マンション管理適正評価 最終コーナーへ 「たった1割」「ちょうど1割」達成なるか
左から小佐野氏、落合氏、齋藤氏
左から雑賀氏、鉃谷氏、谷氏
左から大井田氏、間田氏、世古氏
高松氏
マンション管理業協会(理事長:高松茂一・三井不動産レジデンシャルサービス会長)は11月14日、同日行われた臨時総会・理事会後に恒例の記者懇親会を開催し、2024年10月末のマンション管理適正評価制度の登録件数は6,127件(前月比329件増)になったと報告した。以下、全副理事長の所属会社の年度末までの登録目標、登録状況の現状。順不同
小佐野台氏(日本ハウズイング社長) 今月で1,200件になる見込みで、ちょうど9,000組合だから現況は10%超
落合英治氏(大京アステージ会長) 現在13%強
齋藤栄司氏(大和ライフネクスト社長) 現在8.6%、20%目指す
雜賀克英氏(東急コミュニティー会長) 現況11%で、20%を目指す
鉃谷守男氏(近鉄住宅管理取締役相談役) われわれ近畿圏の目標は800件。当社は100件弱で12%。下半期に伸びる傾向にあるので2割達成を目指す
谷信弘氏(長谷工コミュニティ会長兼社長) 現状19%、目標の20%達成は大丈夫
大井田篤彦氏(三菱地所コミュニティ社長) 現状は113件で2.4%。目標は500件で達成の目途はついている
問田和宏氏(野村不動産パートナーズ社長) 現状300件で、全体の13%
世古洋介氏(三井不動産レジデンシャルサービス社長) 理事長に恥かかせられない。目標の20%を達成する
各氏のコメントに対して、高松氏は、「副理事長会社には20%を目標にしていただいている。地方の登録が出遅れており、協会としてもノウハウを提供して支援していく」と語った。同協会は、今年度末(2025年3月)まで1万件(全管理物件の10%)の登録を目標に掲げている。
◇ ◆ ◇
昨年6月に行われた同協会総会後の懇親会で、副理事長の日本ハウズイング社長・小佐野台氏が次のようにあいさつしたのを記者は見逃さなかった。
「一言だけ皆さんにお願いしたい。2年後のマンション適正管理評価件数を1万戸にするには、会員354社の管理件数の1割で達成できます。ちょうど1割、たった1割(爆笑、拍手喝采)で達成できます」と呼び掛けた。『たった1割』『ちょうど1割』を4度連発したように、登録件数1万件は同協会の大きな目標の一つだ」(大変失礼だが、懇親会に参加されていた関係者の方々は、そのころは雑談を交わすのに食事をするのに飲むのに夢中で、会が終わるころには小佐野氏も含めきれいさっぱり忘れていたのではないか)
この適正管理制度に記者は大きな期待をかけている。何よりもいいのは、昔の通信簿のような相対評価ではなく絶対評価だから、頑張れば劣等生もみんな優等生になれることだ。そんなにバードルが高いわけでもない。ぜひとも目標を達成していただきたい。何度も記事にもした(添付した記事参照)。
ところが、同協会が先月、今年9月末まで登録件数は5,798件と発表した段階で、今年度末までの1万戸達成は難しいと読んだ。制度がスタートしたのは2022年の4月だ。2年5か月だから、月にすると約340件だ。残り6か月で目標を達成するには月当たり約840件の登録が必要だ。これは無理だと判断し、「年度末の目標である1万件の達成は微妙な状況」と記事に書いた。「AIによる概要」も記者の記事をそのまま引用していた。
そしてこの日。制度はトラックレースや競馬に例えれば4コーナーを曲がったところだ。戦列はゴールにほど遠く半周遅れ。このままのペースなら、みんなで決めた「たった1割」「ちょうど1割」は達成できない。目標を達成できなかったら、どうして残りの9割以上の管理組合から信頼を得ることができるのか。
そこで、この日の懇親会には高松理事長、全副理事長が出席されていたので、これ幸いと「年を取るごとに意地悪質問が増えているのですが」と断りながら、「小佐野さんの会社と皆さんの会社の『たった1割』『ちょうど1割』の進捗状況についてお聞きしたい」と質問したところ、すべての方から回答を頂いた。冒頭のコメントがそれだ。
もう一度、世古氏のコメントを読んでいただきたい。理事長でもあり会社の会長でもある高松氏に恥をかかせられないと言ったではないか。他の副理事長会社の社員の方々はこの言葉をどう受け止められるか。記者が社員だったら、絶対会長、社長に恥をかかせない。管理組合だけでない、皆さんは自分の会社はもちろん親会社のデベロッパー、マンション購入検討者の信頼を得ることができるかどうかの瀬戸際に立たされていることを認識していただきたい。まだ時間はある。来年の総会後の懇親会では目標達成をみんなで祝福していただきたい。
管理会社による管理方式についても書きたいのだが、機会を改めることにする。〝理事のなり手不足〟を解消する有力な手段だと記者は思うようになった。
マンション管理適正評価制度 9月末登録は5,798件目標の年度末1万件達成は微妙(2024/10/12)
「管理者と管理業者は構造的に利益相反の関係」香川弁護士旭化成不レジ基調講演(8/23)
マンション管理適正評価制度提案済み20% 28%が提案予定なし管理協調査(2024/7/20)
長寿命化促進と管理適正評価制度に力高松理事長マンション管理業協会懇親会(2024/6/12)
マンション管理適正評価登録率トップは遠鉄アシスト 1割超達成は6社(2024/6/12)
大和ライフネクスト第三者管理者方式既存中心に76組合受託 2026年に200組合へ(2024/5/22)
第三者管理者方式徴収額は月額1,000~2,000円/戸マンション管理協(2024/5/16)
「知の結集。やればできる」齊藤審査委員長が激賞管理協バリューアップアワード(2024/2/29)
★5つは21%会員間の競争を促すべきマンション管理協マンション適正評価制度(2023/8/21)
星の数より件数2年後の適正管理評価1万件目指すマンション管理協総会・懇親会(2023/6/14)
登録件数1000件突破 ★5つ最多は伊藤忠アーバンマンション管理適正評価(2023/4/2)
社内起業第一号 シェア型賃貸×コワーキング「TOMORE(トモア)」開発 野村不
「TOMORE品川中延」
野村不動産は11月12日、社内起業第一案件「TOMORE(トモア)」に関するメディア向け事業説明会を開催し、新たに参入する「コリビング賃貸レジデンス(Co-Living Residence)」の第一弾として「TOMORE品川中延」(全135戸)を来年2月に竣工すると発表した。年間5棟の開発を目指す。
「コリビング賃貸レジデンス」は、シェア型賃貸住宅とコワーキングスペースを一体的に開発するもので、「TOMORE(トモア)」は同社の社内起業第一号案件として2019年、同社住宅事業本部賃貸・シニア事業部賃貸住宅事業二課長・黒田翔太氏(36)ら3人が立ち上げた。2021年に実証実験の場として東京・日本橋に「TOMORE zero」を開設し、約3年にわたってノウハウを蓄積してきた。
開発に至った背景には、アフターコロナの在宅勤務やリモートワークの浸透に加え、起業や独立、副業などワークスタイルの急速な多様化、さらにインフレによる家賃などの生活費の高騰があり、「コリビング賃貸」は欧米を中心に増加しており、世界全体の市場規模は2022年の2.0兆円から2028年には9.6兆円に成長すると予測されているという。
一方、わが国の「シェア型賃貸住宅」の供給量は徐々に増加傾向にあるが、小規模で建物の仕様や設備が古くて経年劣化・旧式化が著しく、シャワー・トイレ・洗面台などは共用で、交流体験などは入居者自身に委ねられており、共用部分の快適性は損なわれているなど、場所も予算も商品も不足しているとしている。
このような課題を解決するため、同社は都内に0.5%しか存在しない大型(100 戸超)のシェア型賃貸住宅にフォーカスし、多様なアセットタイプの不動産開発力と約3年間のコワーキング運営実証で培ったコミュニティ運営力により、これまでにない職住一体の「TOMORE(トモア)」を開発した。
主なターゲットは「ライフ」と「ワーク」双方の充実を望む20~30代の社会人で、概ね総戸数100戸超を目安とし、シャワー・トイレ・洗面台などの水回りを備えた居室空間と、共用のリビングスペース、コワーキングスペースを併設。シェアランドリー、シェアライブラリーのほか、同社グループの宅配型収納サービス「ワンダースタイル」、スポーツクラブ「メガロス」、多拠点型シェアオフィス「H1T」などの割安サービスなども行う。年間5棟の開発が当面の目標。
一般的な1K・ワンルーム賃貸(25㎡を想定)より居住面積は狭くなるが、スケールメリットを生かし賃料は同額かそれ以下に抑え、仲介手数料、敷金、礼金はゼロとする。専属運営スタッフとなる「コミュニティオーガナイザー」が日中滞在し、入居者同士の交流や活動機会を支援するのも大きな特徴。入居者の友人などが宿泊することも制限を設けない。起業に当たって居室や共用部分を事務所として登記するかどうかはニーズを把握しながら検討していく。
事業説明会で黒田氏は「社内起業を立ち上げてから5年。様々な扉をこじ開けて第一号物件を供給するに至った。わくわくドキドキしている。物件ホームページを立ち上げてから反響は約1,700件に達している。日本の市場を開拓し、駆け抜けていきたい。人生を明るく、楽しく、豊かにしたい」と語った。
また、「TOMORE zero」でコミュニティ運営に携わってきたコミュニティオーガナイザーの嶋田匠氏(31)は、「呼称はマネジメント、マネージャーもあるが、居住者の交流を促し応援していく役割からして、この呼称がぴったり」と話した。
「TOMORE品川中延」は、都営浅草線中延駅から徒歩1分、品川区豊町6丁目に位置する敷地面積約577㎡、11階建て延床面積約2,424㎡の全135室。専用面積12.00~15.01㎡。竣工予定は2025年2月。設計はフォルム建築計画研究所、施工は野村建設工業、デザイン監修はUDS。
「コリビングスペース」
「コワーキングスペース」
黒田氏(左)と嶋田氏
◇ ◆ ◇
黒田氏がプレゼンを始めてからほんの数秒間だった。「5年間」「壁」「こじ開けた」「ワクワクドキドキ」などのフレーズを聞いて、天照大御神が天の岩戸をこじ開けたような気分になり、〝ガラパゴス化〟している賃貸市場に風穴を開けるのではないかと期待で胸が膨らんだ。
約20分間のプレゼンが終わるころには期待は確信に変わった。これまで賃貸マンション、コワーキング施設、寮・社宅、学生寮などを結構取材してきたが、今回の「コリビング賃貸」(建基法では寄宿舎)は似ているようで全然似ていない。「品川中延」の敷地規模(約577㎡)で「コリビングスペース」が約100㎡、「コワーキングスペース」が約90㎡もあるなど信じられない。
この日配布されたプレス・リリースには、黒田氏は36歳で、2010年に同社に入社してから「国内外の不動産ファンド商品の立ち上げ・運用業務に約10年従事」とあり、「自分の意思で、会社を動かし、社会を変えたい」というのが起業のきっかけになったと記されていた。
これまで40年以上にわたり同社の〝プラウド〟などを取材してきたが、黒田氏は住宅事業担当とタイプが異なる。先月行われた三菱地所の「フレキシブル賃貸事業」と同じように社内外に新しい風を巻き起こすのではないか。
居室
間取り(13㎡)
フレキシブル住宅市場現在3~4%⇒2030年には15%へ三菱地所イベント(2024/10/4)
ミレニアル&Z世代の心つかむか三井不レジ単身女性向けリノベ賃貸「KORAKUEN」(2024/3/8)
3項道路を知った賃料は1.8万円/坪サブスクの時代へコスモスイニシア「内神田」(2022/10/3)
感動的な天井高2730ミリの「MIデッキ」職住一体型SOHO 三菱地所レジ「大手町」(2022/6/15)
充実した共用部浴室にはタオル掛け新たな賃貸マンション提案三井不レジ「錦糸町」
レンタブル比67%わが国初の社会人・学生・賃貸の複合長谷工「コムレジ赤羽」(2022/3/2)
ブルースタジオ築85年のシェアハウス 国交省「寄宿舎」に該当せず(2014/5/23)
イヌイ倉庫 「企業寮をシェアする」新発想の「月島荘」が竣工(2013/9/29)
首都圏中古マンション 単価上昇率は6か月連続一けた台 東日本レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は11月11日、首都圏の2024年10月の不動産流通市場動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は3,092件(前年同月比5.9%減)、坪単価は248.0万円(同0.8%増)、価格は4,739万円(同0.5%減)、専有面積は63.05㎡(同1.3%減)となった。
成約件数は4か月連続で前年同月を下回り、成約単価は前年比ほぼ横ばいながら20年5月から54か月連続で前年同月を上回ったが、上昇率は6か月連続して前年同月比10%を下回った。
中古戸建ての成約件数は1,174件(同3.8%減)、価格は3,776万円(同4.3%減)、土地面積は138.04㎡(同0.7%減)、建物面積は103.11㎡(同1.3%減)となった。
成約件数は5か月ぶりに前年同月を下回り、成約価格は9か月ぶりに前年同月を下回った。
台東区「三島神社」と一体建て替え定借マンション 三井不動産レジデンシャル
「パークホームズ入谷」
三井不動産レジデンシャルは11月11日、東京都台東区の「三島神社」の建て替えマンション「パークホームズ入谷」のホームページを同日に開設したと発表した。
物件は、東京メトロ日比谷線入谷駅から徒歩6分、台東区下谷三丁目に位置する14階建て全37戸(一般販売対象住戸34戸)。専有面積は51.51~72.37㎡、期間72年の定期借地権付き。竣工予定は2026年7月下旬。
「三島神社」の社殿の歴史や記憶を継承するため、エントランスホールは神社の鳥居を想起させるような連続した木調の空間とし、アロマを設置することで落ち着ける空間を演出するほか、エレベーターホールには地窓を設置し、帰宅時に坪庭を眺めながらエレベーターに乗り込むことができるようにする。また、瓦は外構の見切り材として、灯籠は置き型照明として、床柱はオートロック操作盤設置台とする。
同社の神社一体開発マンションとしては2010年竣工の「パークコート神楽坂」(赤城神社再生プロジェクト)、2014年竣工の「パークタワー西新宿エムズポート」(成子天神社再整備プロジェクト)についで3物件目。
完成予想図
従前の三島神社
エントランスホール
◇ ◆ ◇
現地を見ていないのでうかつなことは言えないが、赤城神社の「神楽坂」も成子天神社の「西新宿」も見学取材している。最高に素晴らしかった。坪単価にして50万円の価値はあると思う。坪単価は400万円台の前半になるのではないか。
三井不レジ 神社との一体整備 第2弾「パークタワー西新宿エムズポート」(2012/9/20)
「神楽坂『赤城の杜』プロジェクト」完成 三井不レジデンシャル(2010/8/20)
大和ライフネクスト 。“再配達ゼロ”目指す「マンション内配送サービス」実証実験
イメージ図
大和ハウスグループの大和ライフネクストは11月11日、物流業界のラストワンマイル問題の解決とマンション居住者の利便性向上を目指す新たな取り組み「マンション内配送サービス」の実証実験を同日から都内のマンションで実施すると発表した。 “再配達ゼロ”を目指すもので、対象は都内中央区の約200戸のマンションで、実証実験には日本郵便、ヤマト運輸、佐川急便が参画する。実験は来年1月末まで。
配達の流れは、①マンション管理員が宅配会社(日本郵便、ヤマト運輸、佐川急便)の荷物を全住戸分一括で受け取る②荷物はマンション内に設置する専用倉庫に納品される③管理員が、宅配会社に代わって各住戸に荷物を配達する。居住者が不在のため玄関先で渡せなかった荷物は、マンションごとの管理ルール内で宅配ボックス・置き配を積極的に活用する④それでも配達できなかった荷物は、管理事務室および専用倉庫で一時的に保管する。
◇ ◆ ◇
結構な取り組みだが、課題もある。マンションデベロッパー各社は、玄関前宅配ボックスを設置するなどラストワンマイル問題の解決に取れ組んでいるが、問題は冷蔵・冷凍・代引き・郵便物(書留含む)・貴重品便などの荷物は除外されることだ。大型冷凍・冷蔵庫を設ければ解決するのだろうが、コストはいくらかかるのか。
浮間舟渡の工場跡地で598戸 首都圏でしっかり地歩築けるか 阪急阪神不&西鉄
「ジオ板橋浮間舟渡」
阪急阪神不動産(事業比率40%)、西日本鉄道(同40%)、総合地所(同20%)が12月上旬に分譲する「ジオ板橋浮間舟渡」を見学した。同じ工業地域立地で早期完売した隣駅・北赤羽の「ヴェレーナグラン北赤羽」(318戸)同様、需要を喚起できるか。
物件は、JR埼京線浮間舟渡駅から徒歩5~6分、板橋区舟渡1丁目の工業地域(建ぺい率47.45%、容積率199.70%)に位置する敷地面積約21,627㎡、7階建て全598戸。第1期1次(戸数未定)の専有面積は56.16~83.85㎡、価格は未定。竣工予定は2026年1月下旬。設計・施工・監理は長谷工コーポレーション。
これまでのエントリー数は1,800件、モデルルーム来場者は1か月半で400件。
現地は工場跡地で、敷地南西側に新河岸川が流れ、川向うにはこんもりとした森が広がっている。建物は新河岸川に面したB・C棟を中心に9棟構成。ZEH-M Oriented採用予定で緑地率は18%。
主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2500ミリ、サッシ高2200ミリ(一部除く)、ディスポーザー、食洗機、浴室タオル掛け2か所など。平均専有面積は69㎡、戸別宅配ボックス付きなど。このほか、アースラウンジ(We Proudly Serve Starbucks®コーヒープログラムを首都圏分譲マンションとして初めて導入)※1
、ゲストルーム2室、スタディコーナー、児童福祉施設、木造共用棟、プレイコーナーなど。
阪急阪神不動産プロジェクト担当・梨木氏は「価格は未定ですが、坪単価は360万円を目指す。70㎡前後が中心ですので、グロスは8,000万円超となりますが、今後、『赤羽』エリアは坪500万円超の計画が見込まれている。本物件は、大規模ならではの充実した共用施設や浮間公園に近い住環境をアピールしたい」と話している。
模型
モデルルーム(多目的ルーム)
モデルルーム(マルチスペース)
モデルルーム
◇ ◆ ◇
モデルルームは72㎡のプランで、玄関を入って右側の洋室(5帖大)を多目的に利用できる部屋とし、バルコニー側の洋室(6.9帖大)の一部(1.9帖大)をマルチスペースとしているのがいい。オプションだが、長谷工の「アイセルコ」が利用できるので、住宅ローンに取り込めば月額数百円程度の負担で採用できる。また、展示している観葉植物もほとんどが本物で拘りを感じる。浴室タオル掛けも2か所と配慮されている。
予定単価は高いような気もするが(「北赤羽」は坪320万円)、電車で5分の「赤羽」や東上線の「大山」は坪500万円をはるかに突破している。11万㎡の「浮間公園」へ徒歩6~8分、様々なスポーツ施設が揃う「新河岸東公園」へ徒歩5~6分、さらには荒川の河川敷も徒歩圏だ。物件に「TOKYO EARTH PROJECT」となづけているように、これらの生活環境をアピールできるかが成否のカギを握るのではないか。
今後、同社は首都圏マンション事業を強化し、供給ベスト10入りを目指すという。西鉄もそうだが、電鉄(系)デベロッパーが首都圏でしっかりした地歩を築けるかどうか、今回の物件は試金石となるはずだ。
舟渡公園
立地、仕様、離れ、デザインなど抜群 単価は坪500万円弱 小田急不「調布」
「リーフィアレジデンス調布小島町」
小田急不動産が分譲中のマンション「リーフィアレジデンス調布小島町」を見学した。駅から徒歩5分と近いにも関わらず、商業エリアから一歩入った住居系エリアで、ZEH-M Oriented認定、専有面積平均75㎡超、内廊下方式、「ONEX」(離れ)付きなど商品企画が秀逸。デザインも美しい。坪単価予想(というよりは願望)は外したが、とてもいいマンションだ。
物件は、京王線調布駅から徒歩5分、調布市小島町二丁目の第一種住居地域(建ぺい率70%、容積率200%)に位置する敷地面積約1,951㎡、地上7階建て全50戸。専有面積は26.10~128.80㎡(6~7階住戸5戸は別に5.40~6.06㎡のONEX付き)、現在先着順で分譲中の住戸(6戸)の価格は8,278万円~14,008万円(専有面積66.69~81.51㎡)。坪単価は500万円弱。建物は2024年6月竣工済。設計デザイン監修は西山建築デザイン事務所(西山広朗氏)、実施設計・施工は風越建設。
現地は、駅から遊歩道・大規模商業施設を抜けた住居系エリア(車道はあるが信号機はなし)。従前敷地は社宅。敷地西側は道路を隔てて第一種低層住居専用地域。建物は三方道路に接道。ZEH-M Oriented認定、内廊下方式を採用。住戸は東向きと西向きがほぼ半々。その他の主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2450ミリ(一部除く)、御影石キッチン天板・洗面カウンター天板、食洗機、サッシ高2300ミリ、Low-E複合ガラス、6~7階の5住戸は食器棚標準仕様・5.40~6.06㎡のONEX(離れ)付き、物干しポール、全戸玄関宅配BOX・トランクルーム付きなど。
3月上旬からエントリーを受け付けており、これまでの反響数は約2,100件、7月下旬からのモデルルーム来場者は約280件。10月19日に供給した1期30戸のうち26戸が申し込み済み。申込者の約半数は地元居住者。ほかは世田谷区など中広域にわたっているが、隣接市の府中市は少ないという。
同社住宅事業本部住宅販売部マンション販売グループリーダー・清水徹氏は「用地を取得した段階から〝この価格で売れるのか〟という社内の声もあったが、ピン立地でここしかない条件を生かすよう6~7階をプレミアム住戸として仕様レベルを上げ100㎡超の専有部に『離れ』付きとし、物件全体で75㎡超の専有面積を確保し、1階の1住戸は専用利用権付き平置き駐車場とするなどプランニングには力を入れました。このような点がお客さまにご評価いただいています」と語った。
エントランス
モデルルーム
ドアノブも本物の木
写真左のゲートがあるのが専用カーポート付きの住戸、写真右は屋内から専用駐車場を写す
◇ ◆ ◇
調布市(布田駅)は、50年近く前に結婚して住んだ街だ。今はマンションなどがたくさん建っているが、当時は、畑などがかなり残っていた。住むならここだと思っていたが、バブルが発生し、駅近マンションは坪500万円を突破して、あきらめざるを得なかった。
今回のマンションは、2012年に京王線柴崎駅〜西調布駅、相模原線調布駅〜京王多摩川駅が地下化され、遊歩道などが整備されたことにより、住宅地として注目されるようになった、住宅地としては調布の一等地だと思う。
物件特性は上段で紹介したので省くが、御影石、タイルを多用し水平・垂直ライン、分節を強調したデザインがとにかく美しい。監修した西山広朗氏の名前はどこかで聞いたような気がしたので、「RBAこだわり記事」で検索した。3件がヒットした。一つは同社の「「リーフィアレジデンス上原」で、あとの2つはいずれもモリモトの「浜田山」と「目黒」のマンションだった。近くには大規模商業施設だけでなく市役所、図書館、病院、文化会館などの公共施設も揃っている。
現地を今春に見た段階で、坪単価は400万円台の後半どころか、500万円超ではないかと予想した(というより、500万円を突破している城北の北千住、大山などには絶対負けてほしくないという願望)。若干外したが、それでも予想は間違っていないと思う。
京王線はバブルがはじけてからこの40年近く、他の沿線と比較して割負けしているとずっと書いてきた。街のポテンシャルは負けていないはずなのに、小田急線より2~3割、あるいはそれ以上安い。
例えば、坪単価は730万円くらいで瞬く間に売れた三井不動産レジデンシャル「パークホームズ代々木西原」(69戸)。物件名にそうなっているように、小田急線(千代田線)代々木上原駅から徒歩9分の渋谷区西原に位置しているのだが(「代々木西原」の地名はない)、最寄り駅は京王新線幡ヶ谷駅で徒歩5分だ。しかも、代々木上原駅からだと坂がきついが、幡ヶ谷駅からだとフラットで緑道も利用できる。物件名を「代々木西原」でなく「幡ヶ谷」にしたら、この単価をつけられるかどうかは記者も自信がないが…。
「調布」とほぼ同じ、小田急線新宿駅から15分圏内の大和ハウス工業「プレミスト世田谷梅丘」(29戸)は、各駅停車の梅ヶ丘駅から徒歩9分だが、坪単価は630万円だ。こちらもわざわざ「世田谷」をつけている。
もう一つ。わが国初の全棟「ZEH-M」と全住戸「ZEH」マンション大京「ザ・ライオンズ世田谷八幡山」。各駅停車の京王線八幡山駅から徒歩3分の第一種低層住居専用地域立地で、坪単価は540万円台。やはり物件名に「世田谷」がついている。
駅名の看板が外されたり、余計なものがつけられたりする。「調布」も「八幡山」も梅ヶ丘駅とほとんど同じ距離圏なのに坪単価は100万円以上安い。どうしてこのような屈辱的な扱いを受けるのか、京王電鉄も自治体も考えないといけない。
だが、しかし、京王線は笹塚駅~仙川駅間約7.2kmの区間を高架化し、25か所の踏切を除却し、代田橋・明大前・下高井戸・桜上水・上北沢・芦花公園・千歳烏山は高架駅となる工事を進めている。いつ全体が完成するかわからないが、利便性は飛躍的に高まるはずだ。
隣接の遊歩道から写す
現地
エントランス
外観(水平、垂直、分節デザインが美しい)
わが国初の全棟「ZEH-M」全戸「ZEH」駅徒歩3分の1低層大京「八幡山」(2024/10/4)
代々木上原の1低層デザイン性高く借景見事小田急不・大和ハ・地所レジ「上原」(2022/3/11)
大激戦の「調布」割安単価で他社を圧倒三井不レジ名士の屋敷跡地は坪340万円(2011/5/11)
曰く言い難し三条実美の邸宅跡地価格はいくらかモリモト「ディアナコート目黒」(2018/3/2)
これを見よ比肩するマンションなしモリモト「浜田山」82016/3/2)
呉越同舟 三井不レジ・野村不・三菱地所レジ 674戸の定借「市川」分譲開始
「リーフシティ市川 ザ・タワー」
三井不動産レジデンシャル、野村不動産、三菱地所レジデンスは10月25日、京葉ガスが進める複合開発「リーフシティ市川」内で建設中の期間70年の定期借地権付き免震マンション「リーフシティ市川 ザ・タワー」674戸の第一期販売を11月2日に開始すると発表した。これまで約2,500組超の反響と500組超のモデルルーム来場者がある。
「リーフシティ市川」は、約3.7haの京葉ガス市川工場跡地計画のエリア愛称で、分譲マンションのほか共同住宅(賃貸)、シニア住宅、保育施設、地域貢献施設、レストルーム、中央広場、運動場などが計画されている。店舗(コンビニ)は2023年12月に開業済み。
マンションには、京葉ガス供給エリアでは初採用となる「カーボンオフセット都市ガス」のほか、「ZEH-M Oriented」の取得、「再生可能エネルギー一括受電」などを採用する。
物件は、総武本線市川駅から徒歩7分、市川市市川南2丁目の工業地域に位置する敷地面積約12,200㎡、29階建て全674戸。第1期専有面積は42.70~129.90㎡、予定価格は3,800万円台~19,600万円台(最多価格帯7,700万円台)。竣工予定は2026年12月下旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。
◇ ◆ ◇
記者は、千葉県内の好きな住宅地としては、計画的に整備された京葉線沿線以外では総武線の市川と習志野を真っ先にあげる。緑が多いからだ。現地はおおよその見当はつくが、見ていないのでなんとも評価できない。工業地域というのが気がかりではあるが、規模が約3.7haというから住環境は整備されるのだろう。
肝心の坪単価はわからないが、最多価格帯の専有面積を70~73㎡だと仮定すると、350万円前後になるはずだ。船橋駅南口の「西武船橋店」跡地の再開発マンションは坪単価500万円とも聞いているので、市川駅から徒歩7分の定借で坪350万前後というのは納得だ。
さて、これが売れるかどうか。千葉県居住者は都内に近い市川で7,700万円台(70~73㎡として)は魅力だろうが、都内居住者は江戸川を超えるのは抵抗感を感じるかもしれない。総武線沿線ではいま「駅近」の再開発マンションが猛烈な勢いで供給されているからだ。ここ数年間の総武線(都内)で分譲された再開発物件と、今後分譲される予定の主な物件を紹介する。
・野村不動産他「プラウドタワー小岩ファースト」(233戸)2022年竣工
・住友不動産「シティテラス新小岩」(268戸)2022年竣工
・野村不動産「プラウドタワー亀戸クロス」(934戸)2022年竣工
・野村不・阪急阪神不「プラウドタワー平井」(374戸)2024年11月竣工予定
・野村不動産他「プラウドタワー小岩フロント」(367戸)2025年11月竣工予定
・三井不レジ他「パークシティ小岩ザ・タワー」(731戸)2027年1月竣工予定
・日鉄興和不他「南小岩七丁目駅前地区」(約1,000戸)2029年度竣工予定
・三井不レジ他「「新小岩駅南口地区」(543戸)2032年竣工予定
以上、8物件でトータルすると4,450戸(販売対象外住戸含む)だ。このほかの物件も供給されているので、その数は数千戸に上るとみられる。
価格上昇も著しく、「プラウドタワー平井」までは坪400万円以下だったのが、「パークシティ小岩ザ・タワー」も「プラウドタワー小岩フロント」も坪400万円をはるかに突破している。20坪で8,000万円台の半ばか後半だ。(駅から距離のある物件は坪300万円以下もあるようだが)
ただ、この単価でも、他の沿線、例えば北千住、赤羽、大山などの城北エリアは坪500万円を突破しているので、これらと比較すれば割安感がある。
面白いのはこの3社の組み合わせだ。三井レジと野村不は総武線(都内側)で大激戦を展開しているのに、江戸川を渡ったら手を組むとは…経営者は何を考えているのかさっぱりわからない。三井レジ・嘉村社長、野村不・松尾社長、三菱地所レジ・宮島社長はほんの数か月しか違わない同じ1960年生まれの同学年だ。呉越同舟と言ったら怒られるか。
「リーフシティ市川」
中央広場
坪単価399万円圧倒的な割安感あり野村不・阪急阪神不「平井」最終分譲へ(2024/2/10)
総武線(亀戸~小岩)の開発に拍車再開発中心に5000戸超「亀戸」の上値圧力も(2021/9/1)
わが故郷・伊勢市駅前の再開発マンション 坪単価は200万円弱か 長谷工不
「ブランシエラ伊勢市駅前」
長谷工不動産は10月20日、わが故郷・伊勢市の一等地のマンション「ブランシエラ伊勢市駅前」第1期30戸の抽選販売を開始した。
物件は、JR・近鉄山田線伊勢市駅から徒歩3分、伊勢市宮後一丁目の商業地域(建ぺい率80%、容積率600%)に位置する14階建て全102戸(一般62戸、非分譲40戸)。第1期(30戸)の専有面積は64.99~95.72㎡、価格は3,560万~5,950万円(最多価格帯4,100万円台)。竣工予定は2026年1月。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。
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現地はよく知っている。従前は三重交通のバスターミナル・三交百貨店で、百貨店は2001年5月に閉店となった。
全体敷地はA・B・C地区に分かれており、A地区は三交イン伊勢市駅前「本館」(129室)として2016年に、B地区は三交イン伊勢市駅前「別館」(37室)などとして2023年にそれぞれ開業している。
今回のマンションは「伊勢市駅前C地区市街地再開発事業」(0.3ha)として令和2年に都市計画決定されている。
百貨店が閉店となってからほぼ四半世紀。ここまで再開発計画がまとまらなかったのは、地権者の調整がうまくいかなかったからだと聞いている。一般分譲の約半数が供給されたのだから何よりだ。坪単価は200万円を割っており、ぎりぎりの採算ラインか。
令和6年地価公示で、伊勢市の住宅地価格は平成26年度比で18.0%下落しており、人口10万人以上の244市のうちワーストの桐生市の19.0%下落に次いでワースト2にランクされており、隣接の松阪市も17.3%下落のワースト3に入っている。
令和6年地価公示バブル期の〝半値戻し〟上昇20市のみ福岡県4市がベスト10入り(2024/4/6)
またショック全国10万人以上259市の地価公示下落率最大はわが故郷・伊勢市(2023/3/25)
記者予想「坪単価は300万円超」的中 相鉄不「ゆめが丘」 第1期103戸を供給
相鉄不動産は先に全335戸の「グレーシアウエリス横浜ゆめが丘」のうち第1期として103戸を供給し好評を得たと発表したが、坪単価は315万円程度とみられ、「坪300万円超」とした記者予想が的中した模様だ。
同社は、3月の同物件ウェブサイトの公開以来2,700件超の問い合わせがあり、相鉄線沿線や神奈川県内を中心に、東京都23区も含め幅広い年代の600件以上の来場があったとし、来場者の評価ポイントは①駅徒歩1分の立地(84%)②シネコン併設、約130店舗が集う大規模複合商業施設「ゆめが丘ソラトス」近接(55%)③横浜市営地下鉄ブルーライン下飯田駅徒歩5分。2路線利用可能(48%)④ゆめが丘総合病院、クリニックモール新設など、安心の医療サポート環境(42%)-などとリリースした。
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同社のプレス・リリースでは価格について触れていないが、12月以降に販売する予定の住戸(9戸)の専有面積は55.80~81.62㎡で、予定価格は5,100万円台~7,900万円台としている。
これから推測すると、坪単価は302~332万円で、平均値は315万円くらいになる模様で、記者が7月にモデルルームを見学した際の記事で「坪300万円を突破する可能性が高いと見た」と書いたのが的中した。
比較する物件がほとんどなかっただけに、的中はとてもうれしい。「駅1分」「大規模商業施設近接」の威力をまざまざと示した。
坪300万円超か駅前&すべて完結する「ゆめが丘ソラスト」近接相鉄不「ゆめが丘」(2024/7/22)