百尺軒線を継承 三菱地所、東宝、出光美術館「国際ビル・帝劇ビル」建替え始動
「(仮称)丸の内3-1プロジェクト」
三菱地所、東宝、出光美術館は12月16日、「国際ビル」と「帝劇ビル」の建て替え事業「(仮称)丸の内3-1プロジェクト」の都市計画手続きが開始されたと発表した。国家戦略特別区域の都市再生プロジェクト認定に向け、歴史的な31m(百尺)の軒線を継承し、帝国劇場・出光美術間を再整備、皇居外苑を眺める低層屋上テラスを整備、ハイグレードオフィスを6階~29階に整備することなどが特徴。工事期間は2025年度~2030年度の予定。
計画の特徴は、①帝国劇場・出光美術館の再整備と機能強化②皇居外苑を眺める低層屋上テラスの整備③東京メトロ有楽町線・都営三田線との駅まちまの接続④JR有楽町駅東西を結ぶ地下通路の新設など。
三菱地所設計が建物全体設計を担い、低層部の外装デザイン提案に建築家・小堀哲夫氏を起用。「大手町・丸の内・有楽町地区まちづくりガイドライン2023」に沿った建物計画を行うとともに、歴史を継承しながら芸術文化の発信を象徴する、世界に誇れる風格ある新しい景観の創出を目指す。歴史的な31m(百尺)の軒線を継承。6~29階にハイグレードオフィスを整備する。
帝国劇場はロビーホワイエの社交場的機能を強化し出逢い・交流を促進するとともに、あらゆる人々が快適に観劇を楽しめる空間整備や取組を実施する。出光美術館は展示公開エリアを拡充し東洋・日本古美術の魅力や独自性を国内外に発信するとともに、様々な文化発信プログラムの開催やアフターMICEメニューを提供する。美術館設計デザインは日建設計。
皇居外苑に面した低層部屋上には、一般にも開放される屋外テラスを整備。MICEユニークべニューとしても活用することを想定している。
計画地は、千代田区丸の内三丁目1番地1号他、都市再生特別地区の区域面積約1.4ha、敷地面積合計約9,900㎡、延床面積 約176,000㎡、容積率約1,500%。階数・高さは地上29階、地下4階/約155m。工事期間は2025年度~2030年度の予定。
低層部イメージ図
低層屋上テラス イメージ
帝国劇場イメージ(正面エントランス)
近景イメージ(南東角エントランス)
遠景イメージ
センコー・旭化成ホームズ・積水化学工業・積水ハウス 住宅物量で協業
左から丸山氏、杉本氏、阿部氏、野間氏(東京イーストサイドホテル櫂会で)
杉本氏
物流大手のセンコーと住宅メーカーの旭化成ホームズ、積水化学工業住宅カンパニー、積水ハウスの4社は12月16日、住宅物流での協業を2024年12月から開始したと発表。物流拠点・車両の共同利用・大型車両採用、環境に配慮した車両導入などにより、2025年までにドライバーの運転時間を約17,000時間/年、輸送CO2排出量を約500t/年(スギの木約35,800本)削減し、持続可能な物流体制の構築を目指す。
記者発表会でセンコー代表取締役社長・杉本健司氏は、2024年4月に施行された働き方改革関連法によりトラックドライバーの時間外労働の上限規制により1人当たり労働時間を約2割削減すること、また2030年までに二酸化炭素排出量を対2013年度比で35%削減することが求められており、国の方針として2028年度までにトラックドライバーの1日当たり荷待ち・荷役にかかる時間を現在の平均3時間から2時間に短縮し、1台ごとの積載量を現在平均の38%から44%に引き上げること、配送を効率化するシステムを導入することなどが取りまとめられたことを報告。
一方で、住宅物流は建築現場でのクレーン卸しに平ボディ車が減少し、特殊技術を持つドライバーが不足している現状があり、この課題を解決するため「住宅物流4社協議会」を2023年に発足させ、今回の協業に至ったと語った。
主な協業施策として、①物流拠点・車両の共同利用②部材購入・輸送の共同実施③車両大型化+中継輸送による効率化④環境に配慮した車両導入・軽油代替燃料の活用などによるCO2排出量の削減の4つを挙げ、協業により2025年までにドライバーの運転時間は約17,000時間/年、輸送CO2排出量を約500t/年削減すると話した。
発表会に臨んだ旭化成ホームズ執行役員施工本部長・阿部俊一氏は「当社は重要課題として『With Customer』『With Environment』『With Employee』の3つのWithを掲げており、今回の協業は志を一つにした意義ある取組」と、積水化学工業執行役員住宅カンパニー渉外・購買部長・丸山聡氏は「当社は8か所の工場でユニット住宅を生産しており、効率化、脱炭素にも取り組んでいるが、個社では限界もある。今回の枠組みを通じてより効率化、脱炭素に貢献する」と、積水ハウス専務執行役員技術・生産部門担当R&D本部長・野間賢氏は「この先、ものが運べなくなるのではないかという危機感を抱いている。それぞれの強み、弱みを効率化につなげ、環境にも貢献する」とそれぞれ語った。
左から丸山氏、阿部氏、野間氏
左から左から丸山氏、杉本氏、阿部氏、野間氏(センコー本社で)
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物流、特に運送業界は労働環境の改善、ドライバー不足、効率化、生産性向上が喫緊の課題だとは聞いてはいるが、これまでの取材はすべてが座学によるもので、(記者と同じ)〝アナログ〟の現場を全く知らないので、各氏の話を聞いてもさっぱりわからなかった。その逆に、どうして4社だけなのかという疑問が湧いた。ベロッパーも共通の課題であるはずだ。システムの標準化・共同化はどうなっているのだろう。パレット1つとっても全国共通にしたほうがいいことは素人でもわかる(記者は環境に考慮して木がいいと思う)。
一つだけ分かったような気がしたのは、センコー本社内で行われたダブルトラックによるデモンストレーションだった。10トン車を2両つなげたもので、長さは約24m、荷物を含めた重量は約46トン。
その大きさに仰天したのだが、この車両が通れる道路は幅員17~18m必要だとも聞いた。そんな広さが確保されている道路はどれくらいあるのだろうか。各社の生産拠点はそんなに広い道路につながっているのか。
ダブル連結トラック
ダブル連結トラック
物流の2024年問題解決へ5社連携伊藤忠商事・KDDI・豊田自動織機・三井不・地所(2024/5/19)
セカンド・オピニオン機能はないのか 「SUUMO新築マンション 首都圏版」年末版
記憶にないくらい久しぶりに、フリーペーパー「SUUMO新築マンション 首都圏版」の年末号「2030年の首都圏は? 東京23区未来予想図」を持ち帰った。重いのなんの。計ったら950~960グラム。ページ数は744ページ。しかも上質紙でオールカラー。普通の雑誌だったら原価だけでも千円以上はする。無料で配布できるのはマンションのWEB広告などと抱き合わせだからだそうだ。コストは物件価格にオンされるのだろう。
さすがSUUMOだ。その前身「住宅情報」が発刊されたのは1976年だ。記者はそのころ、どうして不動産協会や都市開発協会、日本住宅建設産業協会(現全国住宅産業協会)などは共同の住宅購入相談所を設けないのだろうと考えていた(不動産協会は銀座・そごうに一時設置していたが)。
その後、読売新聞社が「住宅情報」に対抗するように住宅情報誌を発刊したが、長続きしなかった。差別化ができなかったからだ。現在のSUUMO事業を展開するリクルートホールディングスの2023年3月期の売上高は3兆4,164億円で、SUUMOなどの住宅分野を含むマッチング&ソリューション事業の売上高は8,078億円だ。SUUMOだけでも売上高は1,000億円超と言われている。
年末版は、「住宅情報」時代と同じ「不動産会社ガイド」が中心に編集されている。紙面の大半を占める。今年は42社が掲載されていた。
最初に登場したのは三井不動産レジデンシャル、次はタカラレーベンで、日鉄興和不動産、相鉄不動産/相模鉄道、長谷工グループ…と続く。アイウエオ順ではない。ページ数順だった。三井レジは最多の40ページ、タカラレーベンは30ページで、もっともも少ない見開き2ページのブリスなど3社が一番後ろ。
掲載会社を見て、供給上位の会社が漏れていることに気が付いた。三菱地所レジデンス、住友不動産、オープンハウス、飯田グループ、モリモト、大和地所レジデンス、明和地所、日本エスコンなどのデベロッパーに住友商事、丸紅の商社、東武鉄道などの鉄道会社(系)などだ。まあ、しかし、42社なら首都圏マンション市場の7割くらいを占めるのだろうと計算した。
その一方で、電鉄(系)の〝攻勢〟が目立つ。東急、小田急、相鉄、京急、名鉄、近鉄、阪急阪神、京阪電鉄、西鉄など全42社の約2割を占める。首都圏電鉄会社で掲載されていないのは東武、西武、京王、京成の4社だ。
これらの会社の沿線は同業他社やデベロッパーのマンションの〝草刈り場〟になっており、総じて地価・マンション価格が低く、街のポテンシャルもいま一つだ。ひとえに、沿線の価値向上に取り組んでこなかった電鉄会社の責任だ。
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しかし、消費者にとってはこれら〝割り負け〟沿線はいいこともある。デベロッパーに価格下げ圧力がかかっているからだ。SUUMOの絞り込み条件から「東京都」「60㎡以上」「4000万円未満」(坪単価200万円)で検索したら17件がヒットした。これに「神奈川県」26件、「埼玉県」34件、「千葉県」37件、「茨城県」10件を合わせると124件ある。この124件のうち圧倒的多数は〝割り負け〟沿線とJRだろう。
これから分譲されるマンションは、どのような遠隔地でも坪単価200万円以下、つまり20坪で4,000万円以下はありえない。不動産に掘り出し物はないと思うが、〝住めば都〟だ。いい物件が見つかるかもしれない。
SUUMOと他のマンションポータルサイトにお願いだ。AIを駆使し、購入検討者の属性、ライフスタイルに応じたセカンド・オピニオン機能を付加することだ(どこかやっていないか。SUUMOカウンターがその役割を果たしているのか)。検索条件に「日高屋」「DOOTOR」「マクドナルド」の御三家を加えてはどうか。「喫煙可」も必要かもしれない。レポーターなる人の記事(広告)は即刻やめるべきだ。
都心外周部で増える予感 ボラスのコンパクト「東久留米」は坪420万円
「ルピアシェリール東久留米」
ポラスグループ中央住宅が分譲中のコンパクトマンション「ルピアシェリール東久留米」を見学した。同社初の西武池袋線沿線のマンション分譲で、坪単価420万円には驚いたが、設備仕様レベルは極めて高いと思った。
物件は、西武池袋線東久留米駅から徒歩5分、東久留米市本町一丁目の近隣商業地域、第一種中高層住居専用地域に位置する5階建て38戸。専有面積は28~53㎡、坪単価は420万円。1月下旬に販売予定の第2期(3戸)の専有面積は32.25~34.50㎡、価格は3,500万円台~4,200万円台、竣工予定は2025年10月中旬。施工は多田建設。売主は同社のほか三信住建。
11月9日から販売を開始し、これまで第1期7戸が完売。購入者の属性は30代から40代の単身女性が中心。
現地は、駅前の商店街から少し離れた中層の商業店舗などが建ち並ぶ一角。建物は西向きで、西側は3階建ての郵便局。住戸プランは未分譲の28㎡が5戸、メインの34㎡が15戸、32㎡が14戸、53㎡が4戸。
主な基本性能・設備仕様は内廊下方式、リビング天井高2400ミリ、二重床・二重天井、食器棚、かくれんボックス、物干しポール、コンサバトリー(一部)、浴室タオル掛け2か所、おたすけバー、シャワー付き混合水栓、ちょいおきレール、「やさしい水工房」、ウォークスルークローゼットなど。
同社マインドスクェア事業部マンションDv・春原真由氏は、「同業他社は共通モデルルームで顧客対応していますが、当社は、地域特性にあった物件ごとの商品企画を実物モデルルームで観ていただくのが基本。観ていただければその良さを理解していただけるはず。最近近分譲した『ルピアシエール』シリーズでは坪単価400万円の『武蔵浦和』と『浦和』の4物件がほぼ1年半で完売しています。今後もこのシリーズを強化します」と話した。
現地
模型
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同社が11月末にこの物件の分譲を開始したと発表したとき、ぜひ見学しようと決めた。同社が西武池袋線でマンションを供給するのは初めてで、どうしてコンパクトなのか、さらに今後のコンパクトマンション市場の方向を探るためだった。
基本性能・設備仕様レベルは上段で紹介した通り。床暖房、食洗機はないが、浴室タオル掛け2か所、浴室内のおたすけバー、物干しポールなどはいかにも女性目線のアイテムだ。一般的なアパートに住む単身者はそのレベルの高さに驚愕するはずだ。
単価は決して安くはないが、都内23区内では一部城東エリアを除き、坪単価は軒並み500万円を突破している。同社は昨年分譲した「武蔵浦和」「浦和」などの売れ行きから、外周部でもニーズがあることをつかんだようだ。
「東久留米駅」のポテンシャルも記者が予想した以上に高い。「日高屋」「ドトールコーヒー」「マクドナルド」の〝御三家〟が全て揃っている。首都圏コンパクトマンション市場は年間5,000~7,000戸と見ているが、今後はファミリーとの混在型や都心外周部での供給が増えそうだ。
モデルルーム
コンサバトリー
左から浴室タオル掛け、物干しホール、おたすけバー
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取材後、多摩センターに帰り、同僚と2人で「日高屋」で飲んだ。アジア初のノーベル文学賞を受賞したハン・ガン「菜食主義者」(クオン)を借り、話題はわが国のDXの取り組みが遅れていること(不動産も)、生成AIはもっと利用すべきこと、タブレットはますます普及すること、国内外の選挙で既成の大マスコミは惨敗したこと、樹木剪定はお金が掛ること、丸山健二と高倉健、中上健次と都はるみなど多岐にわたった。
大声で話していたためか、何かをきっかけに我々より2回りは若そうな隣の男女二人組の方たちと話し合うことになった(多分、仏陀が説いた〝姦淫するなかれ〟などの十戒だと思う)。
その女性の方の出自と話すことがすごかった。彼女は、第一子と第九子以外はすべて女性の9人兄弟姉妹の5番目で、生まれたのは高輪の家政婦付きの豪邸。9人兄弟というのはそう珍しくないが、お母さんは昭和41年1月から同50年12月までの約10年間に9人の子どもを産んだというから凄い。(ノーベル文学賞受賞作家・莫言「豊乳肥臀」は9人兄弟姉妹の物語。世界ギネスの多産女性は60人超というのは知っていた。いまネットで調べたら69人だった。この方は5つ子、4つ子を何度も繰り返した結果)。
生まれも育ちも普通でないためか、また、お父さんは家政婦とも関係したためか、話すことも凄かった。「世の中は金しかない」「世の中の奥さんが求めるのは金だけ。愛はいらない。夫は他人」「世の男はおろか。女性の本心を理解していない」などと宣い、卑弥呼、平塚らいてうにも言及した。〝元始、女性は太陽だった〟-これはとてもよく分かる。
日高屋もまたえらい!過ごしたのは5時間くらいか。店の人は何も言わなかった。料金は2人で5,000円くらいだった。
〝瓢箪から駒〟驚異的な売れ行きタカラレーベンのコンパクト「ネベル鶴瀬」(2024/11/29)
全戸南西向き幅員23mの桜並木・遊歩道・道路に隣接ポラス「武蔵浦和」(2022/5/19)
ポラス中央住宅 コンパクトマンション「南浦和」 順調な売れ行き(2020/10/16)
11月の中古マンション・戸建てとも成約件数は前年同月比2けた増 東日本レインズ
日本不動産流通機構(東日本レインズ)は12月11日、首都圏の2024年11月の不動産流通市場動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は3,207件(前年同月比10.6%増)、坪単価は262.0万円(同5.9%増)、成約価格は5,022万円(同6.1%増)、専有面積は63.24㎡(同0.2%増)となった。成約件数は5か月ぶりに前年同月を上回り、成約単価は55か月連続で前年同月を上回った。
中古戸建の成約件数は1,262件(同30.2%増)、価格は3,895万円(同2.1%増)、土地面積は140.16㎡(同5.5%減)、建物面積は104.59㎡(同0.6%増)。
信頼性・透明性・認知度の向上へ 不動産クラウドファンディング協会 統合記念式典
左から川口教授、同協会理事・室谷泰造氏、同協会理事・大島均氏、同協会代表理事・横田大造氏、自由⺠主党不動産クラウドファンディング振興議員連盟事務局長・宮路拓⾺氏、同所属・神田潤一氏、同協会理事・杉本宏之氏、同協会監事・成本治男氏
一般社団法人不動産クラウドファンディング協会は12月10日、日本不動産クラウドファンディング協会との統合記念式典を衆議院第二議員会館で開催し、同協会代表理事・横田大造氏(クリアル代表取締役社長)と、新たに理事に就任した杉本宏之氏(シーラテクノロジーズ代表取締役会長グループ執行役員CEO)がそれぞれ業界の信頼性・透明性・認知度の向上に寄与し、業界の発展拡大を目指すとあいさつした。記念式典には多くの国会議員、国土交通省、金融庁、内閣府の担当者も出席し祝辞を述べ、早稲田大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科)教授・川口有一郎氏による「新しい不動産金融とクラウドファンディング」と題する講演も行われた。式典には61名が参加した。
横田氏は冒頭のあいさつで、統合により会員は41社、不動産クラウドファンディングサービスを提供する会社は81社にのぼり、累計出資額は1,206億円、利回りは2023年1月の6.20%から現在は9.16%と上昇トレンドにあり、「不動産クラウドファンディング業界の信頼性・透明性・認知度の向上に寄与し、業界の発展拡大を目指す」と述べた。
杉本氏は、「業界には玉石混交の部分もあり、健全性と自主規制にしっかり取り組み、『貯蓄から投資へ』を後押しする使命感を持ち、業界全体を発展させたい」と語った。
自由民主党不動産クラウドファンディング振興議員連盟事務局長・宮路拓馬衆議院議員は「不動産クラウドファンディングは金融商品、証券、あるいは地方創生の武器にもなりうる可能性を秘めた新しい業態。われわれもしっかりサポートし、消費者、事業者、国のWin-Winの関係を構築していきたい」と語った。
川口氏は、過去30年間の国債金利は「水没」から「金利ある世界」へ移行し、現在、50兆円の証券化不動産は2050年までに100兆円に伸ばすのは無理なことではなく、25万人に達した不動産クラウドファンディング投資家を増加させ、ロボアドバイザー(ノボアド)の役割、不動産クラウドファンディング×REIT×ロボアドの重なり合うAPI(アプリケーションプログラミングインターフェイス)の重要性などについて話した。
不動産クラウドファンディング協会は2023年8月設立。公平な視点でのデータベースの作成や事業者間の情報交換の機会、勉強会などの活動を行ってきた。日本不動産クラウドファンディング協会は2023年11月設立。自主規制ルールの策定や関係省庁への政策提言を行ってきた。両協会は2024年9月に統合した。
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わが国の家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資に向かい、「成長と分配の好循環」の実現を目指す政府の投資運用立国の取り組みもよくわかる。
ただ、記者はマルコー、杉山商事、ライベックスの時代から投資用マンションを取材してきた。失礼だが、玉石混交の業界だと見ている。利回り優先で、質の向上は後回しにされてきた。本業以外の不祥事も発覚し、そのビヘイビアーが問題だと思っている(マンションデベロッパーにも言えることだが)。
だからこそ、信頼性・透明性・認知度が協会の目的になっているのだろう。逆に言えば、この業界は信頼性や透明性が欠けているとも受けとれる。記念式典だから、主催者はもちろん国会議員、関係省庁の担当者が祝意を評すのはよくわかるが、川口教授には業界が抱える負の側面にも触れてほしかった。あまりにも楽観にすぎると正直感じた(川口氏は「賢い楽観主義」と自説をそう呼んだ)。「玉石混交の部分」について触れたのは、当の杉本理事一人だった。杉本氏は自主規制策定にも意欲を見せた。
わが国のマンション市場は、都心の一等地では坪単価3,000~5,000万円、23区内の投資用・コンパクトマンションも坪単価は最低でも400万円以上となり、知裕子マンション価格が新築マンション価格を上回るなど1980年代後半のバブル期に近い投機的な取引も活発になっており、過熱市場に対する警戒感が増している。
しかし、記者は「富の再分配・所得の再分配」が機能しているとはいいがたく、持つ者と持たざる者の格差は途方もなく拡大していると認識しているのだが、基本的には「貯蓄から投資へ」には賛成だ。「ミドルリスク ミドルリターン」のJリートとは別の選択肢があってもいいと思う。
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記念式典には、わが三重県の2区選出国会議員の川崎ひでと氏も参加し、川崎氏は「金をため込んでいる県」として三重県を紹介し「余計な規制があったら取っ払う」と語った。川崎氏は、三重県人ならだれでも知っている政治家・川崎秀二の系譜のようだ。
総務省の家計調査によると、これまで都道府県別平均貯蓄額で三重県はベスト10に入っている。確かに田舎の各家庭は昔から結構お金をため込んでいた。県民性なのだろう。記者はどちらかといえば浪費家で、鉦があったらみんな使うタイプだ。Jリートが初上場したときはかなり儲かったが、その他株で儲けたお金はほとんど全て飲み食いに費やした。投資した会社が倒産し、紙くずになった株もある。
先生、それよりも隣の選挙区の伊勢、松阪市は人口10万人以上の都市の地価下落率ベスト3に入っている。これを何とかしていただけないか。
令和6年地価公示バブル期の〝半値戻し〟上昇20市のみ福岡県4市がベスト10入り(2024/4/6)
DXとCEが世の中を劇的に変える 大和ハウス「業界動向勉強会<建設DX篇>」
大和ハウス工業の建設DX デジタルコンストラクションPJ変遷
大和ハウス工業は12月9日、「業界動向勉強会<建設DX(2024年)篇」を開催し、同社技術統括本部副本部長上席執行役員・河野宏氏がDXの取り組みと今後の活動について、同社の合同会社全世界150か国に45万人を超えるエキスパートを抱えるコンサルティング会社・デロイト トーマツ コンサルティングが建築業界のDXに関するトピックス・大和ハウス工業の立ち位置についてそれぞれ説明し、建築現場体験会も行った。
河野氏
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スマホを満足に扱えず、SNSなど一度も利用したことがない記者でも、DXが世の中を劇的に変え、対応できなければ市場から退場を余儀なくされるであろうということは容易に想像がつく。
それにしても、各社のDXの取り組みは凄い。同社が2019年に立ち上げたデジタルコンストラクションPJの人員は51名だったのが、翌年はほぼ倍増の98名に増え、現在は268名に増やしているではないか。
同じような驚きは、今年8月に行われた三井不動産の「DX VISION 2030」記者説明会でも経験している。同社のDX本部人材は2009年の15名から140名超に増員されており、現在の年間DX投資額200億円を2030年には350億円に拡大し、社員の25%がDXに習熟することを目指すというものだった。
三井不と若干異なるのは、三井不はエキスパートの中途採用は80名超なのに対して、同社は主に社内異動による教育で増強したということで、社員の約30%がDXに習熟することが目標というのはほぼ同じだった。ここにも2:6:2の法則があるのだろうか。
記者がもっとも興味があるのは、この2割のDXのエキスパートはどのような頭脳の持ち主か、日々何を考えているかだ。ヒントが得られた。建築現場体験会で説明した同社南関東支社建築系工事部第一部主任・清水慶典氏が日ごろ読んでいる書籍だ。いくつか紹介する。
・LIMITLESS超・超加速学習
・Think Fast, Talk Smart
・名前のない仕事
・覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰
・話が通じない相手と話をする方法
・とにかく仕組み化
・BIG THINGS―どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?
一つも知らない。読む価値があるのかもわからないし、買うお金もないので図書館で探した。3冊がヒットし、「LIMITLESS超・超加速学習」はすぐ予約した。「覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰」と「話が通じない相手と話をする方法」は予約待ちだ。この3冊を読んだら、同社広報を通じて清水氏にインタビュー取材を申し込みことに決めた。清水氏も応じてくれるはずだ。毎日、AIと〝会話〟を交わしているのだろうか。
小生のお薦め小説も紹介する。丸山健二「千日の瑠璃 究極版」(求龍堂2014年)だ。最初に発刊された「千日の瑠璃」(文藝春秋、1992年)を丸山氏が大幅に加筆・修正したものだ。丸山文学にはまると〝中毒〟になること請け合いだ。それと最近再読したミラン・クンデラ「不滅」(集英社文庫、1999年)。親と子、姉と妹、夫婦、家族、愛などについて考えさせられる。
清水氏
清水氏が建築現場事務所に備えている書籍の一部
記者のお薦め小説
河野氏が説明した同社の建設DXについては、以下の図表を紹介する。
第二部は、同社が昨年8月に開発した「D’s BIM ROOM(ディーズビムルーム)」を実体験できるもので、どこがそうだとは言い切れないのだが(記者に知識がない)、これまで体験したAR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)より優れていると思った。先週取材したCE、CD、CCと組み合わせることで世の中を劇的に変えると確信した。
建設現場
リサイクル部材だけの「循環する家(House to House)」 2050年に発売積水ハウス(2024/12/8)
驚嘆 2030年の年間DX投資額350億円に拡大三井不「DX VISION 2030」策定(2024/8/5)
コルク・食品廃棄物をオーナメントに 三菱地所「サーキュラーシティ丸の内」第5弾
三菱地所は12月6日、廃棄物再利用率100%に向けた取り組み「サーキュラーシティ丸の内」の第5弾として、食品廃棄物やコルクをオーナメントにアップサイクルすると発表した。
廃棄予定だったコルク栓を使ったオーナメントと、コーヒー粕・米糠を使ったオーナメントの2種類を制作。丸の内二丁目ビル内「Marunouchi Happ. Stand&Gallery」と「Marunouchi Happ. STORE」で2024年12月9日(月)から12月25日(水)まで販売する。オーナメントは、東京駅と丸の内仲通りを結ぶビルの通路空間「Marunouchi Bloomway(丸の内ブルームウェイ)」のツリーに飾り付けることも可能で、オーナメントの売上は丸の内エリアの保育園に寄付する。
「サーキュラーシティ丸の内」は2022年から取り組んでいるもので、第1弾は食べきれなかった料理を持ち帰るための容器の無償配布、第2弾はペットボトルの水平リサイクル施策、第3弾は廃食用油を持続可能な航空燃料のSAFなどへの再利用、第4弾は常盤橋タワーで液肥化した生ごみを活用した農作物の育成および同ビル内での提供。
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三井デザインテックのサーキュラーデザイン(CD)と、積水ハウスのサーキュラーエコノミー(CE)の記事を書いたからには、三菱地所のサーキュラーシティ(CC)の取り組みを紹介しないと公平ではない。
記者は、これまでこの分野の取材はほとんど行ってこなかった。もうこれ以上、守備範囲を広げたくないのだが…。
リサイクル部材だけの「循環する家(House to House)」 2050年に発売積水ハウス(2024/12/8)
2030年の家具はサーキュラーデザイン(CD)が標準に三井デザインテックセミナー(2024/12/5)
リサイクル部材だけの「循環する家(House to House)」 2050年に発売 積水ハウス
積水ハウスは12月4日、「循環する家(House to House)」プロジェクト発表会を開催し、住宅業界のサーキュラーエコノミー(以下、CE)移行を目指し、3万点以上からなる家の部材を見直し、リサイクル部材(リユース、リニューアブルなど含む)だけで構成された家「循環する家(Circular Design from House to House)」(House to House)を2050年までに発売すると発表した。
発表会で同社代表取締役社長執行役員兼CEO・仲井嘉浩氏は、「当社は①脱炭素②生物多様性保全③資源循環を三本柱にCEに取り組んでおり、これまでに工場、新築施工現場、リフォーム、アフターメンテナンスにおいてゼロエミッションを達成しており、『資源循環センター』では80分別し再資源化している。この取り組みは、国際的な非営利団体CDPによる、世界でたった12社、国内に限ると2社(もう1社は花王)しかないトリプルA認定を取得している。今後も解体廃棄物の回収、製品化、リサイクル・リユース、さらに解体を前提とした新築段階での設計にも取り組み、本日、『循環する家(Circular Design from House to House)』プロジェクトの開始を宣言する」と挨拶した。
その一方で、「しかし、これは非常に難しいプロジェクト。我々だけで実現できるものではない。すべてのサプライヤー、住宅業界、ステークホルダーと協力しないと実現しない。一致団結して開発・研究を重ねて住宅業界の未来を変えたい」と述べた。
続いて登壇した経済産業省GXグループ資源循環経済課・水上智弘氏は、CEの市場(静脈産業)は今後大幅に拡大が見込まれるとし、日本国内では2020年50兆円から、30年80兆円、50年120兆円の市場規模を見込むとする一方で、マテリアル輸入の増大、価格高騰による国富流出、国内物価上昇のリスクもあり、CE性を担保しない製品は世界市場から排除される可能性があると図示し、対応が遅れれば、成長機会の損失だけでなく、廃棄物処理の海外依存の可能性があると指摘した。
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記者はこの日(4日)、RBA野球大会の取材がありそちらを優先し、同社の発表会はアーカイブで視聴することに決めていた。視聴したのは昨日(7日)だった。その2日前(5日)には、「家具の買取再販は2030年にはサーキュラー デザイン(CD)のスタンダードになると聞いたのにいささかショックを受けた」と、12月3日に行われた三井デザインテックのメディア向けセミナーに関する記事を書いた。その2日後に「循環する家」だ。Wショックを受けた。
三井デザインテックも積水ハウスもそこまでの具体的な工程表・タイムテーブルは示さなかったが、世の中は劇的に変わるということだ。
一つ疑問も湧いた。CE、CDは避けられないにしろ、使用・流通しているケミカル製品などを回収し新たな製品に再生するのに要するコスト、CO2消費量と、ケミカルを中心とするマテリアル素材を使って同種の製品を製造するコスト、CO2消費量とをはかりにかけたらどうなるのかということだ。
例えば、いま世界中で注目されているプラスチック規制。三井デザインテックのセミナーではプラスチック由来の「BENCH SOFA」も紹介されたが、多分、再生コストは新製品製造コストの数倍かかっているはずだ。(時価10万円と思われる本革の椅子を再生するコストはいくらもかかっていないはず)。つまり、仲井氏も話したが、解体を前提とした、環境に負荷を与えない部材の採用・設計が肝になると記者は思う。
だとすると、住宅は木造以外ありえない。坂茂氏の「紙の家」もあるかもしれないが、そもそも木由来の紙をつくるのには大量の水を消費する。「紙の家」は限定的にならざるを得ない。
発表会でもそれらしきヒントも与えられた。同社R&D本部総合住宅研究所長・東田豊彦氏は「かつてわが国の住宅は木と石でできていた。立ちどまることも必要」と語った。質疑応答では「もともとわが国の住宅はサーキュラーエコノミーだった。(それを壊したのは、大量生産・消費してきた)プレハブにも問題があるのではないか」という記者の質問も飛んだ。
確かに、この記者の方の指摘は正しい。小生は昭和24年生まれだから、もちろん住宅は木と石(土と紙と植物も重要な役割を果たしていた)でつられていた。電化製品などなく、エネルギー源は薪炭だった。だが、しかし、質問した記者の方も化石燃料、ケミカル製品のおかげで生きているはずだ。小生などは薪炭時代への逆戻りなどまっぴらだ。
もう一つ、考えたことがあった。仲井氏も紹介した環境省のCDの定義だ。同省は「従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すもの」とある。
この定義に照らせば、これまた木造しかありえないと思う。同社ESG経営推進本部業務役員環境推進部長・井阪由紀氏は「循環する家」はどのような工法かなどについては示さなかったが、築60年の「セキスイハウスA型」を紹介した。これもヒントになるのか。おそらく同社は、重量鉄骨と木造由来の2タイプを発売し、選択できるようにするはずだ。あと26年。記者が生きていたら100歳だ。予想は的中するか。
コルク・食品廃棄物をオーナメントに 三菱地所「サーキュラーシティ丸の内」第5弾(2024/12/8)
三井不動産レジデンシャル 「三井のすまい 日本橋サロン」リニューアルオープン
大型LEDビジョン
三井不動産レジデンシャルは12月6日、「三井のすまい 日本橋サロン」のメディア向け説明会を開催した。同サロンは、これまで「日本橋三井タワー」5階に設けられていたものを先月11月にリニューアルオープンしたもの。
価値観やライフスタイルが多様化する中で、同サロンではバーチャルとリアルを融合させた展示により、より具体的にイメージできる、新しい“すまい探し体験”を体感できる拠点となっている。現在販売中の3物件と今後販売予定の1物件が対象で、三井不動産グループ各社と連携した住み替え、リフォームなどワンストップでサポートする。
特徴の一つである最大幅約12m×4mの大型LEDビジョンでは実寸大の間取りや眺望を投影し、家具の配置などをイメージできるようにしている。
コンセプトルームでは実際の室内空間を再現しており、各設備や家具に触れることができる。バルコニーにはLEDビジョンを設置し、検討住戸の室内からの眺望イメージを体感することもできる。
大型モニターでは販売中物件のCG映像やデジタル模型、建設地周辺の動画などを映し出すことが可能で、外壁や共用部に用いられる石やタイルなどのマテリアルサンプルが物件ごとに展示する。
専有部・共用部の設備を実際に確認できる実物展示コーナーも設けている。
「日本橋サロン」は、東京メトロ銀座線三越前駅から徒歩2分、中央区日本橋本町2-2-2 日本橋本町YSビル9F。延べ床面積は約210坪。営業時間は月・金:11:00~16:00、土・日:10:00~17:00、定休日は火・水・木曜日。
2025年1月下旬に第2期2次を販売する総武線浅草橋駅から徒歩2分の「パークホームズ浅草橋」(121戸)の坪単価は600万円。
先着順で分譲中の東京メトロ銀座線浅草駅から徒歩9分の「パークホームズ浅草六丁目」(48戸)の坪単価は450万円。
2024年12月上旬に第6期3次を分譲する東京メトロ東西線東陽町駅から徒歩6分の「パークホームズ東陽町」(97戸)の坪単価は427万円。今回が最終分譲となる。
2025年2月下旬に分譲予定の東京メトロ日比谷線入谷駅から徒歩6分の「パークホームズ入谷」(37戸)の価格は未定。
コンセプトルーム
専有部設備展示コーナー
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記者はVRやらMRがよくわからないのだが、コンセプトロームは、同社が現在販売中の台東区などの物件の基本性能・設備仕様レベルがよくわかる。購入検討住戸からの眺望が見えるようにしているのは必須だと思う。同業他社はどうなっているのだろうか。
従前の「日本橋三井タワー」に設けられていたサロンとはやや異なるが、エントランス正面の本物の木で作られた幅約2間(3.6m)、高さ2.4mの組子デザインの壁がとてもよかった。
エントランス正面の組子デザイン壁
わが国初 VRとMR組み合わせたモデルルーム三井不レジ「池袋サロン」(2024/5/21)
立地にふさわしい防音室、循環ライブラリ三井不レジ「文京本駒込」人気(2022/12/6)