数少ない東建の〝ヴィンテージマンション〟コスモスイニシアのリノベ「学芸大学」
「ロワ・ヴェール学芸大学」
コスモスイニシアが分譲中のリノベションマンション「ロワ・ヴェール学芸大学」を見学した。専有面積200.92㎡(60坪)で価格は22,800万円(坪単価375万円)。東京建物がバブル期に分譲した数少ない〝億ション〟の「ロワ・ヴェール」シリーズの一つだ。リノベに際しても〝本物〟にこだわっており、坪単価は信じられないほど安い。
物件は、東急東横線学芸大学駅から徒歩14分、目黒区目黒本町2丁目の第一種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する4階建て全13戸の「ロワ・ヴェール学芸大学」の1階部分。専有面積は200.92㎡で価格は22,800万円(坪単価375万円)。分譲会社は東京建物、竣工は1989年5月。施工は西松建設。当時の価格は39,002万円(177㎡)~68,877万円(202㎡)。リフォーム・リノベーションは2024年7月。
現地は、中層マンションが建ち並んでいる住宅街の一角。物件は駅からはややあるが、近接する「清水池公園」のバス停からは目黒駅まで14分。バス利用だと、学芸大学駅まで歩くうちに目黒駅に着く。「清水池公園」へは徒歩1~2分。
before⇒after
LDKの一部
洗面
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同社広報のMさんから見学のお誘いがあったとき、200㎡の広さで坪単価375万円の〝安さ〟もさることながら、「ロア・ヴェール」のブランドに興味が惹かれた。Mさんは「ロワ・ヴェール」を調べて知ったそうで、同じ広報担当のOさんも、物件を案内していただいたOさんも竣工した年は生まれる前のはずで、同業の記者Fさんも知らなかったそうだ。東建も野村均社長ら役員以外は「ロワ・ヴェール」を知らないだろうから、少し長くなるが説明しよう。
物件が竣工したのは平成元年(1989年)5月。バブルの絶頂期で、「『億ション』と呼ばれる超高級マンション分譲事業にも進出し、1989(平成元)年から『ロワ・ヴェール』シリーズとして展開しました」(東京建物ホームページ)とあるように、東建が〝億ション〟市場に参入した年だ。第一号が「学芸大学」だったか「表参道」だったかはわからないが、設備仕様レベルが最高に素晴らしかったのを覚えている。全戸に1台以上の駐車場を設けたのが人気になった。
なぜ、レベルが高かったか。東建が億ション市場に参入したのは後発だったので、レベルを上げて差別化を図ったのだろうと思う。当時、億ションブランドとして圧倒的な存在感を示していたのが大建ドムスや東高ハウスだった。1988年竣工の「ドムス南青山」の最高価格44億円は、2016年分譲の三井不動産レジデンシャル「パークマンション檜町公園」の55億円(坪単価3,129万円)に抜かれるまで28年間、最高値であり続けた。
平成2年(1990年)9月にバブルが突如崩壊し、その後、「ロア・ヴェール」は1物件も供給されておらず、トータルしても「荻窪北」「市ヶ谷佐内町」など数件しかないはずだ。その意味で、「学芸大学」は数少ない東建の〝ヴィンテージ〟マンションの一つだ。
何が素晴らしいか。写真を見ていただきたい。外観は本物の御影石ではない擬石だが、周辺のマンションと比べて突出して存在感を示している。
エントランスホールの壁はトラバーチン(当時はそんなに珍しくなかったが)。リノベ住戸内も出窓のカウンターなどはトラバーチンが採用されており、玄関収納は無垢材、61畳台のLDKの床は30cm幅のオーク材、2か所あるトイレはTOTOの最上級、建具・ドアの把手には真鍮、壁は砂壁調のクロス、ラグジュアリーホテル並みの洗面室、中庭付き…。難点といえば、天井高が2400ミリで、窓は単板ガラスであることくらいだ。
さて、冒頭に「坪単価は信じられないほど安い」と書いたが、念頭にあるのは、この仕様レベルでいま新築マンションを建てたらいくらになるかだ。坪1,000万円は無理だろうが、坪700万円はくだらないはずだ。つまり、坪375万円は新築の半値に近いと読んだからだ。ありえない価格だ。面積が広いのでグロスは張るが…本物の価値が分かる人にアピールできるかどうか。内覧には十数組が訪れているという。
清水池公園
驚嘆のレベルの高さ&坪単価の安さ 本社屋隣接で自社施工 松尾工務店「鶴見」
「シェフルール横濱鶴見」
横浜市の老舗建設会社・松尾工務店の本社社屋に隣接する自社施工・売主マンション「シェフルール横濱鶴見」を見学した。基本性能・設備仕様レベルは極めて高く、坪単価は〝超割安〟の340~350万円。モデルルーム来場者は〝待ってました〟という人が多く、仕様レベルの高さに驚いているという。早期完売は必至だ。
物件は、JR鶴見駅から徒歩6分(京急鶴見駅から徒歩4分)、横浜市鶴見区鶴見中央4丁目の商業地域(許容建ぺい率100%、容積率600%)に位置する13階建て全109戸(うち非分譲住戸22戸)。9月下旬に分譲開始する第1期(戸数未定)の専有面積は50.29~89.05㎡、予定価格は5,100万円台〜10,000万円台、坪単価は340~350万円になる模様。竣工予定は2026年2月下旬。設計・監理は松尾工務店、S&Tファイブステージ設計事務所、施工は松尾工務店。販売代理は伊藤忠ハウジング。
現地は、同社本社社屋に隣接し、敷地は北西側の第一京浜と、北東側の東口中央通り、南東側の市道にそれぞれ接道。主な基本性能は逆梁、ZEH-M Oriented認定、BELS5つ星評価、多面採光、二重床・二重天井、リビング天井高2480ミリ、サッシ高2350ミリ、ワイドスパン(10スパンのうち50㎡台の2スパンを除く8スパンが7m超)、ディスポーザー、食洗機、フィオレストーンキッチン天板、ユーティリティシンク、二重サッシ(一部)、リビング・主寝室床暖房、物干しポール2か所(一部)、ソフトクローズ機能付き引き戸、タンクレストイレ、エアコンなど。
販売担当の伊藤忠ハウジング・福澤匡晃氏は「分譲を待ち望んでいらっしゃった方が多く、設備仕様レベルの高さに驚かれています」と語った。現段階のエントリー数は700件、モデルルーム来場者は120組。
モデルルーム
模型(モデルルームは本社屋内。これも経費節減=割安単価で分譲できる一つか。オフィスの天井高は3mはあった)
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現地は、ナイスが「スマートウェルネス体感パビリオン」として利用していたところだ。何年前だったか、パビリオンが廃止されたとき、必ずマンションになると思った。敷地が松尾工務店の所有地だったのは全然知らなかったのだが、現地にマンション建設の看板がかかったときから-自社社屋に隣接するのだから、絶対レベルの低いものにはならない-と確信し、坪単価は400万円をはるかに突破すると予想していた。
基本性能・設備仕様は前段で書いた通り。文句なしにいい(これほど高いとは全然思わなかった)。ところが、単価予想は大外れ。レベルの高さを価格に反映したら坪420万円はするはずだ。
小生は単価予想に自信がある。外しても数%か、1割を超えることはまずない。どうしてこれほどまでに予想を外したか。敷地がもともと同社所有で、施工も同社ということが主な理由だろうが、それよりも横浜の老舗建設会社として暴利をむさぼるようなことはしないという矜持ではないかと思う。
非上場というのも理由の一つかもしれない。同社の株主構成がどうなっているかわからないが、仮に〝どうしてこんな安値で売るのだ〟と訴えられても〝利益の源泉であるお客様にその利益の一部を還元してどこが悪いのか〟と一喝すれば、誰も二の句は継げられないはずだ。
セレクトできるキッチンカウンターは写真に収まらないほどたくさん用意されていた
現地(右の建物が本社屋)
商業施設閉店から15年 駅前の再開発マンション分譲へ フージャース「水戸」
「コモンスクエア水戸」完成予想図
茨城県水戸市の「水戸駅前三の丸地区第一種市街地再開発事業(街区名称:コモンスクエア水戸)」の参加組合員として事業参画しているフージャースコーポレーションは9月5日、記者発表会を開催し、組合理事長・林昌鎬氏が再開発に至る経緯を説明し、住宅棟「デュオヒルズ水戸三の丸タワー」の売主である同社専務取締役・森俊哉氏らが計画の概要を発表した。
「コモンスクエア水戸」は、水戸駅から徒歩2分の大規模商業施設「LIVIN水戸店」跡地(約6,675㎡)に位置し、水戸市の歴史資源である弘道館にも近接していることから、敷地の高度利用と地域の活性化を図るため住宅・店舗・業務・駐車場を一体として整備するもの。
発表会に臨んだ林理事長(54)は、従前敷地内で自ら居酒屋を営んでいたことを明かし、2009年3月に「LIVIN水戸店」が閉店し、2013年に跡地をフージャースコーポレーションが取得し、2015年に再開発準備組合が設立されたことなど再開発に至った経緯について語り、「この間、ホテル、ホール、商業施設などを誘致する案も浮上したが、コロナに見舞われ、収支が合わないことなどから誰も手を挙げてくれなかった。再開発によってすべて好転するとは思っていないが、水戸駅の玄関口にふさわしい拠点として地域活性化に貢献したい」と述べた。
森氏は、再開発実現に至るまでの地権者の苦労をねぎらい、「敷地は高低差が12.5mあり、事業化の難易度は高いが、2階部分にデッキを設けることで駅とつなぎ、1・2階に店舗を誘致し、別棟の業務棟とともに地域交流拠点にしたい」と語った。
また、同社事業統括本部事業開発部兼営業企画部部長・空裕子氏は、「地元の方を中心にエントリー数は600件を超えており、教育環境が充実していることや通勤、出張などには唯一無二の立地であること、また、『三の丸なら一つ手に入れたい』というシニア層にも高い評価を頂いている」などと話した。
住宅棟の「デュオヒルズ水戸三の丸タワー」は、1~4階・R階に駐車場、1階と2階に店舗、全戸南西向きの住戸は2階~20階に配置。2階部分で駅と直結するペディストリアンデッキを新設する。4階建て業務棟は敷地東側に、駐車場棟は北側に建設する。再開発組合は2017年5月設立。地権者は8名。設計・監理は長谷工コーポレーション。施工は長谷工・株木共同企業体。総事業費は115億円。
マンションは、JR水戸駅から徒歩2分、水戸市三の丸一丁目の商業地域に位置する敷地面積約6,675㎡の20階建て184戸(分譲住戸181戸、権利者住戸3戸)。専有面積は68.37~133.94㎡、価格は未定だが、68㎡で4,000万円台~。販売開始予定は2024年11月上旬。エントリー数は600件超。竣工予定は2026年11月下旬。
エントランス部分 完成予想図
左から空氏、林氏、森氏
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取材を申し込んだのは、早期完売した日本エスコンと同社の福島県いわき市駅前の免震再開発JVマンション「ミッドタワーいわき」(216戸)を取材しており、今回もそうなるか確認しようと考えたからだ。
モデルルーム公開は9月27日なので設備仕様はわからないが、県都の駅前一等地という立地条件を考慮すれば、平均坪単価はボトムで250万円くらいではないかと読んだ。水戸に限らず、他の中核都市もこの坪単価250万円は今後の事業展開にとって試金石、分水嶺になるのではないかと考えている。
懸念されるのは、街に活気が感じられなかったことだ。駅周辺の商業施設は空きが目立った。疲弊する地方都市を目の当たりにした。
市の人口はここ10年間くらい27万人前後で推移しており、工業事業所数及び製造品出荷額の減少に歯止めがかかっておらず、市内総生産は2007年(平成19年)をピークに減少傾向となっている(市のホームページ)。「ウィキペディア(Wikipedia)」によると、2003年以降、「ボンベルタ伊勢甚水戸店」「ダイエー水戸店」「LIVIN水戸店」「「MIMO」(ミーモ)」「サントピア」などの商業施設が相次いで閉店している。
工事中の現地(手前が水戸駅)
近接する弘道館周辺の街並み
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林理事長があいさつの中で「更地になった敷地で飼育されていた(我々の)夢を託したヤギが行方不明になった」と話したのに記者は鋭く反応した。林氏によると、ことの顛末は次の通りだ。
ヤギの飼育が始まったのは令和4年9月。土地所有者のフージャースコーポが福島のレンタル会社から母ヤギと1歳の雄「ユウキ」と雌「ユナ」を借りて住まわせていたところ、2か月もしないうちに「ユウキ」が行方不明になった。大騒ぎになり、メディアにも報じられたが、行方は杳として知れず、現在に至っている。工事が始まる前まではカエルの住処になっていたという。
なぜ記者が反応したかといえば、わが多摩センター駅前の駐車場でも、レンタルと思われるヤギが2~3頭「除草隊」として活躍しているからだ。ヤギはなんでも食べるかといえばそうではない。好き嫌いがあるようで、始末に負えないススキなどは食べない。その代わり、好きな草は腹が破裂するほど食べ続け、死に至ることもある大食漢でもあるようだ。
繁殖能力も高く、1歳は十分大人だ。近親相姦の概念はないのだろう。雄は母だろうが姉だろうが妹だろうが関係なく、(羊のことだったか)一度に何十頭の雌を孕ませることができるとも聞く。方不明になった「ユウキ」は母にも姉妹にも振られ(雌には拒否権があるのか)、失意のうちに逃亡した可能性は否定できないが…物件に近接する県立図書館で「ヤギ 水戸」を茨城新聞で検索したがヒットしなかった。
免震再開発マンション全216戸 1年半で完売フージャース・日本エスコン「いわき」(2024/4/3)
シニア層もターゲットいわき駅前の免震再開発フージャースコーポ・日本エスコン(2022/9/17)
東京都新型コロナ感染者 6日連続100人超/記者だけでなくパソコンも狂いだした(2020/7/8)
5つも6つもの思いが込められたサ高住「アンダンチ」ヤギと玄米に感動(2019/3/19)
収益・資金効率重視の事業に注力 大和ハウス・富樫マンション事業本部長
大和ハウス工業は9月2日、「2024年度 マンション事業計画説明会」を開催し、同社上席執行役員マンション事業本部長・富樫紀夫氏が経営数値・事業環境、今後の重点的な取り組みについて説明し、記者団の質問にも一つ一つ丁寧に対応した。
経営数値については、2023年度のグループ売上高は4,418億円(うち単体マンション事業は1,477億円)、営業利益は373億円(同157億円)、今期は売上高2,640億円(同900億円)、営業利益は170億円(同75億円)の予定で、2026年度の売上高は4,000億円、営業利益は250億円を目指すと話した。
今期売上高、利益が減少するのはコスモスイニシアが連結子会社から持分法適用会社に変更になったことなどによるもの。富樫氏は、これまでは在庫をかなり抱えており、仕入れを抑制してきたが、在庫整理が進んだことにより今後は積極的に事業展開する姿勢を見せた。
マンション市場は堅調に推移しているとみているが、国内の地価や建設費の高騰(とくに労務費)を考慮し、高付加価値物件の供給に絞ることで、量的な拡大から収益・資金効率重視の事業計画へと転換すると述べた。
また、複合開発、再開発、建て替えにも積極的に取り組んでいくとし、「(仮称)SSCつくば学園南プロジェクト」(15.5ha、マンション602戸予定)、(仮称)九州大学箱崎キャンパス跡地プロジェクト」(28.5ha、マンション8年間で2,000戸)、「昭島プロジェクトC街区」(277戸)などの事例を紹介した。
環境配慮、SDGsの取り組みでは、2023年度にプレミストシリーズZEH-M化を100%達成、直近の事例として「プレミスト宮崎台 ライズテラス」(記事参照)を挙げ、「新しいスタンダードになるはず」と話した。
このほか、多用途型の「MONDOMIO(モンドミニオ)」や海外事業、「プレミストサロン東京」の展開などについて説明した。
大和ライフネクストとの連携強化については、2024年度からマンション事業本部へ編入されことから、これまで以上に「製・販・管」の一貫体制を強化すると述べた。「プレミスト昭島 モリパークレジデンス」(481戸)など新築マンションで外部管理者方式を採用し、既存物件でも採用を増やしていくと語った。
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富樫氏の説明を聞きながら、その4日前の三菱地所レジデンス・宮島正治社長のメディア向け事業説明会を思い出していた。宮島社長は「選ばれ続けるマンションづくり」を行うと強調した。この日の富樫氏は「付加価値の高い、新しいスタンダードになるマンション」供給に力を入れると話した。
マンション市場を取り巻く環境は同じだから、同じ話をするのは当然だが、ほかにも似ているものがあるような気がしてならなかった。年齢が近く、同じ環境下で育ってきたのではないかということだ。ひねくれものが多いわれわれ団塊世代と異なり、経営者の必須要件である前向きな考え方をするのもとてもよく似ていると思った。
富樫氏は1963年11月20日生まれ、宮島氏は1964年5月26日生まれだ。半年しか違わない。近いのは2人だけではない。調べてみた。東京建物住宅事業本部長兼アセットサービス事業本部長・秋田秀士氏は1964年5月18日生まれ、三井不動産レジデンシャル・嘉村徹社長は1964年10月7日生まれ、野村不動産・松尾大作社長は1964年10月18日生まれだ。このほか、住友不動産・仁島浩順社長は1961年3月6日生まれ、大京・深谷敏成社長は1965年9月6日生まれ、東急不動産・星野浩明社長は1965年9月28日生まれだ。この8氏の年齢差は5歳しかない。
つまり、みんな同世代ということだ。共通するのは、入社してすぐバブルが崩壊し、谷底に突き落とされたときが会社員のスタートで、リーマン・ショックで痛い目にもあわされていることだ。幸いだったのは、会社は大きく、這い上がれる若さがあったし、そのころは経営には携わっていなかったことだ。
そして今、各社は大型案件などで手を組んでいる。仲良しこよしでもある。だが、しかし、表向きは笑顔で手を握っているのだろうが、水面下では急所や脛を蹴り飛ばしているのは間違いない。ちょっと隙があれば出し抜いてやろうと考えているに違いない。誰が一番腹黒く、ずるがしこいかお人よしか、思い当たる節はあるのだが、これは絶対書かない。
このように見ていると、マンション市場はものすごく面白い。どことどこが組むかがヒントになる。
見慣れている人ほど評価が高い中規模でも差別化徹底大和ハウス「宮崎台」(2024/8/30)
見慣れている人ほど評価が高い 中規模でも差別化徹底 大和ハウス「宮崎台」
「プレミスト宮崎台 RISETERRACE(ライズテラス)」
大和ハウス工業が分譲中の「プレミスト宮崎台 RISETERRACE(ライズテラス)」のモデルルームを見学した。同社初の「ZEH-M Ready」と「認定低炭素住宅」のW認定を取得しており、設備仕様レベルも高く、久々にレベルの高い中規模マンションを見たと思ったのだが、そんな記者の評価より、販売事務所長の飯田雄介氏の「(マンションを)見慣れている方ほど評価が高い」というコメントがこの物件特性を雄弁に物語っている。
物件は、東急田園都市線宮崎台駅から徒歩7分、川崎市宮前区宮崎三丁目の第一種中高層住居専用地域に位置する5階建て全45戸。7月19日から販売開始した第1期1次の専有面積は54.81~83.97㎡、価格は5,890万~9,930万円(最多価格帯7,500万円台)、坪単価は370万円。竣工予定は令和7年4月。施工は新日本建設。販売代理はライフコーディネーター。
現地は、閑静な住宅地が広がる高台に位置し、同社初の「ZEH-M Ready」と「認定低炭素住宅」のW認定を取得しているほか、住戸プランは、全戸7.4m超のワイドスパン、内廊下方式、リビング天井高2450ミリ、直床、ディスポーザー、食洗機、御影石キッチンカウンター、リビング・主寝室床暖房、二重サッシ(室内側は樹脂サッシ)、玄関脇宅配ボックス、ソフトクローズ機能付き収納・引き戸、マルチデスクカウンター付き腰窓(一部を除く)、浴室タオル掛け2か所などが特徴。
同社南関東支店横浜マンション事業部営業課 販売事務所長・飯田雄介氏は「規模は45戸ですが、周辺物件に負けないよう、記憶に残るよう意識してプランニングしました。マンションを見慣れている方ほど評価が高く、第1期1次では約3割を供給し、すべて成約済みです」と語った。
マルチデスクカウンター
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見学をお願いしたのは、来週の9月2日(月)に同社の「マンション事業計画説明会」が予定されており、同社上席執行役員マンション事業本部長・富樫紀夫氏の話を聞くことになっているのだが、話されたことをそのまま伝えるのは簡単だが、それでは「か・ち・も・な・い」と判断したからだ。
正直に言えば、取材するまではレベルが〝並〟だったらどうしようかと思っていたのだが、結果は上々。期待以上の成果が得られた。飯田氏の「見慣れている方ほど評価が高い」-これ以上記者が言うことなど一つもない。もう一度、上段の設備仕様レヘルを確認していただきたい。差別化が徹底されている。
コロナ以降、マンション見学は激減している。デベロッパー各社からは取材の声はかからないし、かかったとしてもレベルの低いマンションなど見たくもない記者の利害が一致しているからだ。
しかし、今回の物件は現場取材の大切さを教えてくれた。この記事は富樫氏が話されることと齟齬を生じないはずで、「(読む)価値もない」記事にもならないはずだ。
「販売のネックになるものがない」 全241戸竣工完売へ 大和ハウス他「大倉山」(2024/3/16)
建替えマンション 戸当たり再取得費用負担額は平均1,340万円 旭化成不レジ調査
重水氏
旭化成不動産レジデンス・マンション建替え研究所は8月22日、第10回「高経年マンション再生問題メディア懇親会」を開催し、「建替えの再取得住戸に係る実態(マンション建替え調査報告書Ⅷ)」報告と、香川総合法律事務所代表弁護士・香川希理氏による基調講演「外部管理者方式でどうなる? マンション管理の未来」を行った。先の香川氏の基調講演に続いて、「建替えの再取得住戸に係る実態(マンション建替え調査報告書Ⅷ)」報告を紹介する。
調査対象となったのは、2001年の同潤会江戸川アパートの第一号から2024年3月末までに着工・竣工した48件。マンション建替え研究所所長・重水丈人氏が報告した。
報告によると、全48件の建替えなどの発意から建替えなど議決までの平均年数は6.3年だった。2019年調査報告書Ⅳの8.3年から約2年短くなっているが、2019年時点での母数は17件で、同社が参画する以前の期間も含めて合意形成まで30年以上だった同潤会江戸川アパートメントも含まれていたため、それほど変化がないとも受け止められる。発意から議決までの期間が「5年以下」は27件で、過半を超えている。
建替え決議など着工までの期間は、「1年未満」が6件(13%)、「1年以上2年未満」が26件(54%)、「2年以上3年未満」が13件(27%)だった。一方で、「4年以上7年未満」も3件あった。
同社は、以前と比較して決議から着工までの期間は長くなっているとし、その理由として、円滑化法による組合施行の場合、建替組合の設立認可、権利変換計画の認可などに時間を要するためとしている。
48件の再建マンションの再取得率は平均60%で、調査報告書Ⅳの66%から6ポイント減少している。すべての区分所有者が転出した事例が1件、区分所有者全員が再取得した事例が5件。
全体として再取得率は低下しているが、新築マンションの供給が少ない都心部の好立地物件は再取得率が高いとも報告している。また、今後建築費の高騰が進めば再取得に要する費用負担が増加するため、再取得率は低下する可能性が高いと指摘している。
不動産開発会社が参加するマンション建替えの資金計画については、建替えに要する解体費、設計費、建築費などを区分所有者が応分の負担をすることになるが、高経年マンションでは区分所有者の高齢化・多様化が進んでいるため、すべての区分所有者、単に原則通り応分の負担を求める資金計画は現実的でないとしている。不動産開発会社が参画する場合は、土地の共有持ち分を購入し、購入した土地の共有持分と等価の区分所有権を再取得を希望する区分所有者に売り渡すスキームが一般的としている。
この場合、再建マンションの価格が高く、かつ容積率に余裕があるときは、区分所有者が追加費用なしで取得できる面積は広くなり、逆に再建マンションの価格設定が低く、容積率に余裕がなければ追加費用なしで取得できる面積は狭くなるとしている。
最近の建替事例の再取得住戸に係る分析では、東京23区の同社事例10件(n=1,039戸)で従前面積ごとで一番多いのは50㎡台で約46%、30㎡台と40㎡台を合わせると全体の20%弱、60㎡台が20%強となっている。
従前面積ごとの再取得率は、従前面積が20㎡台のケースの再取得率は85%強、30㎡台のケースも73%強あり、従前面積が50㎡台、60㎡台の再取得率は60%台と、他に比べやや低くなっている。
建替えに際して従前面積より広い専有部分を再取得した住戸の割合は、従前面積が40㎡台から60㎡台のケースでは従前より広い面積を取得したケースが多く、逆に従前面積が70㎡を超えると増床住戸比率は20~30%台へ極端に低くなっていることが確認できたとしている。
戸当たりの再取得の費用負担額の平均は約1,340万円(n=701戸)で、国土交通省のデータ約1,941万円(n=139戸)より低くなっている。その理由として同社の今回調査対象は東京23区事例で都心立地が多く、建替えを前提とした評価額が高いものが多いためとしている。
また、ほとんどのケースで従前面積と同じ面積を再取得するために費用負担が発生しており、追加費用なしで従前面積と同じ面積を取得できる事例は、今後はまれであるとしている。
一方で、従前面積の中でもっとも該当数が多い「50㎡台住戸」を抽出し、再取得の費用負担の分布をみると、500万円以下が43戸(15%)、1,000万円以下が69戸(23%)、1,500万円以下が70戸(24%)、2,000万円以下が51戸(17%)、3,000万円以下が42戸(14%)となっている。
「管理者と管理業者は構造的に利益相反の関係」香川弁護士 旭化成不レジ 基調講演
「外部専門家の活用のあり方に関するワーキンググループ」資料
旭化成不動産レジデンス・マンション建替え研究所は8月22日、第10回「高経年マンション再生問題メディア懇親会」を開催し、「建替えの再取得住戸に係る実態(マンション建替え調査報告書Ⅷ)」報告と、香川総合法律事務所代表弁護士・香川希理氏による基調講演「外部管理者方式でどうなる? マンション管理の未来」を行った。まずは、香川氏の基調講演から紹介する。
香川氏は、国土交通省「マンション標準管理委託契約書見直し検討会」「外部専門家の活用のあり方に関するワーキンググループ」の委員を務めており、今年6月に改訂された「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」について概要、問題点とその対応、区分所有者の責務、今後について語った。
香川氏は、約1時間の基調講演・質疑応答の中で、管理者と管理会社の関係について、「発注者たる管理者としてはなるべく安く発注することが利益となり、受注者たる管理会社はなるべく高く受注することが(株主)利益となる、構造的に利益が相反する関係」にあると何度も述べ、警鐘を鳴らした。
また、「マスコミの力」にも言及し、メディアの発信力に期待を寄せた。(この点については、最近、日経新聞をはじめ一般紙も利益相反の危険性を指摘している。結構なことだと思う)
そして、「私見」と断り、香川氏は次のように締めくくった。
「理事会方式と管理者方式について、必ずしもどちらかが正解でどちらかが不正解というわけではない。ただし、何ら法規制やガイドラインがないまま管理業者管理者方式が急増していたので、管理組合(区分所有者)の権利が不当に害されることのないようガイドラインが策定された。
したがって、まずは管理会社、分譲業者、管理組合(区分所有者)などがガイドラインを理解し、遵守することが重要となる。
そのうえで、区分所有者の意識を高めるとともに、管理のあり方や必要な法規制について検討、論議していくべき」
「外部専門家の活用のあり方に関するワーキンググループ」資料
「外部専門家の活用のあり方に関するワーキンググループ」資料
香川氏
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記者は、国土交通省の「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」以降、12年間くらいマンション管理について取材してきた。管理規約からコミュニティ条項を削除することに対しては反対派に与し、批判的な記事をたくさん書いた。外部管理者方式(以前は「第三者管理」、最近は「第三者管理者方式」と呼ばれていた)については、フィー(報酬)の問題があり、弁護士やマンション管理士などが請け負うことはなく、管理会社は利益相反をクリアするのは容易でないと考えてきた。
今回、ガイドラインが改訂され、管理業者管理方式も要件を満たせば可能になった(すでに数年前から一部の会社は採用していたが)。記者も経験があるが、理事会の役員として素人が活動するのは難しく、自らの財産はともかく、組合員の財産を棄損せず、価値を向上させなければならないというプレッシャーは相当なもので、その労力をお金に換算したら理事一人当たり1万円/月はすると見ている。そんなお金を捻出することができる中古マンションは半分もないはずだ。
香川氏が指摘した利益相反の懸念はぬぐえない。先の国土交通省「外部専門家等の活用のあり方に関するワーキンググループ」の資料として公表されたアンケート調査(2023年2月~3月実施)結果-「第三者管理を導入している事例がある」と回答した45社のうち、「管理者としての契約を締結していない」が51%に達しており、60%が報酬の設定を行っていない-に愕然とした。一般的な管理委託契約と管理者委託契約を別会計にしないで、どんぶり勘定にしている管理会社の常識を疑った。一言でいえば杜撰そのものだ。これでは利益相反は防げないと思った。
だが、管理者の過失による損害や故意・重過失などによる損害防止策を講じ、新ガイドラインを遵守すれば利益相反は防げと思う。マンション標準管理規約第38条でも、「管理組合と理事長(管理者)との利益が相反する事項については、理事長(同)は、代表権を有しない。この場合においては、監事又は理事長(同)以外の理事が管理組合を代表する」と担保されている。利益相反を防げないと管理会社=管理者はリプレイスされるのは必至だ。管理業者管理者方式はいわば両刃の剣だ。
フィー(報酬)の課題も中古はともかく、新築はクリアできそうだ。今年5月のマンション管理業協会の記者懇親会でこの問題について質問した。高松茂理事長(三井不動産レジデンシャルサービス会長)は「当社(三井不動産レジデンシャル)は新築マンションに採用しているが、きちんとフィーを明記している。既存マンションへ採用する場合は1,000円以下/戸にしている。無料はありえない」と答えた。
同協会副理事長・谷信弘氏(長谷工ホールディングス・長谷工コミュニティ代表取締役会長兼社長)は「当社グループも積極的に第三者管理者方式を採用している。管理受託とは別会計で、戸当たり1,000~2,000円」と話した。
また、大和ハウス工業と大和ライフネクストが今年5月21日に行った「マンション管理業(分譲マンションの 第三者管理者方式)篇」をテーマにした業界動向勉強会で、同社はデメリット対策として、第三者管理者サービスを独立した組織で提供し、各業務執行に複数の部門が関わることで牽制・内部統制を行い、社内ガバナンスを高め、契約形態としては管理委託契約とは別途「管理者業務委託契約」を締結し、報酬額は50戸程度で月額約5万円(1戸当たり1,000円)と報告。同社は、既存マンションを対象に外部管理者方式の受託に注力してきた結果、2023年度末では76組合、受託管理戸数は5,287戸に上っており、近く100組合になる予定だという。
例えが適当かどうかわからないが、街路樹1本の維持管理に要する年間費用が1万円もする時代だ(自治体によりかなり差はあるが)。50戸程度で月額約5万円(1戸当たり1,000円)というフィー(報酬)は、区分所有者の財産を守り、価値向上を図るマンション管理の目的と、管理組合役員の労力を天秤にかけたら安いような気がする(主体者の権利・義務を管理会社=管理者に売り渡していいのかという反論はありそうだが)。ただ、月額5万円で管理者業務を請け負う弁護士など専門家は皆無ではないか。(香川氏にそのことを聞きたかったのだが、失礼だと思いとどまった)
大和ライフネクスト第三者管理者方式既存中心に76組合受託 2026年に200組合へ(2024/5/22)
第三者管理者方式徴収額は月額1,000~2,000円/戸マンション管理協(2024/5/16)
マンション管理会社 3割が投資用中心に第三者管理者方式導入国交省(2023/12/26)
7月の首都圏中古マンション成約件数は14か月ぶり減少 東日本レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は8月19日、首都圏の2024年7月度不動産流通市場動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は3,193件(前年同月比1.3%減)、成約坪単価は260.6万円(同9.8%増)、成約価格は5,049万円(同10.7%増)、専有面積は63.94㎡(同0.8%増)となった。成約件数は14か月ぶりに減少し、成約単価は51か月連続、成約価格は50か月連続してそれぞれ上昇した。
中古戸建の成約件数は1,246件(同7.9%増)、成約価格は3,900万円(同1.4%増)、土地面積は140.34㎡(同0.5%減)、建物面積は103.72㎡(同0.2%増)。成約件数は6月に続いて前年同月を上回り、成約価格は6か月連続して前年同月を上回った。
首都圏中古マンション坪単価 10年間でほぼ倍増 東日本レインズ調査(2024/8/8)
見えないものが見えてくるモデルルーム見学 住友不「登戸」設備仕様 レベル高い
「シティテラス登戸」
住友不動産が販売中の「シティテラス登戸」のモデルルームを見学した。快速急行が停車する小田急線とJR南武線の2路線が利用でき、新宿へは20分という利便性、多摩川へは徒歩3分の自然環境、67㎡で坪単価345万円の価格の〝安さ〟が評価されているという。
物件は、小田急電鉄小田原線・JR南武線登戸駅から徒歩11分、川崎市多摩区登戸癸耕地の工業地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する7階建て全180戸(その他広告対象外の10戸あり)。8月5日から申し込み登録を開始した第1期(23戸)の専有面積は67.29㎡(全住戸の約9割)、価格は6,500万円~7,700万円(最多価格帯6,700万円台・6,900万円台・7,200万円台)、坪単価は345万円。竣工予定は2025年6月中旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。
現地の用途地域は工業地域で、建築物の絶対高さ20m規制が敷かれており、敷地東側には小田急バス登戸営業所が隣接している。
主な基本性能・設備仕様は、ZEH-M Oriented・低炭素建築物認定、リビング天井高2400ミリ、直床、ディスポーザー、食洗機、御影石キッチンカウンター、ミストサウナ、Low-E複層ガラス、リビング・洋室床暖房、浴室タオル掛け、ソフトクローズ機能付き引き戸、可動式横ルーバー面格子サッシなど。
昨年9月から物件ホームページを開設し、これまでのエントリー数は850件、2月末からのモデルルーム来場者は150件。来場者の大半は第一次取得層の地元居住者で、地縁のない顧客からは都心や横浜への利便性が評価されているという。
販売担当の同社住宅分譲事業本部営業部主任・石井裕介氏は「静かで日当たりがいいのが評価されています。共働き世帯(〝二馬力〟ともいうそうだ)は、例えばご主人は南武線沿線、奥さんは都心方面に勤務する会社員で、双方の中間点に位置しているというもの評価されています」と話した。
モデルルーム
◇ ◆ ◇
プレス・リリースは8月5日に同社から発表されているのだが、リリースをコピペしなくてよかった。モデルルームを見学すると、リリースでは見えないものが見えてくる。
まず、価格と仕様レベル。都内居住者は、荒川を超えて川口市、綾瀬川を越えて八潮市、毛長川を越えて草加市、江戸川を超えて市川市や松戸市、流山市アドレスになるのと同様、多摩川を超え川崎市になるのに抵抗感を覚えるかもしれないが、踏ん切りがつけられればその対価は大きいということだ。1駅手前の小田急線快速停車駅の下北沢駅圏なら坪単価は間違いなく600万円をはるかに突破するはずだ。(登戸駅から1駅先の小田急線向ヶ丘遊園駅近のタワーマンションの坪単価は423万円だそうだ)
冒頭に〝安さ〟と〝 〟書きしたのは、われわれ業界関係者が〝安い〟と判断した通り購入検討者もまた〝安い〟と感じるのかどうかわからないからだ。だが、しかし、6mスパンの67㎡をどう評価するかはさておき、価格(単価)が〝安い〟からと言って、前段で書いた通り、基本性能・設備仕様レベルは決して低くはない。
価格が安いといえば、同社の「シティテラス多摩川」900戸(非分譲住戸244戸含む)は坪単価250万円だ。「登戸」はこちらとは競合していないそうだが、「みどり」の視点からすれば「多摩川」が断然いいと思うのだが…。
「2馬力」なる言葉も初めて聞いた。「共働き」と同義語のようだ。「タワマン」もそうだが、なんだか下品。記者は使う気になれない。
物件位置イメージパース
首都圏中古マンション 坪単価 10年間でほぼ倍増 東日本レインズ調査
別表1
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は8月8日、2024年度の首都圏の不動産流通市場動向をまとめ発表した。
中古マンション成約件数は36,595件(前年度比3.4%増)、成約坪単価は243.1万円(同7.5%増)、成約価格は4,700万円(同8.2%増)、専有面積は63.80㎡(同0.7%増)、築年数は23.83年(同0.23年増)となった。坪単価は2013年度から10年連続して上昇しており、築年数は1992年の11.19年から約10年増加している。
中古戸建ての成約件数は18,109件(同3.5%増)、成約価格は3,928万円(同1.1%増)、土地面積は137.61㎡(同1.3%減)、建物面積は102.51㎡(同0.2%減)、築年数は21.74年(同0.22年増)となった。築年数は1992年の12.65年からほぼ一貫して増加している。
別表1は、中古マンションの成約件数と成約価格の推移を見たものだ。件数は1992年の20,580件から2024年度は77.8%の増加。ただ、2019年の37,912件からここ5年間は頭打ちとなっている。坪単価は2012年の126.7万円を底に12年連続上昇、ほぼ倍増している。
別表2は、中古マンションの坪単価と専有面積の関係を見たものだ。坪単価が上昇すると専有面積は減少しており、相関関係があることがわかる。
別表2
別表3は、中古マンションの駅からの交通別成約件数の推移を見たものだ。居住性能より通勤・通学・通院などの利便性や資産性を重視する消費者の物件選好の変化、デベロッパーの〝駅近〟戦略が奏功しているのか、駅から徒歩10分以内が60%台の後半で推移している。2023年度の成約件数24,741件のうち68.9%を占め、坪単価は284.2万円、成約価格は5,315万円、専有面積は61.86㎡となっている。
別表3
別表4は、中古戸建ての駅からの交通別成約件数の推移を見たものだ。マンションとは対照的に、駅から徒歩10分以内は30%を割っており、徒歩10分以内の成約物件の価格は全体の成約価格より約1,000万円高く、土地面積は117.31㎡で、全体の134.70㎡より、約17㎡(5.3坪)狭くなっている。
別表4
別表5は、中古のマンションと戸建てを合計した中古住宅の成約件数の推移を見たものだ。着工戸数はマンションと戸建てはほとんど変わらないか、むしろ戸建てのほうが多いのに、中古市場ではマンションが圧倒的多数派を占める。2023年度では、全体の成約件数53,447件のうちマンションは35,907件(67.18%)で、戸建ては17,540件(32.82%)だ。
これほどの差が出るのは、分譲マンションはそもそも二世帯同居を想定していないことと、戸建て居住の子世代が世帯分離によりマンションを購入し、親世代は引き続き戸建てに住み続けるからだと考えられる。一方で、ファミリー向け賃貸の質は低いままで、住宅総数は6,502万戸(2023年10月1日現在)で、うち空き家は900万戸に達している-このいびつな構造をどう理解すればいいのか。
別表5