パラダイムシフト起こすか リアルとデジタルの融合企図 大和ハウスなど実証実験
「XR HOUSE(エックスアールハウス)北品川 長屋 1930」
大和ハウス工業、バンダイナムコ研究所、ノイズは6月2日、築90年以上の古民家を改装した「XR HOUSE(エックスアールハウス)北品川 長屋 1930」(東京都品川区)で6月3日から8月31日まで、「リアルとデジタルの融合」をテーマにした共同実証実験を行うと発表。同日、メディアに「長屋」を公開した。
建築を専門とする大和ハウス工業、エンターテインメントに強みがあるバンダイナムコ研究所、デジタル技術に詳しいnoizの3社がプロジェクトを立ち上げたのは2020年12月。コロナ禍で人々の価値観や生活習慣が大きく変化する中で、3社は「未来の暮らし」について検討を開始。家で過ごす時間が長くなる中、巣ごもりの閉塞感を軽減しながら、暮らしをより楽しくするために、一瞬で空間イメージを変えるデジタル技術「XR 技術」に着目し、「建物価値の拡張」と「建物サイクルの拡張」によるパラダイムシフトを企図したのがきっかけ。
1階のプロジェクトでは、AI技術のほかセンシング技術を組み込むことで、リアルとバーチャルの相互作用を生み出すことを可能にした。学習能力があり、「人」が古民家の中にあるLED電球に触れると、事前に決められた機械的な反応ではなく、その時々の「人」の位置などによって多種多様に変化する反応を示し、空間に置かれたタイルへの映像投影とサウンドで表現する。
2階の各10畳大の「障子+デジタル」と「襖+デジタル」には不定形の「ボロノイ畳」にLED 技術を組み込み、「障子+デジタル」では、バーチャル世界を「日常」から覗いているかのようなモノクロの屋外空間を演出。立体音響効果により、障子の奥に外とつながっているような空間を作っている。「襖+デジタル」では、「襖」を開けると囲炉裏、坪庭などの屋内空間が広がり、将棋を指す音、炭火のはぜる音、山鳩の鳴き声なども聞こえるようにしている。
実証期間中に有識者や業界関係者、学生などに「リアルとデジタルの融合」を体感してもらい、ワークショップを開催し、今後の住宅・建築業界の新しい価値の創出につなげる。
「XR HOUSE 北品川長屋 1930」は、JR品川駅から徒歩10分、品川区北品川 1丁目に位置する木造2階建て全5棟の古民家のうちの1棟改修したもので、延床面積は約97㎡。
「障子+デジタル」(左)と「襖+デジタル」(左の画像には、雨傘をさした〝永遠の処女〟原節子さんか、竹久夢二の美人画をカラーで写したら最高。右は意味不明のLEDの稲妻)
1階のプロジェクト
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この種のVRやらAR、AIをテーマにした見学会を数十回は経験している。その都度感じるのは、リアル(実物)には絶対にかなわないということだ。商品を購入することを決断させるための一つのツールに過ぎない。当事者だってそんなことは百も承知のはずで、いかにシズル(sizzle)感を演出するか四苦八苦しているに違いない。
今回も見学する前までは、これまで見たものと似たり寄ったりだろうと高を括っていた。ところが、「障子の間」「襖の間」を見学して驚愕した。五感のうち嗅覚、触覚、味覚は味わえないのはこれまで見学したものと同じだが、〝これはいい〟と第六感に訴えるものがあった。黒澤明や小津安二郎の映画シーンを見るようで、酒でも飲みたくなる気分にさせられた。
とにかく芸が細かい。部屋内は改修に用いられた黒松やイグサの香りがし、中央には卓袱台が備えられていた。障子には雨だれの文様が映し出され、開けると郷愁を誘う田舎の街並みが白黒で展開し、雨の音、風の音、小鳥の鳴き声が聞こえ、人の気配を感じさせる将棋を指す音、除夜の鐘、囲炉裏の炭火のはぜる音や火花が灰になって舞う仕掛けも施されていた。
この種の演出はゲーム大手のバンダイナムコにとってはもっとも得意とする技なのだろう。バンダイナムコ研究所イノベーション戦略本部プロデュース部・本山博文氏は「襖の開け閉めの所作はミリ単位で計算している」と話した。
肝心の価格について質問したが、「現段階では未定」とのことだ。価格によっては住宅だけでなくあらゆる施設にも導入できそうで、パラダイムシフトを起こす可能性が大とみた。
重箱の隅をつつくようで申しわけないのだが、一つだけ課題。本山氏も「没入・熱中しすぎない、目が疲れない工夫」と話したように、やりすぎると全てぶち壊すことにつながりかねない。
そんなシーンがあった。不定形の「ボロノイ畳」に稲妻のようにLEDの光が走り、床から灰が舞い上がった。薪も炭火も安物は爆ぜて火花を散らすことは確かにある。しかし、床を雷のように駆けずり回ることは絶対にないし、灰は空中をさまようが、床から蛍のように湧き上がることはない。本山さん、いかがか。過ぎたるはなお及ばざるがごとし。
昔懐かしい日常の風景を風情など全くない本山氏や記者の方が寝転んで鑑賞していた(これも一興か)
建物
「資材など高騰に苦慮。価格転嫁を検討する段階」プレ協・堀内会長 総会後に会見
プレハブ建築協会は5月31日、定時総会・理事会後に記者発表会を行い、会長に堀内容介氏(積水ハウス代表取締役副会長執行役員)、副会長に川畑文俊氏(旭化成ホームズ代表取締役社長)、芳井敬一氏(大和ハウス工業代表取締役社長)、井上二郎氏(パナソニック ホームズ代表取締役社長)がそれぞれ再任され、前副会長の竹中宣雄氏(今年6月のミサワホーム総会で取締役会長を退任する予定)に代わって、作尾徹也氏(ミサワホーム専務執行役員、6月の同社総会で代表取締役社長執行役員に就任予定)を選任したと発表した。
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堀内会長は冒頭、「2年前にコロナ拡大に見舞われ、かつてない大きな打撃を受けた。その後、住宅着工は回復したが、持家は昨年12月以降マイナスに転じ、ウクライナ問題、資材高騰など引き続き厳しい環境が継続すると思われる。その一方で、WEBスタイルの浸透やニーズの変化など環境が一変し、昨年11月に閣議決定されたこどもみらい住宅支援事業、改正住宅ローン控除制度などのインセンティブ、DXを活用して業界の活性化に取り組んでいく」などと語った。
また、2050年のカーボンニュートラルに向け、昨年10月策定した新たな5か年計画「住生活向上推進プラン2025」の推進、激甚化する災害対策として取り組んでいる応急仮設住宅では各自治体との連携を強化し、スピード感を持って対応していくと述べた。
PC建築部会長・加藤茂裕氏(トヨタT&S建設代表取締役社長)は、「品質と生産性の向上とともに働き方改革にも努力し、『場』と『人づくり』で優位性のあるPCの需要拡大に応えていく」と話した。
住宅部会長・後藤裕司氏(トヨタホーム代表取締役社)は、「『住生活向上推進プラン2025』では、それまでの『住生活向上推進プラン』と『エコアクション』を一本化し、カーボンニュートラルの先導的役割を担っていく。ZEH、省エネ改修、賃貸共同住宅の長期優良住宅の取り組みを強化する」と述べた。
規格建築部会長・森田俊作氏(大和リース社長)は、「今年半年間で震度5以上の地震は7回あり、昨年を上回っているなど予断を許さない状況にある。GPSやバーチャルトレーニングなどで災害に強い体制を強化する」と語った。
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メディアからは資材の高騰に関する質問が相次いだ。堀内会長は「コスト削減には限界もある。各社とも対応に苦慮している。価格への転嫁を検討している段階」と述べた。
製材-製造-加工-販売まで一気通貫可能 三菱地所など「鹿児島湧水工場」完成
「鹿児島湧水工場」
MEC Industryは5月30日、「木」の製材-製造-加工-販売まで一気通貫を可能にした鹿児島県姶良郡湧水町の「鹿児島湧水工場」が完成・本格稼働を6月から開始すると発表した。
「鹿児島湧水工場」は、2021年8月に完成した製造棟と、今回完成した「鹿児島湧水素材センター」からなり、敷地面積約90,845㎡、建築面積約26,864㎡、延床面積約26,981㎡。・製材棟は年間消費原木量55,000㎥/シフト(1シフトは360分、稼働日数250日/年)。製造棟は、2×4材(JAS 認定材)、CLT、幅はぎ板、MOKUWELL HOUSE、MI デッキなどを製造する。
工場では原木の調達を行い、製材してCLTや2×4パネルなど木質材料を製造、それらの建材を活用して木質建材やプレファブリケーション化した戸建住宅「MOKUWEL HOUSE」の製造までを一気通貫で行っていく。
おが粉やバーク(樹皮)などの廃棄物を自社ボイラーの燃料として再利用するほか、製材棟・オフィス棟・食堂棟の建屋の一部に国産材を使用。地元雇用も創出。食堂棟は地域に開放する。
MEC Industryは2020年1月、三菱地所、竹中工務店、大豊建設、松尾建設、南国殖産、ケンテック、山佐木材の7社の出資により、木材製品の生産から流通、施工、販売まで、川上から川下までを一社で担う「統合型最適化モデル」会社として設立された。
左からケンテック・矢口社長、松尾建設・松尾社長、竹中工務店・佐々木社長、池上湧水町長、MEC Industry・小野社長、須藤鹿児島県副知事、三菱地所・吉田社長、大豊建設・大隅社長、南国殖産・永山社長、山佐木材・有馬社長
オフィス棟
食堂
CLTプレスライン
MOKUWELL HOUSEユニット
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年間消費原木量55,000㎥/シフトと言われても素人の記者にはさっぱり分からないのだが、日本一の木材加工会社ポラスグループのポラテックは月産75,000㎥の木材加工能力を有するというから桁が異なる。
しかし、新会社設立の記者発表会同様、今回も7社のトップが参加して竣工を祝ったようだ。その意気込みが伝わってくる。わが国の森林・林業は危機に瀕しており、林業はもはや「業」と呼べないほどの売上高のようだ。7社が結集して森林・林業の再生・活性化の起爆剤になってほしい。機会があったら工場も見学したい。
製材棟
MI デッキ
MOKUWELL HOUSEモデルハウス
型枠を内装デザイン化30坪の平屋が1000万円 三菱地所 総合林業会社設立(2020/7/28)
災害被災神社再建・復興プロジェクト 第4弾「清神社」竣功祭 創建
完成した「清(せいの)神社」
創建は5月30日、同社が無償で建築し寄贈する「災害被災神社再建・復興プロジェクト」第4弾の「清(せいの)神社」の竣功祭を5月27日(金)に行ったと発表した。
「清神社」は、福島県双葉郡楢葉町大字前原に位置する敷地面積約1,033㎡(313坪)、本殿建築面積は約53㎡(16坪)、延床面積は約45(13坪)、構造/様式は神明造。2021年7月に地鎮祭が行われ、2021年12月に完成した。再建の経緯は次の通り。
震災時に100戸あった氏子は、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響で大半の方が別の場所に移転したため、現在は10戸に減少。残った総代、氏子はこの神社が子どもの頃からの心のよりどころであったので、神社が再建しない限りは心も復興しないと震災から4年半後に再建を決意し解体したものの、予算が合わず3年半の時間が流れた。このことを福島神社庁に相談したことをきっかけに、同社が無償で再建することになったもの。
当日は、氏子や同社代表取締役会長・吉村孝文氏をはじめ福島県神社庁長庁長代理(同理事)・西山典久氏、楢葉町議会議長・清神社宮司・宇佐神正道氏など約30名が参加し、清神社の再建を祝った。
同社は、これまで熊本地震で倒壊した熊本県西原村の白山姫神社(2018年)、東日本大震災で被災した福島県浪江町の諏訪神社(2019年)、東日本大震災で被災した宮城県名取市の閖上湊神社(2020年)の無償再建を行っている。
感謝状を受ける吉村会長
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いい取り組みではないか。神社再建などというと、同社は宗教団体ではないかと考える人もいるかもしれないが、同社・吉村会長は「『神社復興』などというと、裏に何かあると勘繰る人もいるが、私利私欲、政治的な思惑は全くない。たくさんの命を救いたいだけだ」(2019/3/7)と語ったように、少しでも被災者に寄り添い、伝統技術を継承することしか考えていないはずだ。
竣功祭
「深く感謝」声詰まらせた閖上湊神社宮司 神社再建プロジェクト 第三弾発表 創建(2020/2/28)
壮大な街づくりの一環 501㎡の「新国際ビル」路地裏を多目的空間にリノベ 三菱地所
有楽町 SLIT PARK(スリット パーク)(樹木はアジサイ、アオダモ、ソヨゴ、シモツケ、ソヨゴ、ヤマブキ、ヤマボウシ、アケビなど)
三菱地所は5月25日、有楽町再構築を体現する既存ストックの活用プロジェクト第1弾として「有楽町『SLIT PARK(スリット パーク)』」を6月1日にオープンすると発表した。同日、オープンに先駆け行ったイベントをメディアに公開した。
「スリットパーク」は、従前は薄暗く自転車置き場などになっていた、同社が保有する丸の内3丁目の新国際ビルと新日石ビルの幅6mのL字型路地裏スペース約501㎡(151坪)を多目的空間にコンバージョンしたもの。8月中旬までに新国際ビルの丸の内仲通り側エントランスとオフィスロビーの改修を行い、「スリットパーク」の突き当りの区画を貫通させ、大名通りと丸ノ内仲通りをつなぐ動線としての機能も持たせる。
空間には「森」をイメージした植栽を施し、休憩スポットやキッチンカー、屋台、カートショップなどの飲食・物販サービスを提供し、アート展示やイベントを実施することで出会いや交流を促進し、街の魅力向上を目指す。Wifiと電源を各所に完備し、執務空間としても常時利用可能としている。設計・監理はオープン・エー、三菱地所設計。運営は東邦レオ。
同社は、大手町・丸の内・有楽町エリアの街づくりを「丸の内NEXT ステージ」と位置づけ、それを加速させるため①多様な場の提供②多様なテーマ・コミュニティ③面でのつながり・発信④クリエイティブな活動を引き起こす⑤デジタルビジョン・スマートシティの実現-の5つの戦略を掲げている。今回はその一環。
また、同社の「長期経営計画2030年」では、有楽町エリアを重点更新エリアの1つと定め、これまでもエリアでは「Micro STARs Dev.」「CADAN有楽町」「有楽町アートサイトプロジェクト」「ソノ アイダ#有楽町・ソノ アイダ#新有楽町」「有楽町アートアーバニズムプログラム YAU」など様々な企画・イベントなどを行っている。
有楽町ビル・新有楽町ビルの建て替えに着手したほか、稼働中ビルも順次リニューアルを行い、有楽町エリア全体の再構築を目指している。
リニューアル前(左)とリニューアル後の大名小路「スリットパーク」入口
「スリットパーク」完成予想図
25日のイベント
屋台(左)
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同社は前日24日、築64年の延べ床面積約111,272㎡の「大手町ビル」の大規模リニューアル工事が完了したのにともなうメディア向け内覧会を行った。今回はわずか501㎡の路地裏空間のリノベーションだ。
些細な取り組みとして軽視してはいけない。設計・監理を担当したオープン・エー代表取締役・馬場正尊氏が「小さいけれど、大きな変化の予兆になって欲しい」と、運営する東邦レオ代表取締役社長・吉川稔氏が「緑とアート、音(DJ)やアペリティフを触媒に、シェアスペース、コワーキングでは生み出せない、偶発的な出逢い(セレンディピティ)から想定外のイノベーションが起こる場をソーシャルに創造していく」とそれぞれコメントしているように、記者も100年先を見据えた「大丸有」の壮大な街づくりの一環だと思う。
いま、山手線内では「大丸有」のほか日本橋、八重洲、新橋、浜松町、泉岳寺・高輪ゲートウェイ、品川、渋谷、新宿、赤坂、虎ノ門・赤坂などで大規模再開発が進行中だ。都市間・エリア間競争は益々激化する。「滞在の快適性等の向上」(都市再生特別措置法)を図らないと、気が付いたときは手遅れになる。
路地裏空間のリノベは他にもありそうだが、記者は「バスあいのり3丁目テラス」をすぐ思い出した。三菱地所が所有する土地に東邦レオが植栽などを担当した施設で、今回の「スリットパーク」と同様、施設内の樹木、その他の全てが移動可能で建築物でないことがみそだ。
今後、区市町村道を活用した取り組みは加速度的に進むはずだ。今回の施設はその参考になる。
一つ、課題をあげる。25日のトークセッション&DJイベントで梅澤高明氏(A.T.カーニー日本法人会長/ナイトタイムエコノミー推進協議会理事)は、「このような路地裏空間には空調の音がある」と語った。〝うるさい〟とは言わなかったが、そのような意味が込められていると記者は受け取った。
音楽と異なり、これが意外と気になる。気になりだすといたたまれなくなる。車や建築工事の音もそうだ。音を消す技術は開発されないのか。どことは言わないが、工事現場の空きスペースに飲食施設を設置したデベロッパーがあるが、閑古鳥が鳴いている。それともう一つ。喫煙スペースは必須だと思うがいかがか。
梅澤氏
消化不良なのが残念だが素晴らしい農園 三菱地所「大手町ビル」リノベ完成見学会(2022/5/26)
三菱地所「バスあいのり3丁目テラス」の課題/コンクリ打設工事 初めて見学(2021/3/27)
三菱地所 生産者-産地-消費者つなげる屋外空間「バスあいのり3丁目テラス」開業(2020/9/5)
消化不良なのが残念だが素晴らしい農園 三菱地所「大手町ビル」リノベ完成見学会
東西で異なるビル外観(東側)
三菱地所は5月24日、1958年(昭和33年)竣工のオフィスビル「大手町ビル」の大規模リノベーション工事が完了したことに伴うメディア向け内覧会を行った。工事は2018年5月にスタート、2022年5月に完成。テナントが入居したままのこれほど大規模なリノベーションは珍しいという。
物件は、東京メトロ丸ノ内線・千代田線・半蔵門線・東西線、都営三田線大手町駅直結の建ぺい率80%(実質100%)、容積率1300%の千代田区大手町1丁目に位置する敷地面積約10,496㎡(200m×50m)、地下3階・地上9階建て延べ床面積約111,272㎡。設計・ 監理は三菱地所、施工は大成建設。着工は1956年5月、竣工は1958年4月。リノベーション設計・監理は三菱地所設計、内装改修建築設計はメック・デザイン・インターナショナル。建築施工は大成建設。
外装デザインは、日比谷通り、丸の内仲通り、大名小路の象徴的な通りとの親和性を重視し、外壁素材や窓ガラスなどの機能を更新したほか、ビルを東・西・中央に分節。外壁材にはGRCを採用するなど管理コストの低減、窓ガラスはLow-Eガラスにするなど約44%の熱負荷削減を図っている。
約4,000㎡の屋上には、植栽を施したワークスペースや約658㎡の都内最大級の農園スペースを整備。AI画像分析を通じて野菜の生育環境を計ることができる世界初の機器を備えている。竣工時から屋上に安置されていた「大手町観世音菩薩像(大手町観音)」は、従前は年に1回御開帳の日を設けていたが、リノベーションを機に一般の来館者も参拝できるように整備した。
7階には、就業者やエリアワーカー向けの共用ラウンジ・テラスを開設。ラウンジ(136席)はビル就業者が利用できるほか、一部ゾーンはエリアワーカーも利用可能。
また、ビルの東側を「LABゾーン」とし、多様な企業が集積、様々な人・企業が交流する拠点を創出。大規模フロアプレートでありながらも小割貸付に適したフロア形状の優位性を活かし、スタートアップ企業や大企業の新規事業開発部門など様々な企業が集積できる環境を整備した。
建て替えでなく新たな建築確認申請が必要でないリノベーションを選択したのは、様々なテナントニーズに対応するとともに、既存ストックの活用という社会的な要請にも応え、同社が「丸の内NEXT ステージ」で掲げる“人・企業が集まり交わることで新たな「価値」を生み出す舞台”を具現化したためとしている。
東西で異なるビル外観(西側)
仲通り機能を建物内外から整備・演出した南北通路(1階)
新たに整備したワークスペース(屋上)
新たに整備した屋上農園
共用ラウンジ(7階北側)
1階ELVホール前の柱
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上段はほとんどリリースのコピペ。内覧会では1時間以上にわたり7~8か所を見学した。一つひとつ具体的に紹介したいのだが、その余裕がないのが残念だ。1か所当たり10分もなく、消化不良だったからだ。見学時間は倍あってもよかった。それほど見どころの多いリノベ工事だと思う。以下は興味深かったことを紹介する。
まず、大手町ビルについて。敷地面積は丸ビルや新丸ビルとほぼ同じだが、丸ビル、新丸ビルは100m×100mのほぼ整形なのに対し、大手町ビルは200m×50mの長方形であるのが大きな違いだ。
そして、もっとも異なるのがその歴史だ。記者は30年くらい前まで、仕事の関係でこのビルの飲食フロアを1週間に1度くらい利用した。使用されている仕上げ材は歴史を感じさせるものばかりだ。例えば人造大理石のテラゾー、文様が美しいトラバーチン、アール状の壁、化石が含まれる直径数十センチはありそうな構造柱などだ。今回の工事でもこれらがいたるところに残されている。
驚いたのは耐震性だ。現行基準とほぼ同等の性能を有しているという。昭和30年前半の建物でも、現行法基準を満たしている。これは凄い。当時の数百枚にのぼる設計図書を見た関係者は「感動した」と語った。
気になったのは、建物は敷地いっぱいに建てられているので歩行者空間が狭いことだ。ビルの道路を挟んで南側に建っている大手町タワーや大手町スクエアは公開空地が確保され、区道も整備されているのに、幅員1メートルくらいしかない大手町ビル側の歩道は未整備。こちらを優先して整備するべきではないか。区の神田警察通りの道路整備でかなり辛辣な記事を書いたが、行政は何を考えているのかさっぱり分からない。
関係者によると、容積率を約300%余しているので増築も可能ではないかと思ったが、リノベーションにしたのは、現行の建築基準法に適合させるためには法的なハードルが高かったためだろう。屋上は天然芝ではなく人工芝で、樹木も低木ばかりなのは構造上の問題なのだろう。
素晴らしいと思ったのは、農園スペース「The Edible Park OTEMACHI by grow」だ。運営するPLANTIO(プランティオ)UrbanFormer/CEOの芹澤孝悦氏は「わたしの祖父は1949年(昭和24年)、わが国で初めてプランターを開発した。家庭菜園を有料にしているのはわが国だけ。欧米などはシェアするのが当たり前、スタンダードになっている」などと切り出したのに驚いたのだが、野菜育成アプリ「grow GO」や6種類のAIセンサーを搭載した世界初のプロダクト「grow HOME」には絶句した。日照量・土壌水分量・土壌温度など栽培に重要なデータをアルゴリズム分析により、水遣りの必要性などを伝えてくれるという。
このAIは、手間暇かけて育てる楽しみを奪いかねないが、農業・園芸を一変させる可能性を秘めている。AI機器は販売しないのだそうだが、値段によっては爆発的に売れる。芹澤氏の祖父が開発したプランターの比ではないのではないか。
もう一つ。「LABゾーン」などの観葉植物はほとんどが本物。これまた凄い。丸ノ内パークビル竣工見学会で見た三菱地所の本社オフィスはフェイクがあふれていた(失礼。その後、本物が植えられたとも聞くが)。
階段室
幅1mくらいの大手町ビル側の歩道(左)と整備済みの大手町スクエア側の歩道
左右非対称の歩行者空間(左が大手町ビル側)
AIについて説明する芹澤氏
中高層木造の普及促進へ「WOODRISE」に内外の関係者結集 矢野氏、深尾氏ら会見
矢野氏(左)と深尾氏
国際建築住宅産業協会(会長:矢野龍氏)は5月23日、「WOODRISE 2021 BUSINESS SESSION(BS会)」開催に関する記者会見を行い、国内外の中高層木造建築に係わる関係団体・企業等の交流を深めることを目的にB to B Meeting、社交行事、テクニカルツアーなどを実施すると発表した。
冒頭、BS大会主催団体の国際建築住宅産業協会会長・矢野龍氏(住友林業最高顧問)は、「WOODRISEは、中高層木造建築物の発展のため、技術面や工学的な観点から最先端の知見を集め、あらゆるニーズや将来性を展望することを目的に業界関係者が一堂に結集するイベント」とし、「世界は政治経済とも不透明感を強めているが、地球温暖化の抑止という人類共通の課題解決に資する木造建築の普及をこの大会を通じてさらに進めたい」と述べた。
深尾精一・BS大会組織委員会会長(首都大学東京名誉教授)は、「わが国の中高層木造建築物の事例は飛躍的に増えている。もともと日本は木造中心の国でしたが、過去に都市災害を何度も経験しており、法規制面でも大規模木造建築に対して大きな障壁となっていました。しかし、科学的にしっかりした対策をしていれば木造だからと言って危険なわけではなく、差のような観点から今世紀に入ってから木造だからといって不利にならないよう建築基準法などの法規制は改善されてきている。例えば、現しで表現しても鉄よりはるかに火災に対して強靭なことが証明されている。今国会でもそのような方向で基準法改正の審議が行われている。今大会でも最新の技術を採用した木造建築物の見学が予定されており、現状での日本の取り組みを見ていただくのは主催者として大変うれしい」とコメントした。
会見には、Christophe Mathieu クリストフ・マチュー氏(FCBACEO、次回WOODRISE 2023主催団体)、PierreHurmicピエール・ユルミック氏(ボルドー市長、次回WOODRISE2023開催地首長)、Frédérique Charpenel フレデリック・シャルプネル氏(ヌーヴェル・アキテーヌ地方議会企画国際化代表)も参加し、それぞれ熱い思いを語った。
「WOODRISE」は、中高層木造建築物の発展のため、関係者が一堂に結集するイベントで、フランス(FCBA森林木材総合技術研究所)とカナダ(FPInnovations 建築科学技術センター)が主導して2017年に活動開始。第1回は2017年ボルドー(フランス)、第2回は2019年ケベックシティ(カナダ)で開催。昨年は、2021年10月15日~17日に京都大会を開催し、オンラインと現地参加をあわせ18か国約800名が参加。
京都大会ではコロナ禍で予定していたB toB Meeting、社交行事、テクニカルツアーなどが実施できなかったことから、今回の大会となった。今回の参加登録者は330名、テクニカルツアー参加者は延べ130名。
5月24日から5月27日のテクニカルツアーでは国立競技場、積水ハウスエコ・ファーストパーク、住友林業筑波研究所、大和ハウス工業みらい価値共創センター、ザ ロイヤルパークキャンパス札幌大通公園なども予定されている。
来年の大会はボルト―市で行われる。
左から橋本公博氏(BS 大会 実行委員会委員長)、能勢秀樹氏(住友林業顧問)、深尾氏、矢野氏、Frédérique Charpenel フレデリック・シャルプネル氏(ヌーヴェル・アキテーヌ地方議会企画国際化代表)、ピエール・ユルミック氏、クリストフ・マチュー氏
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深尾先生におしかりを受けた。木造ファンの記者は「中高層木造建築物を普及させるためには建築基準法の耐火・防火基準を緩和すべきではないか」と質問したら、深尾先生は「緩和はだめ。設計者は実験などで検証できない課題はあるけれども、火事に対してより安全な建築手法を考えないといけない」と話した。
もう一つ、矢野氏は興味深いことを話した。「欧米では(燃えないよう)不燃材で木を覆い隠しても、炭素固定の効用などを考慮すれば、価格がイーブンなら木造のほうがいいという考え方がある」と。
なるほど。この考え方は、三井ホーム技術研究所研究開発グループマネージャー・小松弘昭氏が「現しを求めるのは木造コンプレックス」と言い放ったことと同じだ。(それでも記者は深尾先生や小松氏の考え方に同意はできないが)
外貌の呪縛を解き放つか 「現しを求めるのは木造コンプレックス」三井ホーム小松氏(2021/12/9)
歴史ある樹木・緑環境はどうなるのか 神宮外苑のまちづくり始動 三井不動産ら
イメージパース
三井不動産、明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事の4社は5月19日、東京都から2022年3月10日に「神宮外苑地区地区計画」都市計画決定の告示を受けたことにより、プロジェクトサイトを新設し今後の具体的な整備計画を順次公表していくと発表した。
三井不動産らは「スポーツを核とした神宮外苑地区の新たな100年に向け、誰もが気軽に訪れ楽しむことが出来る公園の再編と、広域避難場所としての防災性を高める複合型の公園まちづくり」をビジョンとし、誰もが利用しやすく、安全・安心・快適で魅力的なまちを、各関係機関等との協議を進めながら形成するとしている。
神宮外苑地区地区計画は約66.0haの規模で、大規模スポーツ施設、公園、既存施設等の再編・整備を図る地区(A地区)、明治神宮聖徳記念絵画館、神宮外苑いちょう並木を中心とした緑豊かな風格ある都市景観を保全し、緑と調和した空間整備を図る地区(B地区)、スポーツクラスターへの玄関口として、印象に残る景観形成を図る地区(C地区)からなる。三井不動産などが整備するのはB地区の約28.4ha。
今回のプレス・リリースは、東京都が2018年11月に策定した「東京2020大会後の神宮外苑地区のまちづくり指針」を踏まえ、2020年2月に東京都公園まちづくり制度実施要綱に基づく公園まちづくり計画の提案書を提出し、2021年7月の同制度の適用許可を経て、同年7月14日に都市計画提案を行い、2022年3月10日に「神宮外苑地区地区計画」都市計画決定の告示を受けて行った。着工は2024年で、全体竣工は2036年の予定。
第18回RBA野球大会水曜ブロック準々決勝戦で旭化成ホームズ・今野投手から先制打を放った〝ミスターRBA〟東急リバブル岡住選手(試合は旭化成が勝利し、そのまま総合優勝した)
第30回RBA野球大会(平成30年)水曜ブロック準決勝戦でオープンハウスに快勝した野村不動産アーバンネットナイン(コブシ球場)
この日、台風24号で倒れた球場内の巨木ヒマラヤスギの撤去作業が行われていた(数本倒れた模様)
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記者は、整備計画でテニスコートに変わることになっている神宮外苑軟式野球場にはRBA野球大会の取材で100回は訪れている。全6面あり、それぞれ「日の丸球場」「ヒマラヤ球場」「桜球場」「ケヤキ球場」「大銀杏球場」「コブシ球場」と名付けられているように樹齢100年近くの巨木がたくさん植えられている。
それだけに思い入れが深い。三井不動産らが「新たな100年に向けた多様な緑化を計画」としている緑環境はどうなるのか。同社は「経年優化」「残しながら、蘇らせながら、創っていく」を街づくりのコンセプトに掲げている。歴史ある巨木をぶった切るようなことはしないと思う。
リリースには、樹木について、「神宮外苑創建の成り立ちを踏まえ、計画地における先人の想いや歴史に想いをはせながら1本1本の樹木を大切に扱い、樹木の状態などの詳細な調査を行い極力保存または移植をします。また新たな植栽にあたりましても、計画地周辺に残存する緑地の構成種を中心としつつ、動植物の生息・生育環境にも配慮しながら、例えば市民参加の植樹など、皆様の思いを表すことができるよう、新たな神宮外苑のみどりを作り、守る取組みも検討し、より多くの人々に開かれた良質な公園的空間を実現すべく今後具体的な検討を進めて参ります」と多くのスペースを割いている。
都が平成30年に行った「東京2020 大会後の神宮外苑地区のまちづくり指針(素案)」に対するパブリックコメントには76通の意見が寄せられ、既存樹を残すよう求める声も多数あった。
都もこれらの声を意識したのか、「みどり・交流ゾーン」の建築物の高さは15m以下、いちょう並木沿道の建築物の高さはいちょう並木の高さ以下とするとしている。(記者は建築物の高さを樹木の高さ以下に抑えるのは合理的根拠がないと思うが)
いずれも神宮外苑軟式野球場で行われた第18回大会RBA野球大会
山本の3ランで生還した森を迎える野村アーバンナイン(2018/10/3)
先の台風24号で倒れた球場内の巨木ヒマラヤスギが撤去されていた(数本倒れたとか)
旭化成ホームズ山本が決勝弾 中山は3安打猛打賞の2打点の活躍(2006/10/4)
道玄坂二丁目のホテル棟に「TRUNK(HOTEL) DOGENZAKA(仮称)」 三菱地所
.ルーフトッププール
三菱地所は5月18日、同社が参加組合員として参画している「道玄坂二丁目南地区第一種市街地再開発事業」のホテル棟にテイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)が運営する「TRUNK(HOTEL) DOGENZAKA(仮称)」の出店が決定したと発表した。
ホテルは、渋谷・道玄坂にありながらカジュアルに染まらない、遊び慣れた大人をターゲットにしたラグジュアリーブティックホテル。エリア最大級のルーフトッププールをはじめ、ルーフトップレストラン&バーやシアタールーム、最新ウェルネスを体験できるスパや多彩なジャンルのレストランなどを備える。建物は11階建て延べ床面積約13,000㎡。客室は120~130室、客室面積は28〜120㎡。開業予定は2027年3月頃。
再開発事業は、京王井の頭線渋谷駅に直結、渋谷マークシティに隣接する渋谷区道玄坂二丁目に位置する敷地面積約6,720㎡、延床面積約87,100㎡。30階建てオフィス棟と11階建てホテル棟を整備する。設計は三菱地所設計・山下設計。デザイン総合監修は北川原温建築都市研究所、事業コンサルタントは都市企画。施工は未定。竣工予定は2026年度。
歩行者ネットワーク・交通結節点の機能強化 浜松町駅エリア WTCビル、野村不など
世界貿易センタービルディング、野村不動産、東日本旅客鉄道、東京モノレール、鹿島建設の5社は5月18日、浜松町駅西口開発計画と芝浦プロジェクトに合わせ、浜松町駅エリアの整備計画を発表。駅周辺エリアを広域的につなぐ歩行者ネットワークを構築し、浜松町駅の交通結節点としての機能強化を図る。主な整備計画は次の通り。
①浜松町駅北口を中心に竹芝・汐留方面、芝大門方面の各エリアをつなぐ歩行者ネットワークを形成。線路を跨いで東西を繋ぐ自由通路はJR浜松町駅・東京モノレール浜松町駅の北口に新たに整備される改札(3階レベル)からフラットにアクセスできます。2026年度使用開始予定。
②浜松町駅南口には既存の自由通路に加え新たな自由通路を整備し、混雑緩和やバリアフリーへの対応を図る。新たな自由通路は2024年度使用開始予定。2026年度全面使用開始予定。
③竹芝・汐留方面と芝浦方面をつなぐ歩行者空間として、浜松町駅東側には、旧芝離宮庭園に沿って歩行者専用道路を整備。竹芝・汐留方面と芝浦方面を緑豊かな空間でつなぐ。
④浜松町駅中央改札前にひろがる「中央広場」と、「ステーションコア」と呼ばれる歩行者ネットワークを一体整備することで、JR山手線・京浜東北線、東京モノレール、都営地下鉄、バスターミナル、タクシーの各交通機関とのスムーズな乗換を実現する。
「浜松町駅西口開発計画」は、世界貿易センタービルディング、鹿島建設、東京モノレール、東日本旅客鉄道が共同で開発を進めている東京都市計画都市再生特別地区の特定事業。全体竣工予定は2029年度。
「芝浦プロジェクト」は、野村不動産と東日本旅客鉄道が共同で推進する国家戦略特別区域計画の特定事業。全体竣工は2030年度。