もはや価格の問題ではない 東レ建設・総合地所 我孫子で9年ぶりマンション供給
「The FORESIS(ザ・フォレシス)」完成予想図
東レ建設と総合地所が共同で11月下旬に分譲する「The FORESIS(ザ・フォレシス)」を見学した。JR我孫子駅エリアで実に9年ぶりの供給という全263戸の大規模マンションで、3LDKで3,000万円台の前半という価格の安さもさることながら、シニア層からの反響も約3割と多いのが特徴だ。
物件は、JR常磐線我孫子駅から徒歩10分、千葉県我孫子市台田一丁目に位置する14階建て全263戸。専有面積は68.88~83.85㎡、予定価格は2,900万円台〜4,200万円台(最多価格帯3,300万円台)。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は平成31年2月下旬。販売代理は東レハウジング、長谷工アーベスト。
現地は、約20年前から10年間くらいの間に「エールの丘」(482戸)「シティア」(851戸)「グラン・レジデンス」(731戸)「アクア・レジデンス」(424戸)の4棟約2,500戸が次々分譲され、概ね好調に売れたマンション街区に近接。
建物は、全戸南東向きで、駐車場は全戸分確保。住戸プランはファミリー向けの3LDKが中心。ディスポーザー、食洗機、床暖房が標準装備。天井高は2550~2600ミリ。1階住戸は専用サイクルポート付き。
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我孫子エリアで9年ぶりのマンション供給ということは、リーマンショック後は皆無ということだ。
上野東京ラインを利用すれば北千住駅まで22分、上野駅まで34分、東京駅まで40分。東武伊勢崎線なら南越谷駅圏あたりか。にもかかわらず9年間に1件のマンションも分譲されていないとは信じられない。
記者は昭和50年代から60年代、我孫子はもちろん、マンションや建売住宅の取材でJR成田線の布佐、木下、小林、安食などを頻繁に訪れた。多い時では年間に数百戸から1,000戸は分譲され、人気にもなった。
バブル崩壊後でも、前出の我孫子駅から徒歩6分の「エールの丘」(482戸、2000年竣工)が瞬く間に売れたのをよく覚えている。「売れたら頭を剃ってやる」と施工・分譲会社の長谷工コーポの広報担当者と賭けをし、その通り3分刈りしたからだ。坪単価は128万円だった。
そして今回。価格もまた信じられないくらい安い。時代が変わったといえばそれまでだが、かつて「北の鎌倉」と称され、明治から大正にかけ白樺派の文人が多く住んだ「我孫子」のポテンシャルはどうなったのか。
反響の3割が60歳以上というのも考えさせられる材料だ。先に書いたように、我孫子以遠の成田線沿線では昭和50~60年代に1万戸を下らない建売住宅が分譲された。それらのエリア居住者の需要を吸収する可能性もあると見た。
ファミリーラウンジ
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一つ、驚いたことがある。パンフレットとシアターに星野順一郎市長が「市長インタビュー」として登場し、市の住宅地としての魅力、行政サービスの充実、住宅購入を検討しているユーザーへのメッセージなどを語っている。同市は人口減少を深刻に受け止めており、何とか歯止めをかけようと必死の取り組みを行っていることがうかがえる。
例えば行政サービス。同市は平成29年度まで31年間待機児童がゼロという。少子高齢化で要保育児童が減少しているからと思ったが、全然そうではない。1985年の保育園の定員は1,260人で、要保育児童は1,047人。その後、保育園の定員も要保育児童数も漸減しているが、定員は1998年の1,080人を、要保育児童は1992年の734人をそれぞれ底に増加傾向にあり、2017年度の保育園定員は2,217人、要保育児童は2,024人となっている。要保育児童はこの25年間で実に約2.8倍に増加している。厚労省の専業主婦世帯と共働き世帯の推移データとほぼ同じだ。
ここでまた考えた。仮に夫あるいは妻が東京に勤務すると考えると、ドアツードアまで約1時間だ。保育園に子どもを預ける時間を考慮すると1時間30分はかかりそうだ。いま保育料の無料化が検討されている。これはこれで結構だが、働き方改革を一層進め、保育士の確保なども同時に進めないと、子育てファミリー層の都心・駅近志向の動きは止まらない。
もはや価格が高い・安いの問題ではない。一方で都心のアッパーミドル・富裕層向けの価格上昇が著しく、物件によっては飛ぶように売れている-格差是正も喫緊の課題だと思う。
我孫子市の現在人口は約132,000人。同市の人口は平成23年の約136,000人をピークに減少に転じており、平成33年には約127,000人に減少すると推計されている。何もしなければ、それ以降は間違いなく加速度的に減少するはずだ。
坪単価390万円では計れない「ミクストユース」の価値あり三井レジ他「横浜北仲」
「ザ・タワー横浜北仲」完成予想図
三井不動産レジデンシャル(事業比率72%)と丸紅(同28%)は11月16日、駅直結・横浜市内最大規模・最高層の免震超高層マンション「ザ・タワー横浜北仲」の事業説明会・モデルルーム見学会を行い、第1期730戸を11月25日から販売開始すると発表した。第1期の販売戸数、階数、最高8億円の価格は横浜市・神奈川県の最多・最高記録。圧倒的な人気を呼んでいる。
物件は、横浜高速鉄道みなとみらい線馬車道駅から徒歩1分、横浜市中区北仲通五丁目に位置する敷地面積13,135㎡、延床面積168,285㎡の58階建て全1,176戸(事業協力者住戸50戸含む、他に宿泊施設・店舗・事務所等)。専有面積は44.03~212.30㎡、第1期(730戸)の価格は4,500万~8億円(最多価格帯6,600万円台、平均価格8,781万円)、坪単価390万円。竣工予定は2020年2月下旬。設計・監理は鹿島建設。施工は鹿島建設、パナソニックES建設エンジニアリング。
現地は、約7.5㏊の「北仲通北開発等促進地区地区計画」の中心部に位置し、みなとみらい21地区と、歴史を感じさせる街並みも残る関内地区の結節点。2020年6月に移転される横浜市新庁舎にも近接。
敷地内に現存する横浜市の指定有形文化財に指定されている旧横浜生糸検査所附属倉庫事務所を保存し、倉庫棟の復元を図るとともに、駅の出入口を新設、駅前広場を整備。「ミクストユース」の観点から住宅、商業・文化施設、宿泊施設などを整備する複合開発となる。
具体的には、1~3階が商業・文化施設、5~45階が分譲住宅、46階が一般にも開放する展望フロア、46~51階が「オークウッド」が入居するサービス付き長期・短期滞在型宿泊施設(150室)、52~58階がハイグレード分譲住宅となる。
事業説明会に臨んだ三井不動産レジデンシャル執行役員横浜支店長・小西英輔氏は「当社グループが最近力を入れている〝ミクストユース〟という住宅単体だけでなく多様な用途を一体として開発するプロジェクト。文化・歴史も残し、〝街区で暮らす〟という新たな価値を創造する」と話した。
これまで資料件数は約14,200件、来場者は3,600組以上。来場者は神奈川県65%(うち中区、西区、神奈川区が36)、東京都28%。年齢層は30~50歳代まで幅広く、職業は会社員が53%、家族数は2人が約半数。人気住戸は北西向きの約60㎡のSタイプ、南東向きの54㎡のSタイプ。
駅前広場
エントランスホール
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もうあれやこれやと書く必要もない。単価はひょっとしたら400万円を突破するかと思っていたが、390万円に落ち着いた。2期以降もそんなに上昇しないと読んだ。
間違いなく、現時点で横浜市の最高峰マンションだと思う。アッパーミドル・富裕層にもお勧めだが、一般の会社員でも手が届きそうな住戸が分譲される。40~60㎡台だ。もっとも安いのは44㎡で4,500万円だから坪単価は337万円だ。50~60㎡台も1~2スパンはある。価格帯にして5,000~6,000万円台、これがお勧めだ。
なぜ勧めるか。同社も力説したが、このマンションは坪単価では計れない「ミクストユース」の価値があるからだ。それらの付加価値を考慮すると、分譲単価は極めて安い。
ユーザーもそう考えているようだ。一つ面白いことを紹介する。同社は来場者の傾向を示したが、その中の職業で「会社員」53%、「会社役員」14%、「経営者」9%のほかに「その他」が24%もあった。「その他」には医者や弁護士などの富裕層も含まれるのだろうが、記者は「資産家」という職業はないから「無職」の人もかなりいるのではと読んだ。
モデルルームは4タイプ。8億円の住戸の坪単価は1,245万円だか、その価値は十分ある。床、壁などもすべて天然石、突板、本皮などが採用されている。天井高は2,550ミリ(階高3,500ミリ)。
通常階の住戸プランもいい。天井高は2,450ミリだが、階高は3,250ミリ確保されており、柱・梁型が少ない。この価値も大きい。75㎡のタイプでも浴室は1620が採用されていた。
所有・権利関係、議決権、管理・運営がどうなるのかよくわからないが、「1敷地で2建物。管理組合は9つの部会で構成される。これまでにない三井不動産レジデンシャルサービスの『管理者管理方式を採用した』高度な管理を行う」(同支店開発室主査・町田俊介氏)とのことだ。興味のある方は取材すると面白いと思う。
議決権は、面積割合でいえばもっとも広い住戸はもっとも狭い住戸の約4.8倍で、価値(価格)割合は17.8倍となるが…。
8億円のモデルルーム
近接する大正15年築の横浜市第2庁舎
阪急不動産「ジオ千代田大手町」 好調スタート 納得の坪単価約460万円
「ジオ千代田大手町」完成予想図
阪急不動産の「ジオ千代田大手町」が好調なスタートを切った。アドレスは「千代田区内神田」だが、丸ノ内線大手町駅からも徒歩5分の南西角地で、全57戸のうち第1期27戸が先週末に申し込み済み。実需と投資の割合はほぼ8:2という。設備仕様レベルが高く、坪単価約460万円は安いか。
物件は、東京メトロ丸ノ内線大手町駅から徒歩5分(JR神田駅から徒歩6分)、千代田区内神田1丁目に位置する13階建て全57戸(非分譲住戸1戸含む)。専有面積は36.04~112.61㎡、現在分譲中の価格は4,290万~20,800万円。坪単価は約460万円。竣工予定は2019年1月下旬。設計・監理は長谷建築設計事務所(意匠)、木内建設(構造・設備)。施工は木内建設。売主は同社のほか京急不動産。
現地は、商業ビル、店舗、マンションなどが混在する商業エリア。敷地は南西角地。建物は南面と西面がそれぞれ端正なシンメトリー。基壇部は石張りで、中層部はブラウン調タイルと同じマリオンを配し、象徴的な外観としている。
共用部には、和紙作家・堀木エリ子氏、照明はワークテクト、空間デザインは日建スペースデザインを起用。専有部は、キッチンカウンターにLIXILの最高レベルといわれるQストーン(シーザーストーン、フィオレストーンとよく似ている)を採用しているほか、水栓なども高級仕様。
販売担当の鷹野伸氏は「当社としてもかなり力を入れている物件。お住まいになる方が中心だが、資産性を重視されて購入される方も多い」と手応えを感じていた。
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物件名に「千代田大手町」を冠しているのがよく理解できる。東京・大手町から見ると確かに「大手町」の物件だし、一方、神田駅から歩くと、やはり神田かとも思える物件だ。神田と大手町の結節点のような物件だ。
神田エリアではこれまで何件か取材しているが、外観や設備仕様レベルは今回が一番高いのではないか。シンメトリーのファサードが美しいし、堀木氏の2層の和紙アートが飾られるエントランスがまたいい。
エントランスロビー
野村不「プラウド浦和東仲町ガーデン」第1期70戸 坪300万円で即完
「プラウド浦和東仲町ガーデン」完成予想図
野村不動産は11月14日、JR浦和駅から徒歩2分の「プラウド浦和東仲町ガーデン」第1期70戸が即日完売したと発表した。総来場者は328件。
物件はJR浦和駅から徒歩2分、さいたま市浦和区東仲町に位置する全92戸(非分譲住戸8戸含む)。専有面積57.15~95.67㎡。第1期の価格は5,249万~12,699万円(最多価格帯6,300万円台)。坪単価は300万円。施工は東洋建設。
申込者の属性は、年齢平均48.3歳、家族数平均2.5人、職業は会社員63.4%、医師9.8%、公務員6.1%、会社役員4.9%など。
同社は、2002年のプラウド誕生以降、現在販売中の物件を含めて浦和エリアで累計40棟・3,745戸を供給している。
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ニュース・リリースを目にしたとき、坪単価は三菱地所レジデンス「浦和タワー」を超えたかと思ったが、そうではなかった。現地を見ていないので何とも言えないが、坪300万円はリーズナブルな価格ではないか。いま、大宮駅圏で大和地所レジデンスが駅近で分譲しているが、坪280万円くらいではないか。
埼玉県の最高単価マンション 地所レジ・大栄不「浦和タワー」好調スタート(2015/12/14)
トヨタホーム・ミサワ 築地駅直結の「アネシア築地」は坪500万円突破か
「アネシア築地ステーションレジデンス」(天井部分が光壁になっている)
トヨタホームとミサワホームが近く分譲開始する「アネシア築地ステーションレジデンス」を見学した。東京メトロ日比谷線築地駅に直結した全98戸。事前反響がよく、いったい価格はいくらになるか注目のマンションだ。
物件は、東京メトロ日比谷線築地駅に直結、中央区築地3丁目に位置する15階建て全98戸(事業協力者住戸19戸含む)。入居予定は平成31年3月下旬。専有面積は40.84~83.50㎡、価格は未定だが、記者は坪500~520万円と読んだ。施工は不二建設。販売代理は三井不動産レジデンシャル。
現地は、銀座マロニエ通りと聖ルカ通りが交差する2方道路角地で、築地駅直結。地下改札を出てすぐに直結エレベーターが2020年に共用が開始される予定。敷地は元トヨタ自動車のディーラー。
建物は、敷地東-南-西にかけて隣接地にビルなどの高い建物が建っており、メインの住戸は北東、北西向きが中心。プランは40㎡台~60㎡台のコンパクトが中心で、10階までは1フロア8戸、11階から15階は6戸。内廊下設計。
外観デザインは建築家・武田光史氏。基壇部に堅牢な御影石とグラスウォールを採用して水平ラインを強調。上層部にはベージュの磁器質ボーダータイルを用いている。
共用部分のデザインは笠原英里子氏。石造りと木調デザインを使い分けているのが特徴。エレベータホールにはヘキサゴンタイルを採用。エントランスアプローチには野口真里氏のグラスアートを設置する。インテリアデザイン担当は辻昌克氏。無垢の建具、突板や大理石の壁を多用。リビング天井高は2400・2500ミリ。
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さて、価格予想。同社は「反響がものすごくいい」としか話していないので、いったいいくらになるか、予想は極めて難しい。
難点がないわけではない。高層階でも南側の日照・採光・眺望は望めず、住戸の天井も柱・梁型が結構目立つ。天井も億ションにしては低い。
参考になるのは、近接する新富町駅から徒歩2分、築地駅から徒歩6分の野村不動産「プラウド銀座東レジデンス」。坪単価は420万円。来場者から〝思っていた以上に安い〟という評価を得ており、第1期は60戸超でその後も順調に売れているはずだ。広めのタイプが多いのも好評のようだ。
今回の物件は、何しろ駅直結。アドレスも今や全国区の「中央区築地」。当初坪450万円とはじいたが、現地・モデルルーム見学をして、将来の再開発の可能性も考慮に入れて、大幅に上方修正した。コンパクトも多いことから平均して500万円以上、ひょっとすると520万円くらいになる可能性もあると予想した。
モデルルームもよくできている。柱・梁型の問題を解消するため、あるいは逆手にとって梁の部分に光壁を設けたりして空間演出を行っているのがいい。
リビングドアは、オプションだが数百万円はするというトチノキの無垢材を採用しているのが目を引く。
予想を外したら申し訳ないと謝るほかないが、500万円を割ることはないような気がする。これから都心部はどんどん高値更新する。株価の上昇が富裕層の財布のひもを緩めている。
トチノキの無垢材で造られたリビングドア
アパ 「THE CONOE〈三田 綱町〉」は分譲でなく賃貸マンションへ
アパが建設を進めているマンション「THE CONOE〈三田 綱町〉」は分譲ではなく、高級賃貸マンションにすることが分かった。
物件は、東京メトロ南北線・都営大江戸線麻布十番駅から徒歩7分、港区三田2丁目に位置する敷地面積約1,588㎡の9階建て全45戸。専用面積は74.09~217.29㎡。賃料は未定。駐車場は44台(機械式駐車場43台、ガレージ1台)。竣工予定は平成29年11月。設計監修は横堀建築設計事務所。設計・監理は四季建設設計事務所。施工は新日本建設。
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この物件は、同社が着工するという話を聞いたころから注目していた。綱町三井倶楽部の隣接地で、対面は旧社会保険庁。近くには三井不動産レジデンシャルが3年前、坪725万円で分譲し圧倒的な人気になった「パークマンション三田綱町」(92戸)がある。
アパのマンションは、何といっても綱町三井倶楽部の隣接地というのが魅力で、坪850万円くらいになると推測されていた。
ところが、その後、都心部の富裕層向け物件はどんどん高値を更新していった。現在分譲すると仮定したら、坪単価は1,000万円くらいになるのではないかと予想していた。
同社が分譲ではなく賃貸とした理由はわからない。資産として保有するということか。
積水ハウス わが国初の全戸ZEH基準満たすマンション 名古屋市で分譲開始
「グランドメゾン覚王山菊坂町」完成予想図
積水ハウスは11月8日、わが国初の全戸ZEH基準を満たすマンション「グランドメゾン覚王山菊坂町」を11月11日から分譲すると発表した。
全住戸に平均4kWの太陽光発電システムと、燃料電池「エネファーム」を搭載し、省エネ性能を評価する「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」でZEH基準適合評価を住戸単位で取得する。
LED照明などの各種省エネ設備のほか、窓のアルミ・樹脂複合サッシにアルゴンガスを充填した複層ガラスを採用して、開口部の断熱性能を従来比2倍に高め、住戸単位の断熱性能を約1.4~1.5倍に向上させた。
物件は、名古屋市千種区菊坂町に位置する3階建て全12戸。専有面積は82.54~151.84㎡、価格7,000万円台~1億8,000万円台。完成は2019年2月下旬。現地は市内屈指の邸宅街「覚王山」のヒルトップ。
超割安 免震、日建、横入り玄関…質も高い スターツ「クオン流山おおたかの森」
「クオン流山おおたかの森」
今朝、コスモスイニシア「グランフォーラム練馬田柄」の記事では、「朝一番にいい仕事(取材)ができれば一日気分がいいものだ」と書いたが、逆も真なり。終わりよければすべてよし、一日の最後にいい仕事(取材)ができれば気持ちがハイになる。そんなマンションを紹介する。スターツの「クオン流山おおたかの森」だ。坪単価は〝超〟がつくほど割安で、複合施設・共用・専有部分も含めたトータルなプランが秀逸だ。
物件は、つくばエクスプレス・東武アーバンパークライン流山おおたかの森駅から徒歩2分、千葉県流山市流山都市計画事業新市街地地区一体型特定土地区画整理事業施行地区内に位置する14階建て全241戸(分譲:192戸、賃貸:49戸)。分譲の専有面積は65.29~90.62㎡、価格は未定だが坪単価は210万円くらいになる模様。入居予定は平成32年2月。設計は日建ハウジングシステム。施工はスターツCAM。事業主はスターツコーポレーション。売主・販売代理はスターツデベロップメント。販売代理は伊藤忠ハウジング。
プロジェクトは、流山市による流山おおたかの森駅前市有地活用事業のコンペに応募があった3グループの中から同社グループが選定されたもので、集合住宅棟、ホテル・商業棟、公共施設棟の3棟からなる開発面積約11,000㎡の複合開発。
同社グループの提案は、「本事業の目的である市の新拠点核にふさわしい交流空間を形成するとともに、多様な世代の利用者が主役となって施設を利用するための配慮が含まれた提案」「将来にわたっての果たす役割を理解した提案」(流山おおたかの森駅前市有地活用事業 審査結果及び講評)が高く評価され、提案価格審査項目以外の11項目(集合住宅は3グループとも同点)で他のグループを上回り、総合評価160点のうち127.2点を獲得した(他のグループは99.4点と96.0点)。
事業方式は「等価交換方式+定期借地権方式」で、ホテル・商業棟の敷地は50年間の定期借地により流山市からスターツコーポが賃借し、市は公共施設棟と等価となる集合住宅用地を交換することで公共施設を取得。集合住宅棟の賃貸住宅とホテル・商業棟はスターツプロシード投資法人が保有・運用を行う。
設計・施工は、集合住宅棟とホテル・商業棟をスターツCAMが、公共施設棟を大成建設がそれぞれ行う。
集合住宅は、ぺデストリアンデッキで駅と結ばれ、免震構造を採用。認可保育所も併設される。住戸プランは、アルコーブをたっぷり取り、横入り玄関(一部除く)、メーターモジュールの廊下・トイレなどが特徴。
建設現場
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集合住宅の評点はコンペの総合評点全160点のうち5点しか割り当てられていないのは不満だが、3グループとも3.8点で同じだった。選に漏れたグループも「販売実績とブランド力に優れており、確実な実現が期待できる」と高い評価を得ている。
同社のプランは前述したとおりだが、物件の案内をしてもらった伊藤忠ハウジングのプロジェクトマネージャー・高橋陽一氏の説明を聞きながら、気持ちがとてもハイになった。免震、日建の起用、横入り玄関、メーターモジュールの採用などプロジェクトにかける意気込み、企画意図がストレートに伝わってきたからだ。
そして何より、坪単価が210万円に抑えられ、第一次取得層でも背伸びしなければならないかもしれないが、手に届くのがうれしいではないか。記者は230万円くらいを予想していた。(同じ駅圏だけでなく、沿線の他の物件に与える影響は大きいが)
高橋氏も同じように考えていたようで、「わたしも坪230万円くらいだろうと考えていましたが、スターツさんの(地域密着の)企業姿勢が価格にもよく表れている。22年間マンションの販売に携わってきましたが、これほど説明のし甲斐があるマンションは初めて」と語った。
市はいま、「母になるなら、流山市。」という強烈なキャッチコピーのPRポスターを展開している。これに対抗できる首都圏の区市町村はほかにあるか。
模型(手前が公共施設。ホールの客席は503席)
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マンション記事と関係ないが、今年7月、伊藤忠ハウジングがこの物件の販売代理を担当すると聞かされたその日、RBA野球でスターツと伊藤忠ハウジングが対決した。序盤はスターツが3-0でリードしたが、4回に伊藤忠が一挙に7点を奪い逆転勝ち。敗れたほうが予選敗退という負けられない一戦だったため、スターツの予選敗退が決まった。
試合後、乱闘になるのではと恐れたが、スターツナインも紳士。何事も起きなかった。スターツも伊藤忠も頑張れ。
伊藤忠ハウジング 4回に一挙7点逆転勝ち スターツ序盤のリード守れず(2017/7/19)
価格に見合う価値あり 坪280万円 大京穴吹不のリノベ「グランディーノ駒込」
「グランディーノ駒込」
大京グループの大京穴吹不動産は11月2日、全国で4棟目、東京23区では初の1棟リノベーションマンション「グランディーノ駒込」の報道陣向けモデルルーム見学会を行い、11月18日から一般公開し分譲を開始すると発表した。
物件は、JR山手線巣鴨駅から徒歩5分、豊島区駒込4丁目に位置する1997年3月竣工の5階建て全23戸。専有面積は64.22~67.35㎡、分譲戸数(5戸)の価格は5,700万~6,180万円。坪単価は280~290万円の予定。既存建物の設計・監理はアサドコーポレーション。施工は秀建。
現地は、中高層マンションなどが建ち並ぶ閑静な住宅街の一角。建物はオーナーの日本車両製造が豊島区区民住宅として建設したもので、区が20年間借り上げ、20年を経過するとオーナーに返還されるという条件に添って、同社がオーナーから取得したもの。現在13戸が賃借中で、契約満了をもって順次リノベーションし分譲する。
リノベーションに当たっては、共用部のバリューアップ工事を施し、外観はナチュラルなものとし、エントランスにヤマボウシのシンボルツリーを植樹、エントランス・アプローチには自然石の割肌石、ボーダータイル、世帯カバー率120%の住戸専用宅配ボックス「ライオンズマイボックス」、イエローオニキスを採用した光壁などを採用。防犯カメラなどを新設し、エレベータ、玄関扉も更新している。
専有部は、二重床とし、キッチンは「L’sKICHEN」を採用したほか、食洗器、無垢材のドア・格子収納扉などを設置。リノベーション住宅推進協議会が定める「R3住宅」に適合する予定。
同社グループは、業界トップクラスのリノベーションマンション「Reno α(リノアルファ)」、リノベーション戸建て「Reno Terrace(リノテラス)」と合わせリノベーション住宅販売戸数を2021年度までに2,500戸超に拡大するとしている。
「グランディーノ」は、第一弾の「グランディーノ稲毛海岸」(2013年、23戸)をはじめ、「グランディーノ多摩ニュータウン永山」(2014年、30戸)、「グランディーノ西宮 悠学の邸」(2016年、70戸)をこれまで供給している。
モデルルーム
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現地は分譲マンションの取材で訪れたことがあり、坪単価は300万円は高いような気がしたが、その通りとなった。サッシの更新はされていないが、「L’sKICHEN」、無垢のドア・収納扉など設備仕様レベルは高いと思う。共用廊下は滑りにくいものを採用している。価格に見合う価値があるとみた。
マンションの1階の1室を大京リフォーム・デザインの常設ショールームとして一般に公開する試みもいい。床や建具などを無垢材とし、バーチ材のフローリングは一般的な長方形のものではなく、微妙に弧を描いており、大工さんがパズルをはめ込むように1枚1枚施工するものだそうだ。それぞれ12色に塗り分けることも可能という。廊下は自然石を用いたタイル、リビングドア、壁はえも言われぬ淡いブルーが採用されている。
住戸専用宅配ボックス「ライオンズマイボックス」
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一つだけ注文。モデルルーム、ショールームなどの出来はいいのだが、気になったのはあちらこちらに置かれていたフェイクの観葉植物だ。この問題についてはこれまでも書いてきたが、せっかく本物を使用しグレード感がするものを造っても、これでは画竜点睛を欠くし「百日の説法屁一つ」(下品でごめんなさい)のことわざもある。ブランド品を身につけながら、例えば100円ショップで買った指輪、時計(売っているかどうかはしらない)をはめていたら品性を問われる。
模造品にするのは経費を節約するためだろうが、記者は逆効果のほうが大きいと思う。
本物を採用したマンションを紹介する。三井不動産レジデンシャルの「パークシティ武蔵小杉ザ グランドウイングタワー」(506戸)のエレベータホールには壁面緑化サントリー「ミドリエ」が飾られていた。同社のすごいところはこういう心憎い演出をすることだ。三井ですらここまでやるのだから、他社が真似なければ差はつく一方だ。
貧乏人の記者だって一時期は玄関には毎週1回、花屋で買った生花を飾っていた。高価な花など必要ない。ヘクソカズラ(屁糞葛、ごめんなさいまたこんな下品な野草を出して)じゃ具合悪いがドクダミでもオオイヌノクグリ(またまたごめんなさい)でもいい。
模造品といえば、さっきユニゾン八重洲ビル3階で行われた「メセナアワード2017」の発表会場の壁面は美しい無垢材が張られていたのに、飾ってある観葉植物はフェイクだった。せっかくの木が泣いている。
ショールーム
4年前の5割高 坪900万円 野村不「プラウド代官山猿楽町」一般8戸が即完
、「プラウド代官山猿楽町」完成予想図
野村不動産は10月30日、「プラウド代官山猿楽町」の事業説明会と「プラウド六本木」の竣工見学会を行った。「代官山猿楽町」はエリア最高単価の坪900万円ながら一般分譲の8戸が即日完売、他の7戸も契約済み。圧倒的な人気となった。「六本木」は業界内で話題になった物件で、全35戸のうち残りは1戸のみ。双方とも秀逸な商品企画が富裕層に評価された。
「代官山猿楽町」は、東急東横線代官山駅から徒歩5分、渋谷区猿楽町の第二種低層住居専用地域に位置する地上4階地下1階建て全15戸。第2期(2戸)の専有面積は109.69・131.93㎡、価格は24,500万・35,000万円。坪単価は900万円。入居予定は平成30年9月下旬。施工は三井住友建設。外観・エントランス・インテリアデザイン監修は三菱地所設計。
現地は、駅を降り商業エリアを抜けた低層住宅街の入り口に立地、「代官山 T-SITE」に隣接。電線を地中化し周辺の住環境と調和させるとともに、全戸分地下駐車場、住居面積100㎡以上、プライベートパーキング・エントランス・ロッカー付き、2400ミリのハイサッシなどの商品企画が会社経営者、ライセンサーなどに評価された。
第一期(6戸)は最高2倍、平均1.33倍、第二期(2戸)は最高4倍、平均3.5倍で即日完売した。最上階住戸4戸は全て坪1000万円(グロス5億~7億円)。
契約者の年収は1億円~10憶円が約50%、年齢は50歳~60歳代か42%、60歳超か25%、現住所は渋谷区が33%、目黒区が17%、その他23区が25%、その他が25%。
「六本木」は、大江戸線六本木駅から徒歩4分の高台、全戸100㎡以上、天井高2700ミリ、ハイスペックなどが人気となった。残りはモデルルームとして公開している1戸のみ。
現地(背後のタワーマンションは「代官山アドレス」)
プライベートエントランスとホール
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先日、同社の広報担当者に「代官山猿楽町は坪700万円でどうですか」と鎌をかけた。「牧田さんは何も見えてないね」と一蹴された。記者だってそんな安値で売らないのは百も承知。「800万円でどうですか」と畳みかけたら、広報マンはヒラヒラと手の甲で振り払った。
「…」記者はまさか坪900万円になるとは全然予想していなかった。4年前、現地近くで分譲されたNTT都市開発「ウェリス代官山猿楽町」は坪585万円だった。単純比較はできないにしろ、何と5割高だ。それが倍率が付く即日完売とは…。
モデルルームは142㎡。玄関サイドのプライベートエントランス、プライベートロッカーにはうなってしまった。オーダーメイドだから提案できるプランだが、このプライベートエントランスと住戸のエントランス双方を合わせたスペースは15畳大くらいあったのではないか。
パレスホテルに使用されているという御影石のシルバー・ギャラクシーの床、シーザーストーンのキッチンカウンター、ドンプラハの水栓、トルコ・ヴィトラ社製の洗面ボウルなども目を引いた。
「六本木」については、昨年の記事を参照していただきたい。完成した建物の住戸と共用部分のチェリー材の突板が最高だった。
「プラウド六本木」
ラウンジ
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この前、都心部の一等地のマンションは軒並み坪1,000万円をこえるのではないかという記事を書いたが、その通りの展開になってきた。野村不「六本木」のマンションに近接する東急不動産「ブランズ六本木 ザ・レジデンス」(51戸)も坪1,000万円近いそうだ。
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