マンション管理適正評価制度 野村不ソリューションズ「ノムコム」に掲載開始
野村不動産ソリューションズは2月27日、3万棟超のマンションを紹介する不動産情報サイト「ノムコム」(https://www.nomu.com/)のコンテンツ「マンションデータPlus」(https://www.nomu.com/mansion/library/)内に、マンション管理業協会が運営する「マンション管理適正評価制度」の管理評価の掲載を開始したと発表した。
同制度の掲載は、東急リバブル、三井不動産リアルティ、アットホームに次いで4社目。マンション管理業協会は2024年度末にはマンション管理適正評価サイトに1万件の登録を目指している。
天晴れ! 日本庭園とつなぐ共用部の演出見事 大和地所レジ「茅ヶ崎東海岸」
「ヴェレーナグラン茅ヶ崎東海岸」
大和地所レジデンスは2月21日、坪単価が約280万円と決して安くないにも関わらず、全111戸をわずか9か月で完売した「ヴェレーナグラン茅ヶ崎東海岸」が竣工したのに伴うメディア向け竣工見学会を行った。文句なし!最高に素晴らしいマンションだ。
物件は、JR東海道本線・湘南新宿ライン・相模線茅ケ崎駅から徒歩15分、茅ヶ崎市東海岸南四丁目の第一種低層住居専用地域に位置する敷地面積約8,236㎡、地上4階・地下1階建で111戸。専有面積は53.89~100.38㎡、価格は4,298万~12,088万円。坪単価は約280万円。販売期間は2021年10月~2022年7月。竣工は2023年2月1日。設計・監理は有限会社恒企画。施工は馬淵建設。
昨年10月7日に発表したリリースによると、評価ポイントは①茅ヶ崎海岸まで徒歩8分、第一種低層住居専用地域内の歴史ある約8,000㎡の敷地に建設される4棟構成の低層マンション。2層吹抜のエントランスやラウンジ、富士山を望める屋上庭園などの共用部が好評を得た②50㎡台~100㎡台の広さ、そしてスカイビューバルコニーやコンサバトリースペース、オープンエアリビングなど111戸に対して63タイプの多彩なプランは、テレワークの普及や様々なライフスタイルのニーズを捉えた③天然御影石を使用したキッチン天板やコンロ前のディバイダ―、全タイプのバルコニーに設置したスロップシンクなどハイグレードな設備仕様とある。
購入者の居住地は、茅ヶ崎市14%、品川区7%、藤沢市7%(東京都48%)、年齢は30代24%、40代22%、50代23%、60代~21%、入居人数は1人9%、2人56%、3人18%、4人8%。
中庭(3階から写す)
中庭のアクアパティオ(右は池にかかる枝垂桜)
パーティルーム
天井高約2900ミリのコンサバトリースペース(額縁付きの風景を演出するデザインが特徴)
◇ ◆ ◇
この物件については、一昨年4月に見学取材し、記事にもしている。かなりの方に読んでいただいたようだ。こちらも参照していただきたい。
今回、商品企画など付け加えることはほとんどない。改めて感心したのは驚異的な売れ行きだ。どこを起点にするかだが、都内居住者が48%を占める。わが街・多摩センター駅から最速で茅ヶ崎駅まで1時間14分。新宿駅や東京駅からだと約1時間、横浜駅からでも約40分だ。駅から徒歩15分だから、歩くのは容易ではない。記者などは30分近くかかる。
海に近い1低層の良好な住宅地とはいえ、ターミナル駅からこれほどかかる立地条件のマンションで、坪単価約280万円などありえない。新宿から30分のわが多摩センターでも坪270万円もしない。常識的に考えたらせいぜい坪220万円だろう。それでも竣工まで完売できる物件はあるかないか。自信のあるデベロッパーなどいないのではないか。
なぜ売れたか。くどくどと書かない。前回の記事を読んでいただきたい。この単価でこれほど優れた商品企画と設備仕様レベルの高いマンションなど絶対に造れない。購入者は海好きで、資金的に余裕のある方だろう。賢明な選択をされたというほかない。
さて、竣工見学会で小生が惚れ込んだのは、アクアパティオ・ウッドデッキ付きの「シーズンガーデン」と名付けられた中庭と、この中庭の借景を取り込んだ約130㎡のパーティルーム・ラウンジだ。
アクアパティオには水道水を循環させたせせらぎが設けられ、池には枝垂桜の枝が掛かるように植えられ、このほかイロハモミジ、サルスベリ、ハクショウ(白松=3本)、カツラ、ロドレイアなどの中高木が配され、低木もふんだんに植えられていた。常緑樹のハクショウは冬季でも緑が必要ということから選定されたという。四季の移ろいによって目を楽しませてくる演出が見事だと思った。
パーティルーム・ラウンジは貸し切りで1時間300円とか。一人で長時間利用するのは高いかもしれないが、プロの料理人を招いて、グループで飲食パーティをするのに最適だ。せせらぎの音を聞き、サクラ、モミジ、サルスベリ、ロドレイアなどの花を眺めながら酒を飲めるなんて最高だ。(タバコは不可のようだが、管理組合が認めればOKになるのではないか)
同社によると、中庭の設計は高崎設計室の高崎康隆氏が担当されている。ネットで調べたら、「中学生で庭の道を志す。東京農工大学林学科で植物生態学を専攻(奥富清先生)。京都大学林学科造園学教室研修員として2年間、伝統庭園の調査・研究をする。…10年間設計と職人仕事を実践。…西洋環境開発に5年勤務。1989年高崎設計室有限会社設立。教育歴:京都造形芸術大学大学院教授…代表作品:2013年二子玉川『帰真園』、受賞歴:2010年度日本造園学会賞・設計作品部門『田園都市の四季の庭』、2012年度日本造園学会賞・技術部門『名勝楽山園環境整備事業』(※学会初の2部門受賞)」とある。
懐かしい。西洋環境開発に5年間勤務されたとか。同社は「七ヶ浜ニュータウン汐見台」や「桂坂ニュータウン」など素晴らしい住宅地を開発した。高崎氏は関わっていないのだろうか。
提供公園
希少の海に近い1低層 水準以上の基本性能・設備仕様 大和地所レジ「茅ヶ崎東海岸」(2021/4/12)
RC+木造のハイブリッド CO2削減と快適性実現 長谷工コーポの賃貸「浦安」
「ブランシエスタ浦安」
長谷工コーポレーションは2月20日、同社が事業主で設計・施工した賃貸マンション「ブランシエスタ浦安」のメディア向け竣工現地見学会を行った。地上7階建ての最上階の7階部分を木造とする同社初のハイブリッド工法とし、かつ環境配慮型「H-BAコンクリート」を採用することで約120トンのCO2排出量を削減。CO2削減とデザイン性・快適性を高めた。
物件は、東京メトロ東西線浦安駅から徒歩7分、千葉県浦安市当代島一丁目に位置するRC造・一部木造7階建て全208戸。間取り/専用面積(戸数)は1K/21.45~22.16㎡(184戸)、1DK/29.09㎡(10戸)、2LDK/47.51~59.83㎡(14戸)。2LDKの賃料は約21万~25万円。竣工は2023年2月15日。事業主は同社と長谷工アネシス、設計・施工は同社(7階部分はグループ会社の細田工務店)。貸主は長谷工ライブネット。
現地は低層・中高層建築物が建ち並ぶ一角で、敷地は南・西・北側に接道。西側は道路を挟んで旧江戸川に面している。建物外観は江戸川の川波を表現した乳白色のガラス手摺りを採用。1階部分には共用施設としてコワーキングスペース、フィットネスルームを備えている。
7階の木造住戸14戸は、共用廊下を挟んで東向きと西向きのシンメトリー形状とし、全住戸に天窓・勾配屋根、ロフトを採用。リビングの最大天井高を3.2m確保。主な設備仕様は、Low-Eガラス、御影石玄関、二重床、2.3mフラットサッシなど。床はシート張りだが、構造材は欧州アカマツ、天井・ロフト格子にはスギ材のほか、木材チップを練り込んだサイディングを採用。
1月末から募集を開始しており、これまでに6戸が申し込み済み。他の1K~1DKは法人向けとして約9割が契約済み。
見学会に出席した同社設計部門エンジニアリング部副事業部長・小島俊司氏は「これまで共同住宅の共用部などの木質化を進めてきたが、住戸部分を木造化したのは今回が初めて。グループ入りした細田工務店との連携の成果が生まれている。双方でタッグを組み、木質化を加速させていく」と語った。
手前は旧江戸川
エントランス
コワーキングスペース
フィットネスルーム
◇ ◆ ◇
同社の説明によると、建築確認は当初RC造として申請、その後、一部木造とするため再確認申請を行ったため、工期は約1か月、内装仕上げに約1か月、合計2か月延びたというが、賃料は周辺相場の坪1.1~1.2万円なのに対し、リビングは二重床、最大天井高3.2m(6階以下は直床、天井高2.5m)、天窓付きロフト、フラットサッシなどを採用して快適性を高めたことで、坪1.4万円に設定することが可能となった。リーシングも順調であることから、木質化の成果ははっきり表れている。
オフィス・住宅の木質化は時代の流れだ。住宅は賃貸だけでなく、分譲への展開も加速するはずだ。
7階共用廊下(天窓付き)
7階住戸内
木造賃貸&ZEH-M 三井ホーム「(仮称)MOCXIONモクシオン四谷信濃町」構造見学会(2022/12/3)
まるで植物園 五感で体験できる 野村不動産 マンション総合ギャラリー「新宿」
「プラウドギャラリー新宿」エントランス
野村不動産は2月20日、新宿野村ビル35階に新たに設けたマンションの販売拠点「プラウドギャラリー新宿」のメディア向け見学会を行った。ギャラリーは2月18日(土)にオープンしたもので、随所に本物の木を使い、観葉植物を配置するなどまるで植物園にいるかのような錯覚を覚えた。同社のギャラリー「武蔵小杉」もよかったが、環境に配慮した施設としては他社を含めて今回のギャラリーが突出している。
ギャラリーは、JR・小田急線・京王線新宿駅西口から徒歩7分の新宿野村ビル35階。広さは約400坪。予約制で、[平日は11:00~18:00、土・日・祝日は 10:00~18:00(定休日は毎週火曜・水曜・木曜)。
今後、東京都内で分譲するマンションシリーズ「プラウド」を比較検討できる拠点とする。オープン時に「王子神谷」と「南阿佐ヶ谷」2物件を紹介し、将来的には10物件以上を取り扱う予定。
首都圏の既存のプラウドギャラリーにはない取組みとして、さまざまなデジタルデバイスを活用した「LABO ZONE」を設置。ヴァーチャル音声案内システムによる情報収集、VR模型、3面スクリーンへのプロジェクター投影を活用した、間取りの可変性体験コーナーなどを設けているのが特徴。
また、ギャラリーは国産木材・再生材の積極活用による環境対応を行うとともに、世界的な基準で健康・安全性を評価する国際認証「WELL Health-Safety Rating(以下、WHSR)」を国内のマンションギャラリーとしては初めて取得。
このほか、受付スタッフは、植物由来の素材「バイオ PET」でつくられた制服を着用。コクヨ監修のもと、お客様のウェイティングスペースからは、オフィス内執務スペースの様子が見えるガラス貼りのオープン空間を設置している。
エレベータホール(左)とエントランス
ギャラリー内
接客ブース
モデルルーム
◇ ◆ ◇
悲しい性か、それとも喜ばしい性向なのか、小生はマンションモデルルームだけでなくあらゆるものを見るとき、美しいかそうでないか、本物か偽物かをかぎ分ける習性が身についている。
今回もそうだ。35階のエレベータを降りたらすぐ、エレベーターホールの壁、ギャラリーエントランスのカウンターなどに格子デザインの〝木〟らしきものに目が留まった。〝まさか〟と思い叩いてみた。カンカンではなく、コツコツという音がした。
そして、全400坪の半分を占めるプレゼンテーションルームや接客ブース、オープンスペースに案内されて、目を見張った。植物園に入ったかのように感じた。また〝まさか〟と思い観葉植物に触れてみた。本物だった(一部フェイクもある)。どこかから甘いアロマの香りが鼻腔をくすぐり、小鳥のさえずりも聞こえてきた。
ギャラリーを案内した同社住宅事業部住宅営業二課営業二課長・頼富龍介氏は、「ギャラリーはわたしたち営業担当と商品企画担当が議論を戦わせて設けたもの。お客さまには五感を通じて体感していただけるようにしました。使用している木は全て国産材、床もクロスも環境に配慮した再生材。飲料容器も同様」と話した。
この時点で同社の力の入れよう、ギャラリーの質の高さ、取材の目的は達せられと思った。疑惑は確信に変わった。〝さすがプラウド〟だと。
小生がこれまで見学したマンション総合ギャラリーは20か所あるだろうか。広さでは710坪の住友不動産「総合マンションギャラリー新橋館」にかなわないが、これほど本物の自然素材をふんだんに用いたものは他にない。(マンションモデルルームでは、積水ハウス「グランドメゾン品川シーサイドの杜」と双璧。観葉植物の量と質では「ザ・パークレックス天王洲[the DOCK]」には負けるかもしれない)
もう一つ、強調したいのは「Mi-Liful(みらいふる)」だ。これは、2015年に同社と長谷工コーポレーション、ブリヂストンの3社が共同開発した「サイホン排水システム」の商品名で、その後、同社も長谷工コーポ施工物件に採用されてきた。
今回のギャラリーでも、かなりのスペースを割いて「Mi-Liful」を紹介しているのだが、同社が直床を除く物件に標準装備していることまでは知らなかった。
これは、大きな武器だ。ライフサイクルの変化によって間取りを変更することが容易だからだ。同業もやろうと思えばやれないことはないが、床下のふところ厚を確保しないといけないので容易ではない。
そしてまた、直床が多い長谷工コーポ施工物件ではほとんど採用されていないことにも気が付いた。これは長谷工コーポがそうしないのではなく、施主が望まないということだ。「床快full」も同じ。全館空調を開発したのは三菱地所ホーム「エアロテック」だが、マンションへの実装戸数では、後発の野村不動産「床快full」に瞬く間に追いつかれ抜き去られた。
野村不動産に独走を許していいのか、沓掛社長(次期会長)の高笑いを容認するのか、鼻柱をへし折ろうとするデベロッパーはいないのかと問いたい。
断っておくが、小生はLosing to Nomura、あるいはDefeated to Nomura(この英語表記は正しいのか分からないが)-野村不動産が勝つか負けるかではなく、隈研吾氏の名著「負ける建築」(岩波書店、英語表記「Architecture of Defeat」)と同じように、避けて通れない環境問題にどう対処するかを問いたいのだ。冒頭にも書いた美しいものは本物か、本物が美しいのはなぜか、偽物は美しくないのか、偽物は美しくなれないのかという問いだ。
70㎡と100㎡のコンセプトルームは、リビング天井高を2450ミリにしているように極めてオーソドックスなものだった。これはお客さんに誤解を与えないとように最低限の基本性能・設備仕様を紹介しているからだと解釈した。
5社ブランドとの連携がいい 野村不の常設「プラウドギャラリー武蔵小杉」(2022/6/25)
自然と共生するワークスペース「コモレビズ」実装した「ザ・パークレックス天王洲」(2022/7/27)
目を見張る 710坪のマンションギャラリー 住友不「汐留」開設/第一弾は「虎ノ門」(2022/1/14)
公園隣接 分譲に負けない設備仕様 圧倒的人気 JKK東京「カーメスト興野町」
「カーメスト興野町(おきのちょう)」
東京都住宅供給公社(JKK東京)の新築賃貸マンション「カーメスト興野町(おきのちょう)」を見学した。2月2日に抽選した結果。募集98戸に対し申し込みが844件に達し、最高35倍、平均8.6倍の応募倍率を集めた理由を解明するためだった。住環境、買い物などの利便性、設備仕様レベルの高さは確認できたが、新たな謎も浮上した。
前回の記事でも書いたが、家賃は安いような気がするが、23区では相対的に安い足立区の賃料と比較してそれほど安いとも思えない。住宅供給公社の賃貸住宅の家賃は「地方住宅供給公社法施行規則」第16条によって「賃貸住宅に新たに入居する者の家賃は、近傍同種の住宅の家賃と均衡を失しないよう、地方公社が定める」と規定されているからだ。
にもかかわらず、どうして冒頭のような信じられない人気を呼んだのか。その秘密を探ろうとJKK東京に取材を申し込み、現地取材は実現した。
行きは、東武スカイライン西新井駅からタクシーを利用したので、アクセスはよく分からなかった。現地に着いたとたん、樹齢70~80年と思われるイチョウ並木の巨木が目に飛び込んできて、広々とした公園に隣接して「カーメスト興野町」はあった。昭和34年(1959年)に建設された全27棟760戸の「興野町住宅」のA号棟エリア7棟200戸を建て替えた住棟だ。公園はJKK東京が整備したもので、人気の要因の一つであることはすぐわかった。
JKK東京公社住宅事業部公社募集課営業推進係係長・山崎一徳氏から詳細な説明を受けた。844件の申し込み者の約3分の1が足立区居住者で、葛飾区、北区、荒川区、墨田区の隣接4区居住者が約15%、そのほかは都内や埼玉県の八潮、草加、神奈川などからも申し込みがあったとか。
主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング・居室天井高2400~2500ミリ、エアコン、床暖房、3口ガスコンロ、給湯(追焚き機能付)、浴室暖房乾燥機、温水洗浄機能付き暖房便座トイレ、洗面化粧台自動水栓、ダブルロック、ディンプルキー、カラーモニター付インターホン、インターネット一括加入(Wi-Fi)、オートロック、防犯カメラ、宅配ボックス、エレベーター(タッチレス対応)、屋上太陽光パネル、蓄電池など。施工は長谷工コーポレーション。
このほか、ハザードマップでは荒川が氾濫した場合は3mの浸水の可能性があることから電気設備は2階に設置し、〝防災3点セット〟としてマンホールトイレ、防災井戸ポンプ、かまどベンチが整備されていた。外廊下のアルコーブは分譲でも見かけないような広々としたものだった。
共用部の「マルチサロン和み」はコワーキングブース3席付きで、トイレは引き戸、多目的トイレ付。中庭は、外から絵画のように見えるよう、ガラスの窓は額縁付きという凝りようだった。
住戸内の仕上げレベルは、食洗機などは付いておらず分譲より劣るとは思ったが、浴室にタオル掛けが付いており、壁、巾木、家具などの隅は面取りがされており、引き戸はソフトクローズ機能付きだった。
そして、山﨑氏が「想定外の人気」と語ったのが眺望だった。敷地南側は公園を挟んで民間の戸建て住宅街で、東京スカイツリーや東京タワーが眺望できるという。北側も高い建物はなく、徒歩12分の110店舗超の「アリオ西新井」も身近に見えた。保育園、幼稚園、小・中学校も徒歩10分圏内に揃っている。
そこで考えた。仮に分譲だったらいくらになるかだ。土地代がただでも坪150万円以下はありえない。20坪で3,000万円。これなら売れるかもしれないが、完売まで1年はかかるのではないか。用地を新たに取得し、南側に公園を整備したら坪230万円以上するはずだ。20坪で4,600万円。記者が販売担当だったら売る自信はない。
取材の帰りは、舎人ライナー江北駅まで歩いた。朝からなにも食べていなかったので、食事ができる店を探したが駅周辺の飲食店は焼き鳥屋さん1軒のみだった。開店時間の4時まで待って入った。この前取材した東武東上線の鶴瀬駅前のラーメン屋さんと同じくらいのメニュー(酒も含めて)だったが、料金は鶴瀬の倍だった。
結論は、入居者は通勤・通学に江北駅を利用せず、西新井駅まで20分歩くか、あるいは自転車か、それとも徒歩4分のバス停からバス約5分の東武大師線大師前駅を選ぶのではないかということだ。大手町まで1時間圏だ。誰かが〝マンションは徒歩7分以内を買え〟といい、その舌の根も乾かぬうちに〝マンションは足立区を買え〟と言った。小生にはそんな選好基準はないが、検討者はどちらを選べばいいのか。謎は残った。
賃貸を選ぶ人と分譲を選択する人、そして戸建てとマンション、新築と中古を志向する人の考え方は明らかに異なる。これはこれで結構なことだとは思うが、どこかに自由な選択を阻むバイアスがかかっているような気がしてならない。
JKK東京が管理する賃貸住宅は200か所約7万戸。23区内の空き住戸は極めて少ないようだが、分譲はどうなったのだろう。かつてJKK東京は分譲住宅も供給しており、バブル期に分譲された分譲戸建て「多摩ニュータウン南大沢四季の丘」(45戸)の平均競争倍率270倍はわが国の史上最高倍率だ。そしてまた、最後の分譲マンションとなった1993年竣工の「ノナ由木坂」(252戸)の売れ残り17戸が〝半値8掛け2割引き〟、つまり当初の価格から7割引きで分譲され話題となった。この値下げ幅も記録として残っている。
「カーメスト興野町(おきのちょう)」(南側の公園から)
額縁付き絵画のような中庭
中庭
「マルチサロン和み」
防災井戸
北側の眺望(8階から)
南側の眺望(8階から)
アルコーブ
面取りされている巾木、キッチンコーナー、カウンター
昭和30年代に建設された「興野町住宅」
江北駅近くの公園(樹木は無残にぶった切られていた)
舎人ライナー江北駅13分の賃貸「カーメスト興野町」98戸 申込み倍率8.6倍JKK東京(2023/2/8)
中野駅前の再開発「パークシティ中野」807戸 建物デザインは光井純氏 三井不レジ
「パークシティ中野」
三井不動産レジデンシャルと三井不動産は2月16日、参加組合員として事業参画している中野区の「囲町東地区第一種市街地再開発事業」の街区名称を「パークシティ中野」と決定したと発表した。住宅は807戸で、2025年12月に竣工する予定。建物ランドスケープは光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所。
施行面積は約2.0haで、中野駅から事業地までペデストリアンデッキで結び、住宅807戸のほかオフィス、商業施設などを整備。設計・総合監修は佐藤総合計画、建物ランドスケープデザインは「HARUMI FLAG」や「パークシティ大崎 ザ タワー」、「パークシティ武蔵小杉 ザガーデン」などを手掛ける光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所。建築デザインは、中野駅前にふさわしいランドマーク性のある外観デザインとし、低層部には歩行者向けの空地やデッキを設けることで、賑わいと回遊性を創出する。
このほか、路地空間や約1,000 ㎡のおみこし広場、2,000㎡超の緑地空間を整備する。
事業は、JR・東京メトロ中野駅から徒歩4分、中野区中野四丁目地内の約10,059㎡のA敷地(住宅棟、オフィス・商業棟)と約3,170㎡のB敷地(住宅棟)。A敷地の住宅棟は25階建て545戸。オフィス・商業棟は12階建て。B敷地の住宅棟は20 階建て262戸。竣工予定は住宅棟が2025年12月。オフィス開業は2026年1月。商業施設開業は2026年春。設計・総合監修は佐藤総合計画。施工は東急建設。建物ランドスケープデザインは光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所。
◇ ◆ ◇
建物ランドスケープデザインを光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所が担当することに注目したい。添付した記事と一緒に読んでいただきたい。
今回のプロジェクトと中野駅を挟んだ反対側では、2024年2月竣工予定の住友不動産が参画する約2.4haの「中野二丁目地区第一種市街地再開発事業」が進行中で、オフィス棟のほか約400戸の住宅棟が予定されているが、賃貸住宅になる模様だ。
「HARUMI FLAG」で美しい花を咲かせたい 光井純氏 建築美を語る(2023/1/30)
調布には迫らないはずだが…リストが販売代理の日本エスコン「橋本」全230戸
「レ・ジェイドシティ橋本」
リストグループのリストインターナショナルリアルティは2月16日、日本エスコンとファーストコーポレーションが売主の「レ・ジェイドシティ橋本」の販売代理を受託し、3月中旬に分譲開始すると発表した。京王相模原線・JR橋本駅から徒歩4~5分の全3棟230戸。リニア中央新幹線・新駅へも徒歩10分であることから、売れ行きが注目される。
今回分譲される物件は、京王電鉄相模原線橋本駅から徒歩4分、JR横浜線・相模線橋本駅から徒歩5分、相模原市緑区橋本2丁目に位置する8階建て「Ⅰ」69戸と「Ⅱ」87戸の計156戸(このほか計画戸数74戸の「Ⅲ」は建築確認未取得)。専有面積は31.81~81.51㎡。竣工予定は2023年11月上旬。施工はファーストコーポレーション。
橋本駅南口より徒歩5分以内のマンション分譲は約26年ぶりで、WEBサイト公開後約3か月で資料請求件数は1,300件を超えている。
◇ ◆ ◇
資料請求件数が多いのか少ないのか分からないが、リニア中央新幹線・新駅へも徒歩10分であることから注目を集めているようだ。
取材を申し込みレポートする予定だが、皆さんは価格をいくらだと予想されるか。記者は今から10年前の2013年の段階で「マンションの単価は現在、駅近で180万円くらいだが、(リニア新幹線の新駅が誕生したら)調布と同じ300万円くらいになるかもしれない」と書いた。翌年の2014年に多摩センター駅圏で分譲された免震の三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス 多摩センター」は210万円くらいだった。
いまはどうか。調布駅の立地条件のいいところは坪350~400万円、多摩センターや聖蹟桜ヶ丘駅圏は坪260~270万円だ。
橋本駅圏では、リリースにもあるように徒歩5分圏内の分譲事例は最近ないが、昨年6月に見学取材した駅から徒歩6分のコンパクトマンション、マリモ「ソルティア橋本」(40戸)は坪320万円だった。
さて、今回はどうなるか。リストも日本エスコンもいまもっとも勢いのある会社だ。わが多摩センターが抜かれるのは間違いない…街のポテンシャルを象徴する「京王プラザホテル多摩」も開業から33年の今年1月15日をもって閉店となった。地盤沈下が否めない。橋本の後塵を拝するとは…。まさか調布には迫らないだろう。
リニア開業後の資産性を訴求 駅圏 初のコンパクト マリモ「橋本」販売好調(2022/6/28)
駅近の免震 最初で最後 三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス 多摩センター」(2014/6/6)
公園隣接・近接 天井高2650ミリ、ワイドスパン…大激戦制すか アンビシャス「鶴瀬」
「アンビシャスガーデン鶴瀬」
アンビシャスの「アンビシャスガーデン鶴瀬」を見学した。1つの公園に隣接、もう一つの公園に徒歩3分の住環境に恵まれた4階建て中層の全69戸で、リビング天井高2650ミリ(一部除く)、ワイドスパンのエアリールーム付きなど商品企画の差別化もできており、坪単価210万円は割安感がある。早期完売する可能性が高いと見た。
物件は、東武東上線鶴瀬駅から徒歩7分、富士見市鶴瀬東二丁目の第1種住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する4階建て69戸。専有面積は54.36~73.18㎡、第1期15戸の専有面積は58.73~73.18㎡、価格は3,630万~5,010万円(最多価格帯4500万円台)、坪単価は210万円。竣工予定は令和5年6月30日。設計・監理はソシアル綜合設計。施工は吉原組。
現地は、区画整理事業により整備が進行中の駅東口からフラットな生活道路を進んだ低中層住宅街の一角。貝戸の森公園に隣接しているほか、緑の散歩道権平山へは徒歩3分。徒歩10分圏内に保育園・幼稚園・小学校が揃っている。ららぽーと富士見へは自転車で約8分。
敷地は東西軸が約120mの細長い形状で、建物は貝戸の森公園に隣接する「GREDEN SIDE」(30)と、戸建て街に面した「AIRY SIDE」(39戸)に分棟。住戸は全て南南東向き。「GREDEN SIDE」の1階は専用庭付き。「AIRY SIDE」は6850~8100ミリのワイドスパンで、約4.5~5.2畳大の多目的利用が可能な「エアリールーム」付き。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高は1階と3階が2650ミリ(2階は2450ミリ、4階は2400ミリ)、食洗機、床暖房、ソフトクローズ機能付き開き戸・引き戸、ホーローキッチンパネル、浴室タオル掛け2か所など。
取締役営業部長・瀬賀崇広氏は「お客さまの反響はとてもよく、公園隣接・近接の住環境のほかワイドスパンを生かしたエアリールーム付き、2650ミリの天井高、その他設備仕様など全体の商品企画の差別化もできています。6か月で完売? できるはずです」と早期完売に自信を見せていた。
貝戸の森公園
◇ ◆ ◇
他社物件を見学はしておらず、競合するかどうかは不明だが、同じ沿線(和光市~上福岡駅)ではプラウド、オハナ、ブリリア、シャリエ、サンクレイドル、プレシス、クレヴィア、パークホームズ、ルピアコート、エクセレントシティ…大手・中堅が入り乱れて大激戦が展開されており、その戸数は約2,500戸(予定含む)にも上っている。
価格(単価)も上昇を続けており、記者が2019年に見学取材した物件より軒並み2~3割アップしている。和光市駅圏では坪単価は300万円をはるかに突破し、志木、朝霞台でも200万円台の後半に迫っている。第一次取得層の取得限界と思われる坪250万円(20坪で5,000万円)を突破する物件もかなりある。
さて、同社の物件はどうか。貝戸の森公園に面した「GREDEN SIDE」は申し分ない。いまは真冬なのでケヤキ、クヌギなどの高木は葉っぱを落としているが、春から秋にかけての借景は素晴らしいはずだ。「AIRY SIDE」の1、2階住戸は前建が気にならないわけではないが、ワイドスパンだからこそ実現した「エアリールーム」付きがいい。この種のプランは少ないはずで、ヒットする可能性を秘めている。(ここでは書かないが、業界は平凡なnLDKから脱却すべき)
このほか、2650ミリの天井高、タオル掛け2か所などは、前述した物件の施工会社からして優位に立てるのではないか。瀬賀氏に教えてもらったのだが、駅から物件まで、自転車も通行不可だが、信号を一つも通らず、線路際と公園を通り抜けてたどり着ける細道もある。
皆さんいかがか。再開発が進行中の駅前から徒歩7分、公園に隣接・近接、ららぽーとに自転車で8分、天井高2650ミリ(一部除く)、他にない多目的ルーム、タオル掛け2か所…これだれ条件が揃い坪単価は210万円。相手に不足はない。販売担当だって燃えないわけがない。早期完売できなければ鼎の軽重が問われる。
72㎡のAタイプ(左)と68㎡のDタイプ
タオル掛け2か所
◇ ◆ ◇
少し視点を変えて、東武東上線のマンション市場を概観してみる。別表・グラフは国土交通省の建築・住宅着工統計から、東武東上線沿線に位置する埼玉県側の各市の分譲住宅着工動向を見たものだ。
分譲住宅であるため分譲戸建ても含まれるが、比率は戸建てのほうが若干多いかほぼ半々とみられる。
これによると、2021年は6市合計で3,058戸となり、2017年比で56.7%増となっている。2022年のデータはまとまっていないが、1~9月の賃貸マンションも含む共同住宅の着工戸数は6,192戸となっており、2021年通期の6,194戸に並んでいる。最近の着工動向からすれば、2022年の分譲住宅は2021年を上回る可能性が高い。前段で戸数は約2,500戸(予定含む)に達すると書いたのを裏付けている。
各市別では、2021年にふじみ野市で975戸と例年の3~4倍に激増しているのは、東京建物など4社JV「Brillia City ふじみ野」708戸が着工されたためだ。2018年の川越市で1,070戸と1,000戸を超えたのは、三菱地所レジデンス・大栄不動産「ザ・パークハウス川越タワー」173戸など複数のマンションの着工があったためだ。
東京都に近い和光市や志木市がほぼ横ばいで推移しているのは、市域面積が狭く、相対的に地価水準が高いことからデベロッパーのターゲット層にマッチしないことなど様々な要因が考えられる。
今後の動向はよく分からないが、大山駅圏では人気のうちに完売した三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス 板橋大山 楠ノ杜」に続いて、いよいよ住友不動産の「シティタワーズ板橋大山」分譲されるし、少し先にはなりそうだが、和光市駅北口では再開発による三菱地所レジデンスなどの超高層マンションが計画されている。東上線は当分デベロッパーの草刈り場になるのか。
建設現場(手前は貝戸の森公園)
和モダン見事に表現 出色の出来アクタス・モデルルーム 明和地所「川越大手町」(2022/10/15)
沿線人気くっきり 坪単価307万円でも販売好調 大和ハウス「和光丸山台」(2021/11/15)
反響3000件超 ランドスケープ抜群 三菱地所レジ他「板橋大山 楠ノ杜」(2021/12/11)
駅前の免震タワーは坪320万円 京王・聖蹟桜ヶ丘を抜き去る 三菱地所レジ他「川越」(2021/12/11)
売れ行き好調 完成販売 駅に近く環境もよい三交不「プレイズ和光市本町」(2019/1/10)
踊り場に差し掛かった中古マンション市場 金利動向から目が離せない レインズデータ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は2月10日、2023年1月の不動産流通市場の動向をまとめ発表。首都圏の中古マンション成約件数は2,581件(前年同月比6.5%減)となり、6か月連続して前年同月を下回った。新規登録件数は16,588件(同31.7%増)、在庫件数は43,688件(同19.3%増)で、在庫件数は12か月連続で前年同月を上回った。
成約価格は4,276万円(同3.1%増)で、20年6月から32か月連続で前年同月を上回った。成約㎡単価は68.31万円(坪単価225.4万円)となり、前年同月比6.4%上昇、20年5月から33か月連続で前年同月を上回った。前月比では2.3%下落した。
新規登録㎡単価は74.31万円(同245.2万円)となり、前年同月比6.2%上昇、前月比も1.9%上昇した。在庫㎡単価は73.94万円(同244.0万円)㎡となり前年同月比4.1%上昇、18年2月から60か月連続で前年同月を上回った。前月比もプラス0.7%となった。専有面積は62.61㎡(同3.2%減)となった。
地域別では、東京都区部の成約㎡単価は100.05万円(同330.0万円)となり、前年同月比5.5%上昇、20年5月から33か月連続で前年同月を上回った。このほか神奈川、埼玉、千葉とも成約単価は上昇したが、多摩は50.11万円(同165.4万円)となり、21年2月以来23か月ぶりに前年同月を下回った。
中古戸建て住宅の成約件数は946件(前年同月比5.1%減)、13か月連続で前年同月を下回った。成約価格は3,827万円(同9.4%上昇)、20年11月から27か月連続で前年同月を上回った。土地面積は151.94㎡(同7.1%増)、建物面積も104.09㎡(同0.2%増)となった。
◇ ◆ ◇
この中古マンションデータをどう読むべきか。在庫数の5.9%(過去1年間で在庫数に占める成約比率がもっとも高かったのは2022年3月の9.0%)しか成約しないのに、新規登録数も新規登録単価も上昇しているのは、一般的な商品ならあり得ない。賞味期間がある食品類なら〝投げ売り〟〝大暴落〟してもおかしくない。
そうならないのは、〝ハコ〟としての住宅の耐用年数は無期限とまではいかなにしろ、向こう100年は顕在(「マンションは廃墟化する」などと、「国家は死滅する」と言ったマルクス・エンゲルと同じような過激なことを仰る方はいるが)だからであり、もう一つは、分譲マンションの賃貸化が進んでおり、売り急ぎなどの事情ではなく、投資対象として市場に出回っていることが考えられる。
マンションの賃貸化に関する正確なデータはないが、首都圏のストック数を約400万戸とすると、少なくともその10%、40万戸以上は賃貸化されていると推測されている。レインズの在庫件数は賃貸化されているマンションの10分11と考えれば、決して多くない。空き家になっている物件もあるだろうが、賃貸利回りと天秤にかけ、売却したほうが得と考える投資家が多いということなのだろう。
であれば、今後の中古マンション市場は金利、賃貸、新築マンション市場動向などによって大きく変化するということだろう。踊り場に差し掛かっているともいえそうだ。
もう一つ、成約、新規登録、在庫の単価がほぼ一貫して上昇を続けている一方で、成約専有面積は反比例するように縮小していることに注目している。2023年1月の専有面積は62.61㎡(前年同月比3.2%減)となっており、過去10年間では2013年1月の66.44㎡をピークに減少し続けている(暦年の最大面積は2009年の65.79㎡)。2013年1月比では3.83㎡(1.16坪)、5.8%減少していることになる。
さらにもう一つ注視したいのは、成約単価の上昇率が鈍化していることだ。上昇率は2022年12月の9.0%に引き続いて2カ月連続して10%を下回った。また、在庫単価上昇率も2022年7月以降は10%を割っており、2023年1月は4.1%増にとどまった。
これらの数値から、実需としての中古マンション市場もまた踊り場に差し掛かっていると言えるのではないか。金利動向から目が離せない展開がしばらくは続きそうだ。
「渋谷駅桜丘口」名称は「Shibuya Sakura Stage」/マンションは坪1,500万円超か
「Shibuya Sakura Stage」
ロゴ
東急不動産は2月9日、渋谷の新たなランドマークとなる「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業」のメディア向け説明会を行い、施設名を「Shibuya Sakura Stage」に決定し、2023年11月30日に竣工、順次開業を進め、2024年夏にまちびらきイベントを実施すると発表した。約90名のメディアが参加した。
再開発は、100年に一度と言われる渋谷の再開発での渋谷駅中心地区の都市基盤整備を完成させるプロジェクト。計画地は、国道246号やJR線により東西方向、南北方向ともに分断されており、渋谷の街の特徴である谷地形の谷底から坂上に跨ぐ地形の高低差が大きい地区で、その難点を解消する駅の新改札口とつなぐ歩行者デッキや周辺地区と連携した縦軸動線「アーバン・コア」を整備し、後背地への接続を実現する。
施設名称には、多様な人々が自らのものがたりを発見・発信する舞台でありたいという想いが込められており、ロゴにはモダンでポップ、躍動感のあるピンクのカラーを採用。
施設のうち、SHIBUYAタワー、セントラルビル、SAKURAタワーの3棟に設けられるオフィスの基準階面積は約2,780㎡(約840坪)。大規模な企業からスタートアップ企業まで、様々な規模の企業の入居が可能。商業施設は約15,200㎡。最先端のトレンドやカルチャーを創出・情報発信を担う。
渋谷駅中心地区で唯一整備される住宅は、「ブランズ渋谷桜丘」155戸、専有面積は約12,800㎡(1戸平均82㎡)。屋上部分には太陽光パネルを設置するなど「環境先進マンション」を目指す。
このほか、外国人ビジネスパーソンに対応した約9,000㎡、全126室のサービスアパートメント「ハイアット ハウス 東京 渋谷」や子育て支援施設、国際医療施設、起業支援施設を併設する。
説明会で同社代表取締役社長・岡田正志氏は、「当社の創業の地である渋谷では100年に一度と言われる大規模再開発が進行中で、当プロジェクトは1998年10月に旧再開発準備組合が設立されてから約25年。約120名の地権者との会合はこれまでほぼ毎週開催され、計640回という膨大な時間を割いて思いを紡ぎ、当社のノウハウ、リソース注ぎ込み、地元の悲願であった街の分断を解消し、渋谷の特徴でもある谷地形を克服する大規模な基盤整備などを行ってきた。この再開発事業は他に類を見ない取り組みであると自負している。
渋谷の街の魅力は、後背地に住宅地を抱え、オフィスエリアと商業エリアが交じり合い、働く、住む、遊ぶ、憩いといったライフスタイルの全てが揃っており、それらがシームレスにつながっていることにある。今回の再開発では、これまで渋谷駅周辺にはなかった緑豊かな憩いの広場、賑わい広場も備えている。渋谷で培われた多様なカルチャーを承継し発展させ、より多様な人々を集め多様な文化を生み出すことを目指している」と語った。オフィスのリーシングについては約6割が契約済みで、竣工まで満床稼働すると自信を見せた。
同社執行役員都市事業ユニット渋谷開発本部長・黒川泰宏氏は、分譲マンション「ブランズ渋谷桜丘」について、「環境先進マンションとして、見たことがない暮らしを実現する」と語った。全155戸のうち50戸弱が同社の持ち分で、他は地権者住戸に充てられることを明らかにした。
施設は、施行面積約2.6ha。「SHIBUYAサイド(A街区)」「SAKURAサイド(B街区)」「日本基督教団 中渋谷教会(C街区)」から構成。事務所、店舗などの「SHIBUYAサイド」は39階建てと17階建て延床面積約184,700㎡、住宅、事務所、サービスアパートメントなどの「「SAKURAサイド」は30階建て延床面積約69,100㎡。「日本基督教団 中渋谷教会」は4階建て延床面積約820㎡。デザインアーキテクトは古谷誠章+NASCA+日建設計。基本設計・実施設計は日建設計のほか、ナスカ一級建築士事務所(SAKURAテラス)、日建ハウジングシステム(住宅部分)など。変更実施設計は鹿島・戸田建設共同企業体。
左から黒川氏、岡田氏、同社取締役常務執行役員都市事業ユニット長・榎戸明子氏
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会見には100名近いメディアが駆けつけた。プロジェクトの目玉の一つである分譲マンションについて、だれかが質問するかと思ったが、だれも質問しなかった。小生も、答えは返ってこないのを承知で手を挙げたが、指名はされなかった。なので、以下は記者の勝手な予想。
まず、渋谷のイメージ。女性の記者の方が「渋谷は若い人の街のイメージ」と質問した。これに対し、岡田社長らは「多様性の街」と答えた。記者もそう思う。100年に一度の再開発で渋谷は一変した。東京駅とはもちろん、新宿や池袋、品川などとは違う。品格にはやや欠けるような気がしないではないが、街の活性化に欠かせない〝若者〟〝よそ者〟〝バカ者〟がみんな揃っている。何だか訳が分からない混沌とした風情が漂う。何かをやってのけるのではないかという大きな不安の分だけ期待も持たせてくれるのが渋谷だ。
だから、〝イメージ〟などといったあいまいな既成概念で渋谷は語れない。後背地には青山、原宿、神宮前、代官山、恵比寿がある。
そんな立地条件を生かせば、坪単価は1,000万円どころか1,500万円でも売れるはずだ。富士山が眺望できる条件のいい住戸なら坪2,000万円でも安いと記者は思う。10坪で2億円、20坪で4億円、30坪で6億円。独り占めできる最上階は数十億円。楽勝ではないか。設計は日本設計と日建ハウジングシステム、施工は鹿島と戸田建設。役者は揃った。
渋谷駅圏の主なマンションについて記事を添付する。
住宅 イメージ図
サービスアパートメント イメージ図
一般分譲されない可能性高まる 旭化成不レジ「(仮称)宮益坂ビルディング建替計画」(2020/6/15)
三菱地所レジデンス 最高値更新の坪850万円「ザ・パークハウス渋谷南平台」(2018/10/4)
感動的ですらある鹿島建設「センチュリーフォレスト」(2012/1/25)
坪単価「400万円台の半ば」新日鉄都市開発「テラス渋谷美竹」(2012/1/13)