、帽子をかぶっていた)。
どこがいいのか聞いたら、〝かわいい〟〝癒される〟〝頭がいい〟〝機敏な動きが素晴らしい〟などの答えが返ってきた。
スペシャルステージでは、和狼太鼓、千葉ジェッツ、船橋小学校音楽クラブ、高橋大輔氏、サウンドストリームジャズオーケストラ、元サッカー日本代表坪井慶介氏、船橋市立若松中学校吹奏楽部などによる演奏やトークショーが行われ、南船橋にゆかりのあるスポーツチームのアトラクション、館内見学、バスツアー、フードコーナー、ワークショップ、マルシェなども行われた。イベントは今回で4回目、来場者は4,000人超となった。
会場内では酒は提供されておらず、タバコも不可なので、早々に退却し、駅前の「三井ショッピングパーク ららテラスTOKYO-BAY」の「どうとんぼり神座」のラーメンを食べ、ビールを飲んだ。ここには喫煙所もある。

ふなっしーのイベントを待つ人



休憩所の椅子などに利用されていたパレット

段ボールのワークショップ

隣接のマンションは外資系デベロッパーが開発して話題になった

三井不動産ロジスティクス事業国内外78施設約610万㎡累計投資額1兆3,000億円(2025/8/4)
お披露目イベントに招待客2500人三井不・MIXI「ららアリーナ東京ベイ」完成祝う(2024/5/29)
三井不 2棟目のハイブリッド木造賃貸オフィス「日本橋本町一丁目5番街区」着工

「(仮称)日本橋本町一丁目5番街区計画」
三井不動産は11月4日、同社にとって「日本橋本町三井ビルディング&forest」に次ぐ2棟目のハイブリッド賃貸木造オフィスビル「(仮称)日本橋本町一丁目5番街区計画」を11月1日に着工したと発表した。
高層階の8~11階を純木造のオフィス空間とし、低層階の2~7 階にも主要構造部の一部にて木造耐震壁を採用することで、900 ㎥超の木材を活用し約660トンの二酸化炭素を固定化する。また、三井ホームが独自開発した木造技術「MOCXWALL」をオフィス向けに改良し国内初適用するほか、大径木(末口30㎝以上の丸太)の製材を活用、一般流通規格の木材を積極的に活用し、1万㎡超のオフィスビルで都内初、Nearly ZEB(事務所部分)を取得予定。建物のエネルギー消費量を基準値に対して75%削減する。同社グループが保有する約5,000ha(東京ドーム約1,063個分)の森林の木材も活用する。
施設は、中央区日本橋本町一丁目に位置する敷地面積約2,000㎡、鉄骨造・木造・一部SRC造11階建て延床面積約18,000㎡。設計は山下設計、施工は大林組。竣工予定は2028年2月末。


