〝良いものを価格に表現させる〟時代へ 三井不動産・植田俊社長 記者懇親会

植田社長(帝国ホテルで)
三井不動産は10月20日、恒例の記者懇親会を開催し、約200人のメディア関係者が集まった。冒頭、同社代表取締役・植田俊社長は次のようにあいさつした。
世界では、トランプ政策が与える影響、地政学的なリスクが懸念されており、国内では行政の混迷が続いている。一方、経済に目を向けると、堅調な内需と設備投資をベースに穏やかな回復が続いている。継続する賃上げと物価との好循環が生まれでインフレ成長を成熟させる成長型経済へ向かう大きな転換期を迎えている。
この良好な経済情勢を象徴するかのように、最近のスポーツの世界では、サッカー日本代表がブラジルを逆転で破り、大谷翔平はそれこそ野球の新しい歴史を作る活躍をし、また、ノーベル賞では生理学・医学賞と化学賞の2人の先生が受賞される明るい話題があった。(これらの流れに水を指す)政治の混迷が経済やマインドを引っ張ることのないよう祈りたい。
わが国のこれまでの30年間に及ぶデフレの時代は、付加価値が正当に評価されず、イノベーションが起きづらい時代だった。デフレを脱却し、インフレを定着させるパラダイムシフトが今起きており、これからの時代は付加価値が正当に評価され、イノベーションが起きる必要条件が整ったと認識している。これまでの〝良いものを安く〟という考えを〝良いものを価格に表現させる〟という考えにマインドをリセットする必要がある。
これは、当社にとって大きなチャンスと考えている。付加価値創造企業として圧倒的な力を有している当社グループの存在感が高まっていると確信している。
当社は昨年4月、長期経営計画「&INNOVATION 2030」を策定した。これまでの不動産デベロッパーの枠を超えた産業デベロッパーとして我々の姿を進化させ、社会のイノベーション、価値創出に貢献していく。今年は長期経営方針に基づく2年目の年になり、2030年までの目標達成に向け着実に進捗させていく。

メデイア関係者は約200人
オフィス事業は、よく事務所と訳されますが、もはや事務作業をする場所ではなく、コロナ禍を経てオフィスはリアルのコミュニケーションにより、付加価値を生み出す現場として位置づけられるようになった。働き手が自発的に行きたくなるオフィスの中を着飾るだけでなく、行きたくなる街にあることが必要。日本橋の街づくりやミッドタウンに代表されるミクストユースの街づくりが重要である。今後、当社は複数の大規模再開発を進めており、2026年竣工の「日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業」は、首都高速を地下化する国家プロジェクトの一翼を担い、エリアのミクストユースを進展させるプロジェクト。すでに満床となっている。「八重洲二丁目中地区第一種市街地再開発事業」は住宅、インターナショナルスクール、劇場などの機能を備える再開発で、既にホンダをはじめ複数の成約を得ている。その他、足元のオフィス空室率は低水準にあり、リーシングは順調に進んでいる。
商業施設・スポーツ・エンターテイメント事業は、今年は8月に2棟目となる名古屋アリーナを着工するなど複数の国内新規開業・リニューアルがあり、ネットワークを拡大した1年。当社は相乗効果による新しい体験価値の創造に取り組んでいる。買い物とスポーツ・エンターテイメントに共通するものはアドレナリンが出るということ。昨年開業した「アリーナ東京ベイ」から近隣のららぽーと滞留効果が生まれ、東京ドームのコンサートやMITASHITA PARKなどとのシナジーが生まれている。また、商業施設ショッピング会員は1,425万人に、アプリからコンサートチケットなどを購入でき、Z世代の取り込みにも成功している。
ホテル・リゾート事業は、稼働率、客室単価とも高水準。インバウンド需要も取り込み、来年は「HOTEL THE MITSUI HAKONE」の開業を予定しており、ラグジュアリーホテルの展開にも注力していく。
住宅事業は、堅調な需要に支えられ、グループ分譲している都心・大規模・再開発マンションが順調に推移している。「日本橋一丁目中地区」には、ヒルトンの最上級ラグジュアリーブランド賃貸「ウォルドーフ・アストリア・レジデンス東京日本橋」を提供することを公表した。
物流事業は、データセンターや冷蔵冷凍倉庫にも進出しており、近年成長が著しい事業。街づくり型、防災拠点、いこい場を提供し、労働力不足などにも先端技術を駆使し開発を進めていく。
海外事業は、イギリスで英国図書館再整備を含むオフィス、ラボ、商業などの大規模開発に参画することが決定した。アメリカでは当社のフラッグシップ「ハドソン・ヤード」は満床となった。4番目の支店をテキサス州ダラス市に設立し、サンベルトエリアでの高級賃貸住宅も竣工する。この他、世界各地で当社グループの強みを生かしたまちづくり型事業を推進していく。
ソリューション・パートナー本部・産学連携事業は、熊本空港の民営化への事業参画、台湾でのサイエンスパークの開発を進めている。アカデミア、自治体、地元企業と連携し実効性のある新しい地方創生に貢献していく。ライフサイエンス事業のLINK-J会員は1,000社超となり、年間イベント数は年間約1,000件に上る。宇宙ビジネス領域における会員数は3年で300以上となり、さらに半導体共創拠点をオープンした。本気でイノベーションを起こし、圧倒的な価値を生み出し、産業競争力が求められている。産業活性化に寄与しともに成長していく。築地地区でも先進的な街づくりを推進していく。
神宮外苑地区の街づくりは、世界有数のスポーツクラスターとなる。新秩父宮ラグビー場の着工を来年2月に控え順調に進捗している。老朽化した施設の建て替えによる収益をもとに、約72haの都心の奇跡の森、神宮内苑の森を民間主導で守っていく、次の世代に繋ぐ未来志向の社会的意義も大きいなプロジェクトでもある。
私どもは、地球を素材としてビジネスを行う立場。これまでも人一倍環境に配慮した取り組みを行ってきたが、今年4月、環境との共生宣言 「&EARTH for Nature」を策定し、自然と人、地域一体として環境を整え、それぞれの魅力が循環し、時を経るごとに輝きを増す豊かな環境を生み出していく。
その象徴的なプロジェクトである国内最大の木造賃貸オフィス「日本橋本町一丁目3番計画」は来年竣工するが既に満床。当社が北海道で所有する約5,000haの信連の木材などを活用して〝植える・育てる・使う〟の持続可能な森林循環を木造によって貢献していく。新たな2棟目の木造ビルも着工する予定になっている。
希少種のオミナエシ(女郎花)を目黒天空庭園で観た グリーンインフラ視察会

黄色い花がオミナエシ(女郎花)、茶色の花がワレモコウ(吾亦紅)=目黒天空庭園で

オミナエシ(左)とワレモコウ(photoACから)
秋の七草-オミナエシ(女郎花)、ススキ(薄)、キキョウ(桔梗)、ナデシコ(撫子)、フジバカマ(藤袴)、クズ(葛)、ハギ(萩)-を皆さんはご存じか(覚えやすいのはオスキナフクハ)。特にオミナエシは希少種で、花屋にはまず売っていない。小さい頃、あちこちに咲いていたような気がするが、すっかり記憶から抜けている。だからこそ、ずっと気になっていた。万葉集にも「手に取れば袖さへにほふ女郎花この白露に散らまく惜しも」(詠み人知らず)と詠まれているように、どんな怪しい花だろうと。
そのオミナエシを先月9月29日、グリーンインフラ官民プラットホームが主催した「グリーンインフラ優良事例視察会」会場の首都高速道路大橋ジャンクション「目黒天空庭園」で観た。
庭園でたくさん咲いていたのだが、名前を知らないので、そばにいた若い女性の方に聞いたら「オミナエシ」と、一緒に咲いていた草花は「ワレモコウ(吾亦紅)」だと教えてくれた(すぎもとまさと氏のヒット曲・吾亦紅はよく知っているが、どんな花なのかは知らなかった)。
彼女にお礼の意味を込めて「オミナエシの花言葉は美人です」と話したら、彼女は恥ずかしそうに笑った。決して怪しい花ではない。可憐な黄色い花だ。
塚本正司氏の「主張する植物」(八坂書房)の一部と、写真で見学したグリーンインフラ国土交通大臣賞を受賞した「小田急線上部利用施設等」と「大橋の里の杜&目黒天空庭園」を以下に紹介する。塚本氏はその著で次のように我々に問いかけている。
「自然にはそれ自体に何かが備わっている。そこから切り取ったり、そこへ付け加えたり、改造したりして生じるものではなくてである…それは一度破壊されれば人為的に再び同じ姿に構築できないものであり、何ものにも代えがたい。そこから切り取り利用することによって生じる価値とは違う根源的な価値がある。だから自然に接したり浸ったりすると、あわただしく争うような気持が平穏で静かな心地になる。すばらしい景観や月、日の移ろいに遭遇すると、時に荘厳な気分となる。自然の中のさまざまな生命を発見すると、書に学んで応用する知識とは違う体験や官能としての知恵となる。多様な生命活動や不思議な生命力をみて、時に尊厳さを感じる」

ミカン

下北沢駅前の舗道ブロック(クラウドファンディングで整備。1枚4万円×1,200枚=4,800万円など全体で6,500万円集まったそうだ)

「シモキタエキウエ」

下北沢駅歩道空間(土地は区と小田急電鉄が所有)

下北線路街空き地

区が推進している雨庭

ボランティア活動拠点「relord」

おおはし里の杜

おおはし里の杜(高木は風のせいで高くは育たない)

首都高速大橋ジャンクション目黒天空庭園(面積は約7,000㎡。高木は691本、中木は1,201本)の田んぼ

メダカも泳いでいた

せせらぎも整備されている
「雨にわ」の普及・実証事業 グリーンインフラ大賞「国土交通大臣賞」受賞(2025/1/29)
日・韓・台・泰・越南…多国籍飲食街 黒白迫り京王カラーもかすむ「ミカン下北」(2022/4/9)
がんばれ京王!10月1日開業 小田急電鉄「BONUS TRACK」に負けるな!(2020/10/9)
小田急電鉄〝下北沢の新たな名所〟SOHO&店舗「BONUS TRACK」4月1日開業(2020/3/30)
東急不動産「BRANZ GREEN PROJECT」ツールがJPM金賞(2010/11/30)
野村不動産など6社「東京大学西千葉キャンパス跡地利用事業」始動

野村不動産(代表幹事)、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、大和ハウス、総合地所、東方地所の6社は10月15日、「東京大学西千葉キャンパス跡地利用事業」プロジェクトが始動したと発表した。
同プロジェクトは、JR総武線西千葉駅から徒歩3分の国立大学法人東京大学が所有していた約75,000㎡の西千葉キャンパス跡地の開発事業者として選定され開発するもので、分譲マンション(831戸)、戸建て(57戸)、サービス付き高齢者向け住宅(110室)、学生マンション(312室)、商業・介護・複合施設(各3.000㎡)と、隣接する千葉大学・千葉市と協議し、大学敷地・公園敷地にまたがる「(仮称)西千葉キャンパスパーク(以下「キャンパスパーク」)を整備する。
開発に当たっては、①アーキテクトコードとして、周辺地域の色彩や外構計画の一部を取り入れた5つのデザイン指針やカラーパレットを設定し、各街区の建築デザインに統一感を持たせ、一体的なまちづくりを目指す②ランドスケープコードとして、樹種や樹高、外構照明などにルールを設定し、散歩道やたまり空間の設置によるウォーカブルなまちの実現、浸透性舗装やレインガーデンなどグリーンインフラの採用による環境負荷軽減に取り組む③ウェルネスコードとして、「学ぶ」「動く」「育む」「憩う」「繋ぐ」の5つのサブコードで構成する
また、千葉大学・千葉市を交えた公民学連携の取り組みとして、広さ約12,000㎡の「(仮称)西千葉キャンパスパーク」を整備する。
◇ ◆ ◇
この6社の社長は年齢が近いのも特徴の一つ。野村不動産・松尾大作松社長は1964年10月18日生まれ、三井不動産レジデンシャル・嘉村徹社長は1964年10月7日生まれ、三菱地所レジデンス・宮島正治社長は1964年5月26日生まれの同級生で、大和ハウス工業・大友浩嗣社長は1959年8月31日生まれ。総合地所・梅津英司社長と東方地所・麻生博章社長は不明だが、梅津氏は1967年生まれ、麻生氏は1964年生まれと思われる(長谷工コーポレーション・熊野聡社長は1961年9月7日生まれ)。ちなみに千葉銀行・米本努社長は1964年7月9日生まれ、長谷工コーポレーション・熊野聡社長は1961年9月7日生まれ。
誰もバブルを経験しておらず、若いときはバブル処理に追われていたはずだ。そして今、市場はかつて誰も経験したことがないバブル経済を上回りつつある。順風満帆ではあるが、疑心暗鬼にさいなまれ、みんな頭が痛いのではないか。
年齢が近ければまとまるのは速いだろうが、ライバル心も大きいはずで、出し抜いてやろうといつも思っているはずだ。だが、しかし、手を切ったら修復は難しいので、当面は〝おてて繋いで〟進むはずだ。大規模プロジェクトでどことどこが組むかを見るのも楽しい。

【キャンパスパークのイメージパース】
環境との共生宣言 日本橋から東京、全国へ 三井不 生物多様性の取り組み強化

「東京ミッドタウン日比谷」6階パークビューガーデン
三井不動産は9月29日、「東京ミッドタウンの生物多様性への取り組み」記者説明会を開催し、同社サステナビリティ推進本部サステナビリティ推進部・竹澤正浩氏は、これまでの同社の環境への取り組みを説明し、「私たちは街づくりを通じて、豊かな『環境』のネットワークを日本橋はもちろん、東京、日本全国へ広げ、次世代へ繋いでいきます」と話した。
「東京ミッドタウン日比谷」では、都心部にありながら約2,000㎡(緑化率約40%)の緑地を創出しており、隣接する日比谷公園と同種の樹木を取り入れ、環境に配慮した植栽計画を実施。また、地域全体の生物多様性の向上に寄与するため巣箱、石積み蛇篭、エコスタックとバードバスを設置。生きもの音声分析技術「KoeTurri」(ハイラブル提供)を活用し、来街者へ豊かな生態系の魅力を発信していく。今年3月、いきもの共生事業推進協議会が運営する第18回「ABINC 認証」を取得している。
今年度より、東京都市大学北村亘准教授を「東京ミッドタウン日比谷 生物多様性アドバイザー」に迎え、定期的な実地調査、調査結果を踏まえた中長期的な生物多様性施策の検証・実装などを行っていく。北村氏は「都心部でありながらカワセミやアオサギなど多数の野鳥が生息する日比谷公園や皇居と隣接している立地特性を踏まえると、東京ミッドタウン日比谷には地域の生態系を補完・強化する役割が求められる」とコメントしている。
「東京ミッドタウン日比谷」の来街者は、2018年3月に開業してから2025年3月末で約11,200万人に達している。
同社は今年4月、環境との共生宣言 「&EARTH for Nature」を策定、重点課題として「緑を守り育む」「水の魅力を生かす」「生態系を豊かにする」「地域の想いをつなぐ」「自然資源を循環させる」の5つを定めている。
同社が「ABINC 認証」を取得したのは、「三井不動産ロジスティクスパーク市川塩浜Ⅱ(物流施設版)」「(仮称)日本橋本町一丁目3番計画(都市・SC版)」「ザ・ガーデンズ大田多摩川(集合住宅版)」に続き4施設目。
また、港区立檜町公園に隣接している「東京ミッドタウン(六本木)」の「東京ミッドタウンガーデン」(約1.38ha)は、国土交通省などの「自然共生サイト」に認定されており、緑地は都心5区では最大級となる。

「東京ミッドタウンガーデン」

「東京ミッドタウンガーデン」で保存されてきたケヤキ、エノキ

樹林内のヤマトタマムシ翅

「MIDTOWN OREN THE PARK」

蛇篭(左)と「KoeTurri」

壁面緑化

オフィスワーカー専用ガーデン

高層階から6階ガーデンを望む(右側が日比谷公園)

「工夫次第でたくさんの鳥を呼ぶことが可能」北村氏
◇ ◆ ◇
記事化が2週間以上も遅れたことをお詫びしたい。記者説明会のすぐあと10月1日から、30年以上取材しているRBA野球大会が始まり、約25試合を取材したのだが、記事は刺身と同じ鮮度が命なので、野球記事を最優先して書いたので遅れてしまった。何しろ、試合結果の記事を1本書くのに約2時間、1日8時間労働としても1週間くらいかかる。「経年優化」を掲げる同社の街づくり・環境共生の記事は鮮度とは関係はないのも遅れた理由の一つだ。
今回の記者説明会は、同社が環境への取り組みを日本全国に広げる宣言だと受け止めた。同社は「神宮外苑問題」ではずいぶん批判も浴びたが、40年以上同社のマンションや分譲戸建てを取材してきた記者は、緑環境の取り組みとしては、同業では積水ハウス、野村不動産、三菱地所、森ビルとともに業界トップクラスだと思っている。「パークシティ浜田山」や「HARUMI FLAG」は特筆ものだ。
「ABINC 認証」が4施設目というのは意外な感じもしたが、これから積極的に申請するということだろう(積水ハウスは単独での認証はゼロだが、5本の樹計画は他を圧していると思う)。
日比谷公園の樹木1,000本伐採は本当か「日比谷公園整備計画」勉強会に参加して(2023/5/22)
3階のコンセプトが最高「東京ミッドタウン日比谷」プレス内覧会に1,000人超(2018/3/22)
垂涎の的 巨人2軍戦がタダで観戦可 フージャースコーポ「東京ジャイアンツ」

「デュオセーヌ東京ジャイアンツタウン」バルコニー(眼下に東京ジャイアンツ球場)
フージャースコーポレーションは10月16日、入居条件が40歳以上のシニア向け所有権付き「デュオセーヌ東京ジャイアンツタウン」のメディア向けモデルルーム見学会を行った。もう70年近くの〝西鉄・西武ファン&アンチ巨人」の記者だが、巨人・ゴルフファンにはたまらない立地だ。プロ野球「読売巨人軍」の2軍戦(年間60~70試合)が外野スタンドから60m離れてはいるが、居室・バルコニーからタダで観戦できる価値は計り知れない。反響者の約3割は野球ファンというのも納得だ。
物件は、京王相模原線京王よみうりランド駅から徒歩14分、多摩都市計画事業稲城南山東部土地区画整理事業90街区3画地の第一種中高層住居専用地域に位置する敷地面積約7,149㎡、7階建て全222戸。専有面積は49.00~110.60㎡、価格は未定。入居条件は満40歳以上で、自身で身の回りのことができること(入居には一定の審査がある)。竣工予定は2027年2月下旬。設計・監理は企画設計事務所オルト。施工は飛島建設。デザイン監修はウイ・アンド・エフ ヴィジョン(石倉雅俊氏)。売主は同社のほかダイヤモンド地所。販売開始は2025年11月中旬の予定。
7月1日からエントリーを開始し、これまで反響数は850件。ホテル説明会に参加した100組のうち興味を示した野球ファンは約3割で、このほかゴルフなどスポーツファンもかなりいる模様。
現地は、施行面積約87.5haの、野村不動産などが2015年からマンションや戸建てを継続して分譲している区画整理事業地内の一角。敷地面積約約76,000㎡の「東京ジャイアンツタウン」に隣接。「タウン」内には収容人数約2,900席の球場が2025年3月にオープンし、水族館、飲食施設が2027年オープン予定。
マンションは、球場外野敷地から約60m離れて立地。同社が〝日本初のボールバーク隣接シニアレジデンス〟と謳っているのは、プロ野球1・2軍/ファームの26チームの拠点球場に近接するシニア向けはわが国初で、「ボールバーク」とは野球だけでなくスポーツ関連のアミューズメント施設を指す。
建物は、内廊下を挟んでグラウンドが一望できる北東向きと、隣接するよみうりゴルフ倶楽部に面した南西向きが3~4割:6~7割。主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2400ミリ、IHクッキングヒーター、フィオレストーンキッチン天板(プレミアムのみ)、メーターモジュール廊下幅、ベンチ付き玄関収納、トイレ、浴室を含めドアは全て引き戸、車いす利用が可能な洗面・キッチンなど完全バリアフリー仕様。共用施設は、ラウンジ、プレイルーム、他木質、カラオケルーム、ゲストルーム、大浴場、レストラン、ゴルフレンジなど。
同社プロジェクトマネージャー・青木一真氏は「最近の〝デュオセーヌ〟は入居年齢を40歳に引き下げている物件もあり、親子入居やセカンドユースも想定しています。確認はできていませんが、居室からプロ野球が観戦できるファミリーマンションはあまりないと聞いています」と話した。

「デュオセーヌ東京ジャイアンツタウン」外観

バルコニー(モデルルーム)

玄関(モデルルーム)
◇ ◆ ◇
「東京ジャイアンツタウン」が建設されることは、もちろん計画が発表された時点で知っていた。しかし、もう70年近く昔から〝西鉄・西武ファン&アンチ巨人〟の記者は、よみうりランドは子どもを連れて何回も行ったことがあるが、読売ジャイアンツ球場には一度も行ったことがなく、「東京ジャイアンツタウン」には全く関心がなかったので、今年3月に開業し、2軍の試合が行われていることも全然知らなかった。
現地とモデルルームを見て飛び上がらんばかりに興奮した。北西向きの49㎡のタイプからは、真正面にグラウンドが見渡せることができる。位置としては外野席の左翼寄り(タイプによって中堅、右翼寄りもあるはず)。双眼鏡を使えば、選手の動きは手に取るように捕らえられるはずだ。写真撮影も自由だ。
何よりいいのは、冷暖房完備の居室で夫婦が熱戦を繰り広げながら、あるいはまたバルコニー(約10㎡)でタバコはNG(管理組合がOKにする可能性はあり)だが、酒を飲飲みながら観戦することができることだ(ヤジはやめた方がいい。隣近所から迷惑行為として通報されるだろうし、第一グラウンドまでは声は届かない)。
そこで考えた。価格次第で間違いなく売れると。その肝心な価格だが、同社は「未定」としているが、記者は最低で坪単価は300万円(下層階)で、平均だと坪320~350万円になると予想する。
誰が買うか。巨人軍関係者やファンには垂涎の的だ。球場が見渡せるタイプは全体の3~4割だが、その多くは巨人ファンが買うのではないか。北西・南西角の110㎡は坪単価400万円として15,000万円でも売れるはずだ。抽選になるか。
〝アンチ巨人〟はどうか。今でも読売(ドクウリ)新聞を読まない記者は湯水のように使える金があっても絶対買わない(テレビでも巨人が負けそうな試合しか観ない)。〝巨人〟〝ジャイアンツ〟の言葉を聞くだけで不愉快な気分になる。約10分間のシアターで「東京ジャイアンツタウン」が5度も6度も耳に聞こえたのに腹を立てた。「読売巨人軍」なら許せるが、どうして「東京」と「ジャイアンツ」をくっつけるのかと。しかし、わが西武ライオンズも正式名称は頭に「埼玉」がつくし、12球団で都道府県名や都市名が付かないのは「オリックス」と「中日」と「読売巨人軍(この軍がいやらしいではないか)」だけだ。「阪神」は固有名詞というより、記者は阪神地方を指す一般名詞だと小さいころから理解していた。
余分なことを書いたが、この球場で行われる年間60~70試合のイースタンリーグをタダで観戦できる価値は大きい。野球ファンは1軍の贔屓チームの成績は毎日のようにチェックするものだし(記者は以前、フクニチを購読し、数日遅れで西鉄の記事を読んでいた)、2軍の選手の成績もチェックしているファンがほとんどではないか。報知新聞は2軍の試合も詳しく伝えている(さすがだ)。〝アンチ巨人〟も検討する人がいるかもしれない。
また考えた。この球場で行われる試合を、ネット・WEBなどで伝えたら爆発的に読まれるのではないかと。重要事項説明書に書かれているかどうかは分からないが、写真を撮ること自体は盗撮にも著作権にも肖像権にも触れないはずだ。ただ、その情報を有料にしたら問題が発生するかもしれない。公園などは商業目的で撮影するのは許可が必要だ。
またまた考えた。ホームページで確認したら、この球場では毎日のようにイベントが行われており、高校野球の地区予選や女子野球も行われているようだ。この価値をお金に換算したらいくらになるか。2軍戦の観戦料金は外野席で1,000円とある。特等席のマンションはその2倍の価値があるはずで、年間60試合として60×2,000=12万円だ。そのほかの試合、イベントもタダで観ることができるのだから、1日1,000円として30.5万円。合計42.5万円とはじいた。日がな一日、ベランダで酒を飲みながら、さわやかな葉擦れの音や小鳥の愛の交響曲を聞き、グラウンドでもまた発情期を迎える少年少女の溌溂とした黄色い声を聴くことができる。至福の時間を過ごせる。馬鹿馬鹿しいテレビを観るよりずっと価値は大きいはずだ。
南西側のよみうりゴルフ倶楽部側は、野球ファンはまず買わないとみた。会員権を持っている人はお金持ちも多いはずで、食指が動かされるかもしれない。見事なグリーンだ。もう一つ追加すると、NPO東京里山義塾が管理している「篭谷戸の森」をはじめ、近くには自然そのものの里山「南山」が近くにある。1日散歩しても飽きない。入山権は設定されていないはずだ。ネットで確認した。オオタカは棲息しているが、クマもイノシシも確認されていないようだ。子どものころよく食べたし、精力剤として効き目があるとかで近所のおじいさんに売ったサンショウウオも東京都が飼育しているはずだ(捕獲したら罰せられるはず)。
〝デュオセーヌ〟はこれまで10物件は見学している。基本性能・設備仕様もいい。記者はシニアも子どももユニバーサルデザインが一番いいと思っている。難点は入居制限があることだ。記者は独りになっても、年寄りばかりのマンションには住みたくない。住むなら、山・川・海・飲み屋が徒歩10分圏にあるのが最高の「官能都市」だと思う。

フージャースシニア向け分譲 10年間で15棟約2800戸「さいたまサウス」見学会(2025/3/15)
野村不戸建て「プラウドシーズン稲城南山」全87戸が早期完売へ(2018/7/15)
「おいでよ!南山」イベントに約500人エリアマネジメント南山・野村不(2014/9/29)
地域の魅力をどうアピールするか 野村不動産「プラウドシティ南山」 (2015/2/9)
市街化区域編入から44年稲城・南山の区画整理で分譲開始(2014/9/25)
多摩ニュータウン学会 稲城市の南山東部区画整理・里山を学ぶ(2012/3/26)
訪日外客数 9月は過去最多326万人 過去最速で3,000万人突破
日本政府観光局(JNTO)は10月15日、9月の訪日外客数は前年同月比13.7%増の3,266,800人となり、9月として過去最高を更新し、9月までの累計では31,650,500人となり、過去最速で3,000万人を突破したと発表した。
中東地域で単月過去最高を更新したほか、台湾や米国、ドイツなど18市場で9月として過去最高を記録した。
大和ライフネクスト第三者管理者方式183件 月1000円/戸 検討に値する額ではないか

大和ライフネクスト柏氏(左)と中氏
主に大和ハウス工業が分譲するマンションの管理を担当している大和ライフネクストは10月14日、記者の取材に応じ、2022年にスタートさせた外部管理者方式「TAKSTYLE(タクスタイル)」の2025年9月末の導入件数は183件に上っており、2025年度中には200件規模になるとの見通しで、現状その通りに推移していることを明らかにした。1件当たりの戸数は50戸未満が中心で、同社が管理するマンションの約5%に該当する。
他の大手デベロッパー系管理会社が主に新築マンションを対象に第三者管理者方式の採用に力を入れているのに対し、同社は居住者の高齢化と共働き世帯の増加による担い手不足と、専門的な知見・知識がなく、空き家、所有者不明、管理費滞納、修繕積立金不足、建て替え論議…などの課題が山積する一般的な50戸未満の既存マンションを中心に、1戸当たり月額約1,000円というリーズナブルな価格設定を行っているのが特徴。
同社マンション事業本部新領域創造部外部管理者サービス課課長・中雄佑氏は「組合運営に困っている既存マンションを中心に提案しており、1戸当たり約1,000円の月額管理業者委託費は新築マンションでも既存マンションでも変わらない」と話し、また同課統括管理者業務執行者・柏勇次氏は「管理の主体は管理組合員であるということを、事前に十分説明している。導入に関しては、お客さま(区分所有者)が判断されることであり、管理の運営方式の選択肢一つとして検討していただくことを提案している」と語った。
この問題について国土交通省は昨年6月、マンション管理業者による外部管理者方式(管理業者管理者方式)の適正な運営を担保することなどを目的に「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」を策定し、2027年4月1日に施行される改正区分所有法との整合性を図っている。
その一方で、弁護士ら専門家は、管理業者管理者方式は利益相反(トレード・オフ)の関係にあるとして懸念を示しており、重責を担う監理体制をどう整備するかの課題も残っている。
◇ ◆ ◇
旗幟を鮮明にしておく。以下は、管理業者管理者方式に積極的に取り組んでいる同社に取材し、管理組合の管理者(区分所有者の代表)の担い手不足、専門的な知見・知識がなくて困っている全国の管理組合と区分所有者(居住者)向けに発信する、費用対効果を考えれば、管理業者管理者方式の採用を検討すべきという趣旨の記事であるということだ。
少し長くなるが、管理業者管理者方式について整理する(添付記事参照)。この方式の実態が明らかになったのは、2023年9月と12月に国土交通省が行ったマンション管理業協会会員会社351社を対象にしたアンケート調査だった。9月調査では、管理業務と管理者業務の担当部署が同一で、責任者も同じというのが42%、業務分担も不明確なのが26%だった。12月の調査では、第三者管理者方式を採用しているのは48社(約3割)で、管理組合数は1,991件(うち投資用マンションが1,055件)で、全国の管理組合数の3.7%、新築マンションで第三者管理者方式の採用を検討しているのは48%、管理者業務の報酬を設定していないのは40%、監事の報酬がないのは53%などが明らかになった。
この結果について、弁護士など専門家は、管理業者=管理者=利益相反(トレード・オフ)として批判した。記者もどんぶり勘定、管理業者への丸投げが多いのにびっくりした。マンション管理業協会の記者懇親会で質問したこともある。大手系のファミリーマンションを中心に管理受託している管理会社は、管理業務と管理者業務の担当者や部署を別にしており、契約書などで明確に区別しているとの回答を得てほっとした。
そんな折の2024年5月、大和ハウス工業と大和ライフネクストが「マンション管理業(分譲マンションの第三者管理者方式)篇」をテーマにしたメディア向け勉強会を実施し、2022年度から取り組み始めた管理業者管理者方式「TAKSTYLE(タクスタイル)」の導入組合は76組合にのぼると報告。2025年度中に200組合に拡大する見込みであることを明らかにした。
そして2025年9月、同社は導入組合は2025年8月末で138組合にしたと発表。今回の取材で件数は1か月間で45件増加したことが分かった。
◇ ◆ ◇
さて、マンション居住者の皆さん、上段の大和ライフネクストの月額管理業者委託費1,000円/戸、50戸で5万円は妥当かどうかを考えていただきたい(他の大手系管理会社の新築マンション管理業者委託費は月額2,000円/戸とも言われている)。
その前に、前提となる第三者管理者方式を採用する余力があるかどうかを検討する必要がある。一般的なマンションの駐車場使用料等を含む管理費の平均は月額759円/坪で、20坪だと約1.5万円、50戸だと75.9万円。年間だと戸当たり18万円、全体で約910万円だ。このうちの大半は管理業者委託費や共用部光熱費、保険代など経常的費用に消える。組合活動費(管理者)から外部管理者に報酬を支払える余力のある組合は極めて少ないはずだ。
しかし、理事になることの負担や円滑な組合活動などを行うことと相殺したら、間違いなく管理業者管理者方式を採用したほうが利益は大きく、月額1,000円/戸なら何とか捻出できのではないかというのが記者の考えだ。
さて、では理事活動を金額に換算したらいくらになるか。規約に定めのある場合を除き、理事はほとんどが輪番制で50戸に5人くらいだから10年に1度は回ってくる。理事会の開催件数は規模などにより異なるだろうが、月に1~2回、各種のイベントや総会議案書の作成なども含めると年間20回くらいではないか。1回当たりの拘束時間を3時間として、皆さんの時給からその理事活動費を金額に換算していただきたい。年間数十万円になるはずだ。
ただ単に時間が拘束されるだけではない。理事会は組合員全員の財産を預かっている。自分の財産ならどのように費消しようが勝手だが、他人の財産はそういうわけにはいかない。一銭たりとも説明のつかない収入・支出があってはいけない。これは神経を使う。
この重労働から解放しようというのが管理業者管理者方式だ。弁護士、マンション管理士、税理士、公認会計士などの専門家からは管理業者=管理者=利益相反(トレード・オフ)の関係にあると指摘されているが、大手デベロッパー系の管理会社が利益相反となるような行為(悪意を防ぐのは容易ではない)を行うはずがない。やったら、その損失額は利益の数倍に達するはずだ。
では、管理会社以外の専門家が外部管理者になるかどうか。記者は知人のマンション管理士に聞いたことがある。「あなたを外部管理者に選任するとしたら、月額報酬5万円でどうか」と。管理士は「絶対受けない。カスハラが怖い。リスクのほうが大きい」と言下に否定した。他の専門家も同様だろう。年収にして1,000万円、多い人は1億円を超える個人弁護士がそのような安価な報酬で管理者を受けるはずがない。
少しわき道にそれる。日弁連アンケートによると、1時間5,000~10,000万円の法律相談のみで完結(問題解決)した事例はたくさん紹介されているが、そのトータルの数は公表されていない。ここが味噌だ。法律相談だけで諸々の問題が解決したら弁護士稼業は成り立たない。AIが解決する。訴訟などに持ち込めるから法律相談の数倍から数十倍の報酬が得られる。辣腕弁護士は1日15時間働くともいわれている。弁護士には残業という概念がない。
いくら懇願されても、このような高額所得者が煩わしい管理者を受けるはずはない。まだある。管理会社を通じて、居住者からは毎日のよう新聞配達のバイクの音、風鈴の音、子どもの泣き声、夫婦げんかの声、ハイヒールやキャスターの音がうるさいとか、換気扇からタバコやニンニクの匂いが流れてくる、ハトの糞が布団につく、ハチの巣をなんとかしろ、樹木の日影で日が当たらない、猫がいなくなった…などが管理会社を通じて報告される。ほとんどは〝受忍限度〟に収まるものだが、対応を誤ると刃傷沙汰にまで発展することもある。このストレスは理事を経験しないと分からない。
監事も同様だ。個人専門家が利益相反をどうしてチェックするのか。〝安物買いの銭失い〟〝損して得取れ〟という言葉もあるではないか。個人専門家がタッグを組めば別だが、総合力では管理会社=管理者が上回る。リスク管理、チェック機能を働かせば管理者と管理会社がWin-Winの関係を構築することは可能だと思う。
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10月31日(金)インテックス大阪で開催される「マンション総合EXPO2025」の「令和8年4月1日改正マンション管理法令施行!合計300組合の管理業者管理者2社の取組み公開セミナー」に中氏はモデレーターとして、柏氏は長谷工コミュニティsmooth-e運営部課長・前田崇行氏とともにパネラーとして出席する。参加費は無料。
管理業者管理者方式大和ライフネクスト137件三井不レジサービス100件超(2025/9/11)
マンション再生メニュー 2つ⇒7つへ旭化成ホームズ区分所有法改正セミナー(2025/7/19)
改正マンション関連法に関する説明会に約480人国土交通省&法務省(2025/7/8)
2つの老いへの対応管理業者管理方式など具体策示す国交省(2025/2/8) .
管理会社管理方式、自治体の体制強化など論議国交省・マンション政策小委員会(2024/12/20)
マンション管理会社3割が投資用中心に第三者管理者方式(2023/12/26)
大和ライフネクスト第三者管理者方式既存中心に76組合受託 2026年に200組合へ(2024/5/22)
マンション管理適正評価制度 9月末の登録件数は9,702件 マンション管理協
マンション管理業協会は10月10日、2025年度第2四半期終了時点のマンション管理適正評価制度の登録状況と評価結果集計をまとめ発表した。
2025年9月末現在、登録件数は9,702件。最も多い登録(星別)は★つが4,080件(全体の約42.1%)、★5つは3,133件、★3つは2,114件。最多登録都道府県は東京都の2,968件(全体の30.6%)。戸数別登録マンションの割合の最多戸数帯は50戸未満(全体の51%)。最多竣工年帯は1991年~2000年竣工(全体の29.4%)。評価×戸数別登録数では、2021年以降竣工における★5の割合は58.2%、400戸以上における★5の割合は80.7%。
同協会は、今後の加点ポイントとして、①規約の規定、規約改正②長期修繕計画の作成③国の基準額を上回る修繕積立金の設定、改善などを挙げている。
7月の首都圏中古マンション・戸建て 成約件数はともに大幅増 東日本レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は10月10日、令和7年9月の首都圏不動産流通市場動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は4,475件(前年同月比46.9%増)となり11か月連続で増加、成約坪単価は281.1万円(同12.3%増)と20 年5月から65か月連続で上昇、成約価格は5,352万円(同10.1%増)と11か月連続で上昇、専有面積は62.83㎡(同2.0%減)と2か月ぶりに縮小。在庫件数は43,850 件(同3.4%減)と2か月連続で減少した。
中古戸建ての成約件数は1,986件(同55.0%増)と11か月連続で増加、成約価格は3,906万円(同3.8%減)と3か月ぶりに下落、土地面積は142.85㎡(同2.3%増)と2 か月ぶりに増加、建物面積は102.62㎡(同1.1%減)と2か月連続で縮小、在庫件数は23,538件(同5.3%増)と22年9月から37か月連続で増加した。
誰のための調査か 森記念財団「日本の都市評価特性」とLIFULL「官能都市」比較
「日本の都市特性評価DATABOOK 2025」合計スコアトップの大阪市のチャート

「日本の都市特性評価DATABOOK 2025」23区合計スコアトップの港区のチャート

LIFULLの社内シンクタンクLIFULL HOME'S総研が「Sensuous City(センシュアス・シティ)[官能都市] 2025」報告書を発刊したことは先に紹介した。モノサシが異なるものを同じ俎上に載せ批評するのは適当ではないことを承知のうえで、ほぼ同時期に発表された森記念財団都市戦略研究所「日本の都市特性評価DATABOOK 2025」とどこが同じで、どこが異なるのか比べてみた。改めて分かったのは〝何のためか、誰のためか〟ということだ。
まず、「日本の都市特性評価」から。これは、森記念財団都市戦略研究所が2018年から調査・発表しているもので、国内の政令指定都市、都道府県庁所在地、人口17万人以上の136都市と東京23区を対象に、「都市の力を定量・定性データをもとに相対的かつ多角的に分析し、都市の強みや魅力といった都市特性を明らかにすること」が目的となっている。
調査は、「経済・ビジネス」「研究・開発」「文化・交流」「生活・住居」「環境」「交通・アクセス」の6分野の28指標グループごとに平均値を算出し、合計スコアとしてまとめたもの。配点は2,800点満点(経済・ビジネス600点、研究・開発200点、文化・交流500点、生活・居住700点、環境500点、交通・アクセス300点)。
調査の結果、23区を除く全国上位10市は、1位大阪市、2位名古屋市、3位福岡市、4位横浜市、5位京都市、6位神戸市、7位仙台市、8位金沢市、9位札幌市、10位つくば市の順。東京23区は1位港区、2位千代田区、3位中央区がベスト3で、最下位は江戸川区。合計スコアは、中央区(1,378.1点)より大阪(1,355.8点)のほうが低い。
大阪市は、経済・ビジネスと文化・交流の両分野で高い評価を維持。名古屋市は、研究・開発と交通・アクセスで高い評価を獲得した。福岡市は、経済・ビジネスでは2位を維持し、特に「ビジネスの活力」の新規不動産業用建築物供給面積でスコアが上昇した。横浜市は、文化・交流で3位と高評価を得ている。京都市は、文化・交流で昨年に引き続き首位を維持している。
分野別では、経済・ビジネスは大阪市、研究・開発は名古屋市、文化・交流は京都市、生活・住居は名古屋市、環境は鎌倉市、交通・アクセスは大阪市がそれぞれトップ。アクター別では、シングルは名古屋市、ファミリーは福岡市、シニアは松本市、観光客は大阪市、経営者は大阪市、従業員は大阪市がそれぞれトップ。
47都道府県庁所在地のワースト3は那覇市(136位)、高知市(134位)、福島市(86位)。那覇市は、分野別スコアで「文化・交流」は15位にランクされたが、「経済・ビジネス」は78位、「交通アクセス」は70位で、「研究・開発」「生活・居住」「環境」は最下位になっている。47都道府県庁所在地より上位は10位つくば市(水戸市は72位)、12位松本市(長野市は17位)、21位浦安市(千葉市は50位)の3市。
首都圏では、東京都は全国合計スコア25位府中市、26位三鷹市、39位調布市、47位立川市、48位八王子市、73位日野市、75位小平市、107位町田市、108位西東京市。人口17万人未満の武蔵野市などは調査対象外。
神奈川県トップは全国合計スコア4位の横浜市で、16位鎌倉市、60位藤沢市、109位相模原市、110位横須賀市、111位平塚市、112位茅ヶ崎市、113位大和市となっている。人口14万人の海老名市は調査対象外。
埼玉県のトップは全国合計スコア32位のさいたま市で、92位川越市、93位熊谷市、94位川口市、95位所沢市、96位春日部市、97位上尾市、98位草加市、99位越谷市の順。人口17万人未満の新座市、久喜市、三郷市などは調査対象外。
千葉県は、浦安市、千葉市の次は76位に流山市が入り、100位市川市、101位船橋市、102位松戸市、103位習志野市、104位柏市、105位市原市、106位八千代市。人口17万人未満の佐倉市、野田市、木更津市などは調査対象外。
三県とも5~8市が〝群(塊)〟として連続してランク入りしているのが特徴。他の地域も同じような傾向がみられ、81位の函館市から85位の八戸まで北海道・東北が、116位富士市から120位鈴鹿市までは東海が、121位堺市から130位加古川市までは大阪圏が、131位呉市から136位那覇市までが中国・四国・九州がそれぞれ連なっている。
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「官能都市」の順位は別表の通り。島原氏は「本来の趣旨は都市に優劣をつけて序列化することではない。ランキングは、あくまで、こういう指標で測ればこういう結果になった、というかたちで指標のアイデアにリアリティを与えるものであり、それ以上でもそれ以下でもない。また、すべての都市がセンシュアス・シティを目指すべきだと主張する意図もない」と断っているので、そのつもりで見ていただきたい。
島原氏は、市街地再開発に対しては辛らつではあるが、致命傷になる、修復が不可能になるような攻撃を加えていない。大手デベロッパーの地道なエリアマネジメント活動などをきちんと評価している。「官能都市」が何よりもいいのは、主語が「私」であり、述語は「キスした」などの動詞であることだ。ただの願望に過ぎない「ナンパしたい」「住みたい」などの助動詞でないことだ。
島原氏は終章で次のように記している。
「自分にとっての意味によって語られる物語のことを『ナラティブ』と呼び、『昔々あるところに』で始まるようなストーリーの物語とは区別される。私たちが自分で住んでいる都市について誰かに語るとき、そこで語られるのは、よほど特殊なシチュエ―ションでない限り、緯度経度や面積や人口やGDPなど客観的なデータではなく、自分自身のナラティブである。だから自分が住んでいる都市に対して大して語る言葉がないとすれば、それは自分が住む都市が、自分にとってあまり意味化していないことを表している」
そして、またナラティブ度順位の高い横浜市中区、千代田区・中央区、文京区、横浜市西区、目黒区、港区、松本氏、函館市、世田谷区、武蔵野市などを紹介し、「下関市(都市特性評価133位=記者注、以下同じ)、那覇市(同136位)、高知市(同134位)、長崎市(同43位)、奈良市(同18位)、山口市(66位)、川越市(同92位)などもナラティブ>センシュアスギャップが大きい」としている。
島原氏が絶賛している吉江俊氏の「<迂回する経済>の都市論」(学芸出版社)を買って読んでいる途中だ。記者のような素人を対象にしていないのだろうが、全体の骨組みを補強する役割を果たす金物(参考文献の古典・論文)が多すぎる(ハワードの田園都市構想は分かるが、「都市と農村の結婚」「農工両全」はありえないことは過去の歴史が証明していると思う)。ただ、「『何か大切なことが書いてある気がする。手元に置いておこう』と思ってくれる人がもしいたならば、私の試みは半分、実現したようなものだ」(序章)と述べられている、その一人だ。著作で紹介されている「下北線路街」もこの前見学・取材してきた。機会があったら記事にしたい。
◇ ◆ ◇
以下は、双方を比較して思いつくままに記すものだ。
「都市特性評価」上位のつくば市(10位)、浜松市(15位)、鎌倉市(16位)、奈良市(18位)、豊田市(26位)、浦安市(21)、府中市(25位)、三鷹市(26位)、豊橋市(29位)、盛岡市(30位)、松山市(33位)八王子市(48位)などは「官能都市」の106位までに入っていない。これはなぜか。
逆に、「都市特性評価」136位まで入っていないのに、「官能都市」106位までにランクインしているのは武蔵野市(39位)、狛江市(調布市とともに46位)、日野市・多摩市・稲城市(1括りで94位)、国立市・国分寺市・小金井市(1括りで95位)。人口17万人未満の武蔵野市を敢えて入れ、複数市を1括りにしているのはある程度理解できる(記者は調布市、三鷹市、日野市、多摩市に居住経験があるが、住宅選好で重視したのは子育て環境と緑環境)。ただ、調布市と立川市が入っているのに三鷹市と八王子市が入っていないのは解せない。また、〝住みたい街ランキング〟などで上位にランクされるつくば市、浦安市、鎌倉市などが106位以下なのはどうしてか。
「都市特性評価」の配点にも疑問を挟まざるを得ない。2,800点満点で「環境」の配分は500点。比率は17.9%だ。記者が重視する「都市地域緑被率」は全体で87項目のうちの1つに過ぎないこれは少な過ぎないか。環境は何よりも重視すべき指標ではないか。お金持ちは緑被率の高い区に住んでいるという研究論文はあるが、お金を出せば環境を買えるということか。
また、「生活・住居」では、23区はほぼ地価水準・マンション価格水準の高い順にランクされているが、これは何を意味するか。23区内のマンション価格は、どんなに駅から遠いところでも坪単価は300万円をくだらない。利便性の高いところは500万円以上だ。早晩、都心の一等地は坪3,000~5,000万円になると記者は見ている。一般的な給与所得層は住めなくなる。「住宅の広さ」「住宅コストの低さ」を重視したら、庶民にとっては最悪の点数どころかマイナスだ。調査は、地価が高く、居住水準が低いほど高い評価となっていることが分かる。
全ての調査・ランキングに言えることだが、何のためか、誰のためかを考えることが必要だ。積水ハウス「男性育休白書」では、「男性の家事・育児力全国ランキング2025」は2年連続して沖縄県がトップだ。
◇ ◆ ◇
長谷工総研の「CRI」10月号からエッセイスト・広瀬裕子氏の巻頭エッセイが紹介されている。「官能都市」報告書のセンシュアス、ナラティブに通じるものがあると思うので、以下の通り「『住む』は『生きる』」から少し引用する。
「毎朝、目覚めた時に漂う静けさ、帰宅して窓を開けた時の風景、駅に降り立った時の香り、近隣から流れてくる音。
条件やそれに伴う事項は、金銭的な余裕があれば、いくらでも選択できます。でも、条件に掲載されていない多くのことや五感が、『生きる』ことを形作っていきます。
不動産情報で条件が合い内見したけれど『ここではない』となることが度々ありますが、それは、条件には挙げられていない本質的なことが『そこではない』と感じるからだと思います。
…『住む』は、すべての『生きる』とつながっている-。あの家の、あの季節の、あの場所だから、気づいたことです。大切なことは、情報として発進されること以外、日々のなかで展開することがほとんどです」
所得の多い人は緑被率の高い地域に住むその差100万円立正大・榎本氏の論文(2025/9/28)
「Sensuous City(センシュアス・シティ)[官能都市] 2025」発刊 LIFULL HOME'S(2025/9/25)
夫の育児・家事の満足度高いのは佐賀、沖縄、山梨、三重積水ハ「男性育休白書」(2025/9/22)

