年頭挨拶 「正・反・合で対話しよう」の価値観大切に Hacobu・佐々木太郎社長
佐々木氏
2025年の新春を迎え、謹んでご挨拶申し上げます。
2023年後半から2024年前半にかけては、物流「2024年問題」を受け、先を見越して物流効率化に向けた対策を講じる企業が多く見られました。
一方、2024年後半は物流関連二法の具体的な政省令が固まるのを待ち、様子見をする動きが主流となりました。年末に政省令案が明確になると、一気に行動を開始する企業が増えた印象です。 物流関連二法の改正は、物流インフラを進化させる大きな一歩となるでしょう。
しかし、法改正への対応が目的化し、物流DXの本来の目的が見失われるケースも散見されます。本来の目的は、物流を持続可能なインフラに進化させることです。法改正はそのためのきっかけに過ぎません。 では、持続可能なインフラに進化させるには何が必要でしょうか? そのヒントとして、Hacobuが大切にしている価値観「正・反・合で対話しよう」をご紹介します。
これは弁証法に基づく考え方で、肯定的な立場(テーゼ)と否定的な立場(アンチテーゼ)の議論を通じて、より良い結論(ジンテーゼ)を導き出すものです。重要なのは、議論の基盤を「データ」という事実に置くことです。
データをもとに物流の課題を多角的に検討し、双方の立場を調和させる答えを導くことが、持続可能な物流インフラの実現に向けた鍵となると考えます。
私たちは、「正・反・合」の対話を通じて物流インフラの課題を解決できると信じています。その実現には、信頼できるデータが不可欠です。
Hacobuでは、個別の企業だけでなく複数企業の物流情報を統合した「物流ビッグデータ」による解決を目指しています。現在、MOVOプラットフォームは約2万7000の事業所で利用されており、そこで生成される物流ビッグデータをもとに課題解決に取り組むべく、2024年には「物流ビッグデータラボ」を設立しました。
2025年は、そこから具体的な課題解決の実例を創出し、物流ビッグデータ活用元年としたいと考えています。
本年も「運ぶを最適化する」というミッションのもと、お客様とともに物流に新たな価値を共創してまいります。
引き続き変わらぬご支援とご指導を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
年頭の辞 グループにとって守破離の「破」の年 野村不動産HD・新井聡社長
新井氏
新年あけましておめでとうございます。
今年は当社グループにとって守破離の「破」の年、具体的には既存の枠組みや常識を超えて新しい付加価値を創造できるような年にしたいと思っています。そのためのきっかけが2つあります。
1つは、夏に予定している「ブルーフロント芝浦S棟」への本社移転で、実に47年ぶりの本社移転です。もう一つは、春に予定している新しい経営計画の発表です。グループの2030年ビジョン「まだ見ぬ、Life & Time Developer」への進化を目指し、一人ひとりがワクワク仕事に取り組めるようにしたいと考えています。
今年の干支「乙巳」は、「成長」や「変革」の年、勢いを増していく年と言われています。自らも殻を脱ぎ捨てて進化することで、グループ全体を盛り上げて成長を加速させたいと考えておりますので、本年も何卒よろしくお願い致します。
年頭の挨拶 環境負荷の低減と災害に強い住宅開発推進 三井ホーム・池田明社長
大規模木造建築の普及と技術の発展に貢献
昨年は、時間外労働の上限規制、建築資材価格の上昇等による建築工事費の高騰に伴い住宅着工戸数が低迷するなど、厳しい市場環境でした。しかし賃上げによる内需回復の動きや、脱炭素化に向けた木造建築のニーズの高まりなど明るい兆しもあります。12月には「子育てグリーン住宅支援事業」の創設などを盛り込んだ令和6 年度補正予算が成立し、また、子育て世帯等に対する住宅ローン減税制度の維持・継続等が与党の2025年度税制改正大綱に盛り込まれました。これらの動きが住宅市場の更なる活性化につながることを期待しております。
当社にとっても、昨年は創業50周年という節目の年でした。
5月には本社とグループ会社の本社などの事務所を東京都江東区の「木の街」新木場に集約しました。そして、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)を導入することで、社員間のコミュニケーションを活性化し、より創造的な発想を生み出すことができる環境を構築しました。
10月には、新工法「MOCX WALL工法」を発表しました。これは、従来のツーバイフォー工法を進化させ、木造マンション「MOCXION」のために開発した高強度耐力壁の技術を戸建住宅向けに最適化したものであり、ツーバイフォー工法の特長でもある優れた耐震性、断熱性、耐久性などはそのままに、さらに自由な設計を可能にする工法です。
11月には「ウッドデザイン賞2024」において7つの作品で受賞しました。これは木造マンション「MOCXION」が各デベロッパーとの協業で完成したことや施設建設の木造化、木の持つ特性の研究、さらに流通材の活用や地産地消を促進する国産杉材を用いたトラス技術の開発など多岐にわたる取り組みが評価をうけたものです。 「MOCXION」ブランドをはじめとする大規模木造建築の普及と技術の発展に当社が貢献できたことへの評価と受けとめ深謝いたします。
創業以来、当社はツーバイフォー住宅のパイオニアとして、常に時代の変化を先取りし、革新的な技術とサービスを提供することで、お客様の「すまいとくらし」を豊かにすることを目指してまいりました。近年、地球温暖化や自然災害の増加など、社会課題が深刻化する中で、住宅業界においても脱炭素化やレジリエンス強化への対応が求められておりますので、創業以来培ってきた木造建築の技術とノウハウを活かし、環境負荷の低減と災害に強い住宅の開発に積極的に取り組んでまいります。
三井不動産グループは、&マークの理念として共生・共存・共創により新たな価値を創出する、そのための挑戦を続けます。同グループの一つである当社は、「高品質な木造建築の提供を通して、時を経るほどに美しい、持続可能なすまいとくらしを世界に広げていく」という使命を胸に、これからもお客様に最高の価値を提供できるよう、全社一丸となって努力してまいります。本年も変わらぬご支援、ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
マンション供給減=市場縮小ではない 戸建ても底入れ・回復へ 今年の分譲住宅市場
明けましておめでとうございます。世の中は不確実性が強まっていますが、だからこそ不易流行、〝記事はラブレター。今年も現場取材を徹底して、読者の皆さんに役立つ情報を発信していきます。まずは、記者の主な取材フィールドである分譲住宅市場の今年の見通しについて。
消えた残り半数のマンションに着目すべき
首都圏マンション市場。これはよくわからない。コロナ以降、現場取材が激減しており、鳥瞰的に市場を見渡すことができなくなったからだ。
ただ一つ、マンション市場を測る前提となっている指標について読者の皆さんは見誤らないようにしていただきたい。不動産経済研究所のデータによると、2023年の首都圏マンション供給量は2万6,873戸(前年比9.1%減)で、2024年は前年比を若干上回る約3.1万戸、2025年は3万戸を下回ると予想されている。他のメディアも調査機関も、この不動研のデータをそのまま援用し、市場縮小を印象づけている。
しかし、これは正確ではない。マンション市場の先行指標である国土交通省の着工戸数は長い目で見れば確かに漸減傾向が続いており、2021年は49,962戸(前年比7.3%減)と初めて5万戸を割った。ところが、2022年は52,379戸(同4.8%増)、2023年は52,746戸(同0.7%増)と再び5万戸台を回復し、2024年も11月現在、前年同期比で1.8%上回っている。
以前にも書いた首都圏マンション着工戸数と不動産経済研究所の供給戸数推移の記事を読んでいただきたい。着工と供給にはタイムラグがあり単純比較はできないが、カバー率(捕捉率)はかなり落ち込んでいることが分かる。2023年は50.9%で、2024年は1~11月の段階で35.9%だ。ありえない数字だ。他人のデータを鵜呑みにするからこういうことになる。
なぜこれほどの差が出るのか、当事者の不動研はともかく、他のメディアや調査機関もあろうことか国土交通省もこの差について触れようとしない。不思議というほかない。
要因はいくつかある。一つは、不動研のデータには専有面積が30㎡以下の戸数は含まれないためだ。専有面積が30㎡以下の着工戸数は年間5,000~7,000戸と推測されている。
もう一つ、カバー率が低い要因は、再開発、建て替え、高額マンションなどの地権者向け、事業協力者向け、優先販売住戸などはカウントされていないからだ。例えば総戸数525戸の野村不動産他「URAWA THE TOWER」は分譲対象は291戸で、総戸数の55.4%だし、三井不動産レジデンシャル他「パークシティ小岩 ザ タワー」も総戸数は731戸だが販売対象は521戸(71.3%)だ。供給戸数減=市場縮小と短絡的に考えるべきではないということだ。高額住戸の比率が高まっていること、利益率が大幅に改善されていることを加味すれば、市場は縮小などしていない(質の低下は問題だが)。
さて、問題は価格がどうなるかだ。都心部での価格上昇はほぼ予想した通りに推移している。今後も都心5区(千代田・港・渋谷・中央・新宿)だけでなく文京、品川、目黒、世田谷など周辺区部も坪単価1,000万円超となるはずで、一等地では近い将来、坪単価3,000万円に乗るとみている。
デベロッパーには、世界の主な都市と比べ割り負けしている市場に肩を並べられるよう高値挑戦していただきたい。東京都港区の課税標準額が1億円超の納税義務者は年々増加しており、2024年は1,523人となり、ついに納税義務者の1%に達した。高額マンションを吸収する余力は十分あると見た。
郊外部も軒並み坪単価250万円超となる。懸念される金利上昇だが、1%上昇したらパニックになるだろうが、まずそんな事態にはならない。レイコンマの上昇であれば影響は少ないはずだ。デベロッパーには、郊外部は利益率を落とし質を維持し、価格を抑制してほしいのだが…。
質についても触れたいのだが、冒頭に書いたように現場取材かできていないので書けない。メディアも調査機関もマンションの質について取材し、レポートしてほしい。
底入れ・底打ちか戸建て 防犯・断熱性能向上、ZEH対応急務
グラフは首都圏分譲戸建ての暦年別着工戸数まとめたものだ。コロナ前までは年間6万戸以上着工されていたが、コロナに見舞われた令和2年(2020年)は前年比16.3%減の約54,000戸に落ち込んだ。ところが、テレワーク、働き方改革の浸透などにより予想外の売れ行きを見せたため各社は供給を増やしたが、コロナ終息後は売れ行きが悪化したため調整局面に入り、着工は再び減少に転じた。2024年も1~11月の着工戸数は前年同期比9.3%減の48,776戸となっており、通年でも前年を下回るのは確実だ。
だが、市場では底入れ・底打ち感も生まれつつあり、今年の分譲戸建て市場は堅調に推移するとみている。むしろ、高騰が続くマンションと比較すると、価格的な優位性がある。この優位性を生かし、一方で弱点でもある防犯性能を高めれば新たな需要を引き出す可能性があるとみている。「リストガーデン武蔵新城セキュリティ・タウン」の記事を読んでいただきたい。CP(防犯)+樹脂サッシをスタンダードにすべきだと思うのだが…。
個別企業別では、市場占有率が約30%の飯田グループのほかオープンハウス、ケイアイスター不動産、ポラスグループの上位4社がどのような戦略を打ち出すかに注目したい。ZEH化は喫緊の課題だ。
ChatGPTに負けない記者の役割
今年、注目すべきなのは、生成AI(人工知能)の更なる浸透だ。記者は三井不動産が2023年8月に全従業員約2,500人を対象に「&Chat(アンドチャット)」を開発したのに驚いたのだが、昨年は積水ハウスが生成AI分野で先進的な取り組みを行うPreferred Networks(PFN社)へ出資したと発表した。生成AIを使いこなせないと生きられない時代がやってきた。
OpenAIが2022年11月に公開した「ChatGPT」はその後、飛躍的に改善され驚くほどの進歩を見せている。この正月、面白半分に「ChatGPT」に「RBAタイムズの牧田記者ってどんな記者ですか」と聞いた。〝情報がありません〟とでも返ってくるかと思ったが、そうではなかった。次のような回答があった。そのまま紹介する。
「牧田司(まきた つかさ)氏は、不動産・建設・住宅業界に特化した情報を提供する『RBAタイムズ』の編集者であり、記者としても活躍されています。彼の執筆する『こだわり記事』は、業界内で高く評価されています。
牧田氏は、企業の規模に関わらず、物件の品質や特徴を公平に評価する姿勢を持っています。例えば、ある分譲戸建てについて『大手と互角に戦える』と評価するなど、独自の視点で記事を執筆しています。
また、RBAタイムズの編集者として、同誌の発行や編集にも携わっており、業界内での信頼性と影響力を持つ人物です。
さらに、牧田氏は取材活動にも積極的で、企業や業界関係者とのインタビューを通じて、深掘りした情報を提供しています。彼の取材は時間をかけて丁寧に行われ、その結果として質の高い記事が生まれています。
総じて、牧田司氏は不動産・建設・住宅業界において、深い知識と洞察力を持ち、読者に価値ある情報を提供する信頼性の高い記者・編集者と言えます」
皆さんいかがか。「業界内で高く評価されています」とか「深い知識と洞察力を持ち」は〝ヨイショ〟の部分もあるのだろうが、「企業の規模に関わらず、物件の品質や特徴を公平に評価する姿勢を持っています。例えば、ある分譲戸建てについて『大手と互角に戦える』と評価するなど、独自の視点で記事を執筆しています」との回答には驚いた。小生の記事(情報)を収集していないとできない芸当だ。AIは「考える力」はないはずだが…。
その半面、怖さも感じた。記者は〝せんべろ〟をよく利用しタバコも結構吸うことなど個人情報も記事に取り込んでいるのだが、行動性向もすべて知り尽くされているのではないかという怖さだ。下手なことはできない。〝清く正しく美しく〟生きろということか。
いずれにしろ、AIに負けないためには「独自の視点」が重要で、徹底して〝ものを見る目〟を養うことだと改めて思った。自らが情報発信源にならないと業界紙もまた生き残れない。
全て疑ってかかれメディア・リテラシーの基本原則を忘れていないか(2022/12/5)
全戸にCPガラス IoT駆使し快適性も県初のリスト「防犯セキュリティ・ホーム認定」(2024/11/28)
〝AIと鋏は使いよう〟自社特化型AIチャットツール「&Chat」運用開始三井不(2023/10/10)
「しわぶき」を「しわ(wrinkle)」と誤訳高度な言語表現に適応できない ChatGPT(2023/7/25)
ユニソン「防災トークセッション」に170名/AIの文字起こしは凄いが課題も(2023/7/15)
自治体初横須賀市のChatGPT作成リリースの粗探し文法・用法の誤り発見(2023/4/21)
年頭所感 選ばれ続けるマンションを提供 三菱地所レジデンス・宮島正治社長
宮島氏
お客様のベネフィットを追求し、価値観の変化に対応
2024年は世界情勢の混迷が続く中、日経平均株価が最高値を更新するなど経済的にも新しい局面を迎えた。一方、日銀がマイナス金利政策を解除したことによる住宅ローン金利への影響は限定的で、新築分譲マンション市場は引き続き堅調であった。特に利便性の高い都市部の人気が引き続き高く、当社においても「ザ・パークハウス 武蔵小杉タワーズ」、「ザ・パークハウス 心斎橋タワー」などが特に大きな反響をいただいている。
お客様のベネフィットを追求し、価格に見合う、より高付加価値のマンションを提供することが必要だと考える。例えば昨今、環境配慮や防災など、建物における社会的意義が判断材料の一つになっている。当社としてはZEH標準化や、2010年から行っている太陽光発電システム「soleco」の導入等を継続し、CO2排出量削減に努めるとともに、コンクリート型枠合板のトレーサビリティ確保など業界に先駆けた取り組みを進めている。防災については当社の有志社員などが組成する「三菱地所グループの防災倶楽部」を中心に、居住者の皆様との防災訓練や、オリジナル防災ツールの一般公開などを通じて災害に備える。また間取りや住宅設備についても、お客様の声を反映し、収納や設備の改善、テレワーク対応など需要をくんだマンションづくりを行っている。
2025年は、住まいにおける社会的意義がますます重要になっていく。立地や仕様だけで選ばれる時代ではなくなりつつあり、住む方だけでなく、社会やまちに良い影響をもたらす住まいが求められている。引き続き主に労務費等の上昇を背景に建築工事費の高止まりが見込まれるが、お客様の声によく耳を傾け、お客様の購入目的や価値観の変化をしっかりと把握し、選ばれ続けるマンションを提供していきたい。
年頭所感 アセット・ノウハウ・人財を総動員し社会課題解決へ 三菱地所・中島篤社長
中島氏
グループ一丸となり世界一のデベロッパー目指す
2024年は、「変化の年」となった。日銀によるマイナス金利解除や日経平均株価が史上初の4万円台を記録するなど、日本経済における大きな転換点が訪れた。一方、世界に目を向けると、出口の見えない紛争により地政学的リスクは依然として高まり続けている。また各国の政治体制や方針にも変化が見られた。このような状況下で、持続可能な成長を遂げるためには、内外の課題に的確に対応し、価値観や環境の変化を見据えた柔軟な取り組みが求められる。
ビジネス環境の変化・高度化が進み、企業は人的資本経営へシフトを加速させている。オフィス整備をコストではなく投資と捉え直す流れが顕著になってきており、不動産デベロッパーには「床貸し」を超えた付加価値提供が求められている。当社も昨年9月「グラングリーン大阪」の先行開業を迎え、今年3月には南館の開業も予定されているが、「みどりとイノベーションの融合」という新たな価値提供には強く手応えを感じている。国内外各都市で、まちにどのような価値を生み出すべきかを柔軟に考え、求められる魅力的なまちづくりを進めていく。
2025年は、長期経営計画2030の折り返し地点を迎え重要な年となる。2024 年に「Be the Ecosystem Engineers」を共通基本方針とし、「Return to Basics(原点回帰)」を目標達成に向けた一つの指針として掲げた。変化の時代だからこそ原点に立ち返って不動産事業の「稼ぐ力」を底上げするとともに、当社グループと社会、双方の持続可能性を確立すべく、アセット・ノウハウ・人財を総動員して事業を通じた社会課題の解決を目指す。
まちづくりを通じた付加価値提供を加速させ、それを当社リターンにしっかりとつなげていく1年になる。グループ一丸となって未来を見据えた挑戦を続け、世界一のデベロッパーを目指していく。
年頭所感 大義あれば「妄想」⇒「構想」⇒「実現」へ 三井不動産・植田俊社長
「産業デベロッパー」という「プラットフォーマー」として
社会のイノベーション・付加価値の創出に貢献
謹んで新年のお慶びを申しあげます。
昨年は歴史的な選挙イヤーとなり、米国大統領選挙でのトランプ氏勝利、日本では衆議院総選挙の結果、石破首相による少数与党政権となりました。日本経済においては、日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新、実質賃金がプラスに転じ、日銀の利上げにより「金利のある世界」が戻り、デフレから脱却し成長型経済へ向かう「時代の転換点」ともいえる歴史的な1年となりました。
このような転換期において、昨年、当社グループは、新経営理念と長期経営方針「& INNOVATION 2030」を策定し、「新たなスタート」を切りました。これからは、付加価値が正当に評価され、イノベーションが加速する時代です。不動産デベロッパーの枠を超えた「産業デベロッパー」という「プラットフォーマー」として、社会のイノベーション・付加価値の創出に、これまで以上に貢献してまいります。個別プロジェクトでは、当社初のアリーナ事業である「LaLa arenaTOKYO-BAY」が開業、「築地地区まちづくり」では、事業予定者に選定され、東京の国際競争力を高め、都民に愛され、世界中から人々が集まり、賞賛されるような、魅力的で先進的なまちづくりを進めていきます。
今年は、長期経営方針2年目の年として真価を問われる1年と捉え、一人ひとりがいかに付加価値を創出し高められるかを念頭に置き、事業に取り組んでまいります。突拍子もない「妄想」でも、そこに大義があれば仲間が集まって「構想」になり、勇気があれば「実現」につながっていきます。多様な変化に適応しながら、イノベーションを起こし、付加価値を創出することで、日本の産業競争力に貢献していきたいと考えています。また、首都圏・愛知・台湾で7物件の商業施設の開業を予定しており、当社の強みであるリアルの場の優位性を活かして、スポーツ・エンターテインメントの力を活用し、付加価値を最大化させる街づくりを推進いたします。
最後に、サステナビリティ・環境との共生については、代表事例として、昨年、日本橋にて国内最大級の木造賃貸オフィスビルに着工しました。国産木材の使い道を広げる挑戦を通じて、森林資源と地域経済の好循環への貢献を目指す取り組みを推進しています。100年先の未来の子供たちへこの地球環境を受け継いでいく想いで、持続可能な社会に貢献してまいります。
皆様のこの一年のご健勝とご多幸をお祈り申しあげます。
年頭所感 新中計「新たな始まりと成長」達成に向け全力 東京建物・小澤克人社長
小澤氏
社会課題解決と企業としての成長を両立させ「次世代デベロッパー」へ
昨年は日経平均株価がバブル期以来の最高値を更新したほか、日銀が金利政策を見直し、いわゆるマイナス金利政策を解除して17年ぶりの利上げを実施するなど、日本経済は大きく転換したといえる1年だった。そのような中でも当社は安定した成長を続けることができ、2024年を最終年とする中期経営計画を無事達成できる見込みである。
本年は新中期経営計画を1月16日に公表する。新中期経営計画では、長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」で掲げている「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立することを目指し、東京建物グループの更なる成長と発展を目指す計画となる。
事業環境の面では、エネルギー価格や建築費の高騰など、我々の事業を取り巻く環境は予断を許さない状況が続いている。
オフィス市場では空室率の低下や平均賃料の上昇がみられるが、リアルなコミュニケーションの場としてのオフィスの重要性の再認識に伴う更なる付加価値の提供が求められている。分譲マンション市場も高価格での成約が続いているが、物価上昇や金利の動向次第では市場に変化が現れる可能性があり、Brilliaブランドの更なる価値向上が重要となる。
当社が参画する東京駅前八重洲一丁目東第一種市街地再開発事業(A地区・B地区)については、2026年の竣工に向けて順調に進捗している。当社も本社移転を予定している本プロジェクトB地区のオフィスでは、心身の健康だけでなく、仕事における満足度ややりがいを含む、総合的な幸福を意味する「ウェルビーイング」をテーマとしている。この言葉は当社グループの役職員にとっても大事な考え方で、これを実現するためには、一人ひとりが自らの仕事に誇りを持ち、最大限の力を発揮できる企業文化を育むことが大切だ。その中で、持続的な企業価値の向上を実現し、社会にとって必要とされる会社であり続けるために新社長として全力で取り組みたい。
本年は新しい中期経営計画をスタートさせる当社グループにとって「新たな始まりと成長」を象徴する年である。次のステージへの第一歩を進む年ともなるよう、社員一丸となって、目標達成に向けて邁進していきたい。
年頭所感 5月に新中計「強靭化フェーズ」発表 東急不動産HD・西川弘典社長
テーマは都市間競争力強化 GX実現、地域資源価値最大化の3つ
昨年はインフレ経済への転換点という大きな節目を迎えた。足元の不動産市場は仲介市場の好調など良好な状態を維持している。ただ、国内の金利情勢など、そして海外に目を向ければ米国でのトランプ政権への政権交代、ウクライナ戦争、そして韓国の内政不安などリスク要因は枚挙に暇がないが、今こそこれまでの傾向延長にない高い成長や売上拡大を図り、利益を生み出す好循環へのシフトを模索する機会だ。金利のある世界を意識して、顧客に本当に価値があると認められる商品・サービスの提供に加えて、「スピード感」を今まで以上に意識しながら事業に取り組んでいきたい。
最重要拠点の「広域渋谷圏」では、昨年4月に新しい体験価値を享受できる場所「創造施設」を目指す東急プラザ原宿「ハラカド」が開業し、昨年7月には渋谷最大級のスケールとインパクトを誇る“次世代型ランドマーク”「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」の街開きを迎えるなど、複数の大型再開発で旺盛な不動産需要の取り込みを図ったほか、線路や幹線道路をまたぐデッキを新設するなど課題だった渋谷駅周辺のバリアフリー化も同時に進めることができた。また当社グループは「環境経営」に注力しており、具体的には再生可能エネルギー100%のデータセンターを北海道石狩市で着工するなど再エネ電気を活用した事業展開のほか、広域渋谷圏や長野県の蓼科でTNFDに基づく生物多様性の取り組みを積極的に進めてきた。
当社グループは今年5月、新しい中期経営計画を発表する。2030年度までの 10年間の長期経営計画における前半戦の再構築フェーズは、外部環境の追い風もあり全ての財務目標を2年前倒しで達成することが出来た。後半戦の「強靭化フェーズ」では、強固で独自性のある事業ポートフォリオを構築していく。新中期経営計画の6年間では、金利上昇影響の顕在化に加え、AIの技術革新による付加価値の定義の変化や、富裕層、アッパー層が増えたことによる消費の二極化の進行、また脱炭素などの環境価値が事業活動の「付加要素」から「前提条件」となり転換していくと考える。新しい中計では、強靭化フェーズにおける重点テーマとして、広域渋谷圏戦略を推し進めることによる「国際的な都市間競争力強化」、再生可能エネルギー事業を中心とした「GXの実現」、そしてリゾート事業に代表される「地域資源の価値最大化」の3つのテーマが重要だと考えている。その実現のために財務面と非財務面を統合した価値創造を推進していく。
年頭所感 3月に複合施設「ポラステクノシティ」開業 ポラスG・中内晃次郎代表
中内氏
木の魅力や交流と学びの場提供し、地域との繋がり強化
2025年は、昨年7月の日銀による政策金利の引き上げ以降、「金利のある時代」が復活したことにより、長く続いたデフレ経済からインフレ経済に切り替わるとともに、モノの価格を上回るレベルで賃金レベルの上昇を目指すことになります。
国際情勢に目を向けると、ウクライナ情勢、中東の動きやトランプ氏のアメリカ大統領就任など日本経済に影響を及ぼす大きな出来事が予定されており、引き続き注視していく状況にあります。
一方で国内では、昨年1月1日に令和6年能登半島地震が発生し、夏には南海トラフ地震臨時情報の発表がされるなど今後も更なる災害等の対策及び備えが必要となります。
2024年の住宅業界は、土地や資材価格の高止まり及び新設住宅着工戸数の減少による市場規模が縮小傾向となっております。当社においては、地域密着経営により地域の魅力を維持、向上させる街づくりを推進し、新築戸建事業、不動産仲介事業が堅調な一年となりました。
本年は、4号特例の縮小による構造計算業務の拡大が予想されます。当社では、予てより全棟構造計算を行ってきましたので引き続き注力していく所存です。また、プレカットと設計業務を合わせたサービス提供により安心、安全な木造建築の供給に寄与できると考えております。
3月には、ポラスグループ初の複合施設として、「ポラステクノシティ」がオープンします。木の魅力や交流と学びの場として地域との繋がりをより一層大切にしてきたいと思います。
予測困難な時代だからこそ、どのような局面においても、冷静に対応し、お客様にご満足いただける商品・サービスの提供に努め、困難を乗り越えていける一年にしたいと考えております。