自然と人と街をつなぐ「BLUE FRONT SHIBAURA アートツアー」 野村不動産
フランシス真悟「Ring of Light」
野村不動産は8月6日、「BLUE FRONT SHIBAURA アートツアー」を開催。アート&カルチャープロデューサー・小林裕幸氏がガイド役を務め、3階エントランスの絵画を描いた作家のフランシス真悟氏がゲスト役となって4か所のアート作品について詳細な説明を行った。午前中の「BLUE FRONT SHIBAURA メディアセミナー」と合わせ1日がかりの取材だったが、とても楽しい1日だった。
「アートツアー」では、3階エントランス正面のフランシス氏の「Ring of Light」、この作品と向き合う形で設置されているベ・セファ氏(Bae Se Hwa)の「Meditative Garden」、3階吹き抜け部分の鈴木康弘氏の「無限大をひらく」、28階エントランスのWOW ink.の「Flowing Presence」が紹介され、15の音で多層的な世界観を表現するサウンドスケープについても説明された。
小林氏は、「設計デザインを担当した槇文彦さんと野村不動産さんから話を聞いたのは2022年。〝これは面白いぞ〟と思った。海や空の自然と人々をつなげるコンセプトに共感した。槇さんの最後の作品になったのではないか(槇氏は昨年6月死去。享年95歳)」と語り、それぞれの作品について説明した。
フランシス氏の「Ring of Light」は、1枚2.6m×2.6mの全5枚の油絵。空の青や海の青を基調に見る角度、時間帯によって刻々と変化する自然を表現している。フランシス氏は「仙厓(1750年~1837年の臨済宗の禅僧で画家)に着想を得た。四角いモノ・建物と丸い自然・人が共生する世界を描いた」と語った。
色は光源・物体・視覚の三要素からなる。記者も油絵を描くが、見る角度で油絵の色が変わることなどありえない。なぜか、フランシス氏に聞いたら雲母を絵具の中に練りこんでいるとのことだった。これで謎が解けた。雲母は見る角度によって色が異なる。フランシス氏は下地に塗ったブルーも含め約1年で仕上げたそうだ。
「Meditative Garden」について小林氏は、「ベ・セファ氏は韓国人アーティストで、芝離宮のランドスケープに着想を得て、オーク材を蒸して流線形に仕上げた唯一無二の作品」と讃えた。細長いオーク材3本をつなぎ合わせたものだが、どうしてこのようなことができるのか、記者は絶句した。
ベ・セファ「Meditative Garden」
鈴木康弘氏の「無限大をひらく」はについて小林氏は、「作品はアルミ製。槇文彦氏が鈴木春信の『雪中相合傘』をモチーフにしたように、この作品も1本の傘に寄り添う2人になぞらえて設計されたエピソードにインスピレーション得ている。ファスナーのGipは同じように見えるが、人も建物も全て異なるのと同じ、鈴木氏の世界観がここに表現されている」と語った。
鈴木康弘「無限大をひらく」
28階の「Flowing Presence」についてプロデューサーの萩原豪氏は、「ここで働く約2万人のワーカーの過ごし方の変化をセンサーが感知し、様々なデータも装置に入れて、海や空も同じように二度と同じ形にはならず、その意味ではワーカーがつくっていくインタラクティブアート」と説明した。この28階は一般の人の入室は不可だが、小林氏は「土曜、日曜を利用してアートツアーも企画したい」と話した。
WOW ink「Flowing Presence」
小林氏(左)とフランシス氏
◇ ◆ ◇
先日(8月3日)、三菱地所が行った「石神の丘美術館」所蔵石彫の完成を記念する除幕式を取材し、石彫を制作した作家のケイト・トムソン氏から直接話をうかがったばかりだ。この日もまた、作家・フランシス氏から直接話を聞くことができた。
ケイト氏はイギリス生まれ、フランシス氏はアメリカ生まれの違いはあるが、移り変わる自然と人のかかわりを描いているのは共通する。「アートがそれぞれ主張するのでなく、周囲と共存しているのがここのアートの特徴。海も空も国境を越えてどこかでつながっている」と締めくくった小林氏の言葉が印象に残った。
槇文彦「恵比寿東公園」トイレ
柔軟オフィスは生産性・WB・仕事の先延ばしに好影響永山晋・一橋大大学院准教授(2025/8/7)
「TOKYO TORCH PARK」から石彫アート〝月の恵み〟発信三菱地所×岩手県岩手町(2025/9/4)
〝表と裏をひっくり返し世界一の街に〟野村不「CULTURE FRONT」トークイベント(2024/11/26)
野村不&JR東日本芝浦PJ「BLUE FRONT SHIBAURA」イメージは寄り添う夫婦(2024/5/31)
柔軟オフィスは生産性・WB・仕事の先延ばしに好影響 永山晋・一橋大大学院准教授
多田氏(左)と永山氏(BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S 28階ラウンジで)
野村不動産は8月6日、「BLUE FRONT SHIBAURAメディアセミナー」を開催し、同社と共同研究を行っている一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科准教授の永山晋氏(43)が、学術誌Scientific Reportsで審査中の「オフィス環境は職場のパフォーマンスに影響を与えるのか? 」をテーマにした論文内容を報告。多様な場所が選択できるオフィス環境(柔軟オフィス)は生産性、ウェルビーイング(WB)、仕事の先延ばしにポジティブな影響をもたらすと語った。
セミナーの冒頭、同社芝浦プロシェクト事業部・多田剛孝氏は「BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S」の概要などについて説明し、「専有部の約10%の3,300坪(10,890㎡)の共用空間を用意しており、これほどまでの共有空間を有するオフィスは国内にそうない」とし、約1,500坪(4,950㎡)の28階のラウンジなどを含め、「世界最高水準の圧倒的な共用空間」を強調した。
永山氏との共同研究については、「多様な場所、チョイスがあることで何がよくなるか、具体的に明らかにできればさらに説得力が増すという仮説のもとに、先生にお声掛けした」と説明した。
これを受け、永山氏は学術的な背景として、多様な場所が選択できるオフィス環境(柔軟オフィス)はワーカーのパフォーマンスを高めるのか、ポジティブ、ネガティブのどちらの結果も併存し、実験的手法が限られており、因果の理解も限定的であるとしたうえで、柔軟オフィスがもたらす矛盾を説明しうる3つの要因(①オフィス環境から「資源」をうまく得られるか②個人的特性③ワークスタイル)に焦点を当てフィールド実験を行ったと話した。
実験は、野村不動産の新宿本社勤務社員195名を対象に、新宿本社の固定オフィス勤務要請50名と、浜松町のトライアル柔軟オフィス勤務要請145名に分け、柔軟オフィス勤務と固定オフィス勤務とでは生産性・ウェルビーイング・仕事の先延ばしがどうなるかをBefore&Afterの2度にわたるアンケートにより検証した。
柔軟オフィス勤務要請を行った145名のうち柔軟オフィス勤務を選択したのは94名で、残りの51名は固定オフィス勤務選択した(要請にもかかわらず固定オフィス勤務を選んだ人の気持ちはよくわかる)。
アンケートの結果、柔軟オフィスを積極的に活用した場合のパフォーマンス・スコアは、固定オフィスと比較し、生産性は18.8%、ウェルビーイングは22.3%、仕事の先延ばしは19.8%低い水準となった。
柔軟オフィスでリラックスして仕事をする場所の多様性は生産性と仕事の先延ばしに対してポジティブな影響を及ぼし、集中して作業する場所の多様性も、生産性に対して有意にポジティブな影響を持つことを示唆した。一方で、同僚とのコミュニケーションをする場所の多様性、フォーマルな会議を行う場所の多様性、カジュアルな雰囲気で行う場所の多様性の影響については有意な影響は検出されなかったという。
この結果について、永山氏は、誠実性が高い人、リラックスしながら多様な場所を活用する人にとって柔軟オフィスは有効であると話した。
また、先延ばしは、現在と将来の報酬と労力の評価のバランスによって決定され、資源の低下は、近視眼的思考を引き起こし、とりわけ、将来生じる労力を過小評価し、「計画の誤謬」をもたらすと語った。
BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S 28階ラウンジ
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とても興味深いセミナーだった。「世界最高水準の圧倒的な共用空間」を備える「BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S」の入居企業の生産性、ウェルビーイング、仕事の先延ばしの数値は劇的に変わるのか。そのBefore&Afterを報告してほしい。
ただ、実験についていくつか分からないことがある。永山氏は「資源」とは認知、社会、構造、物理(ストレス・集中力、人間関係、仕事の自由度、機材の質など)と定義づけており、記者が重要な資源だと考えている価値の可視化が難しい「デザイン」「みどり」「音」「色」「アート」などはどうなっているのだろうか。
もう一つ「誠実性」について。永山氏は、誠実性は心理学のビッグファイブモデルの一つ(他は外向性、神経症傾向、開放性、協調性)で、「柔軟オフィスでは、誠実性が低い人に対してマネジメントの工夫が必要」と話した。
外向性や協調性に欠け、不真面目の権化のような記者はぐうの音も出ないが、28階ラウンジはビッグファイブのいずれも低いレベルにある多種多様なワーカーを受容するような気がするし、環境が全てを決定するものでもないと思う。職住近接の宿舎が与えられ、喫煙室完備の会館も利用できる究極の柔軟オフィス環境を享受できている国会議員の先生方は誠実性に欠ける人ばっかりだ(記者が選挙に行かないのは、そのような人と関わりたくないからでもある)。
〝空と海と緑と〟最高にいいスカイラウンジ「BLUE FRONT SHIBAURA」南棟開業へ(2025/6/13)
髙島屋ハノイ初出店 大規模複合ビル着工/コスモスイニシア ホーチミン市の分譲好調
「Westlake Square Hanoi(ウエストレイクスクエアハノイ)」
髙島屋の連結子会社・東神開発は8月5日、ベトナム・ハノイ市で参画している大規模タウンシップ開発「スターレイクプロジェクト」内の大規模複合ビル「Westlake Square Hanoi(ウエストレイクスクエアハノイ)」の起工式を8月2日(土)に行ったと発表した。
「Westlake Square Hanoi」は敷地面積約17,248㎡。第Ⅰ期の総床面積は約 43,000㎡で、地下1階から6階にハノイ初出店となる髙島屋(百貨店)と専門店からなる商業フロア「Hanoi Takashimaya S.C.(ハノイタカシマヤショッピングセンター)」(35,000㎡)と、7階から10階にはオフィスフロア8,000㎡を備える地下3階・地上10階建ての複合ビル。第Ⅱ期の総床面積は約60,000 ㎡(予定)。
起工式
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「TT AVIO(ティーティーアビオ)」
コスモスイニシアは8月5日、ベトナムの不動産デベロッパーTT Capital Investment Joint Stock Companyと、日本発祥のグローバル不動産会社Koterasu Partners Pte. Ltd.との戦略的パートナーシップのもとで推進中のホーチミン市での分譲住宅開発第1号物件「TT AVIO(ティーティーアビオ)」のORION棟の第1期540戸の予約受付を開始し、7月26日には第1回の予約会を開催したと発表した。
プロジェクトは、現地の中間所得者層をターゲットとした敷地面積約1.6ha、総戸数2,055戸(AVIS棟:1,109戸・30階建て、ORION棟:946戸・37階建て)の2棟構成。昨年から予約受付を開始したAVIS棟は順調に進捗しており、約9か月で、進捗率は約90%に達している。価格は40㎡で750万円(坪62万円)、81㎡で1,500万円(坪61万円)。引き渡し予定はAVIS棟が2027年第4四半期ころ、ORION棟が2028年第4四半期ころ。
予約案内会
隈研吾氏が設計監修 東通グループ ハイグレード賃貸「TOTSU PREMIUM」第一弾
「TOTSU PREMIUM 白金台二丁目(仮)」
東通グループは7月31日、ハイグレード賃貸マンション「TOTSU PREMIUM」シリーズ第一弾となる白金台の二丁目のプロジェクト「TOTSU PREMIUM 白金台二丁目(仮)」の設計監修を建築家・隈研吾氏が手掛けると発表した。
物件は、港区白金台二丁目に位置する敷地面積約614㎡、5階建て全8戸。着工予定は2025年11月28日、竣工予定は2028年1月28日。企画コンサルティングはケン・コーポレーション。
隈研吾氏は、「日本有数の幹線に徒歩で接続する白金台は、かつての上品な高級住宅地という枠を超え、新たな価値を帯びる街へと変化しつつある。斜面地に沿った閑静な住宅地の趣を継承し、前面道路に向けて植栽と石垣を設けることで、都市の中に森のような風景を創出する。各階に石垣・緑・空を感じられるデザインとしつつ、周囲のキャンパスや住宅地、文化財との景観的調和を図るため、ルーバーを用いて建物のボリューム感を繊細に分節することを目指した」とコメントしている。
同社はこれまで、スタンダードな賃貸物件シリーズ「THE TOTSU」を展開してきたが、今回の「TOTSU PREMIUM」は、東京の一等地で“上質な暮らし”の“賃貸”という選択ができる高級レジデンス。
考えさせられる全館空調に関する旭化成ホームズと三菱地所ホームのリリース
「論より証拠のエアロテック」
住友不動産を中心とする既存住宅の「断熱・省エネリフォーム推進タスクフォース」発足式が7月30日に行われたその日に旭化成ホームズが、その翌日に三菱地所ホームがそれぞれ「全館空調」に関するプレス・リリースを発表した。住友不動産のイベントを意識したわけではないだろうが、それぞれ紹介する。
◇ ◆ ◇
7月30日付の旭化成ホームズのリリースは、「全館空調採用者と非採用者の住環境意識・満足度調査」結果を報告したもの。対象となったのは、首都圏在住の30-79歳、10年以内に戸建を新築した人297人(全館空調採用者97人、全館空調非採用者200人)。
調査結果によると、全館空調を採用した理由の第1位は「家中が1年中快適な温度に保たれるから」が51.5%、「清潔な空気環境を確保できるから」が38.1%、「各部屋の温度差が少ないから」が35.1%だった。
一方で、全館空調を採用しなかった理由の第1位は「設置費用が高いから」が49.0%、「光熱費が高いから」が37.0%、「メンテナンスが大変だから」が31.5%だった。
採用者の住まいの満足度は約95%、温熱環境への満足度は約80%と非常に高い数値を示し、温熱環境満足度の差が大きいのは「玄関」「洗面所・脱衣室」「廊下」で、非採用者と30ポイント以上の顕著な差が出た。
現在の住まいの全体的な満足度では、「非常に満足している」と回答した採用者は40.2%、非採用者は16.5%だった。「やや満足している」と回答した採用者は39.2%、非採用者は52.5%だった。「どちらともいえない」「あまり満足していない」「まったく満足していない」と回答した採用者は20.7%、非採用者は31.0%だった。
また、採用者に対する「光熱費が抑えられる」「乾燥しにくい」といった質問に対して、「あてはまらない」「まったくあてはまらない」は18.6%、「乾燥しない」は16.4%となり、全館空調の課題として認識されているとしている。
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7月31日付の三菱地所ホームのリリースは、同社の全館空調システム「エアロテック」を利用している顧客の声の紹介と、それを裏付ける実測データを紹介するWEBコンテンツ「論より証拠のエアロテック」に関するもの。
「論より証拠のエアロテック」のWEBページでは、約10項目(室内温度、粉塵、冷房除湿、冷暖房費、臭気、換気、気流、睡眠、故障のしにくさ、その他)の価値について利用者の声を紹介し、それを裏づける最新の実測データ(エビデンス)を年4回にわたり公開していくとしている。
また、利用者の自宅に設置したセンサーにより、室内の温湿度をリアルタイムで可視化するコンテンツを9月に公開する。
同社は、1995年に「エアロテック」を開発し、現在は同社の新築注文住宅のエアロテック採用率は97.3%に達しているとしている。
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この2社のリリースが明らかにしているのは、全館空調に対する満足度が極めて高いことと同時に、採用者と非採用者の割合はほぼ1:2に留まっていることだ。
「断熱・省エネリフォーム推進タスクフォース」の発足式でも、断熱・省エネ窓は「消費者への情報発信や普及が不足しており、認知度が高くない実情」が指摘された。全館空地用もその良さは理解されているのに、採用者は3人に1人の割合だ。
断熱窓も全館空調も、全体の建築コストに占める割合は最大で10%に満たないはずだが、この壁を乗り越えるためには、その快適性をわかりやすく説明するほかない。
それともう一つ考えないといけないのは、自らの思い通りに建てられるはずの戸建てオーナーは、現在の住まいに対して「どちらともいえない」「あまり満足していない」「まったく満足していない」と回答した非採用者は31.0%、採用者も20.7%いるということだ。
人間の欲望は尽きないし、より優れた家を建てようと考えるから戸建て市場も成り立つのだろうが、非採用者の実に3割以上が築10年もたたないのに満足できないのは悲しむべきだ。
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住まいの快適性は、基本的には広さ-記者は4人家族で30坪(100㎡)が標準だと思う-のほか耐震性・耐火性・断熱性・省エネ性などの基本性能に通風・採光、遮音、ユニバーサルデザイン、天井高、家事動線、空気環境、緑環境…たくさんあり、何を重視するかで人それぞれだろうが、これらを総合的に評価し、費用対効果も含めて可視化(金額換算)できないかをずっと考えている。
そこで、このことをChatに質問した。Chatは、快適性の各要素(断熱性、通風性、家事動線など)を項目ごとにスコア化し、QOL(身体的、精神的、社会的、文化的に満足できる豊かな生活)とLCC(建物の企画・設計から建設、運用、維持管理、解体・廃棄までの全体にかかる費用)を掛け合わせれば、「快適性評価」の設計が可能であり、将来的には住宅評価ソフト(例:ホームズ君、i-Tree、BIMベースのLCCツール等)を使うのも手だと瞬時に答えた。「i-Tree」を盛り込んでいるのがいい。国も今すぐこの「i-Tree」評価制度を採用すべきだ。「緑環境」はZEHと同レベルの価値があると思う。
どこがこの総合的「快適性評価」マトリクスを開発するか。
仕様レベルの引き算でZEH水準は可能手放しで喜べないデベロッパーの対応(2025/8/2)
業界の垣根超えた「断熱・省エネリフォーム推進TF」発足住友不など7社・団体(2025/8/1)
三井不動産 ロジスティクス事業 国内外78施設 約610万㎡ 累計投資額1兆3,000億円
篠塚氏
三井不動産は8月1日、ロジスティクス事業に関する記者説明会を開催し、同社常務執行役員ロジスティクス本部長・篠塚寛之氏は2025年度に6物件の着工を予定しており、国内外の開発施設は78件、総延床面積約610万㎡、累計投資額は約1兆3,000億円に達し、今後もコンスタントに事業を展開していくと語った。
篠塚氏は、2024年度に竣工したのは「Mistui Fudosan Logistics Park(以下、MFLP)仙台名取Ⅰ」「MFLP名古屋岩倉」「MFLP東京板橋」「MFLP横浜新子安」の4物件で、2025年度竣工予定は「MFLPつくばみらい」「MFLP一宮」「MFLP尼崎Ⅰ」「MFLP仙台名取Ⅱ」「MFLP入間Ⅰ」の5物件、2025年度着工予定は「MFLP海老名&forest」「MFLP三郷」「(仮称)淀川区加島物流施設計画」「MFLP京都八幡Ⅰ」「(仮称)MFLP杉戸」「水戸ロジセンター」の6物件と説明。
この結果、竣工済みは58物件約465万㎡、開発中は20物件約145万㎡、合計78物件約610万㎡で、2012年の累計投資額は約1兆3,000億円にのぼると語った。
篠塚氏はまた、「&INNOVATION2030」の長期戦略に基づき、事業戦略は①街づくり型開発、課題解決型開発による付加価値創出②データセンターや冷凍・冷蔵倉庫の開発促進、工場・インフラ設備など事業領域の拡大③三井不動産グループの保有材の活用、グリーン電力の創出などESGへの取り組み強化-の3本柱を推進し、単なる物流施設にとどまらず、①データセンター②BTS 型(オーダーメイド型)物流施設③冷凍冷蔵倉庫④ラボ・研究開発施設⑤賃貸工場など、オフィス・研究開発・ラボといったマルチユース機能を備えた複合業務施設の開発を促進すると語った。
地域社会との共生・連携では、「MFLP船橋」の「MFLPプレミアムフェスタ2024」には来場者約5,000人、「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」の「MIRAI FES」には来場者約3,000人が集まった。
事業領域の拡大については、2014年に参入したデータセンター(DC)については、世界のモバイルデータ通信量が今後5年間で年平均23%の成長を遂げると予想されていることを受け、現在の累計投資額約3,000億円を2035年までに約6,000億円に拡大する。「MFIP海老名」では、「MFIP羽田」に続きオフィス・研究施設が入居することが決まっている。また、新規事業「mitaseru」の製造工場を「MFLP船橋」に新設する。
ESGへの取り組みでは、「MFIP海老名&forest」には建物構造の一部に木材を採用し、三井不動産グループが所有する北海道の森林の木材を構造材や内装・仕上げ材に使用している。
「MFLP船橋」
「MFIP海老名&forest」
野村不動産 3年後の物流施設60棟・延床365万㎡・投資額8,000億円(2025/5/31)
都内最大級の物流施設 23区希少の工専立地三井不・日鉄興和不「東京板橋」竣工(2024/10/3)
「物流施設」=「嫌悪施設」=「倉庫」なのか三井不ロジスティクス記者説明会(2024/7/21)
並のマンションはるかにしのぐ三井不フラッグシップ「MFLP海老名Ⅰ」満床稼働(2022/9/21)
「TOKYO TORCH PARK」から石彫アート〝月の恵み〟発信 三菱地所×岩手県岩手町
「石神の丘美術館」所蔵石彫の完成を記念する除幕式(「TOKYO TORCH PARK」で)
岩手県岩手町と三菱地所は8月3日、東京都千代田区の「TOKYO TORCH PARK」内に、岩手町の「石神の丘美術館」所蔵の石彫作品の設置・完成を記念する除幕式を開催した。両者のパートナーシップ協定に基づくもので、東京駅前から日本の文化・魅力を発信する地方創生の取り組みの一環。当日は、岩手町町長・佐々木光司氏、三菱地所TOKYO TORCH事業部長・上田寛氏、作品を制作した岩手町在住のケイト・トムソン氏ら関係者が参加して、地方創生・文化交流を促進することを誓いあった。
除幕式の冒頭、佐々木町長は「当町は、岩手県北の北上川の水源地に位置する人口11,000人の農業の町。石神の丘美術館は32年前(1993年)に野外彫刻美術館として開館し、5年前にリニューアルした。作品を通じ〝花とアートの森〟の当町の魅力を東京から発信していく」と挨拶した。
続いて登壇した上田氏は「TOKYO TORCHは“日本を明るく、元気にする街”をビジョンに掲げており、ここから地域の魅力を発信していく。広場空間(PARK)は広さ約7,000㎡。今回のアート作品展示はその第一弾。関係人口の創出にもつながることを願っている」と述べた。
石彫作品を制作した作家のケイト氏は、次のように語った(ケイト氏が英語で書いた文章を、夫で浮島彫刻スタジオを主宰する彫刻家・片桐宏典氏が日本語に訳し、それをケイト氏がローマ字で認めたものなので、ご夫婦の合作でもある)。
私は、豊かな自然に囲まれた岩手町に住んでいます。季節の移り変わりや、日が昇り月が出て星が夜空に光り、そんな素晴らしい風景にいつも大きなインスピレーション受けてきました。
私の作品は、人間の姿や風景を抽象的な形で表現しています。身体的、文化的、そして社会的な空間における関係性を探求しています。光は命の形を表現しています。それは、私たち一人ひとりの特別な何か、そして本質的な何かです。
私は大理石を作品によく使います。石は大地の長い時間を記憶にとどめています。石は時間を超越します。そして、触る感触を楽しめる作品になります。大理石の美しい透明性が周囲の光を捉えて彫刻の中に広がり、朝晩の変化や季節の移り変わりを表現しています。
この作品の名前は「Selēnē(セーレン)」です。「Selēnē」名前は、ギリシャ語の「Σελήνη」に由来し、それは光輝き、煌めきを意味します。月の恵みは、農業において最も重要な神の一人です。月の恵み「Selēnē」は白馬のチャリオットが空を駆け巡り、太陽の反射光を夜の空いっぱいに与えるのです。
私の大理石の彫刻は、この「Selēnē」のように、周囲の光を彫刻の中に取り込んで、命の輝きを表現します。岩手の美しい里と魅力がそこに反映されていることを願っています。
「Selēnē(セーレン)」
左から佐々木氏、上田氏、ケイト氏
◇ ◆ ◇
作品は、岩手町在住の作家・ケイト・トムソン氏がイタリア産大理石を用いて制作した石彫りで、作品名は〝月の恵み〟を意味する「SELENE(セーレン)」。寸法はL100cm×W48cm×H178cm(台座含む)。
作品についてケイト氏は、「数週間の休憩をはさみ、毎朝、石にあいさつし、会話を交わしながら約3か月で仕上げた。イタリア産の大理石はきめが細かく、微細なエッジなどを表現するのに適している」と語った。
ケイト氏と作品
「TOKYO TORCH PARK」(中央から右下の白っぽいものが作品)
全国1,741市町村を走破した写真家・仁科氏の仮囲いアート地所「TOKYO TORCH」(2022/11/2)
最高に素晴らしい!学生が経営する「アナザー・ジャパン」TOKYO TORCHIに開業(2022/7/27)
街路樹に溶け込むアート三菱地所&彫刻の森第43回「丸の内ストリートギャラリー」(2022/6/29)
三菱地所「TOKYO TORCH」第一弾「常盤橋タワー」完成緑の量と質に感動(2021/7/27)
期間72年の定借 伊藤忠都市開発「クレヴィア練馬」気になる京王線との差
「クレヴィア練馬レジデンス」
伊藤忠都市開発・フジ都市開発が9月に分譲する「クレヴィア練馬レジデンス」のコンセプトルームを見学した。期間72年の定期借地権付きで、坪単価は450万円くらいになる模様。高いか安いかよくわからないが、販売担当者によると、定借というのは販売のネックにはならず、21坪強(70㎡)でグロス8,000万円を超えてくるのがカギとなりそうだ。
物件は、西武線練馬駅から徒歩10分(中村橋駅から徒歩9分)・都営大江戸線練馬駅から徒歩12分、練馬区中村北2丁目に位置する期間72年の定期借地権付き全83戸。9月分譲予定の第1期1次(戸数未定)の専有面積は44.88〜82.73㎡、予定価格は5,700万円台〜13,900万円台(最多価格帯9,000万円台)。竣工予定は2026年11月下旬。設計・監理は日企設計。施工は木内建設。売主は同社のほか販売代理は伊藤忠ハウジング。
3月下旬からエントリーを開始しており、これまでの反響数は630件、コンセプトルーム来場者は70件。
現地は、練馬駅から続く商店街と千川通りの桜並木を抜けた、スーパーマーケット「LIFE」の隣接地。従前は駐車場。練馬駅と中村橋駅、それと大江戸線練馬駅が利用できるのがセールスポイントの一つ。建物は南向き・東向きの2棟構成。
主な基本性能・設備仕様は、ZEH-M Oriented、二重床・二重天井、リビング天井高2400ミリ、フィオレストーンキッチン天板、ディスポーザー、食洗器などのほか、全戸のリビング・ダイニング・キッチンの天井(一部)には、吸音・消臭・調湿性能を併せ持つ天井材「クリアトーン12SⅡ」を採用している。
エントランス(左)と中庭
◇ ◆ ◇
読者の皆さんは、坪単価を測るとき、どこを起点に考えられるか。おそらく交通利便性を重視して、(誰にとってかは不問にして)東京駅を考える人が大半を占め、あとはターミナル駅や浦和、横浜、千葉などの県都が続くのだろう。現在の単価地図を見ると、武蔵小杉が湾岸エリアと同等の評価を得ている例外はあるが、ほぼその通りになっているはずだ。
さて、練馬駅はどうか。記者は京王線に住んでいるので、新宿を中心に考える。乗換案内で検索すると都営大江戸線で新宿駅から17分だ。坪単価が600万円を超える石神井公園は、新宿駅からだと池袋経由で30分前後だ。池袋駅を中心に考えると、練馬は8~12分、石神井公園は9~13分だ。
生活利便施設の集積、街のポテンシャルなど総合的に判断すると、練馬駅より石神井公園駅を上位にあげる人が上回るかもしれないが(やはり公園の存在が大きい)、記者は互角の評価をする。練馬駅前に「ココネリ(Coconeri)」はあるし、区役所もある。
だから、わが京王線の笹塚の坪900万円、調布の坪500万円からして、西武池袋線の単価は高いような気がしないわけではないが、こんなもんだろうと思った。
ただ、価格が高いか安いかは、マンション購入検討者が考えることだからこれ以上は書かない。設備仕様レベルは水準以上だ。
インブルームと共同で開発した新たな洗面空間「MOTリネン」もギャラリーに展示されている。洗濯物を乾燥機から取り出してその場で畳んで、その場で収納でき、リネン庫の収納力を大幅に向上させたことに加え、様々な使い方ができるカウンターを備えており、吊戸棚、縦型収納、引き出し、ハンガーパイプなど様々な形状の収納スペースを備えているスグレモノだ。(この物件には装備されていない)
練馬駅圏では3年前に分譲されたモリモト「ピアース練馬レジデンス」(76戸)が坪440万円だったそうだ。
伊藤忠都市開発の定借マンションとしては、平成17年竣工の第一号の「タンタタウン」(678戸)以来、今回が5物件目だ。「タンタタウン」は首都圏で初めて長期の期間70年を設定した物件で、来場者は実に8,000件に達した。
「MOTリネン」
6月の住宅着工 前年同月比15.6%減の約5.6万戸 持家、貸家、分譲とも減少
国土交通省は7月31日、令和7年6月の住宅着工戸数をまとめ発表。新設住宅着工戸数は55,956戸となり、前年同月比15.6%減で3か月連続の減少。利用関係別では持家は16,030戸(前年同月比16.4%減)、貸家は24,289戸(同14.0%減)、分譲住宅は15,075戸(同17.9%減)で、いずれも3か月連続の減少となった。分譲住宅の内訳は、マンションは5,945戸(同27.9%減)、一戸建住宅は8,921戸(同10.9%減)でともに3か月連続の減少となった。大幅着工減は、3月の駆け込み着工の反動減と見られる。
首都圏マンションは2,814 戸(前年同月比35.1%減)で、都県別は東京都1,253戸(同38.8%減)、神奈川県1,219戸(同13.5%増)、埼玉県295戸(同41.6%減)、千葉県47戸(同93.3%減)。
首都圏分譲戸建ては3,967戸(同12.9%減)で、都県別は東京都1,253戸(同17.1%減)、神奈川県976戸(同18.9%減)、埼玉県981戸(同1.7%増)、千葉県は757戸(同13.4%減)。
仕様レベルの引き算でZEH水準は可能 手放しで喜べないデベロッパーの対応
天井高2.7m、樹脂サッシ高2.4mのポラス「ひととき 流山市松ヶ丘・南柏」
いつもマンションや戸建ての窓などの開口部の仕様はチェックするが、前日(7月30日)は、住友不動産を中心とする「断熱・省エネリフォーム推進タスクフォース」を取材していることもあり、この日(7月31日)のポラス「ひととき 流山市松ヶ丘・南柏」の開口部に注目した。ざっと数えたら数は20か所くらいあり、ワイド・ハイサッシもかなりあった。これでZEH水準にするのは容易なことではないはずだ。
これからの分譲戸建てやマンションはZEH水準が当たり前になるし、このことに疑義を呈するわけではないが、ZEH水準とは断熱等性能等級5と一次エネルギー消費量等級6を同時に満たした住宅のことで、この尺度だけでは住宅の質が高いか低いかは測れないことに注目すべきだと思う。
むしろ、ZEH水準にして住宅ローン控除や各種の補助金交付の対象とするため、他の快適性にとって重要なことがないがしろにされていないかがとても気になっている。
極論すれば、建物の出隅・入隅をなくして総2階にすればコスト・工期を圧縮でき、耐震性・断熱性・気密性も高めることが可能だ。また、天井高を下げれば、サッシ高も下げられるし、窓面積も建基法ぎりぎりまで小さくすることもできるし、吹抜け空間はなくし、床暖房もなしにすれば数値はさらに上げられる。心当たりがあるデベロッパーはいるはずだ。
この考え方は、中央住宅不動産ソリューション事業部不動産開発部企画設計課課長・村田嵩胤氏村田氏とも一致した。村田氏は「様々な仕様を引き算すればZEH水準は可能。当社は居住性・快適性を犠牲にするようなことはしない。足し算で居住性を高めることが重要」と語った。
そこで、同社を含めたすべてのデベロッパーに提案だ。窓など採光・開口部はその個所や面積、延床面積に対する窓面積の割合を公開してはどうか。差別化につながるはずだ。また、居住面積だけでなく、天井高を計算した体積も公開すれば〝売り〟になる(緑被率も公表すべきだと思う)。
1階主寝室の天井高2.4mで、サッシ高もほぼ同じ「ひととき 流山市松ヶ丘・南柏」
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