8月の前年同月比 成約件数 中古マンションは55%増、戸建て69%増 東日本レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は9月10日、令和7年8月の首都圏不動産流通市場動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は3,553件(前年同月比54.5%増)で10か月連続の増加、坪単価は280万円(同13.5%増)で20年5月から64か月連続で上昇。成約価格は5,279万円(同13.5%増)で10か月連続で上昇。専有面積は62.21㎡(同増減なし)となった。在庫件数は44,578件で、前年同月比マイナス1.4%と2か月ぶりに減少した。
中古戸建の成約件数は1,611件(同69.4%増)で10か月連続の増加、成約価格は3,894万円(同2.9%増)で2か月連続の上昇、土地面積は146.40㎡(同1.6%減)、建物面積は建物面積は103.55㎡(同0.3%減)となった。在庫件数は23,567件となり、前年同月比プラス6.3%と22年9月から36か月連続で増加するも、増加率の縮小が続いている。
最高の立地で世界初のリニア式ロボット「CUEBUS」 「DPL江東深川」のビームス
「DPL江東深川」(ビームスのプレス・リリースから)
大和ハウス工業は9月9日、「2025年度 事業施設事業計画説明会」を開催し、同社上席執行役員ビジネス・ソリューション本部建築事業本部長の更科雅俊氏が事業施設市場環境や同社の重点取り組みについて説明した。説明会後は、豊洲駅から徒歩10分の「DPL江東深川」の施設見学会を行った。
〝後入れ先出し〟-稼働中の物流施設を見学したのは初めてで分からない部分も多かったのだが、物流業界の近未来が垣間見えた。こちらから先に紹介する。
「DPL江東深川」は、東京メトロ有楽町線豊洲駅から徒歩10分、JR京葉線越中島駅から徒歩10分、首都高速枝川IC・塩浜ICから0.7㎞、江東区塩浜1丁目の準工業地域他(建ぺい率60%、容積率315%)に位置する敷地面積約36,882㎡、免震PC造7階建て延床面積約138,464㎡。竣工は2022年1月。従前は備蓄米の倉庫だった国有地で、2017年に同社が入札により取得した。
1階は駐車場で、2階は第一貨物、3階はヤマト運輸、4~6階の西区画はBEAMS(ビームス)、7階はエスプールプラス、SNKRDUNKBASEが入居済み。4~6階の東街区(約10,000㎡)は募集中と申込書取得済み。
内装は入居企業のビームスが担当しており、大和ハウスのハートレッドにビームスのオレンジを組み合わせたカラーをコンセプトにしている。今年6月1日、近隣住民を対象とした、COCOLAN(ミニ胡蝶蘭)鉢植え体験やビームスの販売会、フードブースを楽しめる施設見学ツアーには約800人が参加した。
ビームスグループはアパレル、雑貨、家具、アートなどを扱う国内外約170店のセレクトショップを運営しており、業容を拡大している。
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施設見学会では、ビームスの世界初導入というリニアモーター式ロボット「CUEBUS(搬送タイプ)」と、自律型ケースハンドリングロボットシステム「HaiPick SYSTEM」が紹介された。
ロボットは、タイルと呼ばれるリニアモーター内臓のユニットを床面に置き、そのタイル上を移動するトレイが商品を載せて搬送する構造になっており、商品の検品、搬送に要する時間は半減されたという。秒速は最大3m。
「HaiPick SYSTEM」は、高さ約4.7mのラック、自律型ケースハンドリングロボット(ACR)、「HAI PORT Workstation」のモジュールで構成されており、エリア内には57台のACRが稼働しており、25~30人要する作業を4~6人でこなせるようになったという。
リニアモーター式ロボット「CUEBUS(搬送タイプ)」(ビームスのプレス・リリースから)
リニアモーター内臓のユニット・タイル(ビームスのプレス・リリースから)
「HaiPick SYSTEM」(ビームスのプレス・リリースから)
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ロボットのデモンストレーションは三井不動産の施設で見学したことがあるが、実際に稼働しているのを見たのは初めてだ。凄いの一言だ。
まず立地条件。ビームス担当者が「立地条件の良さが入居を決めた最大のポイント」と語ったように、〝嫌悪施設〟と呼ばれるのが気の毒なくらい立地条件はいい。坂茂氏の〝紙のレストラン〟が利用できる芝浦工大が近接している。入札条件には「住宅は不可」があった模様だが、マンションにしたら今なら坪単価450万円でも売れるはずだ。
次に、目を射たのはエントランス、各フロアの内装に採用されている案内板などのカラーリングについて。大和ハウスのハートレッドとビームスのオレンジ(LIXILやLIFULL HOME'Sのそれとはどう違うのか)とよく馴染んでいる。とっさにエルメスカラーが思い浮かんだので、同社広報担当者に尋ねたら「エルメスは意識していない」とのことだった。
ビームスを検索した。年齢、身長、体重などを入力すると、適する商品が紹介される。これに体型、好みの色(記者の好きな「赤」はかつての東海銀行のコーポレートカラーで、今は「Winstonレッド」)、予算などを加えられるようにしたら、デパートなど必要なくなるのではないか。
気になることもあった。ロボットは1日24時間365日、労基法も暑さ寒さも関係なく(施設内は冷房がよく効いていたが)、文句も言わず働き続けることが出来るのだろうが、人はそういうわけにはいかない。関係者や他の記者の方は「気にならない」と話したが、機械による騒音も気になった。
1階の駐車場の有効天井高が2.3mというのも物流施設としてはどうかと思った。免震装置の地下化は出来なかったのか。
大和ハウスのハートレッド(左)とハートレッドとBEAMSのオレンジを組み合わせた色
自律型ケースハンドリングロボット(ACR)
「CUEBUS(搬送タイプ)」
ビームス施設内
豊洲二・三丁目の最後にして最高の再開発PJ IHI・三菱地所「豊洲セイルパークビル」(2025/7/23)
まさに紙わざ ヒントは「6」坂茂氏が設計した芝浦工大のレストラン&カフェ(2022/10/25)
なぜ特殊詐欺の被害者は女性が多いのか 男と女、仕事と子育て…永遠のテーマ
ジェンダーフリー、男性育休には関係ないことだが、記者は特殊詐欺の被害者は65歳以上の高齢者、とりわけ女性が飛びぬけて多いのが不思議でならない。「愛など必要ない」「すべてはお金」「男は愚か」と話した女性にも会った。男性よりはるかに合理的に物事を考えるはずの女性が、益々分からなくなってきた。皆さんも考えていただきたい。
警察庁の「令和7年7月末における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」によると、特殊詐欺の認知件数は15,583件(前年同期比+4,825件、+44.9%)、被害額は722.1億円(+437.7億円、+153.9%)となり、過去最悪だった前年の年間被害額(718.8億円)を超えた。
主な特徴は、ニセ警察詐欺による被害が顕著になっており、SNS型投資詐欺の認知件数・被害額は極めて深刻な状況にあり、SNS型ロマンス詐欺も大幅に増加していることだ。「YouTube」から接触する被害が急増しており、「投資名目の広告」や「ダイレクトメッセージが危険」と同庁は警鐘を鳴らしている。
深刻なのは65歳以上の被害状況で、特殊詐欺全体では52.9%(男性18.7%、女性35.2%)に達しており、手口別では、オレオレ詐欺44.7%(男性13.2%、女性31.5%)、預貯金詐欺99.0%(男性16.0%、女性83.0%)、架空料金請求詐欺35.8%(男性23.5%、女性12.2%)、還付金詐欺82.7%(男性34.9%、女性47.8%)、キャッシュカード詐欺98.7%(男性19.0%、女性79.7%)となっている。
さらに、興味深いのはロマンス詐欺だ。これも警察庁のデータだが、〝あなたが好き。もっと交流したい〟〝1日中あなたのことを思っているよ〟などの甘言に引っかかる被害者は令和6年1〜6月だけで1,498人(男性62.3%、女性37.7%)もいる。年齢別では男性は50〜60歳代、女性は40〜50歳代が共に半数を超えている。接触ツールはマッチングアプリ、インスタグラム、フェイスブックなど。被害総額は153.9億円だ。単純計算すると1人当たり被害額は約1,027万円にものぼる。
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記者はそもそもお金などないし、警察のお世話になるような犯罪行為などしたことはないし(学生のとき、違法だという認識はあったが、不動産広告を電柱に張るアルバイトをしたことがあり、夢中で張っていたら運悪く交番の前の電柱だったため、お巡りさんに呼び止められ過料を科されたことがあるが)、SNSは利用したことはないし、マッチングアプリ、インスタグラムも何のことかさっぱり分からない。株投資はリーマン・ショックで手ひどい打撃を受けから20年近くやっていないし、ロマンスとも無縁、キャッシュカードも持たせてもらっていない。
小生と同じ人種であるはずの、高齢者がやすやすと詐欺に引っかかるのか。その理由は、多分、世の中が狂っていることの反映であり、善悪の判断が出来なくなっている高齢者の弱点を突いた狡猾な手口のなせる業だろう(加害者は圧倒的に男性が多い理由は分からないではないが)。それにしても、なぜ女性の被害が多いのかは、生物学的な性差によるものか、あるいは社会的文化的歴史的な道徳規範の呪縛・性差とも関係があるのか、みんなで考えないといけない。
家父長制が色濃く残っていた昭和24年に生まれた記者の4つ上の長兄は〝学校嫌だ〟と駄々をこね、母におんぶされて学校まで通っていたのを3歳児の次男の記者はなぜか覚えている。母親におぶさったのは、風邪をひいて動けなくなったときだけだった。恥ずかしくはあったが、医院までの道のりはとても誇らしく思ったものだ。
妻が死に、約10年間主夫を務めた(と思い込んでいた)、子育てに完全に失敗した小生の蹉跌は子どもとハグすることができなかったことだ。男と女、仕事と子育ては永遠のテーマだ。
「育休を考える日」のPJサイト公開 積水ハ 賛同企業・団体は過去最多174
9月19日を「育休を考える日」として2019年から記念日に制定し、さまざまな男性育休を考えるプロジェクト「IKUKYU. PJT」を毎年実施している積水ハウスは9月8日、同日から随時、賛同企業・団体と共に、各社の取り組みや男性育休取得推進に関するメッセージをプロジェクトサイトで発信していくと発表した。9月19日(金)には「男性育休白書2025」の発表会を開催する。
プロジェクトは、2022からは男性育休取得推進に賛同する企業・団体とともに展開しており、今年は過去最多となる174の企業・団体((昨年は154の企業・団体が賛同)している。住宅・不動産業界では野村不動産ホールディングス、レオパレス21が賛同している。
プロジェクトサイトでは、「#育休を考える日」を付けたSNS投稿やリリース配信、オウンドメディアでの記事掲載など、さまざまな形で男性育休に関する情報を発信していく。サイトは次の通り。https://www.sekisuihouse.co.jp/ikukyu/
WEB 動画「僕のはじめての育休|#育休を考える日」
積水ハウス「男性育休白書2024」取得率は過去最高27%「とるだけ育休」課題も(2024/9/23)
積水ハウス「男性育休白書」男性の家事・育児力トップ沖縄県/ランク乱高下はなぜ(2024/9/23)
同床異夢夫も妻も相手の家事労働に不満6割深刻な実態浮き彫りリンナイ調査(2024/9/1)
男性の家事・育児力 1位は高知県ワーストは茨城県積水ハウス「男性育休白書」(2023/9/19)
男性の家事・育児力 1位高知 2位沖縄 3位鳥取ワーストは山口積水「男性育休白書(2022/9/14)
三重と福岡同じ育児時間で幸福度は47位と1位積水ハウス「男性育休白書」(2021/10/1)
多様な取り組みのトリガーに/三重県最下位に転落男性育休フォーラム2021(2021/9/17)
積水ハイクメン白書2020全国ランク九州男児が上位独占かかあ天下群馬は最下位(2020/9/19)
夫婦は「6と9」「9と6」か「6と6」「9と9」もありか 等々力駅前「大吉」の箴言
等々力駅前の居酒屋「大吉」
〝閑中閑〟-今日9月6日は、わが西武ライオンズが2か月半ぶりに3連勝した翌日だ。何か意味があるのかないのか分からないが、前日の酒はすっかり抜け、とてもとてもゆったりした気分で、暇にあかせて書く、不動産には全く関係がない記事なので、忙しい皆さんはスルーしていただいて結構だ。
この2日前の9月4日、伊藤忠都市開発の素晴らしいマンション「クレヴィア等々力」の取材を終えたあと、同業の記者と駅前の居酒屋に寄った。暖簾は文句なしの「大吉」だ。提灯はというと女性の唇と一緒。注意を喚起はするが、抗いがたい誘惑に吸いつけられる「赤」だ。
店に入ってしばらくして、隣の記者が〝吉田類〟〝酒場放浪記〟を口にした。小生はチンプンカンプン。物知りの記者の解説によると、BSテレビの人気番組で、かつて「大吉」も舞台になったという。番組は店の紹介というよりは、吉田類の〝たかり〟がテーマなので、「大吉」の店主は会話を交わすことなどなかったそうだ。(ネットで確認した。小生もその番組を見たことがある)
小生はそんなことはどうでもよかったのだが、一見して同年代と思われる店主の隣の、愛嬌など全く振りまかず、かつてはとびっきりの美人だったはずの、多分奥さんと思われる女性に沸々と興味が湧いてきた。
物は試しだ。ビールだけで何もつまみを注文しないと話などできないと判断し、焼き鳥10本と小生が好きなトマトを頼み、口火を切った。何と主人は小生と同い年の昭和24年生まれの76歳で、誕生日は「終戦記念日」の8月15日。札幌出身だ。奥さんには「一回り下でしょ」と振ったら、何とまた、札幌出身の同い年だった。
どこで知り合ったかは話さなかったが、結婚したのは22歳の昭和46年の6月6日。翌年に東京に出て修行を積み、30歳のときに出店したのだそうだ。それから45年。当地に住んでいた五島慶太の話題や、等々力渓谷にある「メガネ橋」の由来、バブル期の繁盛ぶり、北海道料理は何といってもジンギスカンで、魚は揚げるとうまいこと、ニジマス、ニシン、ホッケ、サンマ、カレイ、ホヤ、牡蠣(これば厚岸など北海道の北のはずれで生産されるので札幌にはない)…に話題が弾んだ。
そして、何より感動し、意気投合したのは店主と小生はアンチ巨人なのも含め、ほとんど生き方、考え方が一緒だったことだ。奥さんも褒めたように〝仕事が凄い〟のだが、そのほかのことはちゃらんぽらん。夫婦げんかもするそうで、主人の〝うるさい!〟〝もういい〟で落着するという。そうなると主人は、しばらくは風呂に入るのとトイレに行くときくらいしか部屋を出ないそうだだ。これまた小生夫婦と同じ。
極めつけは、主人の「人生は永遠の修行」の一言であり、奥さんの意味深な言葉「永遠のテーマ? 愛なんて考えたくない。無言の事実」だ。これ以上の箴言はない。言葉は短く、意味は深く。(小生のテーマは「人生は愛」だ)
勘定はいくらか分からなかった。小生は有り金5,000円をはたいた(かみさんが「あなたは渡すとみんな使っちゃう」と1日5,000円しかくれないのだ)。思えばバブル期の一晩の飲み代はこの10倍もしばしばだった。それでも給料袋に手を付けたことはなかったし、そもそもいくら貰っているのかの関心もなかった。
これからのマンション市場は誰も経験したことがないバブル超えとなる。〝山高ければ谷深し〟に、夫婦関係が「6と9」から「9と6」にならないことを祈るばかりだ。待てよ、この「大吉」夫婦が結婚したのは「6と6」だ。これはどういう関係か。「9と9」もありか。
「クレヴィア等々力」を見学される方は、ぜひとも等々力渓谷をゆっくり散策し、その帰りには「大吉」に立ち寄っていただきたい。
ご夫婦
店内
火あぶりにされるニシン
見事なニシン(同僚記者は尻尾の部分ばかり食べた。小生ははらわた。魚ははらわただ)
等々力渓谷が通勤・通学路 1低層の伊藤忠都市「等々力」 庭園が見事(2025/9/5)
タワーマンションの高度な管理に課題 マンション管理協「管理状況調査2025」
マンション管理業協会は9月4日、会員344社を対象にした「マンション管理状況調査2025」結果の概要を発表した。マンション管理業の総合的な基礎資料とするもので、これまで「マンション管理トレンド調査」として実施してきたものを、今年度より改称したもの。調査は、全会員会社344社を対象にしたもので、回答社数は304社(回答率88.4%)だった。
主な調査項目である長期修繕計画に対して修繕積立金の積立金額が不足しているマンションの割合が36.6%になっている「長期修繕計画における修繕積立金不足への対応」については、各社ともに「修繕積立金の値上げ」「修繕工事の見送り・仕様ダウン等」「長期修繕計画の見直し(修繕周期を長期化等)」を行っていると回答。
「複合用途型・タワー型マンションへの対応」(高さ20m、20階建て以上)については、複合用途型は61%の会員社が管理受託しているが、タワー型は30%の会員社が受託するに留まっているとし、各社とも「高度な要求に対応できる営業担当(フロント)、管理員・コンシェルジュの配置」、「特殊な設備の点検・修理」に問題・課題を感じている。
「災害等対策の実施状況」については、約半数の会員社で事業継続計画(BCP)を策定・作成中であるとし、従業員の安否確認体制の整備が約80%、72%の会員社で「防災備品の購入」を提案している。
女性活躍と木質化推進を 旭化成ホームズ「サステナ説明会」
左から岡前氏、大和久氏、武藤氏、友松氏
旭化成ホームズは9月5日、サステナビリティ説明会を開催し、同社代表取締役社長・大和久裕二氏、常務執行役員兼人事部長・岡前浩二氏、DE&I推進部長・友松登喜子氏、執行役員サステナビリティ推進・DE&I推進・武藤一巳氏がサステナビリティの取り組みについて説明した。配布資料はA4にして22ページにもわたるもので、全ては紹介しきれないが、記者が注目したものを中心に以下に紹介する。
まず、「旭化成ホームズグループVision for 2030」で掲げる「With Customers」「With Environment」「With Employees」の3つのマテリアリティのうち「With Employees」から。同社のこの種の記者発表会は初めてと思われる友松氏は、管理職における女性の人数(2021年度末からの増加率)について2023年度の28.5%から2024年度は45.7%に激増したと報告した。記者はこの数字にびっくりした。ありえない数字だと。
何のことはない、( )書きされた小文字の(2021年度末からの増加率)を記者は見落とし、女性管理職の比率が激増したと読み間違えたのだ。厚労省のデータによると、旭化成ホームズ単体の従業員に占める女性の割合は32.6%(正社員)で、管理職に占める女性の割合は2.8%(-人)だ。
この数値は自慢できるものではない。増加率が激増しているのはそもそも分子が小さいからだ。タレントマネジメントシステム「CaMP(キャンプ)」「キャリアチャレンジ制度」「新規事業創出プログラム 『WAKUWAKU(ワクワク)チャレンジ』」などの成果が上がっているのだから、女性活躍にもっと力を入れてほしい。社長直下かつ独立組織とすることでDE&I推進を加速させるのは正解だと思う。
同社は9月5日付で「旭化成ホームズグループDE&I方針」を発表。「Diversity(多様性)ダイバーシティとは、一人ひとりの違いを可能性と捉えること」「Equity (公平性)エクイティとは、一人ひとりに最適な支援が提供され、公平に機会をつかめること」「Inclusion (包摂性)インクルージョンとは、違いを尊重し・活かし合うこと」としている。
「With Customers」「With Environment」では、ZEHを超える環境性能(GX志向型住宅)「earth-tect」、RE100の達成、ZEH・ZEH-Mの推進、まちもりの推進、ALC廃材を活用した世田谷区との「グリーンインフラ」実証実験などについて報告した。
注文するとすれば、まちもりの推進の2025年度目標50%は低すぎると思う。「5本の樹計画」に追いつき、追い越す取り組みが必要だ。あとは、木造・木質化の取り組みを強化してほしい。
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同社は9月5日、大手ハウスメーカー初の住宅の建設~解体までの生涯CO2収支ゼロを目指す戸建て新商品「earth-tect(アーステクト)」を同日から販売開始したと発表した。
建物の建設~運用~改修~解体(廃棄)までの累積CO2排出量を算出し、HEBEL HAUS由来の環境価値(非化石証書)を用いてエンボディドカーボンに充当する考えを採用している年間販売棟数は200棟。
「earth-tect(アーステクト)」
「BORIKIえほん箱」は〝無印良本〟出版業界も学ぶべき旭化成不レジのイベント盛況(2025/7/26)
建て替えより改修のほうがライフサイクル脱炭素に有効住友不・東大・武蔵野大(2023/6/20)
等々力渓谷が通勤・通学路 1低層の伊藤忠都市「等々力」 庭園が見事
「クレヴィア等々力」
伊藤忠都市開発が分譲中の「クレヴィア等々力」(25戸)を見学した。分譲開始から9か月で8割が成約し順調な売れ行きを見せている。環八・第三京浜に近接しているが、窓を占めるとほとんど音は聞こえず、リビング天井高250ミリ以上、徒歩数分の等々力渓谷が通勤・通学路にもなり、風致地区に指定されていることなどが来場者に評価されているという。
物件は、東急大井町線等々力駅から徒歩8分、世田谷区中町一丁目の第一種低層住居専用地域、第二種住居地域に位置する3階建て25戸。専有面積は54.71〜86.10㎡、価格は8,690万~14,990万円。先着順で分譲中の住戸(5戸)の専有面積は71.40〜86.10㎡、価格は10,890万〜14,990万円。坪単価は530万円。建物は2025年6月に竣工済み。設計・監理はインター・プロデュース一級建築士事務所。施工は第一建設工業。販売代理は伊藤忠ハウジング。
昨年9月からエントリーを開始し、これまでの問い合わせ件数は約1,800件、コンセプトルーム来場者は200件前後。販売開始は昨年11月からで、これまで20戸が成約。成約者の約3割が地元世田谷区民で、そのほかは近隣の目黒、品川、大田区など。
現地は一種低、第二種風致地区の社宅跡地。歩こうと思えば駅まで等々力渓谷が利用できる希少立地。建物は西南西向き。設計・監理は、国内外のチャペルやブライダル施設、ホテルなどを手がけているインター・プロデュースを起用。ファサードは、水平方向のスラブラインと垂直方向のマリオンで統一感を演出。幅約3m、長さ約30mの庭園はグリーンアンドアーツが監修。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2550~2600ミリ、サッシ高2200ミリ、フィオストーンレキッチン天板、良水工房、マイクロバブルバス、「MOTリネン」(18戸)など。
販売担当者によると、環八・第三京浜に近接していることを懸念する人は多いが、窓を締めるとほとんど音はせず、高い天井高、1低層の住環境などが現地見学者から評価されているという。
エントランス・庭園
庭園(光は蛍をイメージして明滅する)
「MOTリネン」
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記者は、等々力のマンションなどを見学した際は等々力渓谷を散歩することにしている。今回も取材の目的の一つは、渓谷をゆっくり歩くことにあった。ところが、一昨年の台風の影響でがけ崩れや倒木が多くの個所で発生したことから、通行止めになっていた。来年3月に通行可能になるそうだ。
つまり、物件の現地見学者の中には等々力渓谷のすばらしさを知らない人も少なくないことがうかがわれる。この日案内してもらった販売担当者も、関西勤務から東京勤務に異動になってから2年目で、等々力渓谷を歩いたことがないと話した。
販売は順調に進捗しているようだが、等々力渓谷を知らない来場者が渓谷を歩いたら評価はどうなるかを考えた。まず、マンションの徒歩1分の価値は坪単価に換算するとどれくらいになるか。仮に等々力駅から徒歩1分で分譲されたら坪単価はまず700万円を下らないはずだ。徒歩1分のマンションの価値は坪単価にして1%に置き換えると考えられる(記者は駅距離で価値判断しないが)。今回の「等々力」は徒歩8分だからマイナス56万円として644万円となる。
一方で、等々力渓谷を散策や通勤・通学路として利用できる価値を考えてみた。一人当たり月額3,000円(記者の日高屋飲食代3日分)の価値はあると思う。3人家族なら年間3,000×3×12=10.8万円だ。35年間住めば378万円だ。これを坪単価にすると18.9万円になる。つまり、644+18.9=662.9万円だ。530万円は信じられない安さだと思う。皆さんはいかがか。
通行止めになっている等々力渓谷(ゴルフ橋から=この名称は米国の将校が、ゴルフ場に行くのにこの橋を渡ったことかに名付けられたとか)
区の保存樹に指定されている「成城石井」に植わっているケヤキ
1低層・国分寺崖線・全館空調三菱地所レジ「等々力」第1期13戸/15戸に申し込み(2024/3/5)
全戸全居室に無垢材フローリング&ZEH認定三菱地所レジ「上野毛テラス」(2023/11/10)
人と人・空間を自在に操る 通り土間付きリノベ「湯島ハイタウン」コスモスイニシア
「湯島ハイタウン」リノベ住戸
コスモスイニシアが8月、ヤマムラ建物再生室との共創によるリノベーションマンションとして分譲開始した築56年の「湯島ハイタウン」の1室を見学した。ごく普通の56㎡のプランをフルリノベーションし、玄関から居室-水回り-キッチン-LDKの空間の中央に通り土間を設け、人と人・空間、あるいは地域を自在にコントロールできるようにしているのが特徴。かなり個性的な間取りではあるが、〝さもありなん〟と納得もした。
プロジェクトは2023年の代田橋のリノベーションマンションに次ぐ第2弾。ヤマムラは、建物が持つ歴史や素材の風合いを活かし、古材の再生や職人の手仕事によって“手の跡”を残す空間づくりを大切にしている会社。
今回は、「都市部における孤独」に空間からアプローチする住まいを企画し、空間と人の関係性に焦点を当てる“間(ま)のある暮らし”がテーマ。「つながりを押しつけないが、つながる余白がある」住まいを提案している。
通り土間は奥行約7000ミリ×幅約540mm(高さ約160ミリの框部分含む)で、その左右に4.3畳大の雪見障子付き居室、バス・トイレ、R型キッチンを配し、西側の旧岩崎邸庭園が眺められるLDKに繋いでいる。間取りは2LDK。建具・家具はヤマムラとの協業により再生された古材の雪見障子や可動建具の壁を採用。リビング天井高は2200ミリ、二重床・二重天井。床は突板フローリング。
同社は、「湯島ハイタウン」での取り組みを皮切りに、今後も建物の個性と地域性を活かした“間(ま)のある暮らし”を複数展開していくという。
物件は、千代田線湯島駅から徒歩3分、文京区湯島4丁目に位置する1969年竣工の16階建て借地権付き「湯島ハイタウン」(A・B棟計400戸)、の1室(専有面積56.43㎡)。当時の売主は藤和不動産(現三菱地所レジデンス)、施工は藤田組(現フジタ)。リノベ後の価格は5,480万円(坪単価321万円)。借地料は7,000円/月。
「湯島ハイタウン」リノベ住戸
「湯島ハイタウン」リノベ住戸
「湯島ハイタウン」リノベ住戸
間取り図
「湯島ハイタウン」
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同社とヤマムラの共創リノベは、第一弾の「ステーションプラザ代田橋」に次いで2度目の見学だった。「代田橋」もそうだったが、かなり個性的な提案なので、受け入れられる人は限られているだろうが、気に入った人ひとりに買ってもらえばいいのだから、とてもいいプランだと思う。
「湯島ハイタウン」は、名前だけは駆け出し記者のころからよく聞いていた。藤和不動産の関係者から〝記念碑的物件〟だと刷り込まれたからだろう。商・住マンションとしては、1966年竣工の中野駅前の「ブロードウェイ」とともにパイオニアだというのは初めて知った。
分譲開始時の価格は、20坪で800万円(坪単価40万円)くらいではないかと予想したのだが、同社広報担当に調べてもらったら、「X」では坪35万円とあるから当たらずとも遠からず。
「湯島ハイタウン」に近接している駅前の新築マンションの坪単価が1,000万円を突破しているのに驚きはしたが、記者は2~3年後の文京区の一等地マンションは軒並み坪1,300~1,500万円になると予想している。緑などない都心3区に住むよりまだ緑が残る(多いとも言えないが)文京区のほうがいいと思う。
取材後、B棟1階にある古色蒼然とした「レストラン湯島」を利用した。オーナーの女性は「最初は文化センターで開業し、ここに移転してから40年以上。便利なところで24時間管理してくれることから脚光を浴びました。入居者は医者や弁護士、大学教授の方が多かったですね。店舗もパン屋、スーパー、蕎麦屋、寿司屋、スナック、クリーニング、喫茶店、画廊、居酒屋、洋服屋…今は私のところとパン屋さんだけ。でも、高齢者向けのデイサービスやリハビリ用の車も玄関前に停まってくれますし、いいマンションですよ。ここのコーヒーは『文京喫茶』でも紹介されました」と話した。
店内には、市場には流通していないと思われる銘柄の焼酎(合法酒のはず)のボトルが並べられていた。ラベルが凄い。古酒蒼然か古酒騒然か。人畜無害の記者などは全然関係ないが、脛に傷持つ人が飲んだらいっぺんに酔いが回り卒倒するか、あるいは瞬く間に飲み干し、外の中庭に投げ捨てるか、どっちかだろう。オーナーに確認したら「馴染みのお客さんからは宴会としてよく利用していただいており、これはお客さんからのプレゼント。売り物ではありません」とのことだった。
「レストラン湯島」
大和ハウス他「プレミストタワー船橋」(677戸)反響4500件超 単価は500万円超
富樫氏
大和ハウス工業は9月3日、「マンション事業計画説明会」を開催し、同社上席執行役員ハウジング・ソリューション本部マンション事業本部長の富樫紀夫氏(62)が分譲マンション市場を取り巻く市場環境や同社が取り組む社会課題および事業方針、重点取り組み事項などを説明した。
2025年度の売上高は2,900億円(前期比7.6%増)、営業利益は150億円(同37.5%増)、営業利益率は5.2%(同1.2ポイント増)を予定している。
再開発・マンション再生・複合開発の取り組み中の開発案件は再開発が23件、マンション再生が7件、複合開発が10件の合計40件。富樫氏の出身地である北海道は現時点でゼロ。
主な再開発案件として、同社のほか大京、三菱地所レジデンス、西日本鉄道が売主の「久留米ザ・タワーレジデンシャル」(458戸、うち販売対象は343戸)は2025年7月から販売を開始しており、8月末時点で200戸超の契約・申し込みがある。富樫氏は「戸数が多いので、大丈夫かと悩みに悩んだが、好調なスタートを切った」と話した。(坪単価230万円はあとから聞いた)
マンション再生物件として、仙台市初の敷地売却案件「カルコスビル」(従前50戸⇒建て替え後83戸)と、旭化成不動産レジデンスがメインで、同社と長谷工不動産が売主の段階的施工方式を採用した堺市「新金岡C住宅」を紹介した。
複合開発案件では、同社のほか東京建物、京成電鉄も売主になっている「プレミストタワー船橋」(677戸)について、富樫氏は「計画地の対面には当社の東関東支社があり、これを含めた開発を進めようと地区計画の高さ規制をクリアするため地域の地権者などから全員合意を得て、3年くらいかけて役所との協議を進めてきた。現段階で反響総数は4,500件を超えており、一部上層階については銀行を通じていくつか引き合いがある。ようやく着工が始まっており、施工は長谷工さん(コーポレーション)。当初の販売価格は320~330万円を予定していたが、建築費は倍くらいになったので、販売価格は倍とまではいかないが、かなりそれに近い金額になりそう」と話した。
このほか、複合開発物件として西日本鉄道とのJV「(仮称)福岡市西区橋本2丁目計画」(133戸)、同社・野村不動産・三井不動産・総合地所・東方地所JVの総面積約7.5haの東大西千葉キャンパス跡地利用プロジェクト「西千葉レジデンスアベニュー」(マンションは512戸)を紹介した。
また、民泊可能の「モンドミオ」については9案件(うち今後の予定物件は3物件)を紹介した。25年4月に分譲開始した「モンドミオ札幌大通南二条」(65戸、民泊対応55戸)の坪単価は411万円、2025年11月販売予定の「モンドミオ沖縄リゾート北谷アラハ」(41戸、民泊対応は未定)の坪単価は未定。
環境対応マンションとして、坪単価527万円の長期優良住宅&ZEH-M Oriented認定の 「プレミスト天王寺 五条」(34戸)をアンダーで販売開始しており、既に28戸を成約済みであると話した。
2022年から提供を開始した大和ハウスライフネクストの外部管理者サービス「TAKSTYE(タクスタイル)」は2025年8月末時点で138棟で導入されていることを明らかにした。
「プレミストタワー船橋」
◇ ◆ ◇
記者がもっとも注目したのは、船橋駅前の「プレミストタワー船橋」がいくらになるかだった。上段の記事では、富樫氏が話したことをほとんどそのまま紹介した。坪単価について記者は単刀直入に「坪単価500万円でどうか」と質問したら「それでは無理」の回答だったので「500万円をはるかに突破するんですか」と畳みかけたら「そうですね」と否定はしなかった。(富樫氏は「浦和」を意識しているはず)
これ以上は書かない。価格は市場が決定する。ただ、当初販売予定の坪320~330万円というのはよくわかる。おそらく用地取得は5年くらい前だろう。当時、総武線沿線では2020年から野村不動産他「プラウドタワー亀戸クロス」(934戸)の販売が坪単価350万円くらいで始まり、その後現在まで再開発を中心に約5,000戸が供給されている大激戦エリアだ。売れ行きは総じて好調だ。
現在の都内側の総武線沿線の坪単価は450万円くらいのはずだから、「船橋」はそれ以上になりそうだ。そればかりか、昨年4月から分譲が始まった千葉駅の一等地マンションの東京建物など4社JV「Brillia Tower 千葉」(491戸)の第1期90戸は坪単価421万円だったので、それも上回る千葉県最高峰になりそうだ。
不動産経済研究所の首都圏マンション市場調査は、着工戸数の4割強しかカバーしておらず、市場を正確にとらえていないという質問について、富樫氏は無言だった。これはリリースを鵜呑みにするメディアにも責任がある。
余談。富樫氏は62歳。主なデベロッパーの社長や役員とほぼ同年代だ。この年代の人の弱点はどん底しか知らないことだ。誰も経験したことがないバブル超えの今後の市場にどう対応するか。〝仲良しこよし〟はどことどこか、人脈の視点からマンション業界を眺めるのもまた楽しい。
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