中古マンション市場も二極化 都心と郊外は雲泥の差 東日本レインズデータから
既報の通り、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)による令和6年6月の首都圏中古マンションの成約件数は4,299件(前年同月比31.9%増)、坪単価は275万円(同6.9%増)、成約価格は5,209万円(同5.1%増)、専有面積は62.50㎡(同1.7%減)、築年数は26.96年(前年同期は24.36年)となったのだが、もう少し詳しくデータを見ることにした。都心と郊外は雲泥の差であることが分かる。マクロデータのみに頼っていては、市場を見誤ることになりかねないということだ。
都県別成約状況では、東京都の成約件数は4,299件(前年同月比31.9%増)、坪単価は386万円(同13.2%増)、価格は6,791万円(同5.1%増)、専有面積は58.04㎡(同2.5%減)、築年数は25.87年(同2.60年増)。
神奈川県の成約件数は1,003件(同40.5%増)、坪単価は186万円(同5.2%減)、価格は3,751万円(同6.6%減)、専有面積は66.66㎡(同1.5%減)、築年数は27.62年(同3.08年増)。
埼玉県の成約件数は509件(同47.1%増)、坪単価は143万円(同2.8%増)、価格は2,906万円(同1.9%増)、専有面積は67.09㎡(同0.8%減)、築年数は27.49年(同0.91年増)。
千葉県の成約件数は427件(同12.1%増)、坪単価は121万円(同9.8%減)、価格は2,629万円(同9.3%減)、専有面積は71.89㎡(同0.5%増)、築年数は30.85年(同3.69年増)。
これらの数値を見比べると、東京都の成約件数は首都圏全体の54.9%を占め、坪単価は首都圏平均の1.4倍、価格は首都圏平均の1.3倍になっており、一方、他県の坪単価は横ばいか下落しており、価格は東京都の半値で推移していることが分かる。また、専有面積は各都県とも一貫して縮小しており、築年数は千葉県が30年超となっているのが目立つ。
記者がもっとも興味があるのは、いま自宅マンションを売却する人は買値を上回っているのか下回っているのかだ。世間では分譲と賃貸都ではどちらが得かが俎上に上る。記者は住宅を損得で考えるべきではなく、ライフスタイルによって自由に選択できる市場になることを願っている。
ここではこの問題に深入りすることをしないで、単純に考えることにする。築年数26.96年といえば、今から約27年前の1998年(平成10年)だ。デベロッパーはバブル崩壊の痛手から立ち直っていたころで(退場を余儀なくされたデベロッパーはたくさんあったが)、マンション市場は活況を呈していた。不動産経済研究所のデータによると、1998年の首都圏マンション供給量は約6.6万戸で、坪単価は193万円、平均価格は4,168万円、平均専有面積は71.01㎡だ。その後、2008年のリーマン・ショック後の一時期を除けば価格、単価は右肩上がりで推移している。2024年の平均価格は7,820万円、坪単価は388万円だ。
中古マンションはどうかというと、1998年の成約件数は22,356件、坪単価は115万円、価格は2,192万円、専有面積は62.87㎡、築年数は15.20年だ。現在の中古マンションの成約状況を当時と比べると、坪単価と成約価格は約2.4倍へと大幅に上昇している。当時、マンションを買った人は損切りしないで売却できているという計算が成り立つ。これが現在の活況を呈している中古マンション市場の大きな要因の一つだろう。
問題を指摘するとすれば、専有面積の圧縮だ。現在の新築マンションの平均専有面積は66.95㎡で、1998年比で4.06㎡(1.23坪)縮小している。中古マンションの専有面積は1998年の62.87㎡よりも狭い62.50㎡だ。〝便立地、好立地〟(資産性)のために住宅の基本的な質である居住面積を犠牲にしていることが分かる。
30年経過しても、住宅の質はそれほど向上していないとも受け取れるが、この〝便立地、好立地〟(資産性)が重視されるのは分からないわけではない。〝時は金なり〟だ。移動に伴う時間を金額に換算したらいくらになるか。これは人それぞれだろうが、仮に1時間2,000円としたら(オフィスワーカーの賃金を時間給にしたらもっと高いはずだが)、駅から徒歩10分なら往復で666円、月に約2万円、年間で約24万円だ。夫婦ならこの2倍。〝コスパ〟を重視する若い人にとっては無視できない額だ。
では、居住面積を金額に換算したらいくらになるか。首都圏賃貸住宅の相場を坪1万円とすると、年間で12万円だ。夫婦で共有すれば1人当たり6万円となる。
この数値から、時間か居住性かを問われれば、やはり時間を重視する人が多数を占めるだろう。〝便立地、好立地〟が住宅市場で優位にあることの説明がつく(絶対ではないので、郊外の価格が安くて居住性に優れた住宅が一定の支持を受けているのもよくわかる)。
成約状況をさらに詳しく見ると、面白いことが分かる。2025年4月から6月の成約件数12,090件の1,000万円ごとの価格帯別分布でもっとも多いのは6,000~7,000万円の1,904件(全体の15.7%)だが、10,000万円以上は1,189件(8.8%)で昨年同期の715件(7.6%)から大幅に増加している。10,000万円以上を都県別にみると、東京都が1,104件(前年同期は663件)を占め、他の3県合計は85件だ(前年同期は52件)。ちなみに、他県の1,000万円ごとの最多価格帯はいずれも1,000~2,000万円で、神奈川県500件(17.8%)、埼玉県325件(23.1%)、千葉県289件(23.4%)、3県合計で1,114件だ。東京都の億ション成約件数のほうが多い。
この数値からは、東京都の高額住戸が市場を左右していることが浮き彫りになり、中でも都心3区(千代田区・中央区・港区)の数値が突出している。東京都全体の6月の成約状況は先に見たが、都心3区の成約件数は都全体の7.1%の306件(前年同月比29.1%増)で、坪単価は766万円(同26.8%増)、価格は13,502万円(同33.7%増)、専有面積は58.16㎡(同5.5%増)、築年数は20.45年(前年同期は20.05年)となっている。
坪単価、価格とも大幅に上昇しているが、興味深いのは築年数だ。他の地域では城東地区24.08年、城南地区28.22年、城西地区27.11年、城北地区26.89年、多摩地区27.97年となっており、かなりの差がある。
なぜそうなのかは詳細な分析が必要だが、先に見たように築年数が浅いほど中古市場での評価が高く、ここ数年の新築価格の暴騰の恩恵を高額マンション居住者が受けていることをうかがわせる。一部では投機的需要も発生しており、中古価格が新築価格を上回る逆転現象もみられる。
月並みな言葉だが、首都圏中古マンション市場も二極化が広がっているということか。
6月の中古マンション・戸建て 成約件数は大幅増加 東日本レインズ(2025/7/10)
6月の中古マンション・戸建て 成約件数は大幅増加 東日本レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は7月10日、令和6年6月の首都圏流通市場動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は4,299件(前年同月比31.9%増)で8か月連続の増加、坪単価は275万円(同6.9%増)で20年5月から62か月連続で上昇、成約価格は5,209万円(同5.1%増)で8か月連続で上昇、専有面積は62.50㎡(同1.7%減)で7か月連続の縮小となった。
中古戸建ての成約件数は1,943件(同49.2%増)で8か月連続の増加、成約価格は3,937万円(同1.9%減)で2か月ぶりに下落、土地面積は144.36㎡(同1.7%減)で3か月ぶりに縮小、建物面積は103.59㎡(同0.7%減)で2か月ぶりに縮小した。
改正マンション関連法に関する説明会に約480人 国土交通省&法務省
「令和7年度 改正マンション関連法に関する説明会」(ビジョンセンター東京八重洲で)
国土交通省と法務省民事局は7月8日、「令和7年度 改正マンション関連法に関する説明会」を開催した。午前の部と午後の部あわせて約480人が参加し、関心の高さをうかがわせた。
関連法は一部を除き令和8年4月1日付で施行が予定されていることから、国交省は全国での説明会、専門家による検討会、パブコメの実施などを経てマンション標準管理規約は今年9月下旬を、管理業者管理者方式に関する委託契約書は今年11月1日をめどにそれぞれ公表することにしている。以下、配布資料をもとに要点を紹介する。
マンションの管理・再生の円滑化のための法改正
資料は法改正の背景・必要性について、現在のマンションストック総数は約704万戸(2023年末)で、令和2年の国勢調査による1世帯当たり平均人員2.2人をかけると約1,500万人になり、国民の1割超が居住していることになり、現在137万戸の築40年以上のマンションストック数は20年後には464万戸に増加し、令和5年度のマンション総合調査によると、世帯主が70歳以上の住戸の割合は築40年以上のマンションでは55%に達しているなど「2つの老い」が進行していることを指摘。
また、長期修繕計画を定めて修繕積立金を積み立てているマンションのうち「現在の修繕積立額の残高が、長期修繕計画の予定積立残高に対して不足していない」マンションは約40%に留まっている現状があるとしている。
一方、マンションの建て替え実績は2023年度末で累計297件(約24,000戸)で、建て替えに伴う余剰容積率が縮小傾向にあり、2020年代では保留床は40%を割っており、区分所有者の平均負担額は2012~2016年の約1,106万円から2017~2021年は約1,941万円へ激増している。
こうした背景・課題の解決を図るため、改正法では①適正な管理を促す仕組みの充実、集会出席者の多数決議決による管理の円滑化②建物・敷地の一括売却、一棟リノベーション、建物の取り壊しなどを多数決で可能とする再生の円滑化③地方自治体の取り組みの強化-による三本柱で取り組むとこととしている。
区分所有法・被災区分所有法の改正内容
区分所有法・被災区分所有法の改正内容では、集会の議決の円滑化のため、現行では普通決議は区分所有者の多数決(欠席者もカウントする)が必要なのを、出席者の多数決でいいことに変更され、所在等不明の区分所有者はすべての議決の母数から除外する制度が設けられたのが大きなポイント。
また、区分所有者が専有・共用部分を管理せず、他の区分所有者の権利を侵害するのを防ぐため裁判所が管理人を選定して管理させる財産管理制度や、区分所有者が国内に住所を有しない場合は、国内管理人を選任できる制度が創設される。
さらに、共用部分の変更決議の多数決要件(3/4)を、権利侵害の恐れがある場合は2/3に引き下げられる。
建て替え決議の要件緩和では、現行多数決要件(4/5)を、一定の要件を満たせば3/4に引き下げることが可能になり、建物・敷地の一部売却、建物の取り壊し、一棟リノベーション工事なども建て替えと同等の多数決議決を可能とする制度が創設される。
一括建て替え決議の要件緩和では、現行は各棟ごとの2/3以上、団地全体の4/5以上の賛成が必要なのを、改正後はいずれかの棟で反対者が1/3を超えない場合は団地全体で3/4に引き下げ、一部建て替えも現行の団地全体の3/4から団地全体の2/3に引き下げる。団地内の建物・敷地の一括売却要件も、現行では区分所有者全員の同意が必要だったのを多数決議決で可能にする制度を創設する。
マンション管理法・再生法等の改正内容
マンション管理法・再生法等の改正内容では、令和2年改正時に創設された管理計画認定制度は現在2,379件の実績があるが、制度の拡充を図るため、現行では既存マンションが対象になっているのを新築時に分譲事業者(デベロッパー)が管理計画を作成し、管理組合に引き継ぐ仕組みを導入し、認定に係る表示制度を創設する。
管理組合役員の担い手不足の課題解消のため期待されている管理業者管理者方式の改正では、管理業者と管理者の利益相反を防止するため、管理者受託契約に係る重要事項を区分所有者に説明し、書面を交付すること、自社または関連会社との取引を行う場合は、取引の前に区分所有者に説明することを義務化する。
区分所有法の改正により創設された新たな再生手法(一棟リノベ、建物・敷地の一括売却、建物の取り壊しなど)について、新たな決議に対応した事業手法(組合設立、権利変換計画、分配金取得計画など)を整備するため、マンション再生法の合意要件を緩和、引き下げを行う。また、マンション再生に関するガイドラインやマニュアルを整備し、独立行政法人住宅金融支援機構法(JHF法)の改正により、マンション再生の取り組みを金融面でサポートする。
隣接地の所有権や借地権、底地権を建て替え・再建後のマンションの区分所有権に権利変換できるようにし、特定行政庁の許可による容積率特例制度に高さ規制要件を緩和する特例を追加する。
地方公共団体の取り組みの充実を図るため、地方公共団体がマンションの管理に関して助言・指導・韓国でできるよう権限を強化するため、地方公共団体の内部情報の収集や、財産管理制度の申し立てなどが行えるようにする。また、NPO法人など民間団体をマンション管理適正化法人として登録する制度を創設する。
14年も前から断熱窓の提案に驚愕 インテリックス「青山リノベーションスタジオ」
「青山リノベーションスタジオ」
インテリックスグループのインテリックス空間設計の個人向けショールーム「青山リノベーションスタジオ」を7月3日見学した。14年も前から断熱窓(二重サッシ)の提案を行っているのに驚愕した。
リニューアルでは、「生活課題の解決」と「多様化する高品質ニーズへの対応」をコンセプトに、最新設備を展示するだけではなく「どんな暮らしが実現できるのか」を提案できるショールームとなっている。
スタジオでは、断熱窓(Low-E樹脂サッシ)の施工例や、飛騨高山の家具を採用し、床は突板仕上げのヘリンボーン、電動シャッター、キッチン動線、限られた収納スペースを有効に活用する提案などが体験できるようになっている。
同社リノベーションデザイン部部長・阿部貴氏は、「コロナ以降、資材の高騰、職人工賃の上昇が続いており、フルリノベの単価は21万円/㎡。2~3割はアップしている。今後も工事単価は上昇すると思われ、なるべく早めに決断されるのをお勧めしたい」とアドバイスしている。
同社は1998年2月設立。年間販売1000件を超えるインテリックスの「リノヴェックスマンション」の設計・施工のほか、同業他社のリノベ請負、個人向けリノベ施工を三本柱として事業展開しており、同スタジオは個人向けショールームで2015年に開設している。
「青山リノベーションスタジオ」リビング
洗面
◇ ◆ ◇
同社のリノベマンションを初めて見学したのは20数年前だ。物件そのものは〝好立地〟のいいマンションだったが、共用部分のサッシは手付かずだったのを思い出す。その後、同社が中心となって自主規制団体・リノベーション協議会(理事長:インテリックス会長・山本卓也氏、設立時はリノベーション住宅推進協議会で山本氏は同社社長)が平成21年5月20日に設立された。現在の会員数は736者にも及ぶ。〝リノベ〟は〝リフォーム〟に取って変わった。
しかし、記者はこのリノベにいい印象を持っていない。玉石混交の世界だ。ほんの200~300万円の工事を施しただけで、数百万円から1,000万円くらい価格にオンして暴利をむさぼる業者が続出した。
この日、「青山リノベーションスタジオ」を見学して、同業他社も一般の方も同社の「品質にこだわるまじめな『施工力』」(同社パンフレット「RENOVATION STYLE BOOK」)に学ぶべきだと思った。
その典型例が省エネ提案だ。写真のように、PLASTとトステム2社の二重樹脂サッシ(内窓)の提案を行っている。窓下は断熱壁にしている。これは、2011年3月11日、つまり東日本大震災が起きたその日から行っているそうだ。なぜその日だったかは、同社広報担当のTさんは「山本(当時社長の卓也氏)が提案することを決めた、その翌日に震災が起きたのでよく覚えています」と話した。
今から14年前だ。今でこそLow-Eガラスは当たり前になっているが、当時、二重サッシを採用するのは防音対策としてで、断熱性能を高めるものなどなかった。
マンション標準管理規約で、窓ガラスなどの防犯、防音、断熱性能の向上について管理組合がその責任と負担において実施すべき(実施できない場合は区分所有者の責任と負担)と定めたのはそれから5年後のことだ。それより前に、同社が既存マンションの断熱化に取り組んでいたのを聞いてびっくりした。今でもリノベマンションの窓の断熱工事を行っているのは少数ではないか。
断熱窓(二重サッシ)の提案(左がPLAST、右がトステム)
へリーンボーンの床
元町仲通りの中心地販売好調インテリックス「リシャール横濱元町」(2016/2/8)
成田駅徒歩圏で12年ぶり イオンタウンに隣接 総合地所「ルネ成田サングランデ」
「ルネ成田サングランデ」(合成写真)
総合地所は7月3日、JR・京成成田駅徒歩圏で12年ぶりのマンション供給という「ルネ成田サングランデ」のメディア向け見学会を行った。道路を挟んだ対面に大規模商業施設「イオンタウン成田富里」が隣接しているのが特徴。
物件は、京成本線京成成田駅から徒歩10分、JR成田線成田駅から徒歩12分、成田市東町の第一種住居地域・準工業地域に位置する10階建て全119戸。専有面積は専有面積は60.50~85.03㎡、価格は未定で、3LDKで5,000万円台、2LDKで4,000万円台中心を予定。竣工予定は2027年1月末。売主は同社のほか京成電鉄。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売は長谷工アーベスト、京成不動産。販売開始は9月の予定。
敷地の従前はバッティングセンター・ゲームセンター。用地は2023年9月に取得。道路・京成本線鉄道線を挟んだ敷地南側の大規模商業施設「イオンタウン成田富里」に隣接。建物はT字型で、標準階の南東向きは11戸、南西向きは4戸。全31タイプで平均面積は71㎡。全住戸の約90%に可動収納「ウゴクロ」を採用。
主な基本性能・設備仕様は、ZEH-M oriented、低炭素認定、直床、リビング天井高2500ミリ、食洗機、フィオレストーンキッチン天板(オプション)など。京成線に面した妻側住戸の5階以上は二重サッシを採用。コンセプトは、バイオフィリックデザイン。
今年3月から物件ホームページを公開しており、これまでの反響は370件。うち地元居住者は約6割。7月12日にオープンするモデルルーム見学申し込みは80件。
同社は、駅前の中古マンションは坪単価200万円台の中盤に上昇しており、反響も良好なことから竣工までの完売を目指す。
左側がイオン
外観
フレタスキッチン
◇ ◆ ◇
いつもは、微に入り細を穿つ、見学会はかくありきの説明会を開き、分譲単価を公表する同社だが、この日は分譲開始が9月とまだ先だからか、同社販売担当者は「3LDKで5,000万円台の前半から後半、2LDKで4,000万円台を予定」と含みを持たせた。
記者は見学前に、駅前の「日高屋」(駅前に日高屋とドトール、マクドナルドがあるかどうかは街のポテンシャルを測る重要ポイント)でビールと半ラーメンを食べた。税込み630円で、半ラーメンは240円。マンション単価はこれと同じ240(万)円だったらいいのになあと考えたが、甘かった。そんなに安くはならないようだ。仕方ない。
マンション購入検討者は、どんな郊外でも坪単価250万円以下はほとんどありえないことを覚悟すべきだ(日高屋は銀座の一等地でも半ラーメンは240円だか)。ただ、単価が安いか高いかは、みんな都心を中心に考える。これは改めたほうがいい。成田駅圏には大量の戸建て住宅街がある。〝都心回帰〟を志向するこれら戸建て居住者の需要を取り込むか、そういう需要は枯渇したか。
模型(わかりづらいが、左側に突き出ているのが横断歩道、マンションとイオンを直接つなげはほんの数秒。横断歩道を付け替えることはしないだろう)
現地(クレーンが建っているのが建設現場)
約1000区画の「成田はなのき台」細田工分譲開始8年で約9割完売(2014/4/21)
駅5分の1低層 新ブランドタグ具現化 コスモスイニシア「祖師ヶ谷大蔵」
「イニシア祖師ヶ谷大蔵」
コスモスイニシアが創業50年を迎えたのを機に新たに策定したブランドタグライン「人生を変える、心地よさ。」を具現化した第一号マンション「イニシア祖師ヶ谷大蔵」のコンセプトルームを見学した。祖師ヶ谷大蔵駅から徒歩5分の1低層に位置する従前が〝銭湯〟の物件。記者が先に取材した桜新町駅から徒歩5分の1低層が人気になっている、「クリオ」シリーズ〝1,000棟〟記念の明和地所「クリオ桜新町ザ・クラシック」(30戸)と極めてよく似ている物件だ。
物件は、小田急線祖師ヶ谷大蔵駅北口から徒歩5分、世田谷区祖師谷三丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率70%、容積率150%)に位置する4階建て34戸。専有面積は49.67~119.12㎡、近く分譲する第1期2次(戸数未定)の価格は未定。坪単価は630万円くらいになる模様。竣工予定は2026年3月上旬。施工はライト工業。
現地は、祖師ヶ谷大蔵駅北口の「ウルトラマン商店街」から一歩入った低層住宅地。従前は老舗の銭湯。敷地は東西軸が長い長方形で、道路は敷地北側(建物セットバック含め幅9.2m)と西側(同13m)に接道。
住戸プランは、建物中央の中廊下を挟んだ南向き(18戸)と北向き14戸)、西向き2戸。主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2400ミリ、フィオレストーンキッチン天板(プレミアム住戸はシーザーストーン)、食洗機、グローエ水栓、突板フローリング、親子リビングドア(一部)、ワイドスパンなど。
1月からエントリーを開始。4月から一部地元中心にインナーで販売を開始しており、14戸に対して9戸に申し込みが入っている。これまでの問い合わせ件数は500件超、コンセプトルーム来場者は67件。
新ブランドタグライン「人生を変える、心地よさ。」は、同社の創業50年(2024年2月)を機に策定されたもので、住宅は資産性や利便性だけでなく、家族と過ごす時間や自分と向き合うひとときに本質的な価値があるという意味が込められている。「祖師ヶ谷大蔵」の分譲開始に合わせて発表する予定だったようだが、設計に時間がかかったため、物件の一般公開に合わせて発表された。
ラウンジ
コンセプトルーム(LDK)
コンセプトルーム(玄関・ホール)
◇ ◆ ◇
コンセプトルームはよくできている。全体的な仕様レベルは高い。新ブランドタグラインを具現化していると思う。119㎡のメゾネットタイプのコンセプトルーム(うち玄関・廊下・LDK部分)の玄関・ホールは白が基調で、広さは約2.8帖大。リビングドアは幅115cmの親子ドア。突板フローリング、ワイドスパンなのもいい。北向きの70㎡台でも12.9mある。採光に配慮したコーナーサッシ付きも多い。
冒頭に、明和地所の「桜新町」と「極めてよく似ている」と書いたが、いずれも記念物件として位置づけられており、人気沿線(田園都市線と小田急線)の駅から5分の1低層、建ぺい率70%・容積率150%、敷地面積(「桜新町」)は1,886㎡、「祖師ヶ谷大蔵」は1,846㎡)、〝銭湯〟と〝1000棟〟も同じだ。異なるのは価格で、「桜新町」を紹介できないのは残念だが、「祖師ヶ谷大蔵」も人気必至と見た。
コンセプトルームがある同社のマンション総合ギャラリー「イニシアラウンジ三田」(緑は全て本物)
外壁に国産スギの外装材 明和地所〝クリオ〟1000棟記念「桜新町」人気
「クリオ桜新町ザ・クラシック」
明和地所が分譲中の「クリオ桜新町ザ・クラシック」のモデルルームを見学した。同社の〝クリオ〟シリーズ1,000棟を記念する物件で、住友林業の耐候性、耐久性に優れた国産スギ材による外装材を採用し、田園都市線の駅から徒歩5分、1低層、72㎡以上の広さなどが人気になっており、全30戸のうち残りはわずか。文字通り同社の記念碑的なマンションになりそうだ。
物件は、東急田園都市線桜新町駅から徒歩5分、世田谷区新町三丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率60%=角地により70%、容積率150%)に位置する3階建て30戸。専有面積は72.33~160.39㎡、7月に分譲予定の住戸(3戸)の価格は未定。竣工予定は2026年11月下旬。設計は三輪設計。施工はノバック。
現地は、桜新町駅から徒歩5分の4方道路に囲まれた第一種低層住居専用地域。従前は賃貸マンション。
建物は、住友林業が開発した耐候性、耐久性に優れた国産スギ材を活用した外装化粧部材「SUSTIMBER(サスティンバー)ー外壁」を2、3階の外壁部分に採用。1フロア7~12戸構成(うち100㎡超8戸)、8か所に「光庭」(ライトウェル)、プランター設置(2階以上)、屋上室外機など。
主な基本性能・設備仕様はZEH-M Oriented、内廊下方式、扁平梁、二重床・二重天井、リビング天井高2500~2550ミリ、梁下サッシ高2350ミリ、ディスポーザー、食洗機、ウルトラファインバブル、フィオレストーンキッチン・洗面天板、ドアノブ壁面後退、ワイドスパン(70㎡台でも最低6700ミリ)など。
同社営業担当者は、「4月下旬から分譲開始し、残りはわずか。世田谷区で2014年以降に分譲されたマンションは178物件で、うち田園都市線駅徒歩5分以内は19物件、1低層の物件は当社の物件を含めてわずか2物件。この希少性と、居住面積が広いのがお客様に評価されています」と語った。
エントランス
ラウンジ
◇ ◆ ◇
同社の創業は1986年4月。同社ホームページには、1994年5月、供給戸数10,000戸を達成、1996年9月、東京証券取引所市場第二部株式上場、2005年2月、供給戸数30,000戸を達成、2014年7月、供給戸数40,000戸を達成、2020年2月、供給戸数45,000戸を達成、2025年4月、供給棟数1,000棟を達成、供給戸数49,408戸(2025年3月期)などとある。
つまり、創業時の同社を知る役員・社員は一人もおらず、関係者もほとんどが後期高齢者ということだ。記者も数少ないそのうちの一人だろう。2005年2月に累計供給戸数30,000戸達成とあるように、それまで年間平均1,500戸を供給したことになる。まさに〝飛ぶ鳥を落とす〟勢いにあった。
そして今回、〝クリオ〟シリーズ供給棟数1,000棟記念の「桜新町」。1,000棟のうち記者はどれくらい見学取材しただろうか。数十棟はくだらないはずだ。その中で、記念碑的なマンションといえば真っ先に「クリオ レミントンヴィレッジ国立」(353戸、2001年12月竣工)を上げるが、首都圏初のディスポーザー付きマンションとなった「クリオ レミントンハウス三鷹」(102戸、1998年2月竣工)と〝好立地〟の「クリオレミントンハウス文京播磨坂」(81戸、2003年8月竣工)がベスト3か。最近では「クリオ川越大手町」(49戸、2023年6月竣工)、「クリオ湘南江ノ島グランマーレ」(65戸、2023年3月竣工)がいい物件だった。
同社営業担当者によると、「SUSTIMBER(サスティンバー)ー外壁」は国立競技場の屋根や「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」に採用されているものと同じで、分譲マンションに採用されたのは同社の物件のほか「パークホームズ城北中央公園」がある。
「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」は見学取材している。見出しに「〝杉乃木〟ホテル」と書いたように、とにかく美しい。素晴らしいホテルだ。今回の「桜新町」も経年による風合いが1低層の住宅街になじむはずだ。間違いなく同社の記念碑的マンションになる。
和モダン見事に表現出色の出来アクタス・モデルルーム明和地所「川越大手町」(2022/10/15)
明和地所設立35年周年「片瀬江ノ島」大人気隣接地には35年前竣工の大京の物件(2021/10/15)
さすが三井不動産わが国初の本物の木造〝杉乃木〟ホテル「神宮外苑」に誕生(2019/11/13)
創業30周年の明和地所「クリオ青葉台」で廊下幅1.5m実現(2015/8/20)
野村不動産 「GX志向型住宅」仕様のマンション供給推進
「プラウド横浜東神奈川フロント」
野村不動産は6月26日、マンションブランド「プラウド」で、ZEH水準よりも高い断熱性や省エネ性を備えた「GX志向型住宅」仕様の物件供給を推進すると発表。第一号物件として「プラウド横浜東神奈川フロント」(124戸)を7月に販売開始するほか、今年度中に着工する4物件で全戸「GX志向型住宅」仕様とする。
ZEH水準とは「断熱等性能等級5」と「一次エネルギー消費量等級6」を同時に達成している住宅のことで、同社は、2022年11月以降着工した物件は原則ZEH水準の仕様としており、2024年5月からはZEH水準を上回る「断熱等性能等級6以上」の基準を満たした6物件を着工している。
「GX志向型住宅」仕様にするためには、①断熱等性能等級6以上②再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量削減率35%以上などの要件を満たす必要があり、要件を満たせば、「子育てグリーン住宅支援事業」の1戸あたり160万円の補助対象となる。
「東神奈川フロント」などでは、断熱性能の向上のため①一部の天井部分の断熱補強、高性能部材の採用、外壁部分の断熱性能の確保②窓などの開口部以外での熱損失を減少③一部住戸にて二重サッシを採用し、省エネ性能の向上では①ハイブリット給湯器の導入に加え、タンクユニットの設置により、有事の際の防災性にも配慮②水回りは全ての設備で節水機能を搭載③高効率エアコンを主寝室に標準整備する。
◇ ◆ ◇
結構な取り組みではあるが、記者は「ZEH」についてもっとわかりやすい制度にすべきだと思っている。制度・文言には「ZEH」のほかに「次世代ZEH+」「ZEH+」「ZEH水準」「ZEH基準」「ZEH-M」などがあり、「ZEH-M」は「Nearly ZEH-M」「ZEH-M Ready」「ZEH‐M Oriented」に分かれている。とても分かりづらい。
この中で特に問題だと思っているのは「ZEH水準」だ。この基準を満たすために熱効率の高い窓面を少なくする動きもみられるのは注視すべきだ。
もう一つ。記者は住宅の質は、敷地の緑化率と不可分で、緑化率を高めることが必要だと思っているが、分譲戸建てなどは敷地の狭小化が進んでおり、緑化率が住宅の質と関連づけて論じられることはほとんどない。緑化率の高い住宅に誘導するため自治体は緑化地域制度を活用すべきだ。
Before12.9万円⇒After19.3万円 リノベ効果覿面 東急不動産×リノべる「北葛西」
「コンフォリア北葛西」(撮影:黒岩翼写真事務所)
東急不動産とリノべる6月19日、築年数の経過に伴う空き家課題を抱える賃貸マンションにリノベーション工事を施しバリューアップした両社のリノベーション協業第三弾「コンフォリア北葛西」が竣工したのに伴うメディア向け内覧会を実施した。全56戸のうち空き家だった16戸と共用部分をリノベした結果、平均賃料は従前の12.9万円(坪6.3万円)から19.3万円(坪9.5万円)に改善し、周辺の築浅マンション同等の賃料水準を実現した。リーシングも好調で、竣工時までに12戸が成約。リノベ効果をまざまざと見せつけた。
リノベーション協業第三弾は、築32年(当時)だった賃貸マンションを昨年9月にリノベーション工事を施すことを前提に東急不動産が取得。全56戸のうち空き家だった16戸と共用部分を対象に、リノベるがプロジェクトマネジメント、総合企画、設計・施工。陳腐化した間取りを変更するとともに、キッチンに食洗機を設置するなど水回り部分の設備を一新。共用部分は100台しか収容できなかった駐輪場を170台へ増設し、公園をイメージした緑をふんだんに植樹し、住まいや地域に愛着が持てるような演出を随所に施している。
物件は、東京メトロ東西線西葛西駅から徒歩15分、江戸川区北葛西5丁目の第一種住居地域(建ぺい率70%、容積率300%)に位置する1991年竣工の8階建て全56戸(リノベーション実施16戸)。施工は戸田建設。平均専用面積は67.37㎡(20.38坪)。リノベーション施工は2025年4月。
エントランス(before) エントランス(after)(撮影:黒岩翼写真事務所)
左・左中・右中:階段室のウォールグラフィック。階ごとに動物が異なり、足跡も異なる。右:エレベーター内部をグラフィックウォールに(撮影:黒岩翼写真事務所)
植栽(中庭)
植栽(エントランス)
壁は黒板クロス、床はインナーテラス風仕上げ
リビング
玄関
◇ ◆ ◇
築古の、特に駅からの距離がある賃貸マンションは、何もしなければ空きが大量に発生し収益の悪化を招くのは必至で、一方で、設備仕様を更新し外構・共用部分などの充実を図れば、築浅の周辺物件に負けない物件にすることができる好例だと思う。
竣工が1991年4月だから、バブルが崩壊した1990年(平成2年)には着工されていたのだろう。当時、記者は賃貸マンションの取材はほとんど行っていないので、仕様レベルが高いか低いかは分からないが、天井高は2450ミリ、直天、二重床、サッシ高は1800ミリ、トイレ・浴室部分の段差などは分譲レベルでも見られたものだ。
リノベに当たって、専用部の和室を洋室にし、従前はエアコンが使えなかった洋室にエアコンを設置し、玄関は下駄箱から棚にするなどのリノベ工事は当然として、子育てファミリーの入居を意識した共用部のリノベ工事が目を引いた。
従前はどうだったか分からないが(多分、なにもなかったのだろう)、敷地の外周部と中庭には、一つひとつを公園に見立てた植栽がふんだんに施されていた。一般的な賃貸マンションではまずありえないし、分譲マンションでもここまで緑を配す物件は多くないはずだ。
エレベーターや階段室には子どもが楽しめる動物のモチーフを用いたグラフィックウォールや足跡をデザインに取り込む仕掛けを施し、専用部の玄関サインには再生木を使用している。些細なことだが、このような心配りが消費者に支持されるのだと思う。
マンション管理協 新理事長に世古洋介氏(三井レジデンシャルサービス会長)
世古氏(第一ホテル東京で)
マンション管理業協会は6月10日、定時総会を開き、前理事長・高松茂氏(三井不動産レジデンシャルサービス特別顧問)に代わって、新しい理事長に世古洋介氏(同社取締役会長)を選任した。総会後の懇親会での世古氏の挨拶は次の通り。
本日は、皆様ご多用中のところ、多数ご出席いただきましてありがとうございます。
ただいまご紹介いただきました、理事長の世古でございます。本日、定時総会後の理事会におきまして、高松前理事長の後任として、理事長に選任いただきました。
高松前理事長が、マンション管理業の成長・発展のために勧めてきた様々な取り組みをしっかり継承させるべく、微力ながら全力で取り組んでまいりますので、どうぞ皆様のお力添えをよろしくお願いいたします。(中略)
さて、近年わが国では、既存マンションの長寿命化が重要な課題と位置付けられており、我々マンション管理業が果たすべき役割の重要性もますます高まっていると認識しております。
一方で、人手不足やコストの上昇などマンション管理の現場では様々な課題も山積しています。
こうした課題に適切に対応し、マンション管理のプロとして、難易度が増している管理組合運営に対して適切なサポートを行い、お客様の信頼を得ながら、わが業界がますます発展成長していけるよう、鋭意努力してまいりたいと思います。
理事長就任に当たり、取り組むべき重要課題について3点申し上げたいと思います。
1つ目は、マンション管理適正評価制度の更なる伸長と定着です。本制度は、マンション管理に関する様々な項目を整理・点数化し、星の数で評価することで、管理の現状や課題を、お住いの皆様にも、また市場において見える化し、もってマンションの長寿命化を実現する素晴らしい制度だと認識しています。
こうした本制度の意義を、管理組合の皆様にも、また実務を担う管理会社の皆様にも、改めて認識いただき、すでに8400を超える登録を頂いていますが、今年度はさらに1万5000件へと伸長させ、社会に定着させていきたいと考えています。皆様の引き続きのご協力をよろしくお願いいたします。
2つ目は、今後さらに幅が広がっていくと思われます、新しい管理の在り方への対応です。新築から築年数40年超まで、あるいは小規模から大規模タワーマンションまで様々なマンションがあり、マンション管理におけるニーズは多様化しています。
例えば、今般のマンション法改正で法制化された「管理業者管理方式」や近年進んでいる様々な管理ツールのDX化など、管理組合運営も今後さらに変化・多様化していくことが見込まれています。こうした変化を的確にとらえ、業界として適切に対応していけるよう取り組んでいきたいと思います。
3つ目は、マンション管理業に携わる人々が生き生きと働ける魅力ある管理業界となることです。今申し上げた2つの課題にしっかり取り組みながら、我々管理業業界の役割や長年培ってきた専門性などをお客様によく理解していただき、また、評価していただくことで、業界で働く人々のやりがいにつなげていければと考えています。
皆様のお力をお借りしながら、こうした管理業を取り巻く諸課題に全力で取り組み、業界の発展に少しでも貢献していけるよう鋭意努力してまいります。
今後ともご指導ご鞭撻・ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
結びに、本日お集りの皆様のご健勝、ますますのご活躍をお祈り申し上げ、私の挨拶とさせていただきます。