コルク・食品廃棄物をオーナメントに 三菱地所「サーキュラーシティ丸の内」第5弾
三菱地所は12月6日、廃棄物再利用率100%に向けた取り組み「サーキュラーシティ丸の内」の第5弾として、食品廃棄物やコルクをオーナメントにアップサイクルすると発表した。
廃棄予定だったコルク栓を使ったオーナメントと、コーヒー粕・米糠を使ったオーナメントの2種類を制作。丸の内二丁目ビル内「Marunouchi Happ. Stand&Gallery」と「Marunouchi Happ. STORE」で2024年12月9日(月)から12月25日(水)まで販売する。オーナメントは、東京駅と丸の内仲通りを結ぶビルの通路空間「Marunouchi Bloomway(丸の内ブルームウェイ)」のツリーに飾り付けることも可能で、オーナメントの売上は丸の内エリアの保育園に寄付する。
「サーキュラーシティ丸の内」は2022年から取り組んでいるもので、第1弾は食べきれなかった料理を持ち帰るための容器の無償配布、第2弾はペットボトルの水平リサイクル施策、第3弾は廃食用油を持続可能な航空燃料のSAFなどへの再利用、第4弾は常盤橋タワーで液肥化した生ごみを活用した農作物の育成および同ビル内での提供。
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三井デザインテックのサーキュラーデザイン(CD)と、積水ハウスのサーキュラーエコノミー(CE)の記事を書いたからには、三菱地所のサーキュラーシティ(CC)の取り組みを紹介しないと公平ではない。
記者は、これまでこの分野の取材はほとんど行ってこなかった。もうこれ以上、守備範囲を広げたくないのだが…。
リサイクル部材だけの「循環する家(House to House)」 2050年に発売積水ハウス(2024/12/8)
2030年の家具はサーキュラーデザイン(CD)が標準に三井デザインテックセミナー(2024/12/5)
リサイクル部材だけの「循環する家(House to House)」 2050年に発売 積水ハウス
積水ハウスは12月4日、「循環する家(House to House)」プロジェクト発表会を開催し、住宅業界のサーキュラーエコノミー(以下、CE)移行を目指し、3万点以上からなる家の部材を見直し、リサイクル部材(リユース、リニューアブルなど含む)だけで構成された家「循環する家(Circular Design from House to House)」(House to House)を2050年までに発売すると発表した。
発表会で同社代表取締役社長執行役員兼CEO・仲井嘉浩氏は、「当社は①脱炭素②生物多様性保全③資源循環を三本柱にCEに取り組んでおり、これまでに工場、新築施工現場、リフォーム、アフターメンテナンスにおいてゼロエミッションを達成しており、『資源循環センター』では80分別し再資源化している。この取り組みは、国際的な非営利団体CDPによる、世界でたった12社、国内に限ると2社(もう1社は花王)しかないトリプルA認定を取得している。今後も解体廃棄物の回収、製品化、リサイクル・リユース、さらに解体を前提とした新築段階での設計にも取り組み、本日、『循環する家(Circular Design from House to House)』プロジェクトの開始を宣言する」と挨拶した。
その一方で、「しかし、これは非常に難しいプロジェクト。我々だけで実現できるものではない。すべてのサプライヤー、住宅業界、ステークホルダーと協力しないと実現しない。一致団結して開発・研究を重ねて住宅業界の未来を変えたい」と述べた。
続いて登壇した経済産業省GXグループ資源循環経済課・水上智弘氏は、CEの市場(静脈産業)は今後大幅に拡大が見込まれるとし、日本国内では2020年50兆円から、30年80兆円、50年120兆円の市場規模を見込むとする一方で、マテリアル輸入の増大、価格高騰による国富流出、国内物価上昇のリスクもあり、CE性を担保しない製品は世界市場から排除される可能性があると図示し、対応が遅れれば、成長機会の損失だけでなく、廃棄物処理の海外依存の可能性があると指摘した。
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記者はこの日(4日)、RBA野球大会の取材がありそちらを優先し、同社の発表会はアーカイブで視聴することに決めていた。視聴したのは昨日(7日)だった。その2日前(5日)には、「家具の買取再販は2030年にはサーキュラー デザイン(CD)のスタンダードになると聞いたのにいささかショックを受けた」と、12月3日に行われた三井デザインテックのメディア向けセミナーに関する記事を書いた。その2日後に「循環する家」だ。Wショックを受けた。
三井デザインテックも積水ハウスもそこまでの具体的な工程表・タイムテーブルは示さなかったが、世の中は劇的に変わるということだ。
一つ疑問も湧いた。CE、CDは避けられないにしろ、使用・流通しているケミカル製品などを回収し新たな製品に再生するのに要するコスト、CO2消費量と、ケミカルを中心とするマテリアル素材を使って同種の製品を製造するコスト、CO2消費量とをはかりにかけたらどうなるのかということだ。
例えば、いま世界中で注目されているプラスチック規制。三井デザインテックのセミナーではプラスチック由来の「BENCH SOFA」も紹介されたが、多分、再生コストは新製品製造コストの数倍かかっているはずだ。(時価10万円と思われる本革の椅子を再生するコストはいくらもかかっていないはず)。つまり、仲井氏も話したが、解体を前提とした、環境に負荷を与えない部材の採用・設計が肝になると記者は思う。
だとすると、住宅は木造以外ありえない。坂茂氏の「紙の家」もあるかもしれないが、そもそも木由来の紙をつくるのには大量の水を消費する。「紙の家」は限定的にならざるを得ない。
発表会でもそれらしきヒントも与えられた。同社R&D本部総合住宅研究所長・東田豊彦氏は「かつてわが国の住宅は木と石でできていた。立ちどまることも必要」と語った。質疑応答では「もともとわが国の住宅はサーキュラーエコノミーだった。(それを壊したのは、大量生産・消費してきた)プレハブにも問題があるのではないか」という記者の質問も飛んだ。
確かに、この記者の方の指摘は正しい。小生は昭和24年生まれだから、もちろん住宅は木と石(土と紙と植物も重要な役割を果たしていた)でつられていた。電化製品などなく、エネルギー源は薪炭だった。だが、しかし、質問した記者の方も化石燃料、ケミカル製品のおかげで生きているはずだ。小生などは薪炭時代への逆戻りなどまっぴらだ。
もう一つ、考えたことがあった。仲井氏も紹介した環境省のCDの定義だ。同省は「従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すもの」とある。
この定義に照らせば、これまた木造しかありえないと思う。同社ESG経営推進本部業務役員環境推進部長・井阪由紀氏は「循環する家」はどのような工法かなどについては示さなかったが、築60年の「セキスイハウスA型」を紹介した。これもヒントになるのか。おそらく同社は、重量鉄骨と木造由来の2タイプを発売し、選択できるようにするはずだ。あと26年。記者が生きていたら100歳だ。予想は的中するか。
コルク・食品廃棄物をオーナメントに 三菱地所「サーキュラーシティ丸の内」第5弾(2024/12/8)
三井不動産レジデンシャル 「三井のすまい 日本橋サロン」リニューアルオープン
大型LEDビジョン
三井不動産レジデンシャルは12月6日、「三井のすまい 日本橋サロン」のメディア向け説明会を開催した。同サロンは、これまで「日本橋三井タワー」5階に設けられていたものを先月11月にリニューアルオープンしたもの。
価値観やライフスタイルが多様化する中で、同サロンではバーチャルとリアルを融合させた展示により、より具体的にイメージできる、新しい“すまい探し体験”を体感できる拠点となっている。現在販売中の3物件と今後販売予定の1物件が対象で、三井不動産グループ各社と連携した住み替え、リフォームなどワンストップでサポートする。
特徴の一つである最大幅約12m×4mの大型LEDビジョンでは実寸大の間取りや眺望を投影し、家具の配置などをイメージできるようにしている。
コンセプトルームでは実際の室内空間を再現しており、各設備や家具に触れることができる。バルコニーにはLEDビジョンを設置し、検討住戸の室内からの眺望イメージを体感することもできる。
大型モニターでは販売中物件のCG映像やデジタル模型、建設地周辺の動画などを映し出すことが可能で、外壁や共用部に用いられる石やタイルなどのマテリアルサンプルが物件ごとに展示する。
専有部・共用部の設備を実際に確認できる実物展示コーナーも設けている。
「日本橋サロン」は、東京メトロ銀座線三越前駅から徒歩2分、中央区日本橋本町2-2-2 日本橋本町YSビル9F。延べ床面積は約210坪。営業時間は月・金:11:00~16:00、土・日:10:00~17:00、定休日は火・水・木曜日。
2025年1月下旬に第2期2次を販売する総武線浅草橋駅から徒歩2分の「パークホームズ浅草橋」(121戸)の坪単価は600万円。
先着順で分譲中の東京メトロ銀座線浅草駅から徒歩9分の「パークホームズ浅草六丁目」(48戸)の坪単価は450万円。
2024年12月上旬に第6期3次を分譲する東京メトロ東西線東陽町駅から徒歩6分の「パークホームズ東陽町」(97戸)の坪単価は427万円。今回が最終分譲となる。
2025年2月下旬に分譲予定の東京メトロ日比谷線入谷駅から徒歩6分の「パークホームズ入谷」(37戸)の価格は未定。
コンセプトルーム
専有部設備展示コーナー
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記者はVRやらMRがよくわからないのだが、コンセプトロームは、同社が現在販売中の台東区などの物件の基本性能・設備仕様レベルがよくわかる。購入検討住戸からの眺望が見えるようにしているのは必須だと思う。同業他社はどうなっているのだろうか。
従前の「日本橋三井タワー」に設けられていたサロンとはやや異なるが、エントランス正面の本物の木で作られた幅約2間(3.6m)、高さ2.4mの組子デザインの壁がとてもよかった。
エントランス正面の組子デザイン壁
わが国初 VRとMR組み合わせたモデルルーム三井不レジ「池袋サロン」(2024/5/21)
立地にふさわしい防音室、循環ライブラリ三井不レジ「文京本駒込」人気(2022/12/6)
コアなニーズ引き出した商品企画ヒット ポラス「すみかプラス行徳」
「Sumi-Ka+GYOTOKU(すみかプラス行徳)」
ポラスグループ中央住宅は12月5日、分譲戸建て「Sumi-Ka+GYOTOKU(すみかプラス行徳)」のメディア向け見学会を行った。「Sumi-Ka+」のコンセプトは、「社会問題の解決を建築で目指す」という意欲的なもので、2022年にグッドデザイン賞を受賞した。今回はありきたりな都市型戸建てに満足できないコアなニーズに訴求し、周辺相場より1,000万円くらい高い価格設定にもかかわらず販売は好調に推移している。
物件は、東京メトロ東西線行徳駅から徒歩12分、市川市新浜1丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全18戸。土地面積は110.02~128.23㎡、建物面積は96.48~106.91㎡、価格は7,990万~9,490万円。完成予定は2025年3月上旬。
現地は、フラットな行徳駅前通りから一歩入った住宅地。主な基本性能・設備仕様は、長期優良住宅、耐震等級3、ソーラーパネル搭載(1~10号棟)、リビング天井高2700ミリ、サッシ高2400ミリ、1階CP(防犯)ガラス、深型食洗機、床暖房、1.25坪浴室など。
同社不動産ソリューション事業部不動産開発部企画設計課課長・村田嵩胤氏は、「当事業部は年間250棟くらい販売している部署で、不動産仲介などを担当したスタッフも多く、多様な顧客ニーズに応えられるのが強み。これまで供給し、グッドデザイン賞を受賞した『Sumi-Ka+』はファミリーだけでなく、DINKS、三世代同居、シニアなどのニーズを取り込んだ。部署内からは価格を抑制する必要はなかったのではないかという声があり、今回はコアなニーズを取り込むため付加価値を高め、敷地面積を100㎡ではなく110㎡確保し、外構も重厚感を演出し、モデルハウスも億ション並にした。価格は、周辺相場より1,000万円くらい高い強めに設定したが、供給した7棟のうち6棟が完売した。20代の購入者の方には、親からの援助や50年ローンを組み、投資目線で購入される方もいらっしゃった。残っているのは敷地延長のもっとも安い7,990万円の住戸」と語った。
価格がもっとも高い南西角住戸1号棟の内観(グレーが基調で、その狙いはすぐ分かった)
価格が1号棟より800万円安い2号棟の内観(〝耐えられない存在の軽さ〟ゆえ、記者はこちらの方が好きだ)
村田氏
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いつものように道すがら、価格をはじいた。行徳はこれまでもマンションの取材などで結構訪れている。街路樹は貧弱だが、駅から徒歩12分のアクセスもまずまず。マンションだったら坪単価は300万円を超えると考えた。30坪で1億円だ。
しかし、ポラスの戸建てだから8,000万円くらいで、商品企画によっては9,000万円でも売れると予想した。この時点で、物件を企画したのは同社不動産ソリューション事業部だとは全然知らなかった(最近は横着になり、マンションや戸建ても事前の調査をしなくなった)。
現地に着いて、村田氏から「久しぶりです」と声を掛けられた。「えっ」(人の顔と名前が最近は全然覚えられない)。それでも、村田氏から「Sumi-Ka+」のプロジェクトの一つであるという説明を聞いて、ほとんど瞬時に企画意図を理解した。価格も予想した通りだった。村田氏と記者の考え方はぴたりと一致した。
3年前に見学した「Sumi-Ka+」の「佇美の家(たびのいえ)」(市川市)」「空の稔」(松戸市)「新故郷」(松戸市)では、「従来の分譲戸建てのイメージ・概念の盲点をついた商品だ」と書いた。
今回はどうか。特徴などについては上段で書いた通りだ。いくつか補足する。村田氏は「これまでのポラスっぽくない」と何度も語った。確かにそうだ。しかし、記者はこれまで同社の分譲戸建てを数えきれないほど見てきている。商品企画は極めて高い(同社の弱点を探すとすれば、他社物件と比べてどこがいいかを調べ切れていないことだと思う)。大手デベロッパーの物件とも互角に戦える。なので、「ポラスっぽくない」というのは「これもポラスの一つ」と記者は受け取った。
モデルハウス2棟とも1階と2階の一部にはCPガラスが採用されていた。この前のリスト「リストガーデン武蔵新城セキュリティ・タウン」の記事を読んでいただきたい。「CPガラス」を採用し、「神奈川県防犯セキュリティ・ホーム認定」を受けたのちの来場者は6.5倍に増えた。価格は相場より1,000万円も2,000万円も高かったが、全10棟のうち残りは1戸だった。
記者は、CPガラスは常識だろうと思っていたが、そうではないことも分かった。ポラスは1階部分の窓にCPガラスを標準としている(以前にもそう聞いたような気がする)。
価格がもっとも高い9,490万円の南西角住戸の1階は掃き出し窓を設けず、高窓としているが、その企画意図をすぐ理解した。外からの視線を遮断したいと考える人はかなりいる。浴室も1.25坪で、食洗機は深型だった。
村田氏の考えに一つだけ同意できないものがある。村田氏は「みどりの管理は大変だから、雑草を生えないよう防草シートを張り、その上に石を置いた」と話した。小生のマンションも5坪くらいの専用庭付きだから草取りなど管理が大変なのはよくわかる。しかし、真夏の地表温度は50℃にも60℃にもなる。緑は30℃強に抑えてくれる。地球温暖化防止に貢献するだけでなく、住宅の地域の街のポテンシャルを引き上げる。緑と地価形成は相関関係にあり、埼玉や千葉の住宅価格が相対的に低いのは、緑被率低いことに一因があると記者は見ている。
パナソニック製の横並び三つ口コンロ(左)と深型食洗機
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行徳駅前の街路樹の写真を撮った。見ていただきたい。樹種は常緑樹のクスノキのはずだが、強剪定されているため葉っぱはまばら、発狂寸前だ。どうしてこのように丸裸にされているのか、理由はすぐ分かった。ムクドリ対策だ。ムクドリは群れて生息するので、わからないわけではないが、これはあんまりだ。かつてムクドリは益鳥だった。生態系の崩壊は、人間にも大きな影響を与えることを考えないといけない。記者はスズメが激減しているのが気になる。高気密住宅はスズメの住処を奪っている。
行徳駅前のクスノキの街路樹
丸裸にされ、寒さに凍えるクスノキ(市民そのものか)
ショック!戸建ての防犯(CP)ガラス取り付け率はわずか4.3%日本サッシ協会調べ(2024/11/29)
全戸にCPガラス IoT駆使し快適性も県初のリスト「防犯セキュリティ・ホーム認定」(2024/11/28)
小家族向けに焦点面積・価格抑え大胆提案ポラス「Sumi-Ka+空の稔」に注目(2021/5/2)
コミュニティ育む仕掛けに驚嘆従来の常識覆すポラス「Sumi-Ka+ 新故郷」(2021/5/1)
調整区域の平屋41棟 敷地300㎡超が好調 〝地域のタカラ〟目指せ
「レーベンプラッツ加須はなさき公園」(CUBEプラン)
MIRARTHホールディングス(ミラースHD)グループのレーベンホームビルドは12月6日、埼玉県加須(かぞ)市の市街化調整区域内の平屋建てプロジェクト「レーベンプラッツ加須はなさき公園」見学会を行った。調整区域開発規制の逆手を取って全41区画を300㎡以上、建物も約100㎡とすることで豊かな暮らしを提案した企画がヒットし、9月から販売開始した25棟のうち13棟が契約済み。これほど大規模な平屋住宅地の開発はわが国初ではないか。来年8月の竣工を待たず完売する可能性もありそうだ。
物件は、東武伊勢崎線花崎駅から徒歩7~9分、埼玉県加須市花崎字蓮田の市街化調整区域(建ぺい率60%、容積率200%)位置する全41区画。土地面積は構造・工法は木造1階建て(木造軸組み+パネル工法)。売主は同社のほか川口土木建築工業(一部)。12月中旬に分譲予定(戸数未定)の土地面積は302.74~303.57㎡、建物面積は98.54~101.44㎡。既契約の価格は3,600万円台から4,000万円台の半ば。全体竣工予定は2025年8月。
主な基本性能・設備仕様はリビング天井高は3m台から最大4.4m、床暖房、食洗機付き。
現地は、低層戸建てや畑などが混在するエリアの一角で、道路を隔てた隣接地は戸建て住宅街。従前は畑、あるいは荒れ地。同社は川口土木から土地を取得した。
9月から分譲開始し、これまで供給した25棟のうち13棟が契約済み。契約者の属性は、居住地は地元加須市を中心とする近隣各市が過半を占め、都内居住者もあるという。年代は30代から60代以上のシニアまでまちまち。毎週30件の来場があるという。
見学会でレーベンホームビルド代表取締役社長・有田卓二氏は「調整区域開発の第三弾? 探しているのだが難しい。ここはたまたま市街化区域に隣接しており、下水道なども整備されていたので許可が下りた」と語った。同社開発部企画課課長代理・瓦田しのぶ氏は「『南栗橋』をさらにブラッシュアップした」と、同社不動産事業本部戸建営業部戸建営業1課部長・下田裕一氏は「販売が好調。皆さんの声も聴きたい」とそれぞれ話した。
左から下田氏、同社総合企画本部経理財務部次長・東海林卓氏、有田氏、同社不動産事業本部開発部設計課係長・安田氏、瓦田氏
左から下田氏、有田氏、東海林氏
〝レディ・ガガ〟こと高荒氏(右)と有田氏
見学会
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花咲徳栄高校しか知らなかった花崎駅に初めて降りた。取材時間まで1時間近くあったので、どこかカフェか飲食店でタバコを吸おうと思ったが、2、3あった飲食店はすべて営業時間外。
仕方なく早めに現地に着いた。待つこと30分超。所在なくあちこちぶらつき、時間をつぶした。会見は広場で始まった。小生の後方から〝タカハラ〟の言葉が聞こえた。パブロフの犬だ。これに鋭く反応した。後ろ振り返った。すぐ後ろに〝レディ・ガガ〟ことミラースHD執行役員グループ事業リーディング室長・高荒美香氏がいるではないか。同社が昨年、グッドデザイン賞を受賞したこの「加須」の物件で提案した「CUBEプラン」は高荒氏が所属する部署の提案だった。「CUBEプラン」は6帖大の居室で、多目的に利用できるよう独立した出入り口が設けられており、トイレ付き。
開発地は2年前に取材した「レーベンプラッツ南栗橋」と同じ調整区域開発だろうと思ったが、その通りだった。「南栗橋」と比べ今回の「加須」は生活利便施設が乏しく、大きなハンディを抱えており、同駅圏の分譲戸建ての相場2,000万円台の倍以上という価格であるにもかかわらず売れる理由はよくわかる。100坪の住宅地など松濤、田園調布、大和郷くらいしかないのではないか。これほど大規模な平屋住宅地の開発はわが国初ではないか。
有田氏は、住宅地内にパン屋やカフェを誘致するプランがあることを明かしたが、銀行からの融資が下りないのだそうだ。ならば、同社が「一号店舗(都市計画法第34条第1号)」として建物を建設し、住居と資金・賃金を保証し、全国から職人を募集したらどうか。島田和一社長、それが御社が目指す〝地域のタカラ〟になるのではないか。
「CUBEプラン」
モデルハウス
モデルハウス
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こんなことを言っても詮無いことだが、この日午前中に行われた三井不動産レジデンシャルの「日本橋サロン」リニューアルオープン説明会には40人くらいが参加したのではないか。それからでもこの平屋建てプロジェクト見学会には間に合ったはずだが、取材したのは小生を含め2人とはどういうことか。現場を見ない限り〝平屋人気〟の理由は絶対わからないだろう。
調整区域&風致地区開発要件満たし生物多様性の取り組みに挑戦ポラス「馬込沢」(2024/11/19)
敷地100坪 建物30坪の平屋 ミラースHDの戸建て「南栗橋」企画ヒット(2022/11/13)
「目指すは企業価値の向上」タカラレーベン・髙荒美香氏女性活躍の視点から注目(2021/11/4)
2030年の家具はサーキュラー デザイン(CD)が標準に 三井デザインテック セミナー
左から三上氏、田中氏、堀内氏(椅子などはCD家具)
三井デザインテックは12月3日、恒例の「プレスセミナー&懇親会」をジョサイア・コンドルが設計した大正2年建設の迎賓館「綱町三井倶楽部」で開催した。セミナーで「家具の買取再販は2030年にはサーキュラー デザイン(Circular Design)のスタンダードになる」と聞いたのにいささかショックを受けた。わが国の家具製造業市場は2兆数千億円のようだが、その市場は激変するということだ。
セミナーの冒頭、今年4月に同社代表取締役社長に就任した村元祐介氏はこれまでオフィス事業と住宅事業領域でそれぞれ半分ずつ携わってきたことを紹介し、「社長に就任して8か月、三井不動産グループの中でとても個性的な会社であることを改めて感じている。当社は空間創造を手掛ける会社ではあるが、意匠性だけでなく、ものごとを根本的に捉えなおすことをデザインの対象にしており、これまで幅広い領域で培った知見や実績を掛け合わせた、事業領域を超えたクロスオーバーデザインを強みに、今後とも豊かな暮らしと魅力ある社会づくりに貢献していくい」とあいさつした。
同社フェロー・見月伸一氏は、最近同社が手掛けた主な作品20事例くらいを紹介した(このうち小生が取材見学したのは「HARUMI LLAG」「東京ドーム」「ららアリーナ 東京ベイ」くらいしかない)。
今回のセミナーのテーマは「三井デザインテックの考えるサーキュラーデザインの現在と未来」で、資源循環コンサルティングなどの取り組みで実績のあるモノファクトリー常務取締役・三上勇介氏をゲストに迎え、同社クリエイティブデザインセンター長・堀内健人氏と同社デザインディレクター/グループ長・田中映子氏がトークセッションを行った。
3氏は、わが国のサーキュラーデザイン(CD)の取り組みは欧州と比べ遅れており、脱炭素社会を実現するためには法整備を含め官民が一体となり、資源⇒素材建材⇒政策施工⇒利用⇒解体回収⇒再資源化の循環を推進すべきとした。
同社は、3年半前からCDのプロトタイプ家具の実証実験を行っており、「MINI BAR」「NICHI TABLE」「BENCH SOFA」「BENCH」「CHAIR」などを開発した。
これらの成果を踏まえ、同社は「サーキュラーデザイン構想」としてまとめ、⓪ロングライフ①CO2削減量の見える化②循環がしやすい③分解がしやすい④再利用材(再生可能)⑤認証材/推奨材⑥国産材/国内製作⑦製品製材トレーサビリティ-の「8つのポイント」を挙げている。
同社は2026年度内にCDインテリアサービスを開始し、2030年度には家具の買取再販がスタンダート゜になるとしている。開発されたプロトタイプ家具も展示された。
村元氏(左)と見月氏
全て本革製の「CHAIR」(左)とプラスチック由来の「BENCH SOFA」
このカウンターはジーンズ素材だそうだ
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小生は、年に1回のこの同社のセミナー&懇親会を楽しみにしている。何が楽しみかといえば、何といっても〝記者〟というだけでジョサイア・コンドルが設計した「綱町三井倶楽部」にただで入れることだ。ロダンの彫塑、ターナー、ト一マス・ローレンスなどの西洋絵画や日本画、山水画などが至るところに展示されており、懇親会場はマンションの天井高の2倍はありそうな宴会場で、床は無垢材によるヘリンボーン仕上げ、細かな刺繍が施されたカーテンタッセル…これだけで金持ちになったようで、飲む前に酔うことができるからだ。
この日、供された料理の一部を紹介する。食器類はみんなブランド物に違いなく、料理そのものが美しい。記者は、いつものように白ワインを何杯もお替りし、食べ物といえば〝名物〟と言われるビーフカレーとワカサギのカルピオーネ(甘酢漬け)しか食べなかった(供されたワイン、ウイスキーなどの酒類は、この施設を日常使いされている方々が飲まれる酒とは明らかに異なる-これだけが唯一惜しまれる)。
宴もたけなわ、酒が飲めない、記事も〝甘い〟同業の記者は昨年同様、性懲りもなく意地汚くケーキをほおばっていた。勧められるままに1つ食べてみた。まろやかな甘みが口腔を満たした。ケーキが病みつきになるのも分かるような気がしたが、〝辛口記者〟の小生は絶対そのような甘い誘惑には屈しないぞと誓った。
記者の一押しの作者不詳の18世紀の絵画(50号くらいか)
カーテンターセル
供された料理の一部
同業の記者が食べていたデザート
食べ放題のデザート
コルク・食品廃棄物をオーナメントに三菱地所「サーキュラーシティ丸の内」第5弾(2024/12/8)
リサイクル部材だけの「循環する家(House to House)」 2050年に発売積水ハウス(2024/12/8)
「協創」促す機能と美の融合オフィス「出社率高まる」三井デザインテック(2024/11/3)
Well-Being叶える「クロスオーバーデザイン3.0)」発表三井デザインテック(2023/12/7)
吸音効果がある天井材 吹抜け(ボイド) ワイドスパン…伊藤忠都市開発「新川崎」
「クレヴィア新川崎」
伊藤忠都市開発が近く分譲開始する定期借地権付きマンション「クレヴィア新川崎」を見学した。伊藤忠商事グループ大建工業の調湿・消臭・吸音効果のある天井材を全戸のLDKに採用したほか、ZEH-M Oriented、ワイドスパン、ウォールドアと可動収納を組み合わせることで好みの間取りを選べる「間取りのない家」(一部)プランが特徴。
物件は、JR横須賀線/湘南新宿ライン新川崎駅から徒歩9分(JR南武線鹿島田駅から徒歩4分)、川崎市幸区下平間字宮前耕地の商業地域、第一種住居地域に位置する期間72年の定期借地権付き6階建て全74戸。専有面積は53.30~78.54㎡、価格は未定だが、坪単価は300万円台の後半になる模様。竣工予定は2026年2月下旬。施工は大末建設。設計・監理はデベロップデザイン一級建築士事務所、デザイン監修は未来アーキテクツstudio。
現地は、新川崎駅から徒歩9分の表示だが、そのうち5分くらいは雨に濡れないペディストリアンデッキで駅と結ばれている。住戸プランは東向き、南向き、西向きがそれぞれ5スパン。主な基本性能・設備仕様は、内廊下方式、ZEH-M Oriented、二重床・二重天井、リビング天井高2450ミリ、フィオレストーンキッチン天板、ディスポーザー、食洗機、シェアリングサービス、GOKINJOサービス、IoT設備など。
モデルルームプラン
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71㎡の東向き吹抜け付き(ボイド)モデルルームがよくできている。12.0帖のリビングに隣接して多目的に利用できる4.3帖と4.3帖の洋室を提案。洋室には収納を設けず、居室の外に大型のファミリークローゼットを設けている。玄関と玄関を入ったの6.0帖の洋室はそれぞれ外部に面していない吹抜け(ボイド)が設置されており、通風・採光が取れるようになっている。この吹抜け(ボイド)付きは4スパン。
この吹抜け(ボイド)で思い出したのだが、光ファイバーケーブを使って好きなところに自然光を照射することができる太陽光自動集光・伝送装置をどこか採用しないかずっと考えている。工夫によって影が発生しないようにすることができるスグレモノだ。かつて三井不動産レジデンシャルが「目黒」のマンションに採用したことがある。
光は溜めることができないので、雨天や夜間は無理だが、理論的には地球の裏側で集光し、ケーブルで運べば24時間太陽光の恩恵を受けられる。マンションなら北向きでも南向きと同じ価格設定が可能になる。伊藤忠都市開発はやらないか。
調湿・消臭・吸音効果のある天井材も体験した。音がとてもクリアになる。音楽を聴くのにいいかもしれない。
現地
「金利0.01%で55%が預貯金は正気の沙汰じゃない」「不動産は愛」シーラ杉本氏
杉本氏
既報の通り、シーラテクノロジーズ(以下、シーラ)とクミカ(旧リベレステ)は2025年2025年6月1日付で経営統合すると発表した。シーラ取締役会長・杉本宏之氏は発表会でシーラのMISSION「世界中の不動産投資を民主化する」、VISION「愛とテクノロジーで世紀を超えて永続する」、TARGET「不動産資産運用プラットフォームを通じ社会問題解決に挑む」を紹介し、「民主化(非民主的)とは何か」「不動産への愛」とは何かについて、〝記事はラブレター〟〝人生は愛〟がモットーの記者の質問に次のように答えた。
「非民主的というのは、わが国は島国という地政学的な要因と、太平洋戦争以前のABCD包囲網下でなにもかも自分たちで調達しなければならなかったという歴史的な背景による国民性の問題だと思っています。さすがに(個人の金融資産は約2,141兆円)のうち55%が0.01%の金利で貯金を続けているのは、私の個人的な見解では正気の沙汰ではないと。パブル崩壊とリーマン・ショックを経験しているので、不動産に対するアレルギーがあると思うんですが、これは是正しないといけないという使命感を持っています。不動産投資について、一つひとつ丁寧に説明し、理解を求めていくしかないと思っています。非民主的というのは国民性に起因するというのが私の考えです」
(杉本氏のいう通りだと思う。ただ、これは不動産業に限ったことではないが、消費者保護を宅建業法でうたわなければならないのは、かつて消費者を欺く商法があったからだ。さらにまた、おとり広告が後を絶たない現状がある。業界全体がしっかり取り組まないといけない)
「不動産への愛」については、「前回の失敗から学んだのは、自分たちがしっかり手掛けたプロジェクトは一つも失敗事例がなかった一方で、利益を出そう、業績のためにやめにやろうとした仕事はことごとく失敗したということです。その反省点に立って考えたのは、モノのづくりへの愛です。まず、創業者が情熱をもって命をかけて全力で事業に取り組まないとベンチャー企業の成長はない。『利回りくん』などのサービスもそうですが、面白い、楽しいとお客様に触れていただいていると実感している。自信を持って言える。お客様に対してやらなければならないことと、自分たちがやりたいことがようやく一致するようになってきた。ワンルーム事業としてありえない共用部分の充実を図ってきたことが結果につながってきた。創業者と社員のモノづくりへの情熱と愛、これが全てです」
シーラとクミカが経営統合統合後クミカはシーラHDに社名変更/億ション即完(2025/12/2)
会見場(シーラテクノロジーズで)
シーラとクミカが経営統合 統合後クミカはシーラHDに社名変更/億ション即完
クミカ代表取締役社長・飯島弘徳氏(左)とシーラテクノロジーズ取締役会長・杉本宏之氏(シーラテクノロジーズで)
シーラテクノロジーズ(以下、シーラ)とクミカ(旧リベレステ)は12月2日、合同経営戦略発表会を開催し、クミカを完全親会社、シーラを完全子会社化とする株式交換による経営統合を行う予定と発表した。
株式交換により、クミカはシーラの株主に対してシーラの普通株式1株につきクミカ普通株式110株式会社(時価総額ベースではクミカ1:シーラ2.85)を割り当てる。
統合スケジュールは2025年2月14日の臨時株主総会で双方が議決し、2025年5月29日にシーラはNASDAQ市場での上場が廃止となり、株式交換の効力発生日は2025年6月1日。
経営統合後は、クミカは社名をシーラホールディングスに変更し、シーラ取締役会長・杉本宏之氏が代表取締役会長に、シーラ代表取締役社長グループ執行役員COO・湯藤善行氏が代表取締役社長に就任する予定。
経営統合が発表された午前11時すぎ、東証スタンダード市場のクミカの株価が暴騰。午後3時時点で始値340円に対してストップ高の410円(値上がり率20.6%)、NASDAQ市場のシーラは前日比0.060USD高の1.75USD(3.55%高)となっている。
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発表会でシーラ取締役会長・杉本宏之氏は、「不動産投資を取り巻く外部環境は厳しいが、当社は岩盤収益源である賃貸約4,000戸を管理しており、また、当社は売上原価の多くを占めるゼネコン機能を有しており、全物件を自社施工できる体制を構築する。設計、デザイン料などは内製化できている強みがある。2030年5月期には売上高700億円、総資産1,000億円をめざすが、双方の資産は300億円にのぼり、600億円を家賃収入、400億円をデベロップ部門をベースにする。在庫は(賃貸収入を生む)資産。M&Aを強化して大手デベロッパーが手薄な分野で各個撃破する」と語った。
杉本氏は1977年(昭和52年)生まれ。不動産業を営んでいた父親はバブル崩壊(1990年)をきっかけに事業に失敗、同年に母親を亡くす。その後、生活保護を受けながら、風呂がない四畳半のアパートでの生活を余儀なくされなくなったこと、父親との確執、大学進学をあきらめ高校卒業後、専門学校に通い宅建士の資格を得て不動産会社に就職、営業成績はトップクラスだったことなど、少青年期の波乱万丈の人生を赤裸々に明かしている。勤務先の不動産会社では商品企画に疑問を抱き、24歳の2001年12月、投資用ワンルーム事業を中心としたエスグラントコーポレーションを仲間らと設立し、初代社長に就任。同社はリーマン・ショック後の2009年、民事再生法の適用を申請し破綻。
その翌年の2010年11月、シーラテクノロジーズ(旧シーラホールディングス)を創業。不動産投資に特化した自社ブランドマンション「SYFORME」の開発・売買・管理・仲介を展開。2021年6月、不動産クラウドファンディング「利回りくん」のサービスを開始。2023年3月、国内不動産業界としては初となる米国ナスダック市場に上場。
シーラの2024年12月期決算予想は、売上高29,000百万円(前期比27.5%増)、営業利益は1,800百万円(同24.9%増)。
クミカ代表取締役社長・飯島弘徳氏は、「シーラさんとは今後供給する『大宮』『川崎(八丁畷)』での協業は進んでいるが、当社の創業社長が出資法違反で逮捕されて以降は経営基盤が不安定で、経営統合は企業価値を向上させるためには不可欠と判断した」と語った。
クミカの旧社名は1970年創業の河合工務店で、創業地の埼玉県越谷市を中心にマンション事業を展開、温泉付き「ベルドゥムール」で業容を拡大し、1999年には社名を「リベレステ」に変更、2000年には株式を店頭公開した。しかし、2023年、創業社長の河合純二氏が出資法違反の「抱き合わせ融資」で逮捕されるなど厳しい経営環境にあり、2024年6月、「リベレステ」から社名を「クミカ」へ変更、2024年8月、第三者割当増資6億円をシーラテクノロジーズが引き受け、シーラテクノロジーズは同社の30.58%の株式を取得した。
クミカの2024年5月期の売上高は4,765百万円(前期比36.0%減)、営業利益は295百万円(同72.7%減)、経常利益は302百万円(同72.0%減)、純利益は212百万円(同72.2%減)。
経営統合後の単純合算で売上高は337億円、営業利益は19.4億円となり、2026年度は売上高450億円、営業利益23億円を目指す。
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代理店から発表会の案内が届いたとき、気は進まなかった。シーラは投資用マンションやコンパクトマンションを展開している会社のようだが、記者の取材経験からして玉石混交というより〝石〟だらけの市場だと思っているからだ。しかし、クミカは河合工務店時代だから20数年前から温泉付きマンションを何度か取材しており、記者と同い年(確か75歳)の創業社長の河合純二氏が「井戸を2か所も掘ったんだ。温泉付きではない他のマンションにも特別車両で源泉を運ぶ」と得意げに話したのを覚えているので、参加することに決めた。それでも資本・業務提携だけでは前途は多難だろうと思い、記事にもそう書く予定だった。
記者が会場に着いたのは発表会の予定時間11:30の15分くらい前だった。いきなり、司会者から「有益な情報を伝えるため」と11:45分に延期すると知らされた。双方ともいい加減な会社だと正直思った。これでは先が思いやられると。ところが、会見の冒頭、司会者から経営統合発表会と知らされて、その理由がよく分かった。東証などへの報告事務があったからだと判断した。この時点で、前途に光が見えたように思った。経営統合は正解だろうと。
発表会の事前にシーラのホームページを調べた。同社初の富裕層向けマンション「THE SYLA SHIBUYA-TOMIGAYA(ザ・シーラ 渋谷富ヶ谷)」が紹介されていた。住所は代々木公園駅から徒歩5分の渋谷区富ヶ谷一丁目で敷地は188㎡(56坪)しかないが、1フロア1戸で専有面積は90.99㎡、間取り1LDKとあるではないか。物件概要を読んで、坪単価は1,000万円だと予想した。グロスで2億7,572万円だ。これまで低層で1フロア1戸という事例はあったが、高層マンションで1フロア1戸、しかも99㎡のマンションの供給事例はほとんどないはずだ。平屋を積み上げたプランは、ひょっとしたら売れるかもしれないと考えた。
会見後にこれだけは聞こうと杉本氏に尋ねたら「決済は済んでいませんが、8月に分譲開始し、即日完売しましたよ。坪単価平均は900万円」と話した。
また、「投資用・コンパクトマンション市場は厳しい。差別化を図らないと」聞いたら、「当社はこれまでも差別化を図っている。現段階でプランは公表できませんが、クミカさんと共創する『大宮』も『八丁畷』もジムやレストラン、コワーキングスペースなどを予定している」と杉本氏は話した。
シーラはこれまでの投資用・コンパクトマンションデベロッパーと全く違うと確信した。取材前にイメージした杉本氏の〝虚像〟は音を立てて崩れた。杉本氏は〝投資市場の自由化〟〝愛〟についても熱っぽく語った。前途洋々とは言い切れないが、発表会での話を聞きながら、こういう会社を応援したくなった。
「THE SYLA SHIBUYA-TOMIGAYA(ザ・シーラ 渋谷富ヶ谷)」は、東京メトロ千代田線代々木公園駅から徒歩5分、渋谷区富ヶ谷一丁目の近隣商業地域、第1種低層住居専用地域(建ぺい率100%・70%、容積率400%・150%)に位置する敷地面積約188㎡、延床面積約764㎡、8階建て全8戸(販売戸数7戸)。専有面積は90.99㎡。坪単価は900万円。間取り1LDK。設計・監理はエム・エスデザイン、デザイン監修はSTUMP、施工はシーラ。竣工予定は2024年12月下旬。
ウッドデザイン賞2024 地方作品が上位賞独占 「木は熟した」AQ Group宮沢社長
「阿蘇くまもと空港 新旅客ターミナルビル」
日本ウッドデザイン協会(会長:隈研吾氏)の「ウッドデザイン賞2024」の上位賞が発表された。応募総数366点のなかから入賞作226点が先に発表され、最終審査を経て「社会課題の複合的な解決をもたらし、イノベーション・新産業創出に寄与する作品」 として「最優秀賞」4点、「特別賞」3点、「優秀賞」9点、「奨励賞」15点の計31点が選出された。12月4日~6日、「エコプロ2024」(東京ビッグサイト)の特設ステージで「受賞作品展示」が行われる。
ウッドデザイン賞2024審査委員長・赤池学氏は「今年で栄えある10回目の開催となったウッドデザイン賞だが…年々、応募作品のクオリティがあがり、今年も非常に高いレベルでの審査となった。上位賞作品はいずれも、生活者や街づくりの視点とウッドデザインが見事に調和したものであり、『木材を使った先にあるもの』を明確に示してくれている点が特徴的である」と講評している。
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記者に受賞のメールが届いたのは、三菱地所グループの「江北小路」「丸の内北口ビルディング 丸北ラウンジ」「Marunouchi Bloomway」と、三井ホームの「阿蘇くまもと空港 新旅客ターミナルビル」「パークアクシス北千束MOCXION」「学校法人Rugby School Japan」「キャンパスヴィレッジ生田」「KNOCKS ゆめが丘」「在来軸組構法用の構造製材を使用した国産杉ネイルプレートトラスの開発」「『木の空間は身体に良い』を科学的に証明する~木材を用いた空間が睡眠に与える影響について~」、野村不動産の「『森を、つなぐ』東京プロジェクト」「オウカス 世田谷仙川」「野村不動産溜池山王ビル」、AQ Groupの「純木造本社ビル」だった。
このうち、見学した作品は「江北小路」「丸北ラウンジ」「北千束」「生田」「ゆめが丘」「溜池山王」「本社ビル」の7作品で、みんな素晴らしかった。残念ながら上位賞には一つも選ばれなかったが、それだけ上位賞(一つも見ていない)は優れていたのだろう。
お金と時間があったら、この31点のうちいくつかを見学したいのだが、多分無理だろう。都内の作品は「meet tree GINZA」のみだ。ネットで調べたら化粧品とスイーツの店だった。縁がないのであきらめた。
まあ、しかし、地方発の取り組みが上位を独占するというのも面白い。記者は国土強靭化のカギは森林・林業が握っていると思うし、日本再生の、無限の可能性を秘めているような気もする。AQ Group宮沢俊哉社長の「木は熟した」の言葉を借りよう。
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