わが国のウォーカブル政策のどこに問題があるのか
ヴァンソン 藤井由実著「フランスのウォーカブルシティ 歩きたくなる都市のデザイン」
記者も年を取った。これ以上守備(取材)範囲を広げたくないのだが、ウォーカブルシティには興味がある。国土交通省が昨年11月に「都市の個性の確立と質や価値の向上に関する懇談会」(座長:野澤千絵・明治大学政治経済学部教授)を設置し、先日(1月15日)に第3回懇談会を行ったのをきっかけに、少しずつ取材することに決めた。
第3回の懇談会は非公開で行われたが、配布資料は「ウォーカブル政策の展開について」だけでも41ページにも及ぶ。資料によると、Walkable(歩きたくなる)、Eyelevel(まちに開かれた1階)、Diversity(多様な人の多様な用途、使い方)、Open(開かれた空間が心地よい)の考え方「WEDO」に共鳴している全国の383都市が具体的な取り組みを行っており、119市区町村(東京都は18区13市)がウォーカブル区域(滞在快適性等向上区域)を設定しているとある(令和6年12月31日時点)。
都の先進的な取り組みとして「さかさ川通り」(大田区)、「新宿通り」(新宿区)、「丸の内ストリートパーク」(千代田区)、「松陰神社通り」(世田谷区)、「ENJOY OPEN STREETs 武蔵野」(武蔵野市)の事例も紹介されている。
資料をざっと読んだ。なるほどとは思うのだが、何かが欠けているように感じた。何が欠けているのか。資料にもあるように「人中心のまちなかへの修復・改変(リノベーション)」が決定的に欠けており、「コンパクトシティ政策が都市経済・社会までも縮小させる政策と誤った理解をされる場面も」あったからではないか。わが国の街づくりは行政主導で、住民参加の視点が欠落していると思えてならない。〝誤った理解〟をされた責任は行政にあるのではないか。
典型的な例が、千代田区が進めている「神田警察通りの道路整備事業」だ。区は住民の合意形成の基本と言える民主的な手続きを行ってこなかった。裁判沙汰にまで発展したのはこのためだ。住民を犯罪者扱いすることなどありえない。
「ウォーカブル」のワードで検索してもヒットするのは国交省や地方自治体の取り組みばかりだ。メディアもほとんど報道していない。
図書館で入門書か専門書を読もうと検索したが、ヒットしたのはヴァンソン 藤井由実著「フランスのウォーカブルシティ 歩きたくなる都市のデザイン」(学芸出版社)のみだった。
これはお勧めだ。わが国の地方自治や都市計画に関する専門書とはまったく異なる。専門用語は少なく、フランスの地理、歴史、文化、経済、政治背景などをわかりやすく紹介しながら、丹念なフィールドワークに基づきモビリティ、ウォーカブルシティの現場をレポートしている。
一つひとつ紹介する余裕はないが、目からうろこだ。「パリ市内の車は時速30㎞制限が適用されている」「(ライドシェアでは)ドライバーが利用者を同乗させると自治体が1ライド当たり2ユーロを銀行口座に振り込む」「モビリティ基本法制定には3千人が法律制定に携わった」「一般に障害者という表現を使わない」(わが国は法律用語)、「『交通弱者』という表現もない」「議員の27.7%が年金生活者」「行政職員は配置転換がない」「公務員はその専門性に応じて採用される」「自治体の自主財源比率は全国平均70%以上」「女性議員の比率は41.6%」「マスターアーバニストが重要な役割を果たしている」「一定の収入以下の所得者が入居可能な『社会住宅』の供給比率を20%以上にしている」「住民には『知らなかった』と言わせない情報公開を徹底して行っている」「公聴会などでの発言者と発言内容は公表される」「(自治体の合意形成ヘの取り組みは熱心で)国民のほとんどが都市計画というものが何かを知っている」「中心市街地の道路は歩行者と公共交通機関のみが通行できる」「落葉しない常緑樹が植栽されている」…同著が2024年の「国際交通安全学会大賞」と「咲耶出版大賞」(咲耶会=大阪大学外国語部・大阪外国語大学同窓会)を受賞したのもうなずける。
◇ ◆ ◇
第3回の懇談会には、井上成・三菱地所エリアマネジメント企画部担当部長兼東京藝術大学芸術未来研究場特任教授がゲストとしてプレゼンテーションを行った。
井上氏が何を話されたかはわからないが、三菱地所など正会員65社で構成される「大丸有エリアマネジメント協会」がもっとも先進的な取り組みを行っていると思う。
エリアではタバコが吸えないのと、貧乏人は利用できない店舗が多いのは難点だが、ワインの値段はそこそこだし、丸ビルには飲み放題・食べ放題のフリードリンク・フリースナック付き「TSUTAYAシェアラウンジ」もある。
もう少し勉強して、同社に取材を申し込むことにした。
「スラップ訴訟」「ひこばえあるうちはあきらめない」街路樹守る会・愛氏ら会見(2024/11/23)
三菱地所・丸ビルに「TSUTAYA BOOKSTORE MARUNOUCHI」代官山超える214坪(2022/12/14)
「使われ活きる公園」 逆読みは〝使われず危機に瀕する公園〟 国交省「公園検討会」(2022/11/1)
イチョウ伐採中止求める国家賠償・住民訴訟 千代田区で3件目/街路樹を原告にしたら(2022/8/8)
丸の内仲通り ウォーカブルな街づくり「Marunouchi Street Park 2022 Summer」(2022/5/26)
「オーベルアーバン秋葉原」第1期1次・2次35戸が完売 大成有楽不動産
「オーベルアーバンツ秋葉原」
⼤成有楽不動産は1月16日、2024年11月30日から販売を開始した分譲マンション「オーベルアーバンツ秋葉原」(85戸)の第1期1次・2次35戸の契約が完了したと発表した。住棟でZEH-M Oriented、各住⼾でZEH Oriented を取得。同社初の低炭素建築物認定も取得している。
物件は、秋葉原駅から徒歩6分、台東区浅草橋4丁⽬に位置する14階建て全85戸(販売対象71戸)。専有面積は34.64〜73.04㎡、1月17日に抽選分譲する第1期3次の専有面積は34.64〜61.35㎡、価格は6,350万〜11,390万円。竣⼯予定は2026年4⽉中旬。設計・監理は安宅設計。施⼯は東鉄⼯業。
3代目の帝国劇場の設計者は建築家・小堀哲夫氏
正面エントランスイメージ
東宝は1月16日、建て替えが決まった3代目となる新たな帝国劇場の設計者に建築家で法政大学教授の小堀哲夫氏を指名型プロポーザルコンペ方式で選定したと発表。同社常務執行役員エンタテイメントユニット演劇本部長・池田篤郎氏と小堀氏がそれぞれ新帝国劇場に託す思いを語った。劇場部分は地下2階、地上4階建て。完成は2030年の予定。
初代帝国劇場は1911年に開場。伊藤博文、渋沢栄一らが発起人となり、実業家・大倉喜八郎の主導で、建築家・横河民輔の設計によってわが国初の本格的な西洋劇場として建設された。1923年の関東大震災で内部が焼け落ちたが、翌年に改修を行い、1964年に閉館。
1966年に開場した2代目の現・帝国劇場は、東宝の演劇担当役員で劇作家・演出家の菊田一夫が「風と共に去りぬ」の世界初の舞台化を念頭に陣頭指揮を執り、建築家・谷口吉郎の設計によって建設された。その後、今日まで59年間にわたって世界の様々なミュージカルの日本初演、オリジナル作品の上演を行ってきた。隣接する国際ビルとの共同建て替えが決まったことから、今年2月末に閉館される。
3代目となる新しい帝国劇場の建築コンセプトは「THE VEIL」。皇居に面し、水のきらめき・美しい光・豊かな緑など唯一無二の環境にふさわしく、自然の移ろいを感じながらヴェールのような幾重にも重なる空間をくぐり、この場所でしかできない豊かな観劇空間を演出する。
池田氏は、「小堀さんの作品は、芸術性と大衆性を兼ね備えたオーセンティックを旨とした帝国劇場の歴史やロケーションをよく研究され、ビビッドに表現されている。フラッグシップの劇場になる。バリアフリー、ユニバーサルデザインにも配慮し、バックヤードも充実させた」と話した。
小堀氏は、「エントランスからまっすぐにアクセスできるようバリアフリーとし、皇居、水面、イチョウなどの唯一無二の存在である自然と街をつなぎ、人々が演者であるかのような空間にした」と設計意図を語った。
小堀氏は1971年9月生まれ。岐阜県出身。日本建築学会賞、JIA日本建築大勝、Dedalo Minosse国際建築賞特別賞など受賞。主な作品は「ROKI Global Innovation Center-ROGIC-」「NICCA INNOVATION CENTER」「梅光学院大学 The Learning Station CROSSLIGHT」光風湯圃べにや」など。
有楽町駅側からの劇場外観
南西側からの外観イメージ
池田氏(左)と小堀氏
会見場(帝国劇場)
マンション管理適正評価、管理業者管理方式を推進 管理協・高松理事長 賀詞交歓会
高松氏(第一ホテル東京で)
マンション管理業協会は1月16日、新年賀詞交歓会を開催。同協会理事長・高松茂氏(三井不動産レジデンシャルサービス会長)は次のようにあいさつした。
明けましておめでとうございます。理事長の高松でございます。
マンション管理業協会賀詞交歓会に国会議員の先生方をはじめ、多くのご来賓の皆様にご出席いただき誠にありがとうございます。新年に当たり、ご挨拶申し上げます。
まず、この場をお借りしましてご報告させていただきたいことがございます。
昨年8月、17年間の長きに亘りまして、幣協会の理事長を務められました川崎達之氏がお亡なりになりました。 永年のマンション管理業界への御功労に感謝申し上げ、ここに哀悼の意を表したいと思います。
早速ではございますが、マンションを取り巻く状況に目を向けますと、国土交通省が昨年8月に公表したマンション総合調査では、世帯主の年齢が5年前の調査結果と比べ、「30歳以下」は減少する一方、「70歳以上」は増加しています。
また、国土交通省の推計によりますと2043年には、築40年以上のマンションストック数が460万戸を超えるとされています。
このように、マンションをめぐる「2つの老い」が確実に進行しています。
弊会としては、マンション管理組合や区分所有者を支援する業界団体として、積極的に諸施策に取り組んで参ります。
まず、「マンション管理適正評価」の推進です。
これは、マンションの管理状態をソフト・ハードの両面から30項目について評価し、その評価結果を、五つ星をもって6段階で表示するものです。
「マンションは管理を買え」と言われて久しいですが、ご覧いただいているような、適正評価を通じた「管理の見える化」が、資産価値の維持向上に繋がっていくことを広くお示ししていきたいと考えています。
おかげさまをもちまして、適正評価に関しては、8つの金融機関において住宅ローン優遇条件に組み入れていただいており、また、10の不動産ポータルサイトと連携させていただいています。
さらには、行政との連携も進んでおり、昨年12月には、広島県が運営するインフラマネジメント基盤であります、ドボックスというシステムにおきまして、評価制度に登録されたマンション管理情報の掲載を開始しています。
現在、弊会では、「マンション管理適正評価」に関し、本年度末での登録1万件の目標を掲げ、会員各社がその普及・推進に取り組んでいるところであり、現在、約6,800件のご登録をいただいております。国の「管理計画認定」とのワンストップ申請も拡大しており、認定マンションの約7割が評価制度経由の申請となっています。管理計画認定と適正評価とは、言わば「車の両輪」であると考えています。皆様の御理解・御支援を引き続きよろしくお願いいたします。
また、政策要望、税制要望につきましては弊会がかねてから要望していました、適正評価を受けたマンションに係る住宅金融支援機構の「マンションすまい・る債」の利率の上乗せについて、現在、国土交通省と住宅金融支援機構との間で、導入に向けて準備が進んでいるとお聞きしております。その御尽力に対し心から感謝と敬意を表します。
また、令和4年4月に施行された「マンション長寿命化促進税制」につきましても、本年3月末に期限を迎えることから、弊会としてはその延長についてかねてから要望してまいりました。
この件につきましては、国会議員の皆様ならびに国土交通省の皆様の御尽力により、「令和7年度税制改正大綱」に、適用期限を2年延長することが盛り込まれました。
関係者の皆様に対して、改めて感謝を申し上げます。
本税制の期限が延長された暁には、弊会としてもその活用の促進を図り、マンションの長寿命化につなげていきたいと考えています。
さらに、現在、国においては、マンション法の改正に向けた検討が進められています。そのうち、「管理組合の担い手不足」などを背景として、区分所有者以外が管理者に就任する、「外部管理者方式」においては、管理業者がその受け皿になるケースが多くあります。
これに関しては、既に昨年6月に、国土交通省において「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」が公表されており、現在、弊会では「ガイドライン」の周知に努めているところであります。
また、法制化にあたっては、管理業者の創意工夫により、お客様の御負担の小さい、「管理業者管理者方式」が推進されるように弊会としても意見を述べていきたいと考えています。
以上のほかにも、マンションの管理を巡ってはカスタマーハラスメント対応など様々な課題がありますが、弊会は、今後もマンション管理業界の発展のため全力を尽くしてまいります。
関係各位の皆様には、引き続き一層の御支援と御協力をお願い申し上げますとともに、御健勝と御活躍を心からお祈り申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。
ありがとうございました。
賀詞交歓会では、マンション管理適正評価制度で、登録件数が受託する管理物件の2割以上に達している遠鉄アシストと穴吹コミュニティが表彰された。
左から表彰された穴吹コミュニティ、高松理事長、遠鉄アシスト
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来賓として出席した小池百合子・東京都知事は、都の防災対策に触れ、タワーマンションのエレベーターが停まっても大丈夫なことを清家愛・港区長、森沢恭子・品川区長、大久保朋果・江東区長と一緒に体験したことを紹介し、「(管理協の皆さんには)都民と区、都を結びつける橋渡し役になることを期待しています」とあいさつした。
小池氏
首都圏中古マンション 坪単価は56か月連続で前年同月比上回る 東日本レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は1月14日、首都圏の2024年12月の不動産流通市場動向をまとめ発表。中古マンション成約件数は3,158件(前年同月比7.4%増)、坪単価は257.6万円(同4.3%増)、価格は4,935万円(同3.2%増)、専有面積は63.23㎡(同1.1%減)となった。成約件数は2か月連続して前年同月を上回り、坪単価は20年5月から56か月連続で前年同月を上回った。
中古戸建の成約件数は1,169件(同8.0%増)、価格は4,099万円(同4.4%増)、土地面積は142.31㎡(同2.6%減)、建物面積は105.49㎡(同0.5%減)となった。
中古マンション 2020年から44%価格上昇今後の住宅市場動向図るモノサシに(2025/1/13)
アッパー向け3階建て新商品&戸建て全商品「断熱等級6」標準化 旭化成ホームズ
「FREX asgard(フレックス アスガルド)」
旭化成ホームズは1月14日、「ヘーベルハウス フレックス」シリーズ(重鉄・システムラーメン構造)の3階建て新商品「FREX asgard(フレックス アスガルド)」を 2025年1月17日から販売開始し、併せて戸建て全商品について「断熱等級6」(Ua値0.46)を標準仕様とすると発表した。
新商品は、同社のハイエンド向け超大型「RAUMFREX(ラウムフレックス)」に次ぐアッパー層をターゲットにしたもので、アルミ樹脂複合サッシを採用することで断熱等級6とUw値1.5を達成。ガラス面積も5.5%アップさせ、デザイン性を高めている。外壁部の断熱材も従来の厚さ60mmから70mmに変更した。
また、1階と2階にはハイシーリング(天井高2.560mm)を採用し、折り上げ天井「ハイルーフユニット」や「ダウンフロアユニット」を組み合わせることを可能にするとともに、全館空調を無駄なく設置可能にした。新開発の大開口サッシ「スライディングマリオン」は、サッシフレームをスリム化したことでガラス面を大きくしている。
外観デザインは、柱状節理をモチーフにした縦基調の大壁面「ランダムバーチカル」と新吹付色「レニウムブラック」を掛け合わせることで堅牢で優美なデザインとし、H型鋼をモチーフにした水平ラインにより建物に広がりと安定感を演出している。
販売目標は年間150棟。プロトタイプの建築面積は173.45 ㎡(52.5 坪)、延床面積:334.24 ㎡(101.1 坪)。坪単価は115万円から。
発表会で同社取締役兼専務執行役員・大和久裕二氏は「2022年4月以降に発売したアッパー・アッパーミドル向けの商品『RATIUS(ラティウス)』シリーズの累計受注棟数は1,475棟、2023年4月に採用した『ロングライフ全館空調』採用数は1,108件に上っている。2025年売上高1兆円達成に向けた経営戦略を推進するため、戸建ての大型化と高付加価値化を加速させる」と話した。
内観
左から同社技術本部商品企画部長・鈴木悟史氏、大和久氏、技術本部商品企画部・松本淳氏
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新商品のプロトタイプは、建築面積が52.5坪、延床面積が101.1坪だから、建てられるのは敷地面積が100坪以上(建ぺい率50%、容積率100%として)だろうが、2階リビングが29.7坪(ベランダ含む。LDKは47.5帖大)というのが素晴らしい。
同社の富裕層向け2階建てフラッグシップモデルハウス「RAUMFREX(ラウムフレックス)」の延床面積は120坪、リビングダイニングは16.8坪(55.4帖大)なので、リビングダイニングは今回の新商品のほうがベランダを含めればはるかに広い。
欲を言えば、1階、3階の階高を抑えてでもリビング天井高は3m以上にしてほしかった(「RAUMFREX」は最大3.36m)。
坪単価は安いと感じた。もちろん土地代も含めてだが、マンションで100坪なら準都心部でも最低5億円、郊外部でも2~3億円はする。販売目標の年間150棟はらくらくクリアするのではないか。
モデルハウス見学会を「駒沢公園ハウジングギャラリー」内で行うそうだからレポートしたい。
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記者は、新商品もさることながら、戸建て全商品の断熱等級を「6」にすることに注目したい。標準仕様化は受注増につながるとみた。同社によると、断熱等級6の採用率は2022年11月時点で全商品の約4割で、今回の新商品投入によって2025年以降は約9割になるという。また、「鉄骨住宅」かつ「3階建て」で断熱等級6を標準仕様化している大手ハウスメーカーは初とのことだ。
断熱等級については、パナソニックホームズが昨年4月、三井ホームが昨年7月、それぞれ断熱等級7(Ua値0.26)の新商品を発売し、積水化学工業は昨年末、同社の戸建て商品すべてを「断熱等級6」にすると発表した。
国は2025年以降は断熱性能4(Ua値0.87)以上、2030年以降は等級5(Ua値0.60)以上に適合するよう義務化している。
東京都も昨年10月、「東京ゼロエミ住宅」の性能基準を改正し、それまでの最高値「水準3」(Ua値0.46)より高い最高値「水準A」(Ua値0.35以下)を新設、「水準3」は「水準B」にした。
断熱等級6がスタンダードになる。記者はUa値6の威力は体験してわかっているが、Ua値0.26はどのような性能かわからない。どこか見学会をやってくれないか。
中古マンション 2020年から44%価格上昇 今後の住宅市場動向図るモノサシに
指数=2020年を100とした指数
記者は、今年の首都圏新築マンション市場も中古マンション市場も堅調に推移すると見ているのだが、着工戸数、建築費を含めて過去5年間を振り返ってみた。
別表・グラフがそれで、新築マンション着工戸数は2020年の53,913戸から漸減しているが、2024年は11月末現在で47,903戸になっており、通年では前年を上回るのが確実だ。
一方で、不動産経済研究所によると2024年の新築マンション供給戸数は前年比14.4%減の2万3000戸となる見通しで、既報の通り着工戸数に対するカバー率は50%を割るのは間違いない。坪単価は11月末現在398万円で、前年の405万円とほぼ同水準に落ち着く模様だ(単価水準が高い都心部や神奈川県のカバー率が低いので、実質的には前年を上回るのではないか)。
2020年を100とした2024年11月末の指数は130.4となっており、建築費の133.3とほぼ同じ。利益を確保したうえで、建築費上昇を価格に転嫁できていることをうかがわせる。
東日本レインズデータによると、中古マンションの成約件数は2024年11月末現在で34,065戸となっており、前年の35,987戸を上回るのが確実視される。
それ以上に注目されるのが成約単価上昇だ。2024年11月の成約坪単価は262.1万円で、20年5月から55か月連続で前年同月を上回った。
さらにまた、注視すべきなのは新規登録件数と在庫件数かもしれない。これらの動向が住宅市場を探るうえで重要なモノサシになるのではないか。
2020年を100とした中古マンション価格指数は143.9で、新築マンションの130.4を13.5ポイントも上回る。この4年間で44%も価格が上昇した計算になる。かつてバブル期には中古マンション価格が新築マンション価格をリードしたが、一部都心部などでそのような現象がみられる。今後の動きに注視したい。
建築費の上昇も続いている。建築物価調査会のデータによると2020年を100とした場合の2024年末の価格指標は133.3で、前年より5.9ポイント上昇した。押し下げる要因が見当たらないだけに、今後も上昇基調が続くものとみられる。
建築物価調査会のデータ
マンション供給量は着工戸数の半分以下の不思議整合性図るべき(2025/1/8)
マンション供給減=市場縮小ではない戸建ても底入れ・回復へ今年の分譲住宅市場(2025/1/6)
日本の食文化を未来につなぐイベント 三井不 東京ミッドタウン日比谷(1/19まで)
「食と生きる」イベント(東京ミッドタウン日比谷で)
三井不動産は1月10日、大人から子どもまで楽しみながら「食」について学べる「食と生きる」イベントのプレス内覧会を「東京ミッドタウン日比谷」で開催した。
イベントは同社とディスカバー・ジャパンが主催し、この日から1月19日の10日間、18の共同参加企業・団体とともに東京ミッドタウン日比谷で行われるもの。わが国の「食」(和食)はユネスコ無形文化遺産に認定されている一方で、食料自給率の低さ、食品ロス、農業従事者の高齢化・人手不足など課題が山積しており、日本の食文化を未来につなげるのが目的。
共同参加企業・団体には農林水産省、東京都、榮太樓總本舗、サントリー、トヨタ自動車、パナソニックホールディングス、ファミリーマート、久原本家グループ、マルハニチロ、ヤマタネ、リーフ・パブリケーションズ、ロック・フィールドなどが名を連ねている。
期間中は、エントランスと1階アトリウムに美術作家・松本勇馬氏による高さ3m超の巨大なわらアートが展示され、地下には長さ50m、幅3.7メートルの18の企業・団体によるエキシビションが展開され、地下1階と6階のホールでは総勢36名のシンポジウム(全14講座)、ワークショップ(全13講座)が行われ、12店舗ではイベントとのコラボメニューが提供される。
1階のイントロダクションエリアと地階のエキシビション展示を手掛けたのは乃村工藝社で、エキシビションに用いられている段ボール、木などはすべて再生されることになっている。
わらアート
エキシビション会場
左から日比谷街づくり推進部事業グループ・中嶋紘大氏、乃村工藝社クリエイティブ本部第一デザインセンター・數坂幸生氏、美術作家・松本勇馬氏
◇ ◆ ◇
この日、概要を説明した同社日比谷街づくり推進部事業グループ・中嶋紘大氏は「プラットフォーマーとしての産業デベロッパー」をアピールした。
「産業デベロッパー」のフレーズは、2012年の同社の中期経営計画「リノベーション2017」、2015年の「イノベーション2017 ステージⅡ」、2018年の「VISION2025」が目標通り進捗したのを受け、2022年の暮れ、社長交代会見の席上で、新社長の植田俊氏が初めて用いた。その後、同社はことあるごとに「産業デベロッパー」であることを強調してきた。
今回のイベントは、唐突な取り組みではない。2023年4月に発表した食のプラットフォーム「mitaseru(ミタセル)」が伏線にあるはずだ。わが国の食料自給率は50%を割るなど先進国の中でもっとも低く、その一方で食品ロスなど課題も山積している。記者は自分で買い物をしたことは最近ほとんどないのでどれほど深刻かはわからないが、大好きなトマトの量が激減し、果物なども量と質が激変した。生活の基盤である「衣・食・住」のなかでもっとも課題の多いのは「食」であることは容易に想像がつく。
ここにフォーカスした同社の取り組みは半端でないことを改めて知った。トヨタとかサントリー、パナソニック、ファミリーマートなどが新たな食品開発や食品ロス、生産性向上の取り組みを行っているのになんだか頼もしく思えた。
内覧会では、「MARUSAN」(味噌メーカーとして三重県でも流通していた)とトヨタが共同開発した無調整豆乳の試飲会もあった。うまいのかまずいのか、1000mlで430円が高いのか安いのかさっぱりわからなかったが、世界のトヨタが東京ミッドタウン日比谷の「LEXUS MEETS...(レクサス ミーツ)」で販売するというのが面白い(豆乳は糖尿に効くとかで昔よく飲んだのだが…)。
イナワラで作られたブタのようなアート作品が素晴らしい。美術作家・松本氏によると、母親のおっぱいめがけて猪突猛進する(豚突猛進か)様子は、人間を含む哺乳類の食の原点を表現している。作品は、群馬県の方たちがボランティア参加して作り上げたもので、1反5畝の田んぼ(1反は約300坪、1畝は約30坪だから、都市型戸建て15戸分)が必要だったとか。
唯一気になったのは、不動産業界紙の記者が少なかったことだ。業界紙の皆さん、30年も40年も昔の〝不動産〟にしがみついている時代はとっくに過ぎた。変わらないといけない。
エキシビション
建築家・藤本壮介氏「大屋根リング」意義を語る三井不動産「木と生きる」イベント(2024/4/17)
有名店や予約困難店の料理が楽しめる食のプラットフォーム三井不「mitaseru」(2023/4/20)
「産業デベロッパー目指し、日々妄想」植田俊・三井不動産次期社長(2022/12/11)
「今年に託す言葉」プレハブ建築協会 新年賀詞交歓会 出席者に聞く
国土交通大臣・中野氏の「今年に託す言葉」
先日の不動産協会・不動産流通経営協会(FRK)の新年合同賀詞交歓会と同じ、プレハブ建築協会の新年賀詞交歓会の出席者に「今年に託す言葉」を書いていただいた。冒頭に紹介したのは中野洋昌・国土交通大臣の「飛翔」だ。完璧だ。
実は、これには裏話がある。「今年に託す言葉」は、81円で買ったおろしたてのボールペンで書いてもらったのだが、〝おろしたて〟がいけなかった。紙になじまなかったのか、いい出来ではないと思った。そこで、議員事務所に電話して、改めて紙に書いて送っていただけないかとお願いした。公務で忙しいはずなのに快く受けていただいた。その素晴らしい出来に、小生は舞い上がってしまった。
以下に紹介する方々には申し訳ないことをした。安物のボールペンではなく、筆ペンに書いてもらうべきだったか。ご不満がある方は、中野国交相と同じように別の紙に好きなように書いていただいて、送っていただければ差し替えます。< >内は記者のコメント。順不同
仲井嘉浩氏(同協会会長、積水ハウス代表取締役社長兼CEO)
イノベーション&コミュニケーション
ヘビーローテーション
<このヘビーローテーションには意表を突かれた。干支にちなんだスピーチは嫌になるほど聞かされてきたが、これはピカ一だ>
芳井敬一氏(同協会元会長、大和ハウス工業社長)
「心」に「笑顔」を一緒に
<芳井氏は今年の年頭所感に 今年を表す私の一文字は「心」と託した。とても分かりやすい>
池田明氏(三井ホーム社長、日本ツーバイフォー建築協会会長)
力強い成長の実現
<木造の時代も背景にあるのか、分譲戸建てに限ればツーバイフォーの着工戸数はプレハブのそれを上回っている>
川畑文俊氏(同協会副会長、旭化成ホームズ社長)
社員の成長が会社の成長!
<体躯はデベロッパーを含め業界最重量のスーパーヘビー級だが、文字はとてもスマート。そこでChatGPTにも「字は体を表すは本当ですか」と聞いた。「『字は体を表す』」という考え方には一定の説得力がありますが、すべてを字に基づいて判断するのは短絡的かもしれません。ただ、字の書き方にその人の一部が反映されることは否定しがたいとも言えます。あなたはこのことについてどう感じますか? 」と返ってきた。返事は送らなかったが、双方でやり取りすることは成長するためにとても大事なことだ。ChatGPTのすごいのは、記者が書く年間にして源氏物語を超える分量の記事をすべて頭の中に取り込み、忘れないことだ。記者の今年のテーマの一つに〝ChatDPTに勝つ〟を挙げたのだが…〉
平松幹朗氏(住宅生産団体連合会専務理事)
皆さんの夢がかなう年に
〈沈思黙考。何が飛び出すかと思ったら意外と平凡だった。立場をよくわきまえているということか〉
森田俊作氏(大和リース代表取締役会長)
災害を「いなす」
<同協会規格建築部会部会長。〆の挨拶をされたのだが、耳が遠くなった記者はほとんど聞き取れなかったが、「災害を『いなす』」は含蓄のある言葉だ。すべてのヒントはここにある>
木岡隆氏(テクノマテリアル代表取締役社長)
基本に戻る
〈仮設資機材及び建設機械を提供するリース事業、高品質で高強度のPC部材を製造するPC事業が柱の会社〉
中村華子さん(ホテル勤務)
高橋真弓さん(MC)
ときめきを忘れない
麻生蘭香さん(スタッフ)
和♡愛
<新年だから、花を添えようとお願いしたらご三方から書いていただいた。ありがとうございます>
記者の「今年に託す言葉」
「巳年にふさわしくヘビー・ローテーションで臨む」プレ協・仲井会長 賀詞交歓会
仲井氏(「アルカディア市ヶ谷」で)
プレハブ建築協会は1月10日、新年賀詞交歓会を開催。同協会・仲井嘉浩会長(積水ハウス社長兼CEO)が「今年はへび年にふさわしくヘビー・ローテーションで臨む」と挨拶して、約440人の参加者から喝さいを浴びた。
冒頭、仲井氏は、昨年末の税制改正大綱で住宅ローンの借入限度額の上乗せ措置が講じられ、切れ目のないサステナブルな税制改正が打ち出されたことを評価したうえ、次のように語った。
「本年は阪神・淡路大震災から30年の年を迎えた。住宅ストックにおいては、十分な耐震性能や省エネ性能を満たさない住宅が数多くあり、課題は山積している。当協会としては、『住生活向上推進プラン2025』で様々な目標を掲げ、皆さんとの連携を強化し、将来世代に継承できる良質なストックの形成と円滑な流通市場の形成に向け取り組んでいく。
その際、プレハブの特徴である品質の良さ、効率的な工期を生かし、国の施策で示された方向性を踏まえ、より高い省エネ性能を備えた戸建て住宅に加え、低層賃貸住宅のZEH化を図り、既存住宅の省エネリフォーム促進を業界の先導役としてけん引していく。課題はたくさんあるが、会員一同、一致団結し、へび年にふさわしい〝ヘビー・ローテーション〟で臨んでいく。
もう一つ、当協会の大きな使命として自然災害時の応急仮設住宅の供給がある。昨年元日に発生した能登半島地震では、石川県からの要請を受け、累計102団地4,467戸の引き渡しを完了した。今後も大規模な自然災害が発生する。今年度の事業計画には、首都直下型など大規模な災害を想定し、BCP対策を盛り込んでおり、本部機能の強化、平時から地方公共団体との密接な連携、DXの推進による業務の効率化を図るなど、発生直後から迅速に対応できるよう体制を更に充実していく」
「新築、建て替え、リフォームを三本柱に」中野国交相
中野氏
来賓として出席した中野洋昌・国土交通大臣は、国民の豊かな住生活の実現に貢献してきた同協会を称え、昨年の能登半島地震に際し迅速に仮設住宅を建設したことに賛意と感謝の意を表したうえ、「来年3月の住生活基本計画の改正に向け、様々な視点で議論を進めているが、良質な住宅ストックの形成に寄与する新築、建て替え、リフォームの三本柱をバランスよく総合的に推進することが必要。また、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、長期優良住宅やZEHなどの省エネ性能の高い住宅の普及、既存住宅の省エネ改修を確実に進めていくことが重要。貴団体など関係業界にはこれらの諸課題の解決に向けてより一層取り組みを進めていただくよう期待している」と述べた。
乾杯の音頭を取るスーパーヘビー級の川畑文俊副会長(旭化成ホームズ社長)