見事な模型紹介コーナー 物件に込めた意気込みひしひし 日鉄興和不「文京小石川」
「リビオシティ文京小石川」
日鉄興和不動産(事業比率60%)、東京建物(同15%)、中央日本土地建物(同15%)、住友商事(同10%)が分譲中の「リビオシティ文京小石川」モデルルームを見学した。定期借地権付きであることによる価格の安さ、小石川植物園に近接した文京区最大敷地面積の立地などからして人気になるのは分かるのだが、本物の石や地衣類・観葉植物を採用した50~60坪の模型展示コーナーの充実ぶりに物件に込めた意気込みがひしひしと伝わってきた。
物件は、東京メトロ丸ノ内線・南北線後楽園駅徒歩12分・茗荷谷駅徒歩13分、都営三田線・大江戸線春日駅徒歩11分、都営三田線白山駅から徒歩10分、文京区小石川四丁目の準工業地域に位置する敷地面積約12,487㎡、10階建て全522戸。期間75年の定期借地権付き。専有面積は35.89~95.57㎡。竣工予定は2026年11月下旬。デザイン監修はIAO竹田設計。設計・施工は長谷工コーポレーション。
2024年2月22日~2024年12月下旬までのエントリー数は12,000件、昨年10月から分譲開始し、これまで供給した155戸のうち130戸を成約。販売価格は9,090万円~21,990万円。坪単価は未公表だが、坪500万円台の半ばから後半と思われる。
現地は、茗荷谷駅からだと桜並木が美しい播磨坂を下ったところで共同印刷本社に隣接。敷地北側は千川通りに接道。敷地所有者は共同印刷。小石川植物園までは徒歩2分。
主な基本性能・設備仕様は、ZEH-M Oriented、低炭素住宅、ABINC、SEGES認定、二重床・二重天井、リビング天井高2460ミリ、ディスポーザー、深型食洗機、フィオレストーンキッチン天板、食器棚、多目的スペース「モアトリエ」、奥行2m超のバルコニー、浴室タオル掛け2か所など。主な共用施設は、屋上テラス、フィットネスラウンジ、ワーク&スタディルーム、ライブラリーラウンジ、ゲストルームなど。店舗面積1,700㎡超の都市型スーパーマーケットを併設する。
北側外観
屋上テラス
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これまでの区内の敷地面積がもっとも広いマンションは、2014年分譲の第一種低層住居専用地域に位置する住友不動産「インペリアルガーデン」(167戸)だった。用途地域が異なるので単純比較はどうかと思うが、それを上回る約1.2haの規模は希少だ。
物件特性などは上段で紹介した通りだが、記者が驚いたのは50~60坪はありそうな模型紹介コーナーだった(販売事務所の1フロアの面積は約80坪)。
模型そのものの大きさは50分の1だからそれほど大きいわけではないが、至るところに本物の観葉植物・地衣類を配し、屋上テラスに採用する静岡県真鶴町産の本小松石が敷き詰められていた。3m×8mのスクリーンは2つ。
これほど見事な模型コーナーは過去どれくらい見たか考えた。最近の物件では東京建物「堂島」、積水ハウス他「グラン・グリーン大阪」をすぐ思い出したのだが、東建では「番町」、積水ハウスでは「品川シーサイド」も見事だった。鹿島建設「勝どきザ・タワー」も凄かった。ほかにもあるのだろうが、ベスト10を選べば今回の「文京小石川」は間違いなく入る。
売主には同じみずほグループの東建と中央日土地が入っており(住友商事とはこれまでも共同事業が多いとか)、〝負けられない〟という強い意志が込められていると理解した。「品川」も見学を申し込んでいるので、実現したらレポートしたい。〝リビオ〟に注目だ。
販売事務所
模型展示コーナー
模型展示コーナー
「リビオ」の歴史紹介コーナー(日鉄ライフ・新日鉄都市開発・興和不動産の歴史を紹介してもよかった)
第一種低層の外観が美しい住友不動産「インペリアルガーデン」竣工(2015/3/19)
用地取得から10年 小石川植物園に隣接した住友不動産「インペリアルガーデン」(2014/1/14)
呉越同舟効果「5本の樹計画」の本領発揮積水「品川シーサイド」1期207戸!(2017/3/24)
「雨にわ」の普及・実証事業 グリーンインフラ大賞「国土交通大臣賞」受賞
「おでかけひろば FUKU*fuku(左)と「世田谷トラストまちづくりビジターセンター」に設置されている「雨庭」
国土交通省が推進するグリーンインフラ官民連携プラットフォーム第5回グリーンインフラ(GI)大賞「国土交通大臣賞」に特定非営利活動法人雨水まちづくりサポート(共催:一般財団法人世田谷トラストまちづくり)の「武蔵野台地における『雨にわ』によるNbSの普及・実証事業」と、首都高速道路の「おおはし里の杜~都市部の道路空間を活用した”生きもの中心の緑地”~」が受賞し、表彰式が1月29日、東京ビックサイト「グリーンインフラ産業展2025」で行われる。
「雨にわ」は、市民・民間が参画する「地域共生」「流域治水」の取り組みの一つで、2地域(世田谷区、武蔵野市)での実践と地中も含めた雨水の見える化を実現し、様々なプログラムを通じた幅広い世代への普及・啓発を実施していることが評価された。「おおはし里の杜」は、大橋ジャンクション整備後のモニタリング・管理活動を通じた地域社会との共生の取り組みが評価された。
雨庭とは、屋根などに降った雨水を集めて、一時的に貯留し、ゆっくりと地面へ浸透させる庭(植栽帯を含む)のことで、雨が直接地面に浸透するため、下水道などにかかる雨水の流入負荷を軽減させ、生物多様性が豊かになり、水質を浄化する効果が期待されている。
GI大賞を受賞した取り組みは、武蔵野市(協力:武蔵野市ほか)と合わせて、取組効果として、親子向け普及ワークショップ、市民向け実践ワークショップなどのイベント参加者は未就学児から70代以上の市民まで延べ300名以上が参加し、モニタリングの結果、世田谷区に設置した約3㎡の雨庭で2023年は26㎥以上の雨水が地中に浸透したことが分かった。
グリーンインフラ官民連携プラットフォームは2020年3月に設立された。グリーンインフラは、自然環境が有する機能を社会における様々な課題解決に活用しようというのが目的。2021年3月に第1回グリーンインフラ大賞「国土交通大臣賞」が決定された。
共催団体である世田谷トラストまちづくりの「雨庭」の取り組みは、2020年度に次大夫堀公園内里山農園でモデルの雨庭をつくり、個人宅で気軽につくることができる「自分でもできる雨庭」のコンセプトをまとめスタートした。世田谷区から委託を受け2021年度から「世田谷グリーンインフラ学校」を実施し、「雨庭づくりを通じて、グリーンインフラの魅力や意義を地域の中で率先して広めていく」リーダーの育成を目指し講座も行われている。ているもので、雨庭は「世田谷トラストまちづくりビジターセンター」(成城4丁目)、「おでかけひろば FUKU*fuku(雨水まちづくりサポートと共催)」(喜多見9丁目)などで実装されている。
「おでかけひろば FUKU*fuku(左)と
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大橋ジャンクションは、マンションが分譲されたとき取材しており、その後も数回訪れているので知ってはいたが、「雨庭」は全然知らなかったので、同財団にお願いして、上段の2か所の見学が実現した。もっと大掛かりなものかと思ったが、そうではなかった。やろうと思えば素人でもできそうなのがいい。
同財団の「自分でもできる雨庭の手引き」によると、材料はホームセンターで購入な材料・資材を用い、ガーデニングの延長線上で取り組むことができるとある。
作り方も簡単だ。スコップなどで約3.3㎡(1坪)のスペースに深さ約30センチの穴を掘り、そこに砕石、軽石、発泡ガラスレットなど浸透貯留材を深さ15~20cm投入し、その上に植物を植えたり枯山水仕上げとしたりするだけでよい。雨樋を利用した雨水タンクを併設することも推奨されている。施工費の目安は約4万円(植物:2万円、資材約2万円)。雨とみどりに関する区の助成制度もある。
効果も大きいではないか。記者の試算では、たった1坪(1.8m×1.8m)で深さ約8mの雨水をゆっくり地中に浸透させることができる。上下水道代に換算したら数千円にもなる。
そこですべてのデベロッパー、ハウスメーカーにお願いだ。雨水タンクの設置は当たり前になっているが、一歩進めて注文住宅、分譲住宅に「雨庭」を採用してほしい。それくらいのSDGsの「つくる責任」を果たしていいはずだ。
また、行政は「雨庭」を設けることを開発行為の条件に加え、採用されている住宅には上下水道代に見合う額を減免してはどうだろう。加速度的に普及するのではないか。
それにしても、世田谷トラストまちづくりは凄い。今回の「雨庭」を含め、「市民緑地・ちいさな森」「地域共生のいえ」「空き家等地域貢献活用」など「ひと」「まち」「自然」の取り組みを会員や市民、ボランティアとともに進めているのがとてもいい。区が住宅地として高い評価を得ている理由の一因は、こうした取り組みにあるのだろうと改めて感じた。
「世田谷トラストまちづくりビジターセンター」のそばに流れる野川
早大、ポラスら越谷市の産官学民の空き家対策連携協定 共同研究報告会に30人参加
「越谷市空家等対策に係る産官学民の連携協力に関する協定」共同研究報告会
埼玉県越谷市、早稲田大学リサーチイノベーションセンター、大里東自治会、ポラスグループは1月27日、「越谷市空家等対策に係る産官学民の連携協力に関する協定」に関する共同研究報告会を行った。報告会では、同大学学生1~3チーム(各2人)の空き家活用提案に対する参加自治会員約30人による〝人気投票〟も行われ賑わった。
会の冒頭、越谷市都市整備部建築住宅課調整幹・高森良浩氏は、空き家は全国に約900百万戸あり、47都道府県の空き家率がもっとも低いのは埼玉県の9.29%(約33万戸)で、同市は県内53市のうちもっとも低い志木市の5.22%、2番目の八潮市の5.32%に次ぐ3番目に低い6.22%(9,570戸)であると紹介。
平成27年度から令和6年12月までの空き家に関する市への通報は1,031件で、特定空き家認定は116件(うち86件が改善)、空き家になる要因の約6割が相続であることから令和4年に予防・抑制策として「住まいの終活ノート」配架開始し、セミナーなどを通じて所有者から寄せられた相談件数193件のうち106件で問題解消したこと、空き家発生の可能性の高い住宅は2,262件あることなどを報告した。
早稲田大学建築街づくりリサーチファクトリー・岡村竹史氏は、昨年11月に行った大里東自治会役員へのアンケート「あったらいいな こんな場所」では、気軽にお茶などが飲める、おしゃべりができる〝みんなの家〟や情報交換ができる場所、コミュニティを育むことができる店舗などを求める回答が多く寄せられたとし、自治会エリア内には18件の空き家があり、このうち市外在住が9人(県外2人、海外7人)に上るなど対応の難しさも指摘した。
この後、同大学修士1年の6人が3グループに分かれて、貸し本・古本屋などの「大里東 まちの図書室」、地域通貨を通じた新しい学童「MIX BASE」、多世代が利用できる「こしがや交差亭」をそれぞれ提案。参加自治会員約30人による人気投票の結果、「まちの図書館」が7票、「MIX BASE」が11票、「こしがや交差亭」が9票を獲得した。
中央住宅・髙橋重弘氏は、地区内にある約105㎡の土地に延べ床面積約115㎡の貸家(2戸)を建築した場合、総事業費は約3,147万円で、借入金3,000万円、返済期間30年(金利1.50%)だと表面利回りは6.6%になることなどを提案した。
参加者の一人で広報担当・髙橋さん(66)は、「空き家の利活用にはお金がかかる。自治会にお金はない。理想と現実には隔たりが大きい。予防策も大事。今後5年間どうなるのか見守りたい」と語った。
同協定は昨年7月に締結されたもので、2028年3月までに大里東自治会(約740世帯)区域内の空き家の利活用や予防・抑制などの試験的な取り組みを行い、空き家対策のモデルとなる仕組みづくりに寄与するのが目的。
左から高森氏、高橋氏、岡村氏、川村耕治・自治会長
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「空き家」問題の解決が喫緊の課題であることは分かるのだが、突き詰めていくと私的所有権の是非を問わなければならなくなるので、記者は敬遠・忌避することにしている。
今回の取材の誘いも断ろうと思ったのだが、何か新しい発見があるのではないかと受けることにした。
大正解だった。前日(26日)には、世田谷トラストまちづくりの空き家を活用した「おでかけひろば FUKU*fuku」を見学し、子ども連れの家族で賑わっていたのに嬉しくなったが、この日の学生さんの提案もとてもよかった。本好きの記者は「大里東 まちの図書室」が一番いいと思ったが、「MIX BASE」も「こしがや交差亭」も甲乙つけられなかった。
空き家を利活用するハードルは高いが、気前よく土地・建物を提供する篤志家が現れ、市が空き家を賃借し、固定資産税、都市計画税などの税金減免などを行い、利用者には無料でサービスを提供できるようになればいいのだが…。
岡村氏
「大里東 まちの図書室」を提案した山岸さん(左)と白鳥さん
「MIX BASE」を提案した大友さん(左)と澤村さん
「こしがや交差亭」を提案した西村さん(左)と井上さん
人気投票する参加者
首都圏初「実質CO2ゼロ」タワーマンション 設計・施工は竹中 関電不開発「南麻布」
「シエリアタワー南麻布」
関電不動産開発が分譲中の「シエリアタワー南麻布」を見学した。同社の首都圏初&南麻布アドレス初、さらに首都圏初の「実質CO2ゼロ」のタワーマンションで、設計・施工が竹中工務店というのも特筆できる正統派億ションだ。
物件は、東京メトロ南北線・都営三田線白金高輪駅から徒歩9分、港区南麻布三丁目の商業地域・第2種中高層住居専用地域に位置する敷地面積約2,467㎡、27階建て全121戸。専有面積は42.94~174.24㎡。供給開始は昨年12月で、第1期1次(36戸)の専有面積は約71~115㎡、価格は2.6億~9億円(最多価格帯4.3億円台)。竣工予定は令和8年10月中旬。設計・施工・監理は竹中工務店。販売代理は住商レジデンシャル、長谷工アーベスト。
従前敷地はオフィスビル。敷地南側が明治通り-高速道路に接道。主な基本性能・設備仕様は、制震構造、ZEH-M Oriented認定、リビング天井高2500~2950ミリ、ディスポーザー、中層以上は深型食洗機、東京都マンション環境性能表示★13個(再エネ設備・電気のみ★1個、他は満点の★3個)など。住戸は1フロア3~5戸。
特徴の第一は、関西電力の再生可能エネルギー由来の実質CO2フリーのゼロカーボン電気を一括受電し、さらにオール電化方式を採用することで、物件全体におけるCO2排出量を実質ゼロにした首都圏初のマンションであること。
第二は、港区の「建築物等の整備に関する基準」で建物の絶対高さが40m以下に定められているエリアだが、①歩道状空地の確保②敷地内通路の整備③広場状空地の確保④地域防災倉庫の設置などにより、高さ制限が94.7mまで緩和されていることで、これにより南麻布アドレスで初のタワーマンションが実現した。
さらにまた、工期が2024年7月から2026年10月まで27か月と短いことがあげられる。これは既存建物の地下躯体を活用する竹中の技術によるものとの事である。建物の階数からいって通常なら30数か月かかると思われる。
同社は、現在工事中の「虎ノ門二丁目地区第一種市街地再開発事業(業務棟)」のような大規模開発や中・小規模ビル開発、さらに今回のようなマンションやホテル、商業施設、賃貸住宅などを首都圏で積極的に展開していく。マンションは「シエリアシティ横浜東戸塚」(482戸)「シエリア杉並高井戸」(110戸)などが予定されている。
ガーデン
ラウンジ
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久々に本格的な正統派億ションを見た。同社のプレス・リリースによると、「ゼロカーボン電気」×「オール電化」×「タワーマンション」を組み合わせた首都圏初の「実質CO2ゼロ」タワーマンションが〝売り〟のようだが、記者はこれに〝竹中工務店の設計・施工〟を付け加える。
模型、モデルルームをみですぐその良さが分かった。明治通りに面していることをどう評価するかだが、外観フォルム(とくに北側)が美しく、仕上げは一部の隙もない。
外観デザインは、やはり設計・施工を竹中工務店が担当した「元麻布ヒルズ」と似ており、キノコのように上層階が突き出ている〝異形〟のフォルムと言えなくもないが、北側はほとんどシンメトリーだ。敷地北側には「元麻布ヒルズ」や「六本木ヒルズ」など一部しか高層建築物はないので、麻布エリアを展望することができる。そしてまた、麻布方面からはこの美しい建物を見上げることになる。
モデルルームは115㎡と87㎡の2タイプで、とくに115㎡が素晴らしい。玄関ドアを含めて突板ナグリ仕上げがドア、壁、収納扉などに多用されており、壁面には、ベり材のえも言われぬ文様が浮き出ている。ドアハンドルはカチッと閉まるコロンボ。浴槽はジャクソン。その他、巾木に至るまで奇を衒った仕上げは一つもない。
竹中施工のマンションはバブル期には結構見られたが、最近は少ないはずだ。直近では2023年竣工の「MEGURO NARK(目黒マーク)」くらいしか。東京本社のデベロッパーは、関西でのマンション事業を積極化させているが、それに対抗するように関西のデベロッパーも〝負けたらあかん東京に〟とばかり首都圏での事業を強化に乗り出した。面白い展開になってきた。
現地
緑被率43%(分譲棟)ランドスケープが最高 JR東日本・野村不「MEGURO MARC」(2023/12/9)
中古マンション価格 12年間で2倍以上 成約件数も増加 2024年 東日本レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は1月22日、首都圏の2024年の不動産流通市場の動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は37,222件(前年比3.4%増)で、2年連続で前年を上回った。都県・地域別では、神奈川県他地域(横浜川崎以外)を除く都県・地域で前年を上回った。成約物件の1㎡当たり単価は首都圏平均で76.88万円(同6.9%上昇、坪単価253.7万円)で、12年連続の上昇。この12年で101.3%と2倍を超える上昇となった。成約価格は4,890万円(同6.9%上昇)で、12年連続で上昇。成約物件の平均専有面積は63.60㎡(同0.05%縮小)とほぼ横ばい。平均築年数は24.53年(前年23.83年)で、経年化が進んでいる。
中古戸建住宅の成約件数は14,182件(同10.2%増)と3年ぶりに前年を上回った。成約価格は首都圏平均で3,948万円(同2.6%上昇)と4年連続で前年を上回った。成約物件の平均土地面積は142.25㎡(同1.1%縮小)、建物面積は103.91㎡(同0.05%縮小)。平均築年数は22.22年(前年21.82年)で、経年化が進んでいる。
業績好調なのに供給減 売れ行き悪化 在庫率30%の不思議 2024年首都圏マンション
カバー率=供給戸数÷着工戸数
不動産経済研究所は1月23日、2024年の首都圏新築分譲マンション市場動向をまとめ発表した。
発売戸数は2万3,003戸(前年比14.4%減)で、1973年以降で最少となった。エリア別は東京23区8,275戸(シェア36.0%)、東京都下2,041戸(同8.9%)、神奈川県4,917戸(同21.4%)、埼玉県3,313戸(同14.4%)、千葉県4,457戸(同19.4%)。
初月契約率は66.9%で前年の70.3%から3.4ポイントダウン。戸当り平均価格は7,820万円(前年比3.5%下落)、1㎡当り単価は117.7万円(同4.0%下落)。販売在庫数は6,814戸(前年12月末比531戸の増加)。
2024年の特徴として①発売戸数は東京都の着工減などが響き調査開始以来の最少に②価格は戸当たり、単価ともに高値継続。東京23区は2年連続で1億1,000万円台乗せ③初月契約率は2020年(66.0%)以来の60%台に下落④この他に定期借地権付き物件が547戸⑤1都3県以外では茨城県南部で222戸を発売-などとしている。
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上段は同研究所が発表したリリースをそのままコピペした。記者もずいぶん昔、首都圏のマンションと分譲戸建ての販売動向調査を行ったことがあるので、その大変さはよくわかるのでコメントなどしたくないが、添付した記事の通り、2024年の着工戸数は前年を上回るのは確実だが、半面、カバー率(発売戸数÷着工戸数)は50%を割るのがほぼ確実となった。中でも神奈川県のカバー率は3割台にとどまりそうだ。
初月契約率が70%を割ったのと、完成在庫が約6,800戸もあるのはよくわからない。供給上位のデベロッパーの業績は押しなべて好調で、計上予定に対する契約進捗率は2Q段階で90%を超えている。業績はいいのに売れ行きは悪い。これをどう説明するのか。
完成在庫の多さも不可思議だ。約23,000戸の供給に対して在庫が約6,800戸だから在庫率は29.6%だ。これだけ残ったらまず利益は出ない。大赤字だ。売れないマンションだけが供給されていることでもないはずだ。
ただ、着工≒供給であれば、2024年の着工戸数は5万戸超となる見込みなので、だとすれば着工戸数に対する在庫率は10数%になる。やや多いようだが、危険ラインではないような気がする。
いずれにしろ、同研究所もメディアもシンクタンクも着工戸数と供給戸数との乖離について調査、取材して公表してほしい。やろうと思えばすぐできる。
マンション供給量は着工戸数の半分以下の不思議整合性図るべき(2025/1/8)
マンション供給減=市場縮小ではない戸建ても底入れ・回復へ今年の分譲住宅市場(2025/1/6)
賃貸住宅 シングル、ファミリー向きとも賃料は過去最高 LIFULL(ライフル)調査
LIFULL(ライフル)が運営する情報サイト「LIFULL HOME'S PRESS(ライフルホームズプレス)」は1月22日、2024年12月版の「LIFULL HOME'Sマーケットレポート」を公開し、東京23区のシングル向き、ファミリー向き賃貸住宅ともに過去最高賃料を更新したと発表した。
同レポートは、LIFULL HOME'Sに掲載された物件データ、ユーザーがLIFULL HOME'Sを介して不動産会社に問合せた物件データをマーケットごとに公開しているもので、首都圏シングル向け賃貸住宅の平均賃料は78,500円(平均専用面積26.20㎡=坪賃料9,887円)、(駅から)平均徒歩9分、平均築年数は19年。
ファミリー向け平均賃料は130,458円(同57.34㎡=同7,508円)、平均徒歩11分、平均築年数は23年。
エリア別でもっとも賃料が高いのは都心6区(千代田区、港区、中央区、新宿区、渋谷区、文京区)で、シングル向け平均賃料は132,443円(同29.81㎡=同14,662円)、平均徒歩6分、平均築年数は17年。ファミリー向け平均賃料は302,313円(同64.23㎡=同15,532円)、平均徒歩7分、平均築年数は15年。
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データには基本性能・設備仕様は公表されていないのでよくわからないのだが、分譲マンションより劣るのは容易に想像がつく。賃貸を脱出してマンションや戸建てを購入する流れは変わらないだろう。
坪単価180万円台半ば 第1期43戸完売 大和地所レジ「ヴェレーナシティ木更津」
「ヴェレーナシティ木更津マリーナベイ」 (物件ホームページから)
大和地所レジデンスは1月21日、「ヴェレーナシティ木更津マリーナベイ」 のメディア向け見学会を行った。木更津駅から徒歩12分の全147戸で、昨年12月に第1期43戸の分譲を開始し、すべて契約・申し込み済み。木更津湾と公園に近い立地特性を生かし、富士山が眺望できる南西角住戸(13戸)はアウトドアデッキ付き90㎡としたほか、80㎡以上のプランも3スパン(41戸)設けるなど企画がヒットした。坪単価は土地代がただに近いと思える180万円台の半ばだが、設備仕様レベルは高い。
物件は、JR内房線、久留里線木更津駅から徒歩12分、木更津市富士見三丁目の商業地域(建ぺい率80%、容積率400%)に位置する敷地面積約3,348㎡、14階建て全147戸(うち一般分譲対象外住戸7戸含む)。専有面積は70.72~90.52㎡、坪単価は180万円台の半ば。竣工予定は2026年11月。設計監理はT設計工房。施工は新日本建設。
従前の敷地は富士屋ホテル(旅館)。コロナ禍で経営が行き詰まり、仲介不動産会社を経て同社が取得した。敷地南側は矢那川の河口。川を隔てた南側は卸売市場、西側は鳥居崎海浜公園、その先は木更津港。港までは徒歩3分。
建物は全戸南向きで、富士山が眺望できる南西角住戸は90㎡台の13戸。このほか85㎡台が1スパン14戸、80㎡台が3スパン41戸、70㎡台が2スパン26戸、75㎡台が3スパン40戸、75㎡台が1スパン14戸。平均専有面積は78㎡超。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2450~2550ミリ、食洗機、床暖房、メーターモジュール廊下、浴室タオル掛け2か所、手洗いカウンター付きロータンクトイレ、バルコニースロップシンク、奥行3mのオープンエアデッキ付き(33戸)、オープンエアリビング(4戸)など。
昨年11月からエントリー受付を開始し、これまでの資料請求は500件、モデルルーム来場者は210件。12月から分譲開始した第1期43戸はすべて契約・申し込み済み。花火が楽しめ、富士山が眺望できる7,000万円弱の住戸は最高6倍の人気なった。
契約者・申込者の属性は、50代以上の地元居住者が約半数。自宅の戸建てをそのまま残し、定年後に定住を考えている人が多く、中住戸は実需が中心で、大企業に勤める転勤が多い会社員や地元に縁のあるエリア居住者など。市内の戸建ては2,000万円台で取得できることから、そのような層はほとんどいないという。
オーシャンビューテラス
オープンエアリビング(左)とオープンエアデッキ
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全分譲戸数の30%に該当する43戸を供給して早期完売したことに、なるほどと思った半面、信じられない思いも募った。
なるほどと思ったのは、契約者・申込者の属性でも分かるように、海に近く、花火大会を楽しめる立地特性を最大限生かした商品企画だったことだ。これまでたくさんマンションを見学してきたが、海に近く、花火が楽しめるマンションの売れ行きは確かにみんなよかった。海に近い最近の事例では「ウエリス三浦海岸」だ。取材したとき間違いなく売れると感じた。花火については、どこのマンションでも〝花火大会がみられる〟ことを売りの一つにしているように、想像以上に花火は訴求力があるようだ(多摩エリアに住んでいるお金持ちが、隅田川の花火大会を眺めるために台東区のマンションを買った物件も取材したことがある)。
そうした〝お金持ち〟にターゲットを絞り、90㎡超のプランを提案した同社の目利き緑と商品企画力に脱帽するほかない。上段で書いたように、単価は土地代がただでも立たないような安さだが、設備仕様レベルは高い。施工を担当した新日本建設は千葉県での分譲・施工事例が多いことがヒントになる。
信じられない思いとは、平均専有面積が75㎡超であるように、中住戸もまた70㎡以上としたプランだ。坪単価180万円半ばというのは、面積を広くしたからでもあるが(面積を広くするほど単価は下がる)、各社が行っているように、専有面積を圧縮して売りやすい価格にしなかったことが解せない18坪だったら、3,000万円台の半ばで供給できるではないか(同駅圏では3~4年ぶりの新規供給で、それまでは坪単価140万円くらいで、広いプランはなかったとのことだ)。差別化なのだろうが、面積を広めにしても〝売れる〟と同社は確信していたのだろうか。
〝信じられない〟というのは他にもある。木更津市といえば、「そごう」が2000年に閉店されてから地盤沈下が進む一方で、2024年度地価公示でも、人口13.6万人の同市は、人口10万人以上の市の地価下落率は鹿児島県鹿屋市の73.2%についでワースト2位の68.5%だ。
この日、取材を終えてから1時間半くらいかけて街中を歩いた。人通りは少なく、街のポテンシャルを図る〝御三家〟の「日高屋」「DOOTOL」「マクドナルド」はなかった。そればかりか、飲食店の営業時間はみんな夕方以降で、明らかに店じまいしていそうな店舗もたくさんあった。街に潤いを与える街路樹は極端に少なく、植わっている樹木は貧弱なものばかりだった。
中心市街地の疲弊はどこの市町村も抱えている問題で、同市は木更津湾エリアの再開発に力を入れるため、駅から続く舗道の整備工事を行っている。同社のマンションが富裕層の心をとらえたように、「海」「市場」「花火」などの観光資源はある。官民が連携すれば再生は可能のような気もした。(公園内のコース料理は12,000円で、誰が利用するかわからないが50分で15,000円のエグゼクティブ向けクラブもエリア内にはあった)
模型
浴室タオル掛け2か所(左)とトイレ(写真を撮り忘れたが90㎡のモデルルームタイプは約2.5㎡の玄関ホールが設けられている)
敷地北側から(左)と公園側からの現地(クレーンが立っている)
日新ハウジング・平山喜朗社長が死去 享年77歳
日新ハウジング代表取締役社長・平山喜朗氏が1月16日、死去した。享年77歳。
通夜は1月27日(月)18:00~、葬儀は1月28日(火)10:30~12:00、会場は天徳院会館(中野区上高田1-31-4)。喪主は長男・平山猛志氏。問い合わせはあすなろ葬祭(電話03-5318-2876)。
◇ ◆ ◇
生者必滅。わかっているつもりだが、涙が止まらない。昨年末までゴルフを楽しんでいたとか。
社長、さようなら。
合掌
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従業員給与 年率23.5%アップ 新卒初任給25万円⇒35万円へ 大和ハウス工業
大和ハウス工業は1月20日、株式会社(本社:大阪市、社長:芳井敬一)は、同社従業員の月例給与水準を改定し、2025年4月1日から年収で平均10%アップさせ、新卒社員の初任給を月額25万円から月額35万円に引き上げることを決定したと発表した。
給与水準の改定(ベースアップ)の対象者は正社員1.6万人で、平均昇給率は23.5%、平均昇給額は92,945円。
新卒初任給は大学卒が350,000円(現行250,000円、昇給額+100,000 円=40%)、大学院卒が362,000円(同262,000円、同+100,000円=38%)、高専・専門学校卒が332,000円(同232,000円、同+100,000円=43%)。
大幅な給与水準の改定について同社は、より安心して意欲的に能力が発揮できる環境を整備するとともに、中長期的に事業の成長を担う人財を確保するためとしており、社会情勢や当社業績を踏まえ、特に若年・中堅層への配分を厚くし、年収で約 10%の増加を実現するとしている。