世界の水辺の再生・街づくりに学ぶ 野村不「BLUE FRONT SHIBAURA」セミナー
右から四居氏、高野氏、内田氏(浜松町ビルディングで)
野村不動産は11月19日、「世界の水辺の街と、最新の街づくりトレンド~“TOKYO”の経済重心が都心からベイエリアへ~」と題したメディアセミナーを開催し、日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門プリンシパル高野寛之氏をゲストに迎え、同氏がニューヨークとシドニーの水辺の先進的な再開発を紹介するとともに、野村不動産芝浦プロジェクト企画部課長・内田賢吾氏とクロストークを行った。セミナーは二部構成で、記者が参加した一部は約20人のメディアが参加した。
冒頭、野村不動産芝浦プロジェクト企画部部長・四居淳氏は、「2013年に再開発の検討を開始し、今年5月にタウン名を『BLUE FRONT SHIBAURA』に決定し、来春には1棟目のS棟が完成する。全体完成は2030年だが、水辺の価値をどうとらえるべきか実証し、皆さんと一緒に考えていきたい」とあいさつした。
内田氏は、「BLUE FRONT SHIBAURA」の概要について説明。浜松町駅と緑のアプローチを整備し、バリアフリーな街づくりを行い、ラグジュアリーホテルを誘致し、観光拠点にもするとともに、再開発に際しては、水辺を再生し、他の大手町や日本橋、晴海などと連携させ、ベイエリア全体の価値をあげていくと語った。
高野氏は、ニューヨークのハドソン・ヤード再開発、hunter's Point South Park、ドミノパーク、Little Island、シドニーの港湾地区の再開発などについて説明。先進的な海外事例から得られる示唆として、「観光客、地元住民、ワーカーにとって魅力的な目的地としての水辺空間」「新たなライフサイクルの創出による街の魅力の向上」が都市の活性化・競争力の観点から重要とし、憩いの場となるパブリックスペースの存在、イノベーティブな体験を可能とする水辺開発のポイントとなり、水辺の拠点をつなぎ、人の回遊を促す水上交通は不可欠と話した。
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高野氏がニューヨークとシドニー、内田氏がアムステルダムの湾岸整備について話しているとき、海好きの記者はわが国の湾岸・港湾都市のことも考えていた。海と川に背を向けて発展してきたのではないかと。高野氏も内田氏も「(湾岸の)荒廃」「(街との)分断」「(開発と規制は)トレードオフ」などの言葉を何度も使った。言うは易く行うは難し-2008年に体験した日本橋川下りの記事を添付したので是非読んでいただきたい。「芝浦アイランド」の記事も添付したが、このころニューヨークでも湾岸の再開発が行われていた。
47都道府県のうち海に面していない県は栃木県、群馬県、埼玉県、山梨県、長野県、岐阜県、滋賀県、奈良県の8県あり、海に面していない、あるいは1級河川がない都道府県庁所在地は10都市くらいあるはずで、残りの約30都市は海があり、大きな川が流れている。
これらの都市の現状はどうか。一つひとつ調べる余裕はないが、今も人口が増え経済も発展しているのはその半分あるかどうかではないか。これらの都市でも湾岸エリアの再開発が課題になっている都市は少なくないはずだ。大阪もそうだろう。
なぜか。京浜、中京、阪神、北九州の四大工業地帯に象徴されるように、1960年代の高度成長期までに、原材料・製品の輸出入に便利な港湾が整備され、その後背地は原油タンク貯蔵庫や工場、物流施設などが整備されてきた。
代表的な例は、東京駅から電車で10分圏の江東区新木場一丁目、新木場二丁目、新木場三丁目及び辰巳三丁目の約151haのエリアだ。都は平成11年11月15日付で従前の工業専用地域から準工業地域に変更し、地区計画によって「木材関連をはじめとする多様な生産・流通機能と商業・業務機能などが共存できる複合地区の形成を図る」目的に適さない住宅や風俗系建築物、廃棄物処理場を不可とした(居住者は100人近くいるが…)。
一方、湾岸エリアで商業・業務・居住・観光拠点などとして発展している都市はいくつあるか。横浜、神戸、広島、福岡、那覇くらいしか記者は思いつかない(ほかの都市は行ったことがない)。
セミナー中、考えていたことはもう一つある。同社が芝浦プロジェクトのタウンネームを「BLUE FRONT SHIBAURA」とし、舟運「BLUE FERRY」の船上ツアーを実施した5月30日から1週間後の6月6日に、建物のデザインを監修した槇総合計画事務所名誉顧問の槇文彦氏が亡くなったことだ(享年95歳)。建物のイメージは〝寄り添う夫婦〟だそうだ。「BLUE FRONT SHIBAURA」は遺作となったのか。
野村不&JR東日本芝浦PJ「BLUE FRONT SHIBAURA」イメージは寄り添う夫婦(2024/5/31)
パークシステムの復活はあるか都市再生は可能か「川」を考える(2023/12/28)
期待の大きさの分だけ深い失望「渋谷川・古川の河川再生」現地を歩く(20222/10/5)
圧巻の眺望「メムズ竹芝」眼下の浜離宮-隅田川-ビル街…「ウォーターズ竹芝」(2021/7/1)
らしき建築物発見!住宅不可の151haの江東区・新木場に88人が住む不思議(2019/6/4)
これでいいのか 川に背を向ける日本橋の街(2008/5/19)
街全体の資産性と割安感が人気 「芝浦アイランド」(2006/12/12)
調整区域&風致地区 開発要件満たし生物多様性の取り組みに挑戦 ポラス「馬込沢」
「リーズン馬込沢SuBaCo project」
ポラスグループ中央住宅は11月18日、船橋市の分譲戸建て「リーズン馬込沢SuBaCo project」(全4棟)のメディア向け見学会を開催した。市街化調整区域の開発要件に適合させ、かつ、市が推進する「生物多様性ふなばし戦略」にも沿う商品企画が特徴で、1戸あたり敷地面積を55坪以上、全体で約40本の中高木を配するなどして緑化率を高め、各敷地に地役権を設定し承役地として居住者が利用できるようにしているのが特徴だ。
物件は、東武アーバンクライン馬込沢駅から徒歩15分、船橋市馬込沢町の市街化調整区域(建ぺい率40%、容積率100%)に位置する全4棟。土地面積は181.87~186.36㎡(コモンスペース含む)、建物面積は102.38~111.38㎡、価格は4,280万~4,680万円。建物完成は2023年10月。施工はポラテック。従前は畑。
コンセプトは、「Sustainability(サステナビナリティ)」「Biodiversity(バイオダイバーシティ)」「Community(コミュニティ)」で、この3つがシームレスにつながることを願って物件名を「SuBaCo(スバコ)」とした。
市の取り組みにも沿うよう「GROUNDING(基礎調査)」「DESIGNING(街家設計)「SUSTAINING(持続化)」に力を入れてデザインにしている。
2023年4月から分譲を開始し、建物が同年9月までに完売した。物件は昨年の「キッズテサイン賞」と「GERMAN DESIGN AWARD WINNER2023」、今年の「グッドデザイン賞」に受賞しており、来年の「インターナショナルデザインアワード(IDA)」の受賞も内定している。
見学会で同社戸建分譲設計本部設計一部営業企画設計課課長・山下隆史氏は「現地の従前は畑で、調整区域。馬込斎場に隣接しており、滝不動風致地区内にあることからこのよぅな商品にした。緑地率を15%確保し、中高木は全体で40本植えた」と語った。
同課係長・山﨑正吾氏は「調整区域で風致地区。これらの開発規制をクリアするとともに市の『生物多様性ふなばし戦略』にも沿うよう企画したので、コンセプトをきちんと説明し、賛同していただける方に購入していただいた」と話した。
また、ポラス暮し科学研究所住環境G係長・福代昇一氏は「生物多様性の重要性は世界的に理解されているが、現場での取り組みは今一つで、消費者の方も二の足を踏まれる現状に危惧している。今回のプロジェクトをきっかけに当社グループ全体で標準化する仕組みを考えていきたい」と今後の方向性を示した。
センターテラス
フットパス
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同社グループの調整区域開発物件を取材するのは、「春日部」「八千代緑が丘」に次いで3回目だ。今回はすべて入居済みなので、各氏の説明を聞き、外観・外構しか確認できなかったが、企画意図はストレートに伝わってきた。福代氏が話したように、開発物件すべてに生物多様性の視点を盛り込むように期待したい。
現地
現地
現地
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物件は2024年グッドデザイン賞を受賞している。審査員は「敷地を4宅地に分割し、それぞれに建売住宅を建設する、いわゆる『ミニ開発』のプロジェクトである…敷地を超えた『見えない関係性』をデザインの対象として意識している点に、業界としての大きな進化が見られ評価した」とある。
これには異論をはさまざるを得ない。「ミニ開発」の定義は様々だが、記者は1戸当たり敷地面積が30坪(100㎡)未満の建売住宅だと40年くらい前に定義づけた。敷地面積が30坪未満だと〝街〟はつくれないと判断したからだ。
今回の物件は敷地面積が55坪(181㎡)以上で、建ぺい率40%、容積率100%の市街化調整区域だから、ミニ開発には当たらない。市の「都市計画法に基づく開発行為等の基準に関する条例」と「生物多様性ふなばし戦略」の要件を満たしているから実現した開発行為だ。
記者はもう市街化区域と市街化調整区域を一律に分離・遮断するのは時代遅れで、双方を緩やかにつなげる街づくりが大切だと思っている。その関係性を「見える化」したのがこのプロジェクトだ。コンセプトに「生物多様性」を掲げているように、小鳥が飛来し、虫も棲息できるようデザインされている。生物多様性に配慮したマンションや分譲戸建ては多くはないが、真剣に取り組んでいるハウスメーカー・デベロッパーは少なくない。「業界としての大きな進化」はなんだか業界全体が見下されているようで不愉快だ。
旭化成ホームズ・積水ハウス・大和ハウス 3社連携して生物多様性保全活動推進(2024/9/7)
駅距離と調整区域開発要件(165㎡)逆手に取った企画秀逸ポラス「八千代緑が丘」(2024/6/15)
初めて見た30%・50%×200㎡の分譲戸建てまるで別荘ポラス「柏逆井」(2023/5/2)
敷地100坪建物30坪の平屋ミラースHDの戸建て「南栗橋」企画ヒット(2022/11/13)
調整区域・1号店舗の適用受けた「なないろこまち」キッズデザイン賞最優秀賞(2022/9/29)
調整区域の市民農園付き200㎡邸宅ポラス「ハナミズキ春日部・藤塚」企画秀逸(2020/7/3)
ポラス 第6回「おえかきコンクール」表彰式 応募は過去最多の2,940作品
特別賞受賞者(ポラテック本社で)
ポラスは11月16日、第6回「おえかきコンクール」表彰式を開催し、全国から応募があった2,940作品の中から特別賞20作品、特別優良賞20作品、優良賞160作品、奨励賞500作品を発表した。表彰式には約90人が参加し、同社グループ・中内晃次郎氏が主催者としてあいさつしたほか、8つの後援自治体首長のメッセージも披露された。
中内氏は「今年もどのような作品が見られるかとても楽しみにしていたところ、全国各地から過去最多の2,940点と、大変多くのご応募をいただきました。どれもが大人では思いつかないような自由な発想で描かれたものばかりで、子どもたちの生き生きとしたエネルギーにあふれておりました。そのような作品に触れることで、私たちもたくさんの元気をいただき、とても温かい気持ちになりました」とあいさつした。
審査員を代表して若色欣爾・審査委員長(越谷市住まい・まちづくり協議会会長)は「応募は海外を含め3,000近くにのぼり、このうち2年連続の応募が702名、3年連続の応募が164名あった。大変ありがたい。連続応募者は特別に表彰してはいかがか。また、3歳未満の応募は約1割で、ほとんどが選外になるが、私は選外の作品も再度見るようにしている」などと講評した。
同コンクールは、同社グループ創業50周年記念事業として2019年に開始されたもので、0歳から6歳の未就学児を対象に「住んでみたい夢の家・街」をテーマに8切サイズの画用紙にクレヨン、絵具、水性ペンなどで描いた作品を募集。後援自治体には越谷市、さいたま市、草加市、松戸市、柏市、流山市、吉川市のほか、今回は野田市も加わった。
協力団体は、越谷市住まい・まちづくり協議会、越谷美術協会、埼玉大学教育学部 木材研究室、NPO法人木育・木づかいネット。、山崎正氏(越谷美術協会会長)、浅田茂裕氏(埼玉大学教育学部教授、NPO法人木育・木づかいネット理事長)、野村壮一郎氏(ポラスグループ社員グッドデザイン賞受賞ディレクター)、大湖正之氏(同デザイナー)。
入賞作品は越谷市、さいたま市、流山市、草加市、松戸市の公共施設で巡回公開・展示される。
中内氏(左)と若色氏
【以下、特別賞・特別優良賞受賞作品】
大賞 丸山舜葵さん(5歳)作品
金賞 阿部想也さん(5歳)作品
金賞 越前杏咲さん(6歳)作品
金賞 丸茂正虎さん(5歳)作品
金賞 横井大和さん(5歳)作品
越谷市長賞_ 松澤杏さん(4歳)作品
草加市長賞_ 篠﨑瑛斗さん(5歳)作品
さいたま市長賞_小泉悠さん(5歳)作品
松戸市長賞_堀江美伶さん(6歳)作品
流山市長賞_中村渚さん(6歳)作品
柏市長賞_平野葵香さん(5歳)作品
吉川市長賞_ S.Uさん(4歳)作品
野田市長賞_中村奏心さん(5歳)作品
越谷市住まい・まちづくり協議会賞_枝廣咲来さん(4歳)作品
越谷美術協会賞_荻田花恋さん(5歳)作品
森と木の住まい賞_今村圭佑さん(6歳)作品
ポラス審査員賞 宮崎桜さん(6歳)作品
ポラス審査員賞中山知香さん(6歳)作品
ポラスグループ55周年記念賞 西川結斗さん(6歳)作品
ポラスグループ55周年記念賞 K.Sさん(5歳)作品
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以下は、多少は絵を観る目はあると思っている記者の〝押しの絵〟だ。対象は優秀賞に選ばれた160作品とした。
どうして優秀賞にしたかといえば、そもそも子どもの描いた絵を(汚辱に満ちた世界に生きる)大人の目で評価していいのか、創造力が未発達の乳児とその萌芽期である4歳児以上と同じモノサシで測ることなどできないのではないかという疑問を持っており、他の作品を含めて視点を考えればみんな素晴らしい作品に見えてくるからだ。
記者は、会場の一番端っこに展示されていた0歳児のT.Hさんと2歳児の宮田さんの作品に目を見張った。3歳児の上条さんの作品にも不思議な魅力があるし、植草さんの作品は、他の作品がカラフルなものばかりなのに対して異彩を放っている。
写真は記者が撮影したのを当初はそのまま掲載したのだが、ポラスにお願いしてプロのカメラマンが撮影したものに変更した。ポラスにも感謝したい。読者の皆さんもこれらは上段の作品と比べて全然見劣りしないと感じられるのではないか(大人の目だが)。
そして強く思うのは、子どもたちの無限の可能性を秘めた想像力を育みより豊かにするのか、それともそれを削ぐのかはお父さん、お母さん、学校の先生、さらには地域の人たちだ…この日紹介された絵のように未来が明るくなるのを願うばかりだ。
H.Tさん(0歳児)の作品
宮田梛央さん(2歳)の作品
上条翠さん(3歳)の作品
岩渕恵子さん(4歳)の作品
中原朱亜さん(4歳)の作品
植草朔さん(5歳)の作品(ポラス提供)
表彰式
優良賞
「プレミスト昭島」第2弾の第1期1次は143戸 全戸の半数以上 大和ハウス
大和ハウス工業(事業比率70%)、京王電鉄(同20%)、住友商事(同10%)の3社JVマンション「プレミスト昭島 モリパークグラン」(全277戸)の第1期1次143戸が11月10日抽選分譲された。専有面積は57.67~90.04㎡、価格は4,658万~10,038万円(最多価格帯5,600万円台11戸)。
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この戸数の多さに記者は驚いている。全戸数の半数以上だ。同社は坪単価を公表していないが、記者が予想した坪280万円はそれほど外れていないはずだ。
大和ハウス「昭島プロジェクト」第二弾第一弾より多少高い「多少」はいくらか(2024/9/21)
オープンハウスG 2024年9月期 増収 営業・経常利益減 戸建ては回復基調へ
オープンハウスグループは11月14日、2024年9月期決算を発表。売上高1兆2,958億円(前期比12.8%増)、営業利益1,190億円(同16.3%減)、経常利益1,202億円(同12.2%減)、純利益929億円(同0.9%増)となった。売上高、純利益は過去最高。
戸建関連事業の売上高は5,890億円(前期比0.2%減)、売上総利益率は14.4% (同2.2ポイント減)、営業利益は496億円(同21.4%減)、営業利益率は8.4%(同2.3ポイント減)となったが、在庫調整に取り組んだ結果、販売は回復基調を示しているとしている。
マンション事業の売上高は892億円 (同28.4%減)、営業利益は106億円(57.6%減)、営業利益率は11.9%(同8.2ポイント減)、プレサンスコーポレーションの売上高は1,808億円(同12.1%増)、営業利益は274億円(同6.5%増)、営業利益率は15.2%(同0.8ポイント減)となった。
収益不動産事業の売上高は1,960億円(同6.1%増)、営業利益は172億円(同14.6%減)となった。
その他(アメリカ不動産など)の売上高は1,808億円(同12.0%増)、営業利益は114億円(同32.1%増)となった。
2025年9月期は、売上高1兆3,000億円(前期比0.3%増)、営業利益1,300億円(同9.2%増)、経常利益1,230億円(同2.3%増)、純利益820億円(同11.8%減)を予想。
マンション管理適正評価 最終コーナーへ 「たった1割」「ちょうど1割」達成なるか
左から小佐野氏、落合氏、齋藤氏
左から雑賀氏、鉃谷氏、谷氏
左から大井田氏、間田氏、世古氏
高松氏
マンション管理業協会(理事長:高松茂一・三井不動産レジデンシャルサービス会長)は11月14日、同日行われた臨時総会・理事会後に恒例の記者懇親会を開催し、2024年10月末のマンション管理適正評価制度の登録件数は6,127件(前月比329件増)になったと報告した。以下、全副理事長の所属会社の年度末までの登録目標、登録状況の現状。順不同
小佐野台氏(日本ハウズイング社長) 今月で1,200件になる見込みで、ちょうど9,000組合だから現況は10%超
落合英治氏(大京アステージ会長) 現在13%強
齋藤栄司氏(大和ライフネクスト社長) 現在8.6%、20%目指す
雜賀克英氏(東急コミュニティー会長) 現況11%で、20%を目指す
鉃谷守男氏(近鉄住宅管理取締役相談役) われわれ近畿圏の目標は800件。当社は100件弱で12%。下半期に伸びる傾向にあるので2割達成を目指す
谷信弘氏(長谷工コミュニティ会長兼社長) 現状19%、目標の20%達成は大丈夫
大井田篤彦氏(三菱地所コミュニティ社長) 現状は113件で2.4%。目標は500件で達成の目途はついている
問田和宏氏(野村不動産パートナーズ社長) 現状300件で、全体の13%
世古洋介氏(三井不動産レジデンシャルサービス社長) 理事長に恥かかせられない。目標の20%を達成する
各氏のコメントに対して、高松氏は、「副理事長会社には20%を目標にしていただいている。地方の登録が出遅れており、協会としてもノウハウを提供して支援していく」と語った。同協会は、今年度末(2025年3月)まで1万件(全管理物件の10%)の登録を目標に掲げている。
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昨年6月に行われた同協会総会後の懇親会で、副理事長の日本ハウズイング社長・小佐野台氏が次のようにあいさつしたのを記者は見逃さなかった。
「一言だけ皆さんにお願いしたい。2年後のマンション適正管理評価件数を1万戸にするには、会員354社の管理件数の1割で達成できます。ちょうど1割、たった1割(爆笑、拍手喝采)で達成できます」と呼び掛けた。『たった1割』『ちょうど1割』を4度連発したように、登録件数1万件は同協会の大きな目標の一つだ」(大変失礼だが、懇親会に参加されていた関係者の方々は、そのころは雑談を交わすのに食事をするのに飲むのに夢中で、会が終わるころには小佐野氏も含めきれいさっぱり忘れていたのではないか)
この適正管理制度に記者は大きな期待をかけている。何よりもいいのは、昔の通信簿のような相対評価ではなく絶対評価だから、頑張れば劣等生もみんな優等生になれることだ。そんなにバードルが高いわけでもない。ぜひとも目標を達成していただきたい。何度も記事にもした(添付した記事参照)。
ところが、同協会が先月、今年9月末まで登録件数は5,798件と発表した段階で、今年度末までの1万戸達成は難しいと読んだ。制度がスタートしたのは2022年の4月だ。2年5か月だから、月にすると約340件だ。残り6か月で目標を達成するには月当たり約840件の登録が必要だ。これは無理だと判断し、「年度末の目標である1万件の達成は微妙な状況」と記事に書いた。「AIによる概要」も記者の記事をそのまま引用していた。
そしてこの日。制度はトラックレースや競馬に例えれば4コーナーを曲がったところだ。戦列はゴールにほど遠く半周遅れ。このままのペースなら、みんなで決めた「たった1割」「ちょうど1割」は達成できない。目標を達成できなかったら、どうして残りの9割以上の管理組合から信頼を得ることができるのか。
そこで、この日の懇親会には高松理事長、全副理事長が出席されていたので、これ幸いと「年を取るごとに意地悪質問が増えているのですが」と断りながら、「小佐野さんの会社と皆さんの会社の『たった1割』『ちょうど1割』の進捗状況についてお聞きしたい」と質問したところ、すべての方から回答を頂いた。冒頭のコメントがそれだ。
もう一度、世古氏のコメントを読んでいただきたい。理事長でもあり会社の会長でもある高松氏に恥をかかせられないと言ったではないか。他の副理事長会社の社員の方々はこの言葉をどう受け止められるか。記者が社員だったら、絶対会長、社長に恥をかかせない。管理組合だけでない、皆さんは自分の会社はもちろん親会社のデベロッパー、マンション購入検討者の信頼を得ることができるかどうかの瀬戸際に立たされていることを認識していただきたい。まだ時間はある。来年の総会後の懇親会では目標達成をみんなで祝福していただきたい。
管理会社による管理方式についても書きたいのだが、機会を改めることにする。〝理事のなり手不足〟を解消する有力な手段だと記者は思うようになった。
マンション管理適正評価制度 9月末登録は5,798件目標の年度末1万件達成は微妙(2024/10/12)
「管理者と管理業者は構造的に利益相反の関係」香川弁護士旭化成不レジ基調講演(8/23)
マンション管理適正評価制度提案済み20% 28%が提案予定なし管理協調査(2024/7/20)
長寿命化促進と管理適正評価制度に力高松理事長マンション管理業協会懇親会(2024/6/12)
マンション管理適正評価登録率トップは遠鉄アシスト 1割超達成は6社(2024/6/12)
大和ライフネクスト第三者管理者方式既存中心に76組合受託 2026年に200組合へ(2024/5/22)
第三者管理者方式徴収額は月額1,000~2,000円/戸マンション管理協(2024/5/16)
「知の結集。やればできる」齊藤審査委員長が激賞管理協バリューアップアワード(2024/2/29)
★5つは21%会員間の競争を促すべきマンション管理協マンション適正評価制度(2023/8/21)
星の数より件数2年後の適正管理評価1万件目指すマンション管理協総会・懇親会(2023/6/14)
登録件数1000件突破 ★5つ最多は伊藤忠アーバンマンション管理適正評価(2023/4/2)
売上高は過去最高 利益率は改善 ケイアイスター不 2025年3月期2Q決算
ケイアイスター不動産は11月11日、2025年3月期第二四半期決算を発表。売上高は1,509億円(前年同期比20.3%増)、営業利益は69億円(同50.6%増)、経常利益は60億円(同52.8%増)、純利益は36億円(同20.8%増)となり、売上高は過去最高を記録した。
分譲住宅事業は、販売棟数3,943棟(土地販売含む)、売上高1,431億円(同18.4%増)、セグメント利益82億円(同28.1%増)。売上総利益率は12.6%で、2024年3月期の11.5%から1.1ポイント改善した。注文住宅事業は、販売棟数169棟、売上高32億円(同29.4%増)。
戸建分譲事業は回復傾向 飯田グループHD 2025年3月期2Q決算
飯田グループホールディングスは11月11日、2025年3月期第二四半期決算を発表。売上高6,871億円(前年同期比2.3%増)、営業利益379億円(同3.3%増)、経常利益341億円(同4.2%減)、純利益230億円(同4.4%減)となり、戸建分譲事業は回復傾向を見せた。
セグメント別では、戸建分譲事業の売上高は5,857億円(同103.8%)、売上総利益率は14.0%(同0.3ポイント増)、販売棟数は18,804戸(同100.6%)、1棟単価は3,115万円(同103.2%)。9月末時点の未契約在庫数は22,382棟で、今期計画に対して若干下回る水準。
マンション事業の売上高は311億円(同77.3%)、売上総利益は59億円(同63.5%)、売上総利益率は19.1%(同4.1ポイント減)。フォーム事業は、オプション工事を含めた売上高は152億円(同120.9%)と伸びた。
セグメント別の戸建分譲事業の件数(宅地など含む)、売上高(前年同期比)は次の通り。
・一建設グループ 5,049件1,497億円(同7.0%増)
・飯田産業グループ 3,016件1,112億円(同6.5%増)
・東栄住宅グループ 2,307件 872億円(同7.2%増)
・タクトホームグループ 2,223件 747億円(同7.0%増)
・アーネストワングループ 4,656件1,184億円(同4.4%減)
・アイディーホームグループ 1,542件 439億円(同0.8%減)
「利益率(8.8%)を高めたい」大和ハウス・芳井社長 大手デベの住宅事業は20%超
大和ハウス工業は11月13日、2025年3月期第2四半期決算のマスコミ向けスモールミーティングを開催し、同社代表取締役社長CEO・芳井敬一氏が約1時間にわたって前日11月12日に発表した決算内容について記者団の質問に答えた。
2025年3月期第2四半期の売上高は2兆6,526億円(前年同期比4.2%増)、営業利益2,346億円(同22.8%増)、経常利益2,209億円(同17.5%増)、純利益1,563億円(同1.2%増)となり、コスモスイニシアと大和リゾートの連結範囲変更に伴う売上高592億円、営業利益23億円の減少要因があったものの、売上高は4期連続の増収、営業利益、純利益とも2期連続の増益となった。
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スモールミーティングは、メディアの方が何を質問されたのか、芳井社長がどのように答えたのか、耳が遠くなった記者はほとんど聞き取れなかった。聞き取れたのは、芳井社長が「経営者にとって利益率をどう高めていくかが課題。とくに米国は粗利益率を重視している」と語り、新政権に対して「経営者目線より、住宅購入者目線が大事。新政権には、先の住宅エコポイントように途中で打ち切るのではなく、切れ目のない政策を要望する」と話したことのみだった。
利益率については質問に答えたというより自ら口にしたことだ。確かに、同社の利益率が高くないのは昔からの課題で、今回の2025年3月期2Qの売上高2兆6,526億円に対して営業利益は2,346億円で、営業利益率は8.8%だ。同業の積水ハウスの2025年1月期2Qの売上高1兆8,591億円、営業利益1,571億円、営業利益率8.5%のいずれの数値も上回ってはいるが、大手デベロッパーの国内住宅事業の営業利益率と比較すると大きな差がある。
例えば2025年3月期2Qの三井不動産は22.0%、三菱地所は2.4%(下期に引き渡しが集中するためと思われる)、住友不動産は30.2%、野村不動産HDは37.0%、東急不動産HDは21.1%、東京建物は25.2%(2023年12月期3Q)だ。粗利益率は住友不動産と三井不動産は非開示だが、30%を超えている模様で、東京建物は29.2%、野村不動産HDは26.7%、三菱地所は26.3%だ。
これほどの差が出るのは、デベロッパーの国内住宅事業は経営資源を都心部に集中しており、原価高騰を価格に転嫁し、さらに最近の市場に合わせた価格の高値設定やコスト削減効果が顕著に表れていると見ることができるのに対し、大和ハウスは全国展開しているため(最近のマンション分譲は地方圏は少なくなっているが)、用地・建築費高を価格に転嫁しづらい環境が続いているためと思われる。
しかし、記者は住宅事業の営業利益率は10%前後が適正ではないかとみている。BtoBの事業はともかく、一般消費者の実質賃金は上昇していないのだから(アッパーミドル・富裕層向けマンションなどはどんどん高値挑戦すべきだと思っているが)、利益率を落とし、その分を消費者に還元すべきだと考えている。〝利益を消費者に還元してどこが悪い〟と口にする経営者は出てこないかと期待しているのだが…。かつて三井不動産の役員(社長ではなかった)が「何事も腹八分目、残りの二分はお客様に還元するんだよ」と呵々大笑したのを思い出した。
◇ ◆ ◇
同社は11月12日、2024年8月7日に公表した2025年3月期の業績予想を上方修正し、期末配当を増配すると発表した。売上高は5兆3,700億円(前回予想5兆3,500億円)、営業利益4,400億円(同4,300億円)、経常利益4,100億円(同3,900億円)、純利益2,670億円(同2,600億円)。期末配当予想は77円(同75円)で、年間配当予想は147円(同145円)。
社内起業第一号 シェア型賃貸×コワーキング「TOMORE(トモア)」開発 野村不
「TOMORE品川中延」
野村不動産は11月12日、社内起業第一案件「TOMORE(トモア)」に関するメディア向け事業説明会を開催し、新たに参入する「コリビング賃貸レジデンス(Co-Living Residence)」の第一弾として「TOMORE品川中延」(全135戸)を来年2月に竣工すると発表した。年間5棟の開発を目指す。
「コリビング賃貸レジデンス」は、シェア型賃貸住宅とコワーキングスペースを一体的に開発するもので、「TOMORE(トモア)」は同社の社内起業第一号案件として2019年、同社住宅事業本部賃貸・シニア事業部賃貸住宅事業二課長・黒田翔太氏(36)ら3人が立ち上げた。2021年に実証実験の場として東京・日本橋に「TOMORE zero」を開設し、約3年にわたってノウハウを蓄積してきた。
開発に至った背景には、アフターコロナの在宅勤務やリモートワークの浸透に加え、起業や独立、副業などワークスタイルの急速な多様化、さらにインフレによる家賃などの生活費の高騰があり、「コリビング賃貸」は欧米を中心に増加しており、世界全体の市場規模は2022年の2.0兆円から2028年には9.6兆円に成長すると予測されているという。
一方、わが国の「シェア型賃貸住宅」の供給量は徐々に増加傾向にあるが、小規模で建物の仕様や設備が古くて経年劣化・旧式化が著しく、シャワー・トイレ・洗面台などは共用で、交流体験などは入居者自身に委ねられており、共用部分の快適性は損なわれているなど、場所も予算も商品も不足しているとしている。
このような課題を解決するため、同社は都内に0.5%しか存在しない大型(100 戸超)のシェア型賃貸住宅にフォーカスし、多様なアセットタイプの不動産開発力と約3年間のコワーキング運営実証で培ったコミュニティ運営力により、これまでにない職住一体の「TOMORE(トモア)」を開発した。
主なターゲットは「ライフ」と「ワーク」双方の充実を望む20~30代の社会人で、概ね総戸数100戸超を目安とし、シャワー・トイレ・洗面台などの水回りを備えた居室空間と、共用のリビングスペース、コワーキングスペースを併設。シェアランドリー、シェアライブラリーのほか、同社グループの宅配型収納サービス「ワンダースタイル」、スポーツクラブ「メガロス」、多拠点型シェアオフィス「H1T」などの割安サービスなども行う。年間5棟の開発が当面の目標。
一般的な1K・ワンルーム賃貸(25㎡を想定)より居住面積は狭くなるが、スケールメリットを生かし賃料は同額かそれ以下に抑え、仲介手数料、敷金、礼金はゼロとする。専属運営スタッフとなる「コミュニティオーガナイザー」が日中滞在し、入居者同士の交流や活動機会を支援するのも大きな特徴。入居者の友人などが宿泊することも制限を設けない。起業に当たって居室や共用部分を事務所として登記するかどうかはニーズを把握しながら検討していく。
事業説明会で黒田氏は「社内起業を立ち上げてから5年。様々な扉をこじ開けて第一号物件を供給するに至った。わくわくドキドキしている。物件ホームページを立ち上げてから反響は約1,700件に達している。日本の市場を開拓し、駆け抜けていきたい。人生を明るく、楽しく、豊かにしたい」と語った。
また、「TOMORE zero」でコミュニティ運営に携わってきたコミュニティオーガナイザーの嶋田匠氏(31)は、「呼称はマネジメント、マネージャーもあるが、居住者の交流を促し応援していく役割からして、この呼称がぴったり」と話した。
「TOMORE品川中延」は、都営浅草線中延駅から徒歩1分、品川区豊町6丁目に位置する敷地面積約577㎡、11階建て延床面積約2,424㎡の全135室。専用面積12.00~15.01㎡。竣工予定は2025年2月。設計はフォルム建築計画研究所、施工は野村建設工業、デザイン監修はUDS。
「コリビングスペース」
「コワーキングスペース」
黒田氏(左)と嶋田氏
◇ ◆ ◇
黒田氏がプレゼンを始めてからほんの数秒間だった。「5年間」「壁」「こじ開けた」「ワクワクドキドキ」などのフレーズを聞いて、天照大御神が天の岩戸をこじ開けたような気分になり、〝ガラパゴス化〟している賃貸市場に風穴を開けるのではないかと期待で胸が膨らんだ。
約20分間のプレゼンが終わるころには期待は確信に変わった。これまで賃貸マンション、コワーキング施設、寮・社宅、学生寮などを結構取材してきたが、今回の「コリビング賃貸」(建基法では寄宿舎)は似ているようで全然似ていない。「品川中延」の敷地規模(約577㎡)で「コリビングスペース」が約100㎡、「コワーキングスペース」が約90㎡もあるなど信じられない。
この日配布されたプレス・リリースには、黒田氏は36歳で、2010年に同社に入社してから「国内外の不動産ファンド商品の立ち上げ・運用業務に約10年従事」とあり、「自分の意思で、会社を動かし、社会を変えたい」というのが起業のきっかけになったと記されていた。
これまで40年以上にわたり同社の〝プラウド〟などを取材してきたが、黒田氏は住宅事業担当とタイプが異なる。先月行われた三菱地所の「フレキシブル賃貸事業」と同じように社内外に新しい風を巻き起こすのではないか。
居室
間取り(13㎡)
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