「志茂」「多摩センター」は〝割安〟か 東京カンテイ「2020年 マンションPER」
東京カンテイが5月6日発表した「2020年 マンションPER」(首都圏版)について記者なりの感想を紹介する。
「PER」とは、株の世界ではよく用いられる、株価が1株当たり利益の何倍まで買われているかを示す株価収益率(Price Earnings Ratio)のことで、それを新築マンションに当てはめ、マンション価格が同じ駅圏のマンション賃料の何年分に該当するかを求めた数値だ。
レポートによると、2020年に分譲されたマンションの平均価格は7,743万円(70㎡換算=坪単価365万円)で、分譲マンションの平均賃料256,601円(同=坪賃料12,097円)の24.69(対象駅圏155駅)と高い水準を示した。首都圏平均よりマンションPERが高い駅圏は83駅に達しており、逆にPERが低い比較的割安であることを示す駅圏は周辺3県に点在する程度としている。
もっともPERが高かったのは「学芸大学」の36.00。マンション価格は12,402万円(坪単価585万円)、マンション賃料は287,113円(坪賃料13,535円)だった。以下、「成城学園前」「飯田橋」「自由が丘」「荻窪」「外苑前」「参宮橋」「代々木上原」「神谷町」「東池袋」の順で「割高な駅」としている。
一方で、もっともPERの低かったのは「志茂」の16.96で、マンション価格は5,181万円(坪単価244万円)、マンション賃料は254,616円(坪賃料12,003円)。以下、「八王子」「三郷中央」「稲毛海岸」「有明テニスの森」「国分寺」「相模大野」「戸塚」「千葉」「八千代緑が丘」の順で「割安な駅」となっている。
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東京カンテイの調査能力には脱帽するほかない。分譲マンションの賃料も把握しているので、このようなレポートが出せる。「割高な駅」「割安な駅」は思い当たる物件もあり、なるほどと思う。
実は記者も、もうずいぶん昔だが、分譲マンションの坪単価を駅圏ごとに定点観測したことがある。供給物件の多寡、駅からの距離、ターゲットなどによって変動するのは難点だが、おおよその相場を把握することができ、空白区などは〝穴場〟と考えていたものだ。
ただ、マンションは基本的には投資商品ではないので、賃料と比較してPERをはじき出すようなことは考えも及ばなかったし、分譲マンションを賃貸に回した場合いくらの賃料になるかなど調べようもなかった。
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「割高な駅」については、23区では軒並み坪単価は300万円以上となっているので高い数値を示すのは当然だ。ただ、同一駅圏の物件を比較し、「割高」「割安」とするのは比較的容易だが、駅圏そのものを「割高な駅」「割安な駅」とするのはいかがなものか。アルヒの「住みやすい街大賞」に「川口」が選ばれているのと同様だ。何を重視するかで街の評価は一変するはずで、「割高」「割安」を評価するのは投資家であり、ユーザーだ。価格は、物件数が多ければ平準化されるが、少ない場合はその物件特性がそのまま反映されることになり、賃料は面積が広くなるほど坪賃料は低くなるので、単純比較もできないのではないか。
例えば、レポートでもっとも「割安な駅」とされている南北線「志茂」。駅周辺の1丁目や、赤羽駅に近い2丁目などはまずまずの住宅街を形成しているが、全体として道路は狭く、木密地域が多いエリアだ。4丁目、5丁目は工業系エリアで生活利便施設も乏しい。
レポートの対象になっているのは、工場跡地の三菱地所他「オイコス赤羽志茂」や道路沿いの物件だろう。坪単価は230~270万円くらいか。安いといえば安いが、周辺の住環境はいいとは言えず、北本通りは交通量が多く騒音も相当だ。小生は評価を保留する。
2018年~2019年の2年間もっともPERが低かった、わが京王相模原線「京王多摩センター」についても触れざるを得ない。
PERは15.96だったので「志茂」より低い。「徒歩15分の大規模マンショの影響から価格の割安感が実態よりも過剰に示されている状況が依然として続いている」とレポートにはある。
「徒歩15分の大規模マンション」はタカラレーベン「レーベン多摩センターBeaut」(240戸)だ。坪単価は170万円くらいだった。2018年に完成し、2020年春ころまでに完売している。
物件を観ていない(取材を申し込んだが断られた)ので何とも言えないが、住環境は申し分ない。この物件の南側に、今から15年前に分譲された駅徒歩10分の扶桑レクセル「レクセル多摩センターマークレジデンス」(159戸)が建っている。記者は当時「驚きの〝旧価格〟」という見出し記事を書いた。
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読者の皆さんは、この京王多摩センター駅圏のPERをどう思われるか。やはり株式相場でよく用いられている、同じ業種の銘柄と比較して割安を示す〝割り負け〟を借りれば、信じられないほど割り負けしていると記者は思う。タカラレーベンの物件は、多摩市ではなく八王子市が所在地で、駅から遠く坂が相当きついのでこのような単価になっているのだが、そうした特殊要因を考慮しても安すぎる。これまでも何度も書いたが、デベロッパーは多摩センターの魅力をきちんと伝えきれていないと八つ当たりしたくなる。
多摩センターの魅力は、何といっても街並みが美しいことだ。駅から徒歩20分圏は完全歩者分離になっており、子どもが交通事故に遭う確率はほとんどゼロだ。緑のネットワークは隣駅の永山駅までつながっている。こんな街は全国どこを探しても見当たらないはずだ。
街のポテンシャルを計る重要な指標と考える「ホテル・百貨店(大型商業施設)・文化の香り」も揃っている。
駅を降りてから「パルテノン多摩」(現在は改装中)までの約400mの舗道はレンガタイル敷で、幅員は50mもある。舗道の両サイドにはクスノキの巨木が数十本植えられており、アダプト制度による恵泉女学園大学などの花壇が目を楽しませてくれる。その先には多摩中央公園、多摩市立グリーンライブセンターがあり、その緑量の多さに圧倒されるはずだ。特定外来種のオオキンケイギクが大繁殖しているのは気掛かりだが、絶滅危惧種のキンラン、ギンランも季節になると可憐な花を咲かせる。駅前の京王プラザホテルの和食「あしび」は安くておいしく、多摩市限定販売の日本酒「原峰のいずみ」も飲める。
名誉か不名誉なのかわからないが、こんなわが多摩センターは2020年の「マンションPER」から消えた。昨年は駅から徒歩4分の山田建設「ミオカステーロ多摩センター」(26戸)が分譲されている。坪単価は260万円くらいのはずだ。そこで、東京カンテイに試算してもらった。
同社市場調査部主任研究員・高橋雅之氏は「ミオカステーロ多摩センター」について、「まだ登録されていないため、精緻な数値は算出できませんが、当該駅の同じ駅勢圏での賃料相場は概ね18.5万円/70㎡ですので、マンションPERはだいたい23.85くらいとなります。今の価格高騰局面が始まる以前の2013年当時のマンションPERは20~22程度で、それに比べればだいぶ割高感が増してきてはいますが、2020年の首都圏での平均値(24.69)を下回っていますし、東京都下でも22以上や24以上を示す駅は珍しくなくなってきていますので、今の市況の下では賃料見合いで妥当な価格かと思われます」と答えてくれた。
なるほど。しかし、多摩センター駅圏にはもうマンションの開発余地などほとんどない。「割安な駅」「割高な駅」にはランクされないはずだ。
ついでに京王線の割り負けについてもう一つ。多摩ニュータウンと街づくりがよく似ている港北ニュータウンの積水ハウスのZEHマンション「センター北」(45戸)は坪単価334万円で人気になっている。一方で、免震でZEHの東京建物他「ブリリアタワー聖蹟桜ヶ丘 ブルーミングレジデンス」(520戸)は人気にはなっているが、坪単価は270万円だ。新宿から15分の調布でさえ坪単価は300万円台の半ばが壁になっている。
皆さんはポテンシャルの違いと一笑に付すかもしれないが、どうしてこれほどの差がつくのか、記者はさっぱりわからない。これから書く、西新井駅から徒歩14分で、坪単価210万円の大和地所レジデンス「ヴェレーナシティ西新井」(118戸)は、分譲開始5か月で約半分が売れている。
爛漫の春 多摩川のそばZEH&免震 東京建物他「聖蹟桜ヶ丘」第1期は170戸(2021/4/4)
驚天動地 首都圏着工を上回る新規戸建て分譲 成約戸数!スタイルアクト調査(2021/2/19)
天井高3.8m ロフト付き「七夕カップルの愛のある家庭内週末婚」公開 伊藤忠都市
「クレヴィアリグゼ門前仲町」
伊藤忠都市開発は4月27日、結婚情報サービス「ゼクシィ」編集部と共同で考案し、新築賃貸マンション「クレヴィアリグゼ門前仲町」(2020年2月竣工)の1室で実物件化した「理想の新婚部屋 七夕カップルの愛ある家庭内週末婚」をメディアに公開した。
「理想の新婚部屋」は、イマドキ新婚夫婦の理想や願望を叶える新発想の間取りをプロジェクトメンバーが考案したもので、「七夕カップル」と「猫っぽカップルの気まま暮らし」「恋人夫婦のルームロマンス」「カジュアル夫婦のお家フェス」の4タイプを開発した。
「七夕」は、生活リズムが異なる新婚夫婦が、普段は相手に気兼ねなく過ごし、貴重な2人一緒の休日は仲良くまったりできる「週末婚」スタイルをイメージした間取りプラン。玄関からの導線を分け、左右均等に寝室、ロフト、収納などを平等に振り分けているのが特徴。新しい住まい方の提案が評価され、2020年グッドデザイン賞を受賞した。専用面積約50㎡、月額家賃は28.8万円。
物件は、東京メトロ東西線・都営地下鉄大江戸線門前仲町駅から徒歩8分、江東区佐賀一丁目に位置する12階建て全79室。専用面積は25.23~58.91㎡。月額賃料は11.7万円から、平均13.1万円。満室稼働だったが、法人の解約があったため現在の稼働率は93.7%。
七夕部屋リビング
夫のロフト
妻の寝室
イメージ図
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この賃貸マンションは、プレス・リリースが昨年4月2日に発表されたとき、見学を申し込んだのだが、そのあとすぐ新型コロナ緊急事態宣言が出されて実現しなかった。その後、グッドデザイン賞を受賞し、夫婦それぞれ専用洗面化粧台やテレワークとして使えるロフトがあることから、withコロナ時代に対応したプランとして注目され、3月9日のテレピ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」でも紹介されたという。
テレビは見ていないが、この日見学した「七夕カップルの愛ある家庭内週末婚」はやはり理解できなかった。
〝通い婚〟〝週末婚〟は理解できないわけではない。小生も独身のとき夢見たことがある。それぞれが自立した生活をしており、会いたければ会うというのが一番いいのではないかと。結婚は新たな人生の出発点ではあるが、それは同時に自らの生活を未来にわたって縛るという意味で終末点でもあると考えたからだ。
実際、結婚を前提にそれに近いことを実践したことがある。ところが、相手は小生に〝もう一人の女性〟の影をかぎつけたのか、しばらく会わないうちに、見事に捨てられた。「花を愛せる人になって」というのが三行半の言葉だった。「週末婚」は「終末婚」になるのを思い知った。その時ほど〝遠くの美男より近くの醜男〟などと悔やんだことはない。青春の蹉跌というにはあまりにも痛すぎた経験だ。
「七夕」を考案した方々はどのような考えの持ち主かわからないが(多分女性)、ふつうはいざ好きな女性(男性はわからない)ができたらメロメロになり、寝ても覚めても状態になるのではないか。4タイプのうち部屋の中央にビッグベッドを配置したプラン「恋人夫婦」がもっとも自然だ。
どうして専用面積が50㎡あり、天井高が3.8mもあるのに、鍵付きの夫婦別室とし、かがまないと入れず、立ち上がれば頭を打つロフトに一人寝なければならないのか、なぜ専用の洗面台や収納が必要なのか、さっぱりわからなかった。家賃28.8万円は折半するのだろうか。
まあ、しかし、記者のような団塊世代といまの方たちの結婚観は全く異なるということだろうと無理やり納得させた。
他のタイプは見学できなかったが、一番人気の「猫っぽカップル」や「恋人夫婦」「カジュアル夫婦」はとてもいい。分譲でも十分採用できそうとも考えたが、ライフステージにより間取りの趣向は変化するので難しい面もある。
今回に限ったことではないが、同社の伝統だろう。分譲も賃貸も面白い商品企画を考案する。
「街のシンボルになる」来場者 公園との垣根なくしたフージャース「つくば」に感動
「デュオヒルズつくばセンチュリー」フォレストデッキ
フージャースコーポレーションが分譲中の「デュオヒルズつくばセンチュリー」を見学した。この前インタビューした同社・小川栄一社長と同社事業推進部部長・友野珠江氏の話を確認するのが目的だった。疑ったわけではないが、裏を取るのは記者の基本でもあるからだ。
現地をみて絶句するほかなかった。感動すら覚えた。〝公園はかくあるべき〟という見本だった。そして、記者の胸を打ったのは、ほかの誰でもない、「ここは市のシンボルになる」と語ったマンション来場者の言葉だった。
物件は、つくばエクスプレスつくば駅から徒歩11分、茨城県つくば市竹園一丁目に位置する敷地面積約9,588㎡、14階建て全229戸。現在分譲中の住戸(9戸)の専有面積は75.21~75.32㎡、価格は3,598万~4,198万円、坪単価は175万円。建物は2020年10月竣工済。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。デザイン監修は野生司環境設計・野生司氏。ランドスケープデザイン監修は関東学院大学准教授・中津秀之氏。分譲開始は2019年3月。
単価が低く、第一次取得層向けではあるが、1階に2層吹き抜けのベーカリーカフェ「「パン工房クーロンヌ」が入居しているほか、共用施設にワークスタジオ、ブックステーション、キッズスクエア&キンタ―プレイス、ゲストルームなどを整備し、専有部は75㎡中心で食洗器、ディスポーザー、リビング天井高2500~2600ミリ、スロップシンク、浴室ドアタオル掛け2か所など…基本性能・設備仕様レベルは水準以上だ。
販売を担当する同社営業本部営業七部営業一課サブチーフ・入谷哲也氏は、「残りは未分譲の9戸を含め20戸。来場されたお客様に公園との垣根を取り払った取り組みなど物件の特徴を説明していたら、そのお客さまから『街のシンボルになるわね』と言われたのがとてもうれしかった」と話した。
コモンラウンジ
キンターラウンジ
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マンション来場者が「市のシンボルになる」と話した-これが全てを物語っている。記者の拙文など全く必要ない。写真を見ていただきたい。
この前、同社の小川栄一社長が話したようにマンションと公園はデッキでつながっており、どこまでがマンション敷地なのか公園なのか全く区別がつかない。必死で「官民」「民民」の境界標(栓)を探したが見つからなかった。
「パン工房クーロンヌ」でパンと飲み物を買って、公園側のデッキ席で、今回の取材をセットしていただいた友野氏と歓談した。
友野氏も完成した公園を見るのは初めてだったようで、市内で一番不人気だった、誰も利用しない〝砂利公園〟が、子どもたちが遊び、お母さんたちが談笑したり飲食したりしている公園に様変わりしたのに驚いていた。
公園には「パン工房クーロンヌ」が用意した無料で利用できる茣蓙が置かれていた。店内には公園内の芝の手入れを行う「育芝チーム」についても紹介されていた。
皆さんはこれをどう思われるか。先進的な取り組み事例としては、「立体都市公園制度」を活用したPPP(パブリックプライベートパートナーシップ)施設の一つ「MIYASHITA PARK」を見学して驚いたし、フージャースグループのPFI法を活用した「原山公園再整備運営事業」もオープンしたが、これらは「公設民営」だ。今回のような官民連携というより、民が主導した公園再生の例など記者は寡聞にして知らない。画期的なことだ。
デッキでつながっている公園(手前)と「パン工房クーロンヌ」
マンション(左)と公園
公園で遊ぶ子どもたち(滑り台では許可されなかったため傾斜としているのがみそ)
無料のござ貸出
つくば市の境界標
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これまで街路樹や公園の記事をたくさん書いてきた。いつも突き当たるのは法律の分厚い壁だ。
都市公園法には、「国の設置に係る都市公園における行為の禁止等」を定めた第十一条、第十二条には次のようにある。
第十一条 国の設置に係る都市公園においては、何人も、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
一 都市公園を損傷し、又は汚損すること。
二 竹木を伐採し、又は植物を採取すること。
三 土石、竹木等の物件を堆積すること。
四 前三号に掲げるもののほか、公衆の都市公園の利用に著しい支障を及ぼすおそれのある行為で政令で定めるもの。
第十二条 国の設置に係る都市公園において次の各号に掲げる行為をしようとするときは、国土交通省令で定めるところにより、公園管理者の許可を受けなければならない。
一 物品を販売し、又は頒布すること。
二 競技会、集会、展示会その他これらに類する催しのために都市公園の全部又は一部を独占して利用すること。
三 前二号に掲げるもののほか、都市公園の管理上支障を及ぼすおそれのある行為で政令で定めるもの。
法文の冒頭に「みだり」(「淫ら」と同義語か)とおどろおどろしい言葉が躍るように、むやみやたらに大声を発したり、キャッチボールをしたりタバコを吸ったりすることは「公衆の都市公園の利用に著しい支障を及ぼすおそれのある行為」として禁止される-その行為とは何かを決めるのは利用者のわれわれ市民ではない。管理者としての行政だ。
新型コロナ緊急事態宣言が発令されたことを受け、東京都は都立公園の利用について「運動施設、遊具広場、及び駐車場などの使用を休止しております。また、散歩、ジョギングをしている皆様は、ご利用を1時間以内にしていただきますようお願いいたします」とし、有料の公園を休園した。
他の自治体も同様だ。「利用中は、大声(発声・声援等)を出さないようにして下さい」(新宿区)「多くの利用者が『密集』『密接』することにより感染のリスクが高くなることが懸念されることから、当面の間、投球場と全ての遊具やベンチの使用を一時的に中止しております」(港区)「飲食の自粛」(渋谷区)「飲食を伴うご利用や長時間のご利用は可能な限り控え、密集・密接に注意しながらの公園利用を徹底していただきますようお願いいたします」(多摩市)などと規制を強化している。
しかし、これはいかがなものか。記者は、これまで何度も書いた。コロナ禍でもっとも安全なのは公園だ。取材などで外出したときは、コンビニなどでおにぎりと缶ビールを買って公園など野外で飲食することにしている。公園にはほとんど利用者はいないし、隣の人との間隔を確保しようと思えばいくらでも開けられる。もう1年以上継続している。
公園管理は、悪しき慣例主義・事なかれ主義の典型だ。公園が利用されようとされまいが、どうでもいいと考えているとしか思えない。
いくつか例示する。写真は渋谷区の「幡ヶ谷第四児童遊園」を昨年9月に写したものだ。出入り口には工事中でもないのにバリケードが設置されていた。誰も利用しないのか、敷地全体が雑草で覆われていた。日常不断に利用されていたら砂場に雑草が生えることなどありえない。
「幡ヶ谷第四児童遊園」
砂場といえば、杉並区の公園では、ネットがかけられていた。猫のトイレ利用を防ぐためだという。立川市の柴崎中央公園は、飲酒や喧嘩を防ぐために公園全体が金網ネットで囲われ、鍵もついていた。利用は平日9時~16時のみで、土・日曜は閉鎖するとあった。その中で遊んでいる子どもをみて、檻の中に閉じ込められているような錯覚を記者は覚えた。(5年前の記事参照)
目黒区の公園実態調査報告書には、2割近い公園・児童遊園の利用者は一人もいないと報告されている。
わが多摩市は「愛でるみどりから関わるみどりへ」を掲げ、様々な取り組みを行っているが、民間や住民参加を取り込む具体的な策(柵ではない)が欠落しているような気がする。つくばに負けるな。
公園、山、川…地域の資源と接続 全面展開へ フージャースコーポ 小川栄一社長(2021/4/22)
フージャースHD PFIによる大阪府堺市の「原山公園再整備運営事業」オープン(2020/9/1)
若い人で溢れかえる 「立体都市公園制度」を活用した三井不「MIYASHITA PARK」(2020/9/6)
日本財団 渋谷区公園トイレ整備に17億円 「西原一丁目」完成/真逆の児童遊園(2020/8/31)
激減する利用者 激増する1人当たり占有面積 公園のあり方考える(2020/8/3)
「記事にはしない」メディアの自殺行為 三菱地所レジ「自由が丘」オンライン内覧会
「ザ・パークハウス 自由が丘ディアナガーデン」145㎡のモデルルーム
三菱地所レジデンスは4月22日、モリモトとのJVマンション「ザ・パークハウス 自由が丘ディアナガーデン」のオンラインモデルルーム内覧会を行った。
物件は、東急東横線・大井町線自由が丘駅から徒歩9分、目黒区自由が丘3丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率70%、容積率100%)に位置する地下1階地上3階建て全44戸(募集対象外住戸12戸含む)。専有面積は74.72~175.46㎡。竣工予定は2022年6月下旬。施工は東急建設。
主寝室
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記者は、とても楽しみにしていたのだが、同社から事前に送られてきたオンライン視聴用URLが届いていないと勘違いしたために視聴できなかった。仮に視聴できていたら、一番知りたかったのは価格(坪単価)と設備仕様レベルだった。
内覧会では報道陣から坪単価についての質問もあったようだが、「記事にはしない」という約束で同社はおおよその単価を伝えたという。
そもそもメディアは、もっとも読者の関心が高い、知りたい単価について「記事にはしない」という約束などしてはならなかった。メディアの自殺行為だ。小生はほとんどそんな約束などしたことがない。(「ほとんど」というのは皆無ではないという意味。武士の情けもあるし、記者は弱い立場にもある)
それどころか、小生は事業者が「未定」としか発表しなかった「HARUMI FLAG」では「坪単価は250万円が妥当」と書いた。今でも間違っていないと思う。この記事には5,000件を超えるアクセスがあり、最初に「HARUMI FLAG」の用地取得額について書いた記事には1万件以上のアクセスが殺到した。
とはいえ、取材先との約束は絶対守るのがジャーナリズムの基本だ。なので、その端くれに席を置く小生は単価について触れない。それにしても、三菱地所ともあろうものが、どうしてそのような圧力をメディアにかけるのか。
もう一つの設備仕様は、内覧会を視聴しておらず、同社から事後に送られてきたVRモデルルームも記事にしないという約束だ(小生はオンラインでは住宅の質は伝えられないと思っているが)。頂いたモデルルームの画像データはとても美しく見える。質は誰も分からないはずだ。
ただ、デザイン監修を担当しているSKM設計計画事務所のマンションは結構見学している。物件ホームページには、同事務所の桐本将和氏が担当しグッドデザイン賞を受賞した「アールブラン横浜仲町台 」(2019年度)「ザ・パークハウス桜坂サンリヤン」(/ 2019年度)「蘆花公園ザ・レジデンス」(2018年度)「ザ・パークハウス追浜」(2015年度)「ザ・パークハウス戸塚」(2014年度)「パークハウス瀬田一丁目」(2010年度)が紹介されている。このうち小生も見学した記事を添付する。「仲町台」は最高に素晴らしかった。
リビング(白が基調で、自由が丘にピッタリではないか)
スウェーデンハウス 世界初3DキャラクターによるVR内覧サービス モデル来場2.2倍(2021/4/21)
三菱地所レジ・モリモト 自由が丘の1低層マンション 大規模緑化と既存樹木など保存(2021/4/9)
「HARUMI FLAG」土地代の安さ 価格に反映を 坪250万円が妥当と考えるが… (2019/4/21))
樹影を映し込む外観 まるで絵画のよう モリモト「アールブラン横浜仲町台」(2017/10/24)
今後の市況を測る試金石 三菱地所レシジ・野村・セコム「蘆花公園 ザ・レジデンス」(2016/11/24)
坪235万円でも7割近い144戸成約 100㎡超58戸も人気 日本エスコン「つくば」
「レ・ジェイドつくば Station Front」
中部電力グループ・日本エスコンが分譲中の「レ・ジェイドつくば Station Front」を見学した。駅直結の総開発面積約15,614㎡の商・職・住複合再開発「エスコンシティつくば」の一角に位置する免震構造で、坪単価は市内最高峰の235万円。3月末から販売開始し、全218戸のうち第1期144戸が完売。58戸ある億ションを含む100㎡以上は残り4戸。同社のフラッグシップマンションにふさわしい圧倒的な人気を呼んでいる。
物件は、つくばエクスプレスつくば駅から徒歩3分、茨城県つくば市吾妻1丁目の商業地域に位置する18階建て218戸(他に3階建て店舗棟)。専有面積は67.01~142.41㎡。坪単価は235万円。竣工予定は2022年10月。施工は多田建設。設計・監理はスタイレックス。販売代理はタカラレーベンリアルネット。デザイン監修はああす設計室。照明デザインはライティングM。ランドスケープはグランスケープ。
現地は、「つくばセンター地区」なかでももっとも利便性の高い駅直結のエリアに位置。同エリアでは西武百貨店筑波店が2017年2月に、イオンつくば駅前店が2018年1月にそれぞれ閉店。
同社は2018年12月に「つくばQ’t」(敷地面積約9,929㎡)と「つくばMOG」(同約1,119㎡)を、2019年3月に隣接する旧西武棟と旧イオン棟からなる「つくばクレオ」(同約15,613㎡)を取得。旧西武棟はリニューアルし、近く開業する「tonarie CREO」に改称し、開発を進めている「(仮称)tonarie Q’t」「(仮称)tonarie MOG」の3棟を含め「トナリエつくばスクエア」と総称して開発を進めている。
建物は、旧イオン跡地で建設しているもので、市内で2棟目の免震構造を採用。低層階には、当社グループ会社運営のカフェダイニングを開設するほか、地域コミュティスペース「リトリートハウス」を設ける。駅直結のペデストリアンデッキで繋なげる。
住戸プランは、もっとも狭いタイプでも67㎡台1スパンを確保し、他は70~96㎡台がそれぞれ1スパン、角住戸と最上階住戸の58戸が100㎡以上と、広いタイプをたくさん設けているのが特徴。
主な基本性能・設備仕様は、免震構造、二重床・二重天井、リビング天井高2400~2800ミリ、食洗器、ディスポーザー、ランドリールーム、自走式駐車場219台など。
同社開発事業本部東京開発事業部東京企画販売部マネージャー・塚田圭司氏は、「現地に看板を掲げただけで1,000件の問い合わせがあり、今では2,000件を突破している。1月17日に行った事前プロジェクト発表会には500名が参加し、3月末には第1期128戸が完売。これまで144戸が成約済み。坪単価235万円は市内最高峰で、100㎡以上58戸も残り4戸。坪400万円の高額住戸から売れている。当社のマンションの歴史でもここが一番人気」と語った。
125㎡のモデルルーム(廊下幅は1.3m)
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凄い人気だが、記者は納得する。街づくりは、大きな街区で構成されており、車がないと生活できないのは難点だが、緑は豊富だし街並みも美しい。そして何よりもの強みは、研究学園都市として自立的な都市づくりを進めてきた成果が表れているということだろう。県全体では人口減少に向かっているが、つくば市は漸増傾向にある。
二つあるうちの125㎡のモデルルームもよくできている。天井高は約2.8m、廊下幅は約1.3m、17帖ある主寝室(ドレッシングルーム含む)のドアは親子ドア、リビング・ダイニングは21帖、L字型のテラスは8.5×17mもある-駅直結の徒歩3分で商業施設が整った坪単価400万円の都内の物件だったら、果たしてどこなら買えるか。八王子でも無理かもしれない。
もう一つの86㎡のモデルルームには、リモート用途をイメージした約5帖のスペースがあるが、専有面積が広いから提案できる-こんな提案をするデベロッパーは少ない。
わが多摩市にはそんな額のマンションを買えるユーザーはいないかもしれない。圧倒的な人気を呼んでいる免震でZEHの東京建物他「ブリリアタワー聖蹟桜ヶ丘ブルーミングレジデンス」(520戸)は坪単価270万円だし、億ションはそんなに多くないはずだ。
86㎡のモデルルーム(奥に5帖のリモート用スペースがある)
高層ZEH-M プラン秀逸 日本エスコン「レ・ジェイド大倉山」(2020/2/1)
公園、山、川…地域の資源と接続 全面展開へ フージャースコーポ 小川栄一社長
「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園
小川氏
フージャースホールディングスの2021年3月期業績予想は、売上高80,000百万円(前期比6.1%減)、営業利益4,200百万円(同37.2%減)、経常利益3,500万円(同36.5%減)、純利益2,400百万円(同766.5%増)で、新型コロナの影響を受けたCCRC事業、不動産投資事業、不動産関連サービス事業などがそのまま数値に反映されそうだが、主力事業であるマンション、戸建て、シニア向けなどの不動産分譲事業が堅調に推移している。第3四半期決算によると、今期引き渡し戸数1,632戸のうち契約済みは1,560戸となっており、進捗率は95.6%に達している。
同社取締役で、分譲事業を担当するフージャースコーポレーション社長・小川栄一氏と同社営業推進部長・友野珠江氏に話を聞いた。テーマは「街の資源と接続」だ。
友野氏
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「デュオヒルズつくばセンチュリー」(手前が公園)
-御社のマンションは、自社開発第一号の「デュオ南浦和サザンヒルズ」(2000年分譲)をはじめ、結構これまで見学しております。第一号では収納に工夫を凝らし、ドアノブを壁面まで後退さていたのを見て、リクルートコスモスのいいところを引き継いでいるなと思ったものです。
小川 そうですか。第一号は創業から6年目。マンション販売代理で知見を貯め、廣岡が覚悟を決めて自社開発事業を始めたそうです。他との差別化を図るため、モノづくりや女性目線という特徴をアピールしました。これはきちんとこれからも伝えていかないといけない。
友野 いまあちこちで『女性活躍』と言われておりますが、当社は男女差別などもともとなくフラット。それが当たり前の風土が脈々と引き継がれています。
-その後、御社のマンションは結構見ているんですが、一昨年のシニア向け「デュオセーヌ豊田」の竣工見学会は別にして、2017年分譲のつくはEX柏たなか駅圏の「トレジャーランドプロジェクト(デュオヒルズ・ザ・グラン)」(253戸)を取材し、友野さんにもインタビューして以来、一つも見学していません。
取材したとき、友野さんは「3年間で売る」と仰ったが、わたしは最低5年かかると予想していまして、やはり3年では売れず、友野さんは責任を取らされて異動になったのではないかと、それを聞くのが怖かったんです。ところが御社は昨年12月、分譲事業が極めて好調に推移していると発表し、「柏たなか」もとっくの前に売れたと聞きまして、もう嬉しくなって。それじゃということで、この前は「デュオアベニューつくば吾妻」も観てきました。素晴らしい戸建て住宅地でした。それにしても、苦戦必至の「柏たなか」をよくぞ早期完売されました。女性活躍は、友野さんにインタビューしたときの記事を添付します。全てのデベロッパーの社員に読んでいただきたい。
マンション企画、女性活躍の核心を語る フージャースコーポ・友野珠江部長(2017/4/10)
小川 「柏たなか」は営業がよく頑張って売ったと思います。駅周辺に何もなかったですからね。最初は苦労しました。その後、ぽつぽつと居酒屋などが出来てきて売れましたが…。
「柏たなか」の経験と反省を踏まえて考えたのは、「街の資源と接続」と「強いコンセプトによる差別化」でした。
そのきっかけになったのが、現在分譲中の「デュオヒルズつくばセンチュリー」(229戸)です。土地を買ったとき、タカラレーベンさんが駅から6分の「レーベンつくばCORIS」(330戸)を分譲することになっていました。うちは駅から11分。普通の売り方では勝てない、どうやって販売するか、相当悩みました。
ちょうど敷地の隣につくば市内で一番人気がない、地域の人が〝砂利公園〟と呼ぶ、誰も利用しない水が溜まり、樹木がうっそうと茂った公園があったんです。
-公園隣接マンションはよく売れますが…。
小川 ええ。パークサイドマンションとか。しかし、ここはそうではなかった。これを何とかしようと考えたのです。芝生を張り、樹木を剪定してマウンドと滑り台を造ろうと。市の公園管理課に「公園をいじらしていただきたい」と交渉しました。最初は「何を言っているんですか」と。門前払いでした。
ところが、市の中心市街地の活性化や街づくりなど総合的な企画を考えている部門の方が取り合ってくれたんです。費用も民間が負担してくれるならいいではないかと。ただし、デベロッパーは開発に際して木を伐採してしまうという背景があって、樹木の伐採を一切行わないという条件と共に賛同を得られました。契約書には「市の所有物に芝生を付着することを許可する」と書かれていました。そここまで漕ぎつけるのに1年かかりました。
そして、樹木伐採がだめだから、樹木医の力を借りて樹木剪定を行い、芝生を張り、明るい緑の公園が出来上がったんです。公園利用者のターゲットを小さい子どもを抱えるファミリーに絞り込み、キャッチボールなどをする大きな子どもは他の公園で遊んでくれるように滑り台などにも工夫を凝らしました。こうして行政とマンション居住者、地域の人たちのWin-Winの関係を実現しました。
さらに、子どもが遊ぶのを見守り、休憩するための大人のカフェが必要だと、マンションの1階に市内で指折りの「パン工房クーロンヌ」さんを誘致しました。カフェでコーヒーを飲み、おいしいパンを食べながら、また在宅のパソコンも使える緑の空間を造ろうというストーリーを描きました。駅から11分ではあるが、ファミリーが住む価値をつくり出そうと考えました。
マンション敷地と公園の垣根、フェンスもありません。デッキでつながっています。
また、地域の方たちやNPOとも連携して公園の維持管理もみんなでやろうという現在進行形のingの仕掛けも考えています。芝生の管理を行う芝育チームもその一つで、そのためのユニフォームもつりました。
-なるほど。わたしもつくば市のマンションを取材したとき、人っ子一人いない公園を観ています。利用されない公園はつくば市に限らずたくさんあります。行政は管理することを最優先にして、美しい公園にしようという考えはまったくないように見えます。
「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園
「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園
「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園
小川 これから広島の標高70mの比治山に隣接する「デュオヒルズ比治山レジデンス」(110戸)を分譲するんですが、コンセプトは「比治山と暮らそう」です。
この山は〝広島の守り神〟と呼ばれておりまして、現在は広島市現代美術館があり桜の名所にもなっている比治山公園になっています。
これもingなんですが、地域不動産会社や地域NPOと一緒になって公園の維持活動を行おうと考えています。
もう一つ。郊外部のプロジェクトで桜並木と川をコンセプトに組み込んで、休日は子どもとサイクリングしよう、自転車に乗ろうと、エントランスや共用施設に工夫を凝らしています。
つくばの公園も広島の比治山も、郊外部の川もマンションの外ですが、この外にある街の資源とマンションの商品企画を接続して絡め合わせれば、そこにしかない価値を造れるんではないかと。これを今後全面展開しようと考えています。「柏たなか」の反省とはこれです。「柏たなか」は〝街が変わる〟をプロモーションに掲げましたが、街はなかなか変わってくれなかった。
暗中模索で始め、もがいてもがいて積み上げてできた「つくば」を経験し、一山超えたような気がしています。
-思い出しました。東京都には民設公園制度があり、東京建物と西武不動産が東村山市の萩山でその制度を利用した第1号マンションを10年以上前に建設しました。しかし、その後、この制度は全然使われていません。公園とマンションなど民有地との間のフェンスをなくした例というのは非常に珍しいケースだと思います。公園に柵が張り巡らされ、檻の中で子ども遊んでいるような現場も見ました。渋谷区はメディアが報道のために公園の写真を撮るのも許可が必要です。
都の民設公園第1号「萩山 四季の森公園」開園祭り(2009/10/5)
公園を所有するマンション 東建・西武「Brillia L-Sio 萩山」(2008/5/26)
「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園
「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園のデッキ
「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園のデッキ
友野 街と接続することを可能にしたことは、デベロッパーの概念を変え、境界を広げることにつながるのではないかと。商品企画も仕入れも建築も一体となって取り組んでいこうと考えています。
小川 マンションの広告も、建物や間取りではなく、公園や山や川などとつながった生活シーンが連想できるようなものにできないかと。
-広告? 広告といえば、飯田グループホールディングスの「好立地」というタイトルの企業広告には、わたしか住む多摩センターの多摩中央公園が何のクレジットもキャプションもなく紹介されています。市役所に聞いたんです。どうして中央公園の写真を使わせるのかと。答えは、お金を出せば商業目的に使用できるというものでした。さっき話しましたが、渋谷区はかなり厳しいのに多摩市は簡単。バラバラです。ひどいもんです。
小川 友野 …
-ぜひ、やってください。〝当社は公園の維持管理に関わっています〟などのクレジットを付ければ可能じゃないですか。
友野 デベロッパー各社は建物を大きく見せるとか、特定の季節感だけを強調したり、押しつけがましい広告がいまだに多いですが、人間の目線でこうした暮らしをしたいとか、自分がその中にいるような気持ちになれるシーンを伝えられないかと。共感力ですね。土地に敬意を払わないものは社会的な支持を得られなくなると思っています。これが課題ですね。
-御社は売上的には分譲事業が5割くらいですが、今後はどう考えているのですか。
小川 財閥系でもパワービルダーでもない当社の未来について廣岡と話し合ったんです。廣岡は学生のころ、森ビルのアークヒルズをみて感動し、そのような再開発を夢見たそうです。当社も現在の財政力なら大規模再開発を1つくらいできるかもしれないが、それって楽しいだろうかと。楽しくないんじゃないかと。アークヒルズと比べれば小規模かもしれないが、マンションをつくって、周辺の街の価値を少しでも向上させる、そのほうが俺らに向いているのではないかと。住宅をつくり街の価値を向上させることはSDGsにも結果的につながっていく。われわれの会社の立ち位置はここにあるんではないかと。
いま新中計を策定中ですが、当社グループが目指している次のステージは本業回帰ではないかと考えています。これまでの5年間は、マンションは縮小産業だから次は何だとホテル、スポーツ、海外、生活関連事業などを模索しながら展開してきました。振り返ってみると当社の分譲事業はやはり強い、ボラティリティがないとわかったんです。〝分譲のフージャース〟というファクトは伝えやすいと。
アメリカやアジアでの自社開発は見極めている段階ですが、戸建てやシニア向けも含めた分譲住宅事業で必要利益を出そうと考えています。分譲事業で一定利益を確保して、そのうえで+αとして他の事業を展開しようという方向です。
「わたしの好きなものではなく、お客さまの好きなものを造ってくれ」と廣岡は言っています。社長の顔色を窺い、よくわからない社長の趣味に合うものなど誰もつれません。しかし、顧客のニーズは科学で解き明かすことができるんです。
-ありがとうございました。「つくば」はぜひ見学させてください。
◇ ◆ ◇
小川氏プロフィール 1964年生まれ。桐朋高-明治大学卒。1988年4月、コスモスイニシア(当時リクルートコスモス)入社。2001年7月、フージャースコーポレーション入社。2002年2月、同社取締役、2017年6月、同社社長(現職)、2019年5月、フージャースホールディングス取締役(現職)。
◇ ◆ ◇
【編集後記】 小川社長と友野部長と1時間以上にわたり話しあった。「街の資源と接続」するコンセプトに同感だ。デベロッパーは〝ここに住めばこうした生活ができる〟ということを分かりやすく伝えないといけない。単に価格が安いとか駅に近いというだけではユーザーの心に響かない。
つくば市の誰も利用しない公園を再生し、マンション居住者や地域とつなげる活動は刮目に値する。公園との柵を取っ払った事例などないはずだ。都市公園のあり方、指定管理者制度の方向性に示唆を与えるものだ。
同社の販売力と商品企画について補足する。「柏たなか」を3年間で売り切った販売力は、2008年のリーマン・ショックのとき「グランドホライゾン・トーキョーベイ」686戸の販売を受託し、早期完売したことで証明されている。
小川氏は「当社はコスモスイニシアと似て非なるもの」とも話した。〝頭脳〟も〝足腰〟も誰にも負けないことを言いたかったのだろう。
「COCOSUMA」「COCO COMMU」を代表する商品企画では、記者が強烈な印象として残っているのは、京王線中河原駅からかなり遠い坪単価138万円の「デュオヒルズ府中多摩川」(187戸)に食洗機を標準装備したことだ。普通のデベロッパーなら価格を抑えるため真っ先に削るはずだ。「忙しい共働きの主婦(あるいは主夫)にとって食洗機は必需品」という認識は記者と一緒だった。
冒頭に書いたように、同社は2021年3月期第3四半期決算の段階で、引き渡し戸数1,632戸のうち契約済みは1,560戸で、進捗率は95.6%に達したと発表した。駅近など売りやすい物件はほとんどないはずだ。むしろ逆だ。
同じようなデベロッパーでは、大和地所レジデンスが2021年3月期完成マンション898戸を全て期末までに契約したと発表した-なぜそのような芸当ができるか、じっくり考える必要がある。小川社長は「顧客ニーズは科学」と話した。ここにヒントがあるような気がする。
フージャースHD シニア向け「デュオセーヌ豊田」竣工 半分強が契約済み(2019/8/7)
米・クレセント社の日本初「グランドホライゾン・トーキョーベイ」(2008/2/15)
駅から7分で敷地60坪 素晴らしい フージャース「つくば吾妻」82区画 完売(2021/3/25)
2.1畳大の「土間」付きがいい コスモスイニシア「日暮里プロジェクト」販売順調
「イニシア日暮里アベニュー」
コスモスイニシアが分譲中の「イニシア日暮里アベニュー」を見学した。同駅圏の「イニシア日暮里テラス」(54戸)と「イニシア日暮里プロジェクト」として同時に昨年6月から販売しているもので、前者は未分譲3戸を含め残りは9戸、後者は残り3戸と順調な売れ行きを見せている。
「アベニュー」は、山手線鶯谷駅から徒歩6分、荒川区東日暮里四丁目の尾竹橋通りに面した商業地域立地の11階建て45戸。専有面積は33.09~55.6969㎡、先着順で販売中の住戸(6戸)の専有面積は33.09・55.69㎡、価格は3,748万~5,198万円。平均坪単価は350万円。建物は2021年1月に竣工済。施工はライト工業。
土間側から引き戸を開け放した状態
土間側蟹引き戸を閉めた状態
リビング側から引き戸を開け放した状態
◇ ◆ ◇
この物件については、昨年6月にモデルルームを見学しているのでそちらを参照していただきたい。
今回注目したのは、約2.1畳大の「土間」を設けた33㎡1LDKのタイプだ。45戸のうち7戸に採用されているもので、記者はこれにほれ込んだ。もちろん好き嫌いはあるだろうが、引き戸を閉めれば室内を隠すこともできる。玄関窓もついている。多目的に利用できるのではないか。リビング・ダイニング・キッチンに床暖房付きだった。
もう一つ、同じ広さの1LDKも見学したが、こちらは土間の代わりにシューズクローゼットやウォークインクローゼットを充実させたもので、女性はこちらを選ぶそうだ。
満開のオオアマナ(花はハナニラに似ているが茎などに匂いがない)
「Doma(土間)」とLDK一体化 コスモスイニシア「日暮里テラス」企画秀逸(2020/6/26)
両国駅圏 最高値の坪450万円に納得 伊藤忠都市開発・東建「両国 国技館通り」
「クレヴィア両国 国技館通り」
伊藤忠都市開発・東京建物が5月下旬に販売する「クレヴィア両国 国技館通り」のモデルルームを見学した。坪単価は両国駅圏最高値の450万円になる模様だが、立地条件のよさ、設備仕様レベルの高さからして当然の単価だと思う。これまで1,200件弱の問い合わせがあるという。
物件は、JR総武線両国駅から徒歩2分、墨田区両国2丁目の商業地域に位置する14階建て全77戸(事業協力者住戸9戸含む)。専有面積は25.63~67.39㎡。価格は未定だが、坪単価は450万円。竣工予定は2022年4月下旬。設計・監理はIAO竹田設計。施工は佐藤工業。販売代理は伊藤忠ハウジング。
現地は、両国駅からすぐの国技館通りに面しており、由緒ある回向院へは徒歩2分のほか、芥川龍之介が通った通学区の両国小学校へは徒歩6分、隅田川は徒歩4分、駅の北側には国技館、旧安田庭園、江戸東京博物館、両国中学校、横綱町公園などがある。
建物は内廊下方式で、住戸は2階以上。5階まではワンルームタイプや事業協力者住戸が中心で、9階以上は40~60㎡台の2LDKと3LDKで1フロア4~5戸構成。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、ディスポーザー、食洗器、御影石キッチン天板など。最上階(14階)には、カウンター席「スカイビューラウンジ」と、リモートワークや読書、勉強などにも利用できる個室ブース「+HANARE Common」を設置しているのも特徴。
エントランスアプローチ
共用施設「HANARE」
モデルルーム
◇ ◆ ◇
坪単価を聞いたときはびっくりしたが、さもありなんと思った。こんなことを書くと錦糸町住民に怒られるかもしれないが、雑多な錦糸町と比較にならないほど両国駅圏は歴史・文化の香りがする。格が違う。国技館通り沿いの物件としては約10年ぶりの供給であり、昨年末からの反響が1,200件近くに上っているのもよくわかる。
記者はもう20年くらい前か、物件の対面にある「ちゃんこ巴潟」で2度食事をしたことがある。相撲甚句を聞きながらおいしいちゃんこ鍋をつつき、酒を飲めるのは格別だ。平幕クラスでも一人5,000円くらいだったはずで、決して安くはないが、坪450万円を検討するユーザーだったら痛くもかゆくもないはずだ。
とはいえ、下町だから1億円を超えるニーズは多くないと見た。伊藤忠都市開発もその辺をよく弁えているのか、1億円超はそんなに多くないはずだ。
単身者向けの「nanoni」にはトール型収納+全身ミラー、高機能シャワー、スクエア型キッチン+食器棚、ディスプレイウォール+床暖房、可動パーティション(半透明ガラス)などを採用しているのもいい。
モデルルームがある「有楽町イトシア」の伊藤忠都市開発の常設販売ギャラリーは必見だ。買わない買います買えば買え…記者のような貧乏人は足がすくむかもしれないが、どんな人にもお菓子やコーヒーくらいは振舞ってもらえるはずだ。モデルルームで使用されていた食器類はDEDAR(デダール)製。目が飛び出るほど高価ではないが、安物でもないはずだ。
これはついで。売主は伊藤忠都市開発と東京建物。メインは伊藤忠都市開発だが、この両者はいま分譲中の東建がメインの「聖蹟桜ヶ丘」もそうだが、これまで「有明」「磯子」「上野池之端」「上野」…よっぽど仲がいいんだろう。仲を裂く勇気のあるデベロッパーはいないのか。こんなことを書くから取材の声がかからなくなるのか…それでも記者は書く。
スクエア型キッチン(これはスグレモノ)
これは凄い ホテルなら5つ星 伊藤忠都市 「ギャラリークレヴィア有楽町イトシア」(2020/9/10)
際立つ突板フローリング 白とグレーのカラーリングもいい コスモスイニシア「築地」
「イニシア築地レジデンス」
今年1月に竣工し、3月末から入居も始まったコスモスイニシア(事業比率60%)・大和ハウス工業(同40%)の「イニシア築地レジデンス」82戸を見学した。
分譲開始の一昨年秋の段階では、この物件を含め6物件463戸が同じエリアで激突するもと思われたが、ワールドレジデンシャル「レジデンシャル築地」40戸と大成有楽不動産「オーベルアーバンツ銀座築地」55戸が分譲直前で1棟売りされたのか戦線を離脱したため、結局4物件368戸となった。今回の物件も竣工を前に売れ行きが加速し、未分譲6戸を含め残りは16戸。
モデルルーム
◇ ◆ ◇
物件概要、その他設備仕様などは一昨年書いた記事を参照していただきたい。水準以上であるのは間違いない。
完成した建物を見てとてもいいと思ったのは、白と淡いグレーのカラーリングと突板フローリングだった。最近の床はほとんどシート張りになってしまったので余計に際立つ。
価格が7,000万円台~7,500万円台の53~54㎡の住戸プランでは、間口を7100ミリ確保したCタイプの間取りがよくできており、他のAタイプは子ども部屋にもリビングにもなる間取り可変式提案がいい。
上層階2層の専有面積が74~75㎡の1億円以上の住戸4戸(未分譲1戸含む)が残っているが、これをどう売るかだろう。
素晴らしい! 448㎡の木造コミュニティ施設完成 築50年696戸の洋光台南第一住宅
完成した洋光台南第一住宅管理組合管理事務棟
築50年の全39棟696戸の中層マンションからなる洋光台南第一住宅管理組合は4月12日、管理事務棟開所式を行った。耐震性に問題のある40mを超える給水塔・集会所を取り壊し、新たに約448㎡の木造コミュニティ施設としたもので、この日は建築に関わった関係者同士で話し合い、その模様をメディアにも公開した。
施設は、JR根岸線洋光台駅から徒歩3分(団地入口)、横浜市磯子区洋光台5丁目に位置する一団地敷地面積約81,561㎡に位置する建築面積約538㎡、地上1階建て延床面積約444㎡。最高高さは6.5m、木造45分準耐火構造。設計監理はスタジオ・クハラ・ヤギ+ team Timberize。施工はナイス。工事期間は2020年9月~2021年3月。総工費は解体費用を含め約6.5億円。
関係者で記念写真
◇ ◆ ◇
事前準備がいかに大事であるかを思い知らされた取材であった。
この施設については昨年12月15日、木と住まい研究協会が主催(共催:スタジオ・クハラ・ヤギ、NPO法人team Timberize、ナイス)して工事中の構造見学会を行っている。記者は、新型コロナが猛威を振るっているときでもあり取材を見送った。
そして今回の4月12日は、東京都にまん延防止等重点措置が取られた初日。出掛けるとき「小池さんが東京から出ないでと言っているわよ」などとかみさんから嫌みな一発を喰らい、1時間30分も掛けて見学取材した。
現地に着き、建物の素晴らしさはすぐ理解できた。ところが、配布された資料は式次第のみで、施設の概要、経緯などは全然記載されていなかった。
管理組合の方の司会に始まり、コンサル会社の都市環境研究所(2人)-給水塔の解体を担当したトライテック-施設設計者のスタジオ・クハラ・ヤギ-施工担当のナイス(3人)-施設を管理する神奈川保健事業者-団地を管理する日本総合住生活(2人)-居住者代表の村瀬安弘氏-管理組合理事長・古山伸一氏がリレー方式で1時間近くにわたりそれぞれコメントした。総計13人だ。
予備知識が全くなく、難聴がひどくなり、マスク越しも加わってよく聞こえず、プロジェクターに映し出される文字もろくに読めない記者は面食らった。必死にメモを取った。
全部は紹介しきれないが、発言者順に要点だけを以下に紹介する。間違っていたらごめんなさいと謝るほかない。
都市環境研究所は、横浜市の団地再生事業により2016年から同団地の再生事業に関わってきた。最初にマイク(バトン)を握った同研究所・大野整氏は「(とてもそんなには見えなかったが)わたしはリレーのアンカーだった」と笑わし、「4街区全体のリビングのような楽しい空間が完成した。管理組合、自治会がぶれずにワンチームになれたのが成功の秘訣。次の50年先の素敵な場所になるようこれからもサポートしていく」と、また同所・實方理佐氏は「サンドベージュの壁と木の壁による明るい空間が誕生した。胸がわくわくしている」とそれぞれ語った。
トライテック・加藤琢磨氏は「給水塔は高さが40m以上あり、基礎部分も広範囲に及んでおり工事は難航したが、安全・安心を最優先しスピーディに工事を完了することができた」と話した。
スタジオ・クハラ・ヤギ代表取締役・久原裕氏は「施設はわたしの娘、分身のようなもの。施設引き渡しは嫁にやるようなもの。それまではスリッパだったのに、引き渡し時はみんな土足で上がったのに複雑な思いがした」と、記者をどきりとさせるフレーズでもって切り出し、「自由な使い方ができる、ここにしかない外観も内観も理にかなった唯一無二の木造準耐火建築物になったはず。しかし、全体を100とすれば建物の完成は30から40%。余白を残すように設計した。これからみなさんで使いこなし育てていただきたい」と述べた。
ナイスのプロジェクトリーダー・遠藤雅宏氏は「わたしの誕生日は団地の入居が始まった昭和46年3月30日のちょうど1年前の昭和45年の1月15日。無事に工事が完了し、感謝、感謝」などと感謝を連発し、横浜市が推進する公共建築物の木質化を先導する事業であることも強調した。
同社の営業担当・会田利知氏は「700世帯の熱い思いが込められている。表も裏も外も内も木。誇りに思っている」と喜びを表した。
さらに同社の工事担当・平田裕治氏は「(設計の)高いハードルを越えようと燃えた。コロナ禍でも問題なく工事は完了した。小さい女の子が建物を見て〝やばい〟と歓声を上げた。新しい息吹が吹き込まれた」と作業着姿で語った。
マンションを管理する日本総合住生活・高階徹氏と中村陽人氏は、この種の先進的な管理事務所は他に例がなく気が引き締まる思いがするなどと話した。
昭和64年の入居開始時から住んでいる90歳の村瀬氏は「入居開始の2年目から組合役員をやっており、通算25年間役員をやってきた。従前の集会所は使いづらく、自治会館をつるのが夢だった。やっと住民の力が結実した」と感慨深げに語った。
管理組合理事長の古山氏は「素敵な素晴らしい建物が完成した。3つのグループに感謝したい。一つは組合員、二つ目は理事の皆さん、三つ目はこれから先のすべての関係者」と締めくくった。
同団地の規約では、理事長は立候補方式をとっており、任期は8年。73歳の古山氏は今年6月の総会で8年務めた理事長の職を退く。
内観
内観(サッシは木製)
開所式
◇ ◆ ◇
開所式を取材せず、プレスリリースを引き写すだけだったら高々444㎡の木造準耐火建築物ではないかとやり過ごしたかもしれないが、必死で取材した結果、切り口によってはいかようにも仕上げられる素晴らしいプロジェクトであることが分かった。
一つひとつ紹介はしないが、例えば合意形成。築50年の696戸もある組合員をよくぞ結集させたものだ。案件は過半数でいい普通決議ではなく4分の3以上の賛成が必要な特別決議だが、2018年2月18日に行われた臨時総会では反対者は9人/696人(賛成率98.7%)しかいなかったそうだ。理事長(理事もか)が立候補方式というのも面白い。
住宅の質も高い。記者が観た範囲では全て5階建てでエレベーターはなかったが、古山氏によると専有面積はもっとも多いのが南面3室の78㎡で、次が66㎡、それと60㎡だという。駅から3分で南面3室は価値がある。URは50年も前にこんな住宅を建設した。この価値に欠けていたコミュニティを創出したのは大きな意味を持つ。
建物そのものも素晴らしい。木と住まい研究協会が作成したA3で4枚にわたる資料を見たが、出入り口は9か所もある。延べ床面積が444㎡の平屋建て集会所などどこにもないはずだ。フリースペースが中心なので、どのような使い方も可能だ。
ギザギザの連続折れ屋根とやわらかな木の浮き屋根を組み合わせたデザインも面白く、かつ、屋根形状はルームの天井高(最大6m超)にもなっており、各ルームはつながっているようにも区切られているようにも見える。
ベイマツの太い構造通し柱や、国産材のヒノキの燃えしろ設計による集成材柱、多摩産材のスギの羽目板も美しい。久原氏は「山小屋のような全て木にはしたくなかった」と語ったように、左官や塗装の外壁(サイディング下地)を組み合わせた外観も斬新だ。
このほか、床を二重構造にし、二重床内に設置された空気式フィルムダクトシステムを通じて床から温風・ 冷風を送風する空調方式を採用しているのもいい。
洋光台南第一住宅
洋光台南第一住宅
コロナのリスクは全くなく、喫煙も可能な隣接公園での記者の昼食(近くのスーパーで買ったおにぎり1個、神奈川県産のトマト、缶ビールで合計650円くらい)