三菱地所 北海道産木材を使用した国内初の高層ハイブリッドホテル「札幌公園」開業
「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」(ルーバーはカラマツ)
三菱地所とグループのロイヤルパークホテルズアンドリゾーツは9月30日、国内初の高層ハイブリッド木造ホテル「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」を10月1日に開業すると発表した。北海道産木材使用した国内初の高層ハイブリッド木造ホテルで、構造材に使用する木材量は国内最大規模となり、ロイヤルパークホテルズの北海道第一号店舗となる。
施設は、地下鉄大通駅すぐそば、JR札幌駅から徒歩約15分、札幌市中央区大通西1丁目に位置するRC造木造(壁:枠組壁工法・床:CLT)地下1階・地上11階建て延べ床面積延床面積約6,157㎡。客室数は134室。客室面積は19.9 ~47.8㎡。付帯施設:CANVAS LOUNGE「KOKAGE」、レストラン「HOKKAIDO CUISINE KAMUY」、CANVAS ROOFTOP「Outdoor Living SAPPORO」など。建築主は三菱地所。設計・監理は三菱地所設計。施工は清水建設。竣工は2021年8月末。
低中層部(1~7階)は木質化を施したRC造、中層部(8階)1層がRC・木造のハイブリッド造、高層部(9~11階)が純木造。構造躯体に使用する木材量は約1,060㎡となり、そのうち8割がトドマツ・カラマツ・タモなどの北海道産木材。構造躯体に使用する木材量は国内最大規模となる。建物全体をRC造とした場合と比べ約1,380tのCO2発生を抑制する。
フロアは3~8階の「ギャラリーフロア」と9~11階の「キャビンフロア」に分かれており、ギャラリーフロアでは北海道にゆかりがあるアートが楽しめ、キャビンフロアは木造の柱梁のない箱状空間を活かした、木に囲まれた山のキャビンで過ごしているかのような客室となっている。全134室の客室は、北海道の木でつくられた家具やスピーカーを配置するなど、利用者に「北海道を体感する」を提供する「エシカル(=倫理的な)」「サステナブル(=持続可能性)」を念頭に、究極の地産地消を目指す。
外観
レストラン
客室
レコードプレイヤーとスピーカー
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木を多用した高層ホテルでは、三井不動産「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」を見学している。施工は清水建設で、素晴らしいホテルだ。
三菱地所はこの日(9月30日)、地元のメディア向け発表会を行い、動画配信も行っている。画像や動画などでは木の肌触り、ぬくもりが伝わってこないのが残念だが、機会があったらこのホテルと建築家・坂茂さんが手がけた紙と木のホテル「ショウナイホテル スイデンテラス」と合わせて泊まりたい。
フォトセッション
さすが三井不動産 わが国初の本物の木造〝杉乃木〟ホテル「神宮外苑」に誕生(2018/11/13)
積水、旭化成、ケイアイスターが受賞/記者にも見る機会を 第15回キッズデザイン賞
第15回「キッズデザイン賞」記者発表・表彰式(六本木ヒルズ アカデミーヒルズ49で)
キッズデザイン協議会は9月29日、子どもの安全・安心と健やかな成長発達に役立つ優れた製品・空間・サービス・活動・研究などを顕彰する「キッズデザイン賞」の第15回受賞作品234点の中から最優秀賞、優秀賞、奨励賞、特別賞など優秀作品36点を発表した。応募総数は409点だった。
住宅・不動産業界からは積水ハウスの次世代室内環境システム「SMART-ECS(スマートイクス)」が経済産業大臣賞優秀賞「子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン」(一般部門)に選ばれたほか、同社の「台の森プロジェクト」がキッズデザイン協議会会長賞奨励賞「子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン」(リテラシー部門)に、ケイアイスター不動産の「おおきいおうちとちいさいおうちがあるおうち」が同「子どもたちを生み育てやすいデザイン」(個人・家庭部門)に、旭化成ホームズの「子育て家族のコミュニティ創造型集合住宅〝子育て共感賃貸住宅 母力〟」が同「子どもたちを生み育てやすいデザイン」(男女共同参画部門)にそれぞれ選ばれた。
最優秀賞の内閣総理大臣賞は新渡戸文化学園/ VIVITA JAPAN / tokotodesignの「VIVISTOP NITOBE FURNITURE DESIGN PROJECT」が選ばれた。
同賞は、2007年に創設されてから累計応募数は5,785点、受賞数は3,439点となった。
内閣総理大臣賞を受賞した「VIVISTOP NITOBE FURNITURE DESIGN PROJECT」
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他の記者の方はどうかわからないが、この記者発表・表彰式の取材は結構疲れる。年を取るごとにそう感じる。開始されるのは午前10:30で、終わるのは12:00だ。この間、主催者のあいさつに始まり、経済産業省、内閣府、東京都のあいさつ、益田文和・審査委員長の講評、各賞の発表・賞状授与が行われる。優秀作品は36点だから、あいさつなどを除けば単純計算しても1作品について1.7分しか割かれていない。マスク越しだし、記者はおまけに耳が遠くなったので、よく聞き取れない。各作品がどのようなものかさっぱりわからない。
なので、広報事務局に「私は過去何度が記者発表・表彰式を取材させていただいておりますが、受賞作そのものを当日見ることができるものはともかく、施設などは実際に見ることはできません。優秀賞を発表されてから、表彰式までの期間を利用して、各受賞者の了解の上で、個別取材・見学を可能にしてはいかがでしょうか」とメールした。
記者の気持ちが通じたか、益田審査委員長は総評で次のように興味深いことを話された。
益田氏
「オリンピック・パラリンピックがやっと終わった。(私は嫌で)見なかったんですけど、すごく気になったことがある。何で勝とうとするんだろう、勝つことばっかり報道されて、それにみんな感動しているが、私は、一人が勝つためにいったいどれだけの人が負けているか、負けていることが普通であることを学ばないといけないと思う。常に勝つこと勝つこと、あげくの果てに震災に勝ったとかコロナに勝ったとか、勝っていないですけど、それを言い出す。これは大きな間違いです。
だって、自然災害や感染症は目の前にあったら『逃げろ!』です。真っ先に逃げないといけない。子どもは知っている。われわれは足を引っ張っちゃいけない。
実は、キッズデザイン賞は別に勝ち負けをうんぬんしていない。うちはこんなのやったから凄く売れたとか、市場を席巻したとか、そんな話していない。みなさんのいいアイデアや素晴らしい着想、実践を持ち寄って、お披露目して、みんなで見て感心して、できれば自分たちもやってみようと考えていくプラットホーム、対話の場です。このことがとても素晴らしいし、そういう機会を作ろうと私は常に考えている。
私はサステナブルデザインが専門ですので、SDGsなどを考えるにつけ、キーワードがあることに気が付いた。それは、小さくてローカルで、つまり分散していて、オープンで、コネクトされているということです。これが未来の姿、サステナブルな社会、経済の姿です。キッズデザイン賞もみんなそう、そのような仕掛けがある。(中略)
この賞を通じて新しい未来の社会が見えてきているような気がする。何よりもこのことを多分子供たちは感づいているし、ちゃんと評価していると思う。子どもたちと一緒に未来を創っていくつもりでデザインに取り組んでいきたい」
記者は、益田先生のオリンピック・パラリンピックについて話されたことには賛成しかねる。野球だってゴルフだってテニスだってあらゆるスポーツは同じ条件(この同じ条件というのがとても大事)で力やスピード、技、頭脳を競うから人に感動を与える。スコアなどどうでもよければ、だれも見向きもしないし、競技などなりたたない。アスリートはみんな「自己との闘い」を最優先しているはずだ。
しかし、キッズデザイン賞やSDGsに触れられたのはその通りだと思う。先に書いたように、記者もまた作品に触れ、見学する機会を与えられるべきだ。ただ単に受賞作を記事にするのはメディア・ライターの仕事ではない。来年からは記者発表・表彰式の前に見学取材できる機会を与えていただきたい。
もう一つ、お願いだ。益田先生が仰ったことと少し違うかもしれないが、内閣支持率が30%にも満たない、しかも任期(人気)があと1週間もないのにどうして10もの総理大臣賞やら経産大臣賞などを設けるのか。小生はさっぱり理解できない。総理や大臣が作品を見ていないことくらい子どもだって知っているはずだ。〝うそつきは泥棒の始まり〟だ。嬉しく思わないのではないか。タイトルも長すぎる。
それより、19人の審査委員賞としたほうがはるかにいい。子どもたちにも記憶として残るはずだ。
明後日は、ケイアイスター不動産の「おおきいおうちとちいさいおうちがあるおうち」を取材させていただくことになっている。旭化成ホームズの「母力」は住宅も素晴らしいが、ゴーゴリの「母」を連想させるネーミングがとてもいい。積水ハウスの「台の森プロジェクト」は仙台なのでちょっと遠いか。
積水ハウス「SMART-ECS(スマートイクス)」
積水ハウス「台の森プロジェクト」
ケイアイスター不動産「おおきいおうちとちいさいおうちがあるおうち」
旭化成ホームズ「母力」
総理大臣賞に福祉型障がい児入所施設「まごころ学園」 第14回キッズデザイン賞(2020/9/30)
ワンストップで子育て支援 積水ハウス「大網白里市子育て交流センター」(2020/10/3)
続・駅前の限界集落 後期高齢者は4人に1人の割合 〝死中に活〟光明見出す声も
廃屋になっている住宅
「限りなく限界集落に近い首都圏の郊外団地」(平成24年7月27日付)の記事を書いてから9年。この街をまた訪ねた。予測した通りの限界集落に突き進んでいるのか、それとも再生へ方向転換しているのか、不安と期待が入り混じる中での取材だった。高齢化人口割合は44%に達し、75歳以上の後期高齢者は4人に1人の割合というデータからは前者だが、「街は一度死んだほうがいい」と死中に活を求める説得力のあるもあり、結論を出すのはまだ先のようだ。
平成24年1月(左)と令和3年1月の団地人口ピラミッド
前回の記事では、2つの団地の合計世帯数は1,464世帯(昭和44年4月比5.4%減)、人口は3,302人(同46.9%減)と書いた。
その後、住居表示の変更が行われており、現在の人口統計データからは従前団地と正確に比較することはできないが、約9割をカバーしていると思われる数値で比較してみた。
これによると、令和3年1月1日現在の団地世帯数は1,539世帯(前回の平成24年1月1日比1.3%減)、人口は2,890人(同14.4%減)、1世帯当たりの人口は1.8人(同0.4ポイント減)となっている。65歳以上の高齢化率は44.0%(同12.1ポイント増)、75歳以上の後期高齢者の割合は25.6%(同12.9ポイント増)と実に4人に1人の割合に達している一方で、15歳未満の年少人口割合は4.3%(同3.8ポイント減)と大幅に減少している。
人口構成や世帯数などから類推すると、昭和44年比では人口は半減し、空き家・空き地・駐車場の比率も関係者の話からして3割くらいに達しており、独り暮らしの高齢者もかなりの人数に上っていると思われる。
これを人口ピラミッドにした。ピラミッド型でも釣り鐘型でも棺桶型でもない逆三角形型だ。平成24年ではまだ希望のふくらみがあった若年層が激減しているのがよくわかる。例えていえば、もはや地中から水を吸いあげる力もなくなった老木か、あるいは少しでもバランスを崩せば横倒しになりそうな耕作放棄地の破れ案山子のようにも見える。
きちんと整地されている空き地
シャッター商店街
◇ ◆ ◇
前回取材したときはなかった駅前のスーパーに寄ってみた。入口近くには薬品や化粧品が並んでおり、線香のコーナーもあり、大人用の紙おむつなど介護品も多くのスペースを占めていた。生鮮食品はコンビニに負けそうな品揃いしかなかった。
商店街は前回と同様、シャッター商店街化しており、居酒屋などはコロナの緊急事態宣言下でもあるからか、ほとんどが9月末まで休業するとのビラが貼られていた。広い表通りには街路樹が1本も植わっていない。
街並みは、「3分の1は空き家、空き地、駐車場」と居住者から聞いていた通り、乱杭歯か歯抜けトウモロコシ状態だった。前回取材と少し違ったのは、2015年2月に施行された「空き家対策特別措置法」(空き家法)の影響か、雑草が生い茂ったままの廃屋は少なく、地面がコンクリで固められたり、雑草が刈り取られたりしている空き地・駐車場が増えたように感じられたことだ。役所によると、老朽建築物の除却・建て替えに最大50万円(国が2分の1負担)の補助制度を利用したのは過去3年間で11件とのことだった。
1本の街路樹も植わっていない広い道路
空き家になっているアパート兼用住宅か
「売地」の看板が掛かっている空き家
◇ ◆ ◇
団地に隣接する公園のベンチに座ってタバコを吸いながら談笑していた3人の男性に声を掛けた。( )内は記者。
(タバコが値上げになりますが)87歳の男性は「俺、10万円分買った。一番安い『わかば』や『ラーク』など全部で9万7,800円。値上げされると10万5,500円になる。年金生活じゃやっていけない」(…)
続けて、「俺、団地内に4つ(4軒)持っている。昭和50年に1軒買った」(50万円でしょ)「よく知ってるね。そう。そして1年後に隣の一戸建てを100万円で買い、その後10年くらい経ってから900万円で買い増しした。(バブルのころの値段か)そして今から10年前に更地を400万円で買った。4軒のうち3軒は地続きだから60坪。女房? 昨年亡くなった」(お父さん、職業は何だったんですか)「アブラショッコ。17歳からそれ以外の仕事をやったことない」(アブラショッコって何ですか)「車の修理。組合が強かったから稼げた」
70歳の男性は「以前住んでいたところで親父が93歳で死んで、女房は施設に入っているので、8年前からここに引っ越しして一人でアパートに住んでいる。家賃? 3万7,000円。一戸建ては4万5,000円から5万円が相場」
生まれたときから団地の近くに住んでいるという80歳の男性は「みんな人間的にはいい人ばかりだが、どこか病んでいる。俺? とび職だった。全国歩いてた」
そこに、隣町に住んでいるという昭和13年生まれの男性(83)が加わった。「往復2時間、土手を超えて県道に出て田んぼを通って、歌を歌いながら散歩している。歌? 警察予備隊を経験したので軍歌も歌うが、学校唱歌もよく歌う。歌はいいよ。田んぼで大声を出しても誰からも文句言われない。〝勝ってくるぞと…〟〝君の名は…〟〝京都、大原、三千院…〟知ってるか? 」(もちろん)
さらにまた、白い毛の犬を連れた同年代と思われる女性が現れた。驚いたのはその犬だ。何と里芋のように茶色く膨れ上がっ睾丸が股間からはみ出ているではないか。(どうしたんですか)「これ、病気。年齢は16歳。人間なら90歳近い」
3人組は「こうしてここに集まることを日課にしているから、みんなお友達になれる。朝6時半に来るといいよ。オジンオバンが50人くらい集まって体操している」
団地の近くの広い敷地の住宅が多い住宅地に住む30代の女性にも話を聞いた。
「子どもが生まれるのがきっかけで、夫の実家があるここの分譲住宅を買ったのは6年前。土地が30坪ちょっとで価格は1,500万円。買い物は駅前のスーパーを利用しています。団地の商店街はほとんど閉まっているので利用しません。近くできる大型店舗まで歩いて数分。わたし? 普通のパート」と話した。
大型商業施設は駅から約7分の調整区域。実現までずいぶんもめたそうだが、住民の期待は大きいようだ。
股間にぶら下がっている睾丸
大型商業施設の建設現場
◇ ◆ ◇
前回取材したときと同じ不動産会社に取材を申し込んだ。社長(47)が気安く応じてくれた。
社長は「10年前? 覚えていないが多分わたしが応じた。これは私の見解ですが」と前置きしたうえで、「このままでは団地再生は無理。寝たきりだと立ち直れない。一度死んだほうがいい。そうすれば、駅近の地の利が生かせる。2つの敷地を一緒にして、ニーズが高い40~50坪の立派な住宅に再生できる。大型商業施設の工事も始まったし、これをきっかけに光明を見いだし、10年後、20年後には団地は生き返っているかもしれない。当社の業績? 10年前と比べれば地価が下がっているので1件当たりの単価は下がっているが、買い増しニーズを取り込めており、件数は1.5倍くらいに増加し、売上高は堅調に推移している。」と語った。
第三者は口が裂けても口にできない「一度死んだほうがいい」は正鵠を射る言葉ではないか。きれいごとでは済まない現実を見続けている当事者だからこそ言える言葉だ。
先ほど、「人口ピラミッドは破れ案山子」と書いたが、そうではなくてバランスを崩しても倒れない「やじろべえ」と訂正する。死中に活とはこのことをいう。
喫茶店に置かれていたアケビとカボス(利用者の庭で採れたそうだ)
空き家の花にはたくさんチョウが集まっていた
花を植えている空き地も結構あった
美しい庭の家もたくさんあった(白とピンクの花は酔芙蓉、下方は江戸萩)
〝見かけないやつだな、お前は誰だ〟(決して怪しい者ではありません)
セルリアンタワー東急ホテル アクティブシニア向け 年間500万円宿泊プラン開始
「セルリアンタワー東急ホテル」
東急ホテルズは9月28日、東急ラヴィエールと協働し、アクティブシニア層向けの1年間にわたる長期宿泊プラン「ロングステイ 365days」を「セルリアンタワー東急ホテル」で2021年10月1日(金)から開始すると発表した。募集開始から1週間ですでに約30組の応募があるという。
宿泊期間を長期の1年間とすることで、「スタッフが家族の一員のように毎日の暮らしに寄り添い、日常を支える存在となり、我が家のような暮らしがホテルで叶う」をコンセプトにしている。
宿泊プランは、参考部屋タイプ:スーペリアツイン/キング(19~31F、37.6㎡)、参考価格:1室(最大2名)、一括払い500万円(サービス料込・消費税・東京都宿泊税込)、月払いの場合(前払い制)1か月当たり平均42万円。フィットネスクラブの利用やランドリー・駐車場利用無料などの特典のほか、エグゼクティブラウンジ利用券(月5回利用)、バースデーディナー招待券をプレゼントする。
東急は、アクティブシニアに対しワンストップでサービス提供を目指す東急ラヴィエールを設立。本プランは東急ホテルズが企画し、東急ラヴィエールがTOKYU POINT会員を対象とした約36万人(1都3県、40歳以上)に対して、計4回の「いきいきわくわく東急ラヴィエールだより」を配信し、本プランを紹介していく。
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5つ星ホテルに年間500万円で宿泊できるなんて羨ましい。その他、食事代などの費用を含めたら最低で年間1,000万円だろう。「ザ・キャピトルホテル東急」も追加しないのだろうか。
世界に誇れる隈研吾氏デザインの「ザ・キャピトルホテル東急」(2011/2/25)
東急不HDグループ 「森をつなぐ」PJの一環 商業施設で「森のつかい」実施
「森のつかい」キャラクター カタカタ(左)とモリボックリ
東急不動産と東急不動産SCマネジメントは9月22日、環境保全活動「エコマキ」の一環として、自然を守るいきものたちを描いた絵本の展示・動画の上映と、音を奏でる木製のキャラクター「森のつかい」を組み立てるワークショップを関東・関西の全11施設で2021年10月23日(土)から順次開催すると発表した。
開催するのは関東ではデックス東京ビーチ、ノースポート・モール、東急プラザ表参道原宿、東急プラザ銀座、東急プラザ戸塚、東急プラザ渋谷、東急プラザ蒲田。参加人数は各施設とも先着50~180名、開催日時は10月23日から。イベントでは、音のなる「森のつかい」工作キット1つがプレゼントされる。
東急不動産ホールディングスグループは「緑をつなぐ」プロジェクトとして継続的な森林保全の取り組みを推進しており、キットは保全森林である岡山県西粟倉村の間伐材を使用している。
「緑をつなぐ」プロジェクトURL:http://tokyu-midori.com/
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同社の「緑をつなぐ」プロジェクトの代表事例として紹介されている「ブランズタワー梅田North」「渋谷ソラスタ」は観ていないが、「東急プラザ表参道原宿」「世田谷中町プロジェクト」「東京ポートシティ竹芝」は素晴らしい。
「渋谷ソラスタ」に隣接して建設される鉄骨・木造のハイブリッド13階建て「(仮称)道玄坂一丁目計画」の竣工は来年だ。デベロッパーの「木」の取り組み競争が激化しているが、この種の競争はどんどんやってほしい。
「世田谷中町プロジェクト」
「東京ポートシティ竹芝」
基準地価コメント 企業の枠超え持続可能な都市づくり目指す 三菱地所・吉田淳一社長
令和3年 都道府県地価調査は、全国全用途で昨年に引き続き下落となったが、その下落率は縮小した。住宅地の下落率も縮小しており、商業地においては、国内外からの集客増加による店舗・ホテル需要等で上昇していた地域では回復の遅れがみられる一方、都市中心部におけるオフィスの安定的な需要を受け、三大都市圏の商業地は9年連続の上昇となっている。今後も引き続きコロナ禍を契機に加速した人々のワークスタイルやライフスタイルの変化に寄り添いながら、コロナ収束後を見据えて事業を着実に進めていく。
オフィスは、「人が集まって作業をする場」から、「コミュニケーションを通じた社員同士の信頼関係を構築する場」「アイディアの創発を促すディスカッションや意思決定の場」へのシフトが進んでおり、新たなテナントニーズに応え た高付加価値のオフィスは需要が高い。東京駅前常盤橋プロジェクト「TOKYO TORCH」の一部である「常盤橋タワー」(2021年6月末竣工)では、非接触での入館やエレベーター手配、食堂における食事の注文や決済等々が可能になる就業者専用アプリを導入して就業者の利便性・快適性向上を図ったほか、共用スペースを活用した出会いやつながりを生み出す仕掛けを施しており、既に9割の企業が内定しているなど引き合いが強い。
また、多様な働き方を支えるワークプレイスの一つとして2018年より各地域と連携して進めている「ワーケーション事業」では、和歌山県・南紀白浜や長野県・軽井沢、静岡県の熱海や伊豆下田においてワーケーションオフィスを開業・運営している。
今後も、新たな価値を生み出すために必要な交流拠点、多様な働き方を支えるワークプレイスを提案していく。
住宅は、テレワーク活用に伴う郊外需要が高まる一方で、利便性の高い都心エリアの需要も継続している。室内の収納スペースをテレワークスペースに変更する「“work”in closet」や、共用部にワークスペースを設置した住宅など、ニーズを捉えた商品企画を推進しており、特に「ザ・パークハウス名古屋」や「ザ・パークハウス 自由が丘ディアナガーデン」などの販売が好調だ。
引き続き、オフィスや住宅などの垣根を超えた、多様なワークスタイル、ライフスタイルに対応する施策を提案していく。
なお、まちづくりを手掛ける当社では、DXで目指すまちづくりのビジョンを示した「三菱地所デジタルビジョン」を策定し、リアルとデジタルが一体となったまちづくりを推進している。DX を通じて一人ひとりの「個」のニーズに 合った快適なライフスタイルをサポートすることを可能にし、まちに関わる個々人がまちにある機能やサービス、商品等々を使い倒せるような仕組みを構築していく。
また、まちづくりにおいては、SDGsに関する各種施策も積極展開しており、例えば、丸の内エリアのビル18棟と横浜ランドマークタワーの計19棟の使用電力すべてをRE100対応の再生可能エネルギーに切り替えた。
丸の内エリア18棟のCO2削減量は約16万トンで、エリアにおける当社所有ビルCO2排出量の約8割に相当する。2022年度には、丸の内エリアにおけるすべての当社所有ビルで再エネ電力を導入し、その他エリアに おいても積極的に導入する。今後も、一企業の枠を超え、行政機関や地域の企業などと一体となって持続可能な都市の姿を示していきたい。
基準地価コメント 価値観やニーズの多様化に的確に対応 野村不動産・松尾大作社長
今回の地価調査は全国全用途で2年連続の下落となったが、下落幅は減少した。住宅地については全国平均で下落幅は縮小したほか、都心部および近郊の交通利便性の高い地域の引き続きの上昇や、昨年より上昇が見られる 地域の範囲拡大などもみられる。一方、東京圏および大阪圏の商業地については、新型コロナウイルス感染症の感染 拡大に伴う先行き不透明感から、概ね横ばいまたは下落に転じている。
住宅市場に関しては、テレワークをはじめ、「住まう」と「働く」の境界が薄まるなか、価値観やニーズの多様化がさらに顕著になっている。都心・駅前立地の新築物件や、交通・生活利便性に優れる物件の評価は依然高いことに加えて、間数・広さを求めての準都心や郊外物件の販売も好調であり、底堅い需要を感じている。また、中古売買についても、グループ会社における本年4月~6月の首都圏での成約件数が過去最高を記録するなど、コロナ禍を受けた住み替 え需要もまだ一巡したとは考えていない。総じて強い需要を感じる状況ではあるが、引き続き市場環境を注視しながら、多様化するニーズに対して幅広い選択肢で応えていく。
オフィス市場に関しては、エリアによって一時的な空室率上昇が見られるものの、今後は単なるテレワークの導入に留まらない働き方の変化が加速すると想定される。コミュニケーションを重視したオフィス空間への変更や本社機能のあり方変化、郊外拠点やシェアオフィス利用を増やすなど、企業のニーズも非常に多様化している。オフィスに集まる意義やオフィスが生み出す価値を見つめ直しながら、時間と場所を選ばない自由な働き方を実現する空間やサービスの提供を続けていく。
商業・ホテル市場に関しては、緊急事態宣言の影響もあり引き続き厳しい状況が続くことは想定しているものの、ワクチン普及などを含む消費経済活動再開への期待は高まっており、需要の回復を注視したい。
物流市場に関しては、eコマースの拡大などを踏まえ、旺盛な投資意欲が継続するものと想定する。
このように長引くコロナ禍は社会や人々の価値観に大きな影響を与え、不動産関連事業にも様々なニーズの変化をもたらしている。当社としては、グループ全体としてDXやサステナビリティの取り組みを強力に推進しながら、これまで同様、個人・法人に関わらずお客様に寄り添い、ニーズを的確に捉えた独創性の高い商品・サービスの提供を続ける。
地価調査は、不動産の取引動向や中期的な展望を反映したものであり、様々なマクロ指標と合わせて今後も重要指標のひとつとして注視していく。
「開発法」の具体的事例は把握せず 依頼者プレッシャーには触れず 鑑定協から回答
記者が日本不動産鑑定士協会連合会(鑑定協)に対して質問していた、不動産鑑定手法の一つである「開発法」や「依頼者(クライアント)プレッシャー」などについて、鑑定協から9月20日付で以下の通り回答があった。全文を紹介します。
1 開発法について
開発法は更地の評価にあたって適用される手法の一つで、原価法、取引事例比較法及び収益還元法の三手法の考え方を活用した手法とされます。
マンション分譲や土地分譲が最有効使用と判定される更地の評価において広く一般的に適用される手法です。
なお、具体的事例については、不動産鑑定士の守秘義務の関係もあり、連合会では把握しておりませんので、お答えしかねます。
2 鑑定評価の条件について
「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項(国土交通省)」によれば、鑑定評価の条件設定の意義は以下のように示されています。
「鑑定評価に際しては、現実の用途及び権利の態様並びに地域要因及び個別的要因を所与として不動産の価格を求めることのみでは多様な不動産取引の実態に即応することができず、社会的な需要に応ずることができない場合があるので、条件設定の必要性が生じてくる。
条件の設定は、依頼目的に応じて対象不動産の内容を確定し(対象確定条件)、設定する地域要因若しくは個別的要因についての想定上の条件を明確にし、又は不動産鑑定士の通常の調査では事実の確認が困難な特定の価格形成要因について調査の範囲を明確にするもの(調査範囲等条件)である。したがって、条件設定は、鑑定評価の妥当する範囲及び鑑定評価を行った不動産鑑定士の責任の範囲を示すという意義を持つものである」
以上から、鑑定評価の条件設定は、依頼者の最大の利益を引き出す目的のものではないと理解されます。
3 社会的地位の向上について
当連合会では、さまざまな活動によって不動産鑑定士の社会的地位の向上に資するよう努めてまいります。引き続き、ご指導賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
回答は以上となります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
◇ ◆ ◇
記者の質問は以下の通り。
オリンピック選手村の鑑定評価に当たっては、都から依頼された日本不動産研究所が不動産鑑定手法の一つ「開発法」により評価額を地価公示のほぼ10の1の価格をはじき出しました。
一方で、この価格が「不当」として住民らが原告となって都知事に対し、「適正価格」との差額約1200億円の請求を事業者に求める裁判が行われております。
原告側は「適正価格」を算出するに当たって不動産鑑定士に依頼しています。裁判は結審し、年末には判決が出るものと思われます。
私は、原告と被告の不動産鑑定価格はともに瑕疵はないと思っており、都は都民に対して説明責任を果たしているかどうかの問題はさておき、被告側の不動産鑑定が法律的にも手続き的にも違法でないとすれば、被告が勝訴すると思っています。
しかし、言葉は悪いですが、前提条件次第で不動産鑑定価格はどうにでもなることが今回の裁判でも明らかになり、不動産鑑定のあり方が改めて問われることになると考えます。
そこで、お聞きします。
不動産鑑定のいわゆる三手法(原価法、収益還元法、取引事例比較法)と開発法の関係はどのように理解すればいいのでしょうか。私は原価法に近いのではないかと思っていますが。
これまで開発法手法によって鑑定評価された事例はどれくらいあるのでしょうか。具体的事例もお聞きしたいと思います。
前提条件次第で鑑定価格に大きな差が出るということは、貴連合会が問題視されている依頼者(クライアント)プレッシャーを生むことにつながっていると私は理解しますが、いっそのこと、不動産鑑定は、弁護士と同じようにそれぞれの依頼者の立場から最大の利益を引き出すようにしたほうが分かりやすいと思いますが、いかがでしょうか。分かりやすく言えばエージェントです。
不動産鑑定士の合格者の平均年齢は30歳を超えています。司法試験合格者は30歳を切っているはずです。大学を卒業してからとても難しい試験に合格するまで10年間も費やし、それに比して報酬額はとても低い。
私の知り合いは、大学を卒業してから数年後に資格を取得したのに、会社からはびた一文も出ない(宅建士は数万円の手当てを出す会社があります)と嘆いていました。不動産鑑定士の社会的地位の向上のために改革が必要だと思いますが、いかがでしょうか。
以上、よろしくお願いいたします。参考までにこれまでのいくつかの記事を添付いたします。
またも平行線 「早く結審を」(被告)「議事録開示を」(原告)第8回選手村裁判(2020/1/18)
オリンピック選手村裁判 原告側桝本鑑定士の意見書は証拠価値なし 被告側が意見陳述
「HARUMI FLAG」 土地と建物の価格比率は調整区域並みの7:93 算定は妥当
オリンピック選手村住民訴訟も佳境に 原告、被告双方 相手を「著しく」非難
「晴海」坪250万円予想の根拠 「週刊文春」も裏付け 当初単価は244万円と報道
東京2020オリ・パラ選手村 敷地売却価格は地価公示の10分の1以下の?怪?(2016/8/4)
不動産鑑定のあり方が問われている 「士」を安売りすべきでない(2017/3/4)
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質問後にRBAのホームページにアップした記事は次の通り。
選手村裁判 開発法による鑑定手法が適法なら当初の坪単価250万円は妥当(2021/9/19)
選手村裁判 不可解な調査報告書は2つ&掘削工事の事実ない 原告の準備書面(2021/9/19)
選手村裁判が結審 「HARUMI FLAG」利益は消費者(購入者)に還元すべき(2021/9/9)
7/14以降の感染者 累計の半数占める 8月死亡者340人 うち男性66% 都のコロナ
東京都の新型コロナ感染者と死亡者をグラフと表にまとめた。
累計感染者は9月17日現在、370,544人となり、年代別では20代の106,909人が最多で、全感染者に占める割合は28.9%を占めている。以下、30代の73,374人(比率19.8%)、40代の58,685人(同15.8%)の順。人口10万人当たり感染者は2,677となっている。
累計感染者の男女比 男性56.0%:女性44.0%
男女別では男性が207,679人(比率56.0%)、女性が162,865人(同44.0%)。これを年代・男女別にみると、10歳未満は男51.7%:女48.3%、10代は男52.8%:女47.2%、20代が男53.3%:女46.7%、30代が男59.6%:女40.4%、40代は男61.2%:女38.8%、50代は男58.6%:女41.4%、60代は男58.9%:女41.1%、70代は男52.3%:女47.7%、80代は男41.4%:女58.6%、90歳以上は男27.2%:女72.8%となっている。
年代によって微妙に異なるのは、ジェンダー性差(格差)、就業形態、人口構成など複合的な要因が理由と思われる。
直近2か月で累計感染者のほぼ半数 デルタ株の脅威裏付け
累計感染者を若年層が激増し始めた今年7月14日以降とそれ以前では大きな差異がみられる。
これをデルタ株のbefore/afterとすると、7月14日から9月17日現在の感染者は187,593人で、それ以前は182,951人となっており、累計感染者の約半数がこの2か月間で感染したことになる。デルタ株が猛威を振るっていることが数字からもうかがえる。
年代では、20歳未満の感染者はbeforeの15,499人(比率8.5%)からafterの28,214人(比率15.0%)へ人数、比率とも大幅に増加している。20代もbefore の26.9%からafterは30.8%へ3.9ポイント上昇。このほか30代、40代も比率はそれぞれ1.4ポイント、0.7ポイント上昇している。
逆に、ワクチン接種効果だと思われる70歳以上のafterはbeforeから7.4ポイント減少し、人数は約9,800人減少している。同じように60代は半減し、50代も人数、比率ともafterは減少している。
累計死亡者は340人 男性65.6%:女性34.4%
8月の累計死亡者は340人(9月18日現在)で、男女別にみると男性223人(比率65.6%)で、女性は117人(比率34.4%)となっている。調査対象は異なるが、累計感染者の男女比は56.0%:44.0%だから、男性のほうが際立って多いことが分かる。
年代では80代の91人(比率26.8%)が最多で、以下、70代の63人(比率18.5%)、50代の57人(比率16.8)、60代の49人(比率14.4%)となっている。
年代別・男女別では、年代が低いほど男性の比率が高く、高齢者は比率が低くなっているが、これは感染者の男女比を考えると、高齢者もやはり男性のほうの死亡率は高いと言えそうだ。
この点について、厚労省のQ&A(2020年10月時点)では「新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、重症化する人の割合や死亡する人の割合は年齢によって異なり、高齢者は高く、若者は低い傾向にあります。 重症化する割合や死亡する割合は以前と比べて低下しており、2020年6月以降に診断された人の中では、①重症化する人の割合は 約1.6%(50歳代以下で0.3%、60歳代以上で8.5%)②死亡する人の割合は 約1.0%(50歳代以下で0.06%、60歳代以上で5.7%)となっています。
新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち重症化しやすいのは、高齢者と基礎疾患のある方、一部の妊娠後期の方です。重症化のリスクとなる基礎疾患等には慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、 心血管疾患、肥満、喫煙があります」としている。
選手村裁判 開発法による鑑定手法が適法なら当初の坪単価250万円は妥当
今回の選手村裁判は、鑑定手法・前提条件が異なれば、価格はいかようにもなることが明らかになった。
東京地裁はどのような判決を下すかわからないが、仮に被告の東京都が勝訴すれば、日本不動産研究所が当初はじき出した用地の坪単価32万円(1種8万円=記者推定)による「HARUMI FLAG」の分譲坪単価250万円は極めて妥当な価格で、分譲価格に占める土地価格:建物価格の割合が7%:93%という調整区域か林地に建つマンション並みというのもまた納得できる。
そうなれば、原告側が「原告らの準備書面(15)」で主張する「広大な本件土地を時価の10分の1以下という水準で売却したということで、不動産鑑定制度の信頼性、土地の公正な価格水準を破壊するだけでなく、ひいては将来的には、不動産価格市場の安定性、公平性までもゆがめるものである」という懸念は拭い去れないが、ここでは開発法による今回の鑑定手法が適法ということを前提条件に原告側の桝本鑑定の問題点を指摘することにした。
当初の分譲単価250万円は極めて妥当
「原告ら準備書面(14)」では、「被告側調査価格の問題点」の一つに「販売価格が著しく低額である」とし、「被告側調査報告書ではそもそもマンションの販売(予想)価格について、8年後も含めて十分検討されておらず、70数万円(平米当たり)で想定されていたが(但し、板状棟)、実際の販売価格が平均価格で大体90万円(平米当たり)を超えており、これだけ販売価格が著しく低額であると、調査価格を押し下げることになる。タワー棟はまだ販売されていないが、同様に調査価格91万6,000円(平米当たり)は低過ぎると言わざるを得ない(原告桝本は120万円(平米当たり)と想定)」と述べている。
しかし、これは明らかに間違いだ。調査報告書が作成されたのは2016年であり、開発法手法が妥当とすれば、この手法によって導き出された坪32万円(1種当たり8万円=記者想定)から分譲単価を割り出すと70数万円(坪単価約250万円)は妥当な価格だ。記者はその時点で「アッパーで坪250万円くらいではないか」と書いたが、今でも記事は間違っていないと思う。
よって、販売価格は著しく低額とは言えない。実際の販売価格90万円(297万円)は、むしろ高いと思う。1種8万円という〝ただ同然の価格〟で土地を取得したのだから、それを分譲価格に反映させ、利益は購入者に還元すべきと考えているからだ。
タワー棟の調査価格91万6,000円(坪302万円)も極めて妥当な値段だと記者は考える。桝本鑑定士は120万円(坪396万円)を想定しているようだが、これは価格時点ではありえない単価設定だ。当時(2016年時点)で三井不動産レジデンシャルが分譲した「パークシティ中央湊」の坪単価は440万円だった。今年から分譲開始された勝どき駅前の再開発マンション「パークタワー勝どきミッド/サウス」でも坪単価は425万円だ。
不動産鑑定を否定する利益折半やるべきでない
さらに言うなら、小池都知事が「最終的な住宅分譲販売収入が当初の想定を1%以上上回った場合、増収分の半額を特定建築者が東京都に追納することで合意した」と2019年7月に発表した特別条項を適用するのは基本的に反対だ。利益折半などというのはやくざのやることだ。不動産鑑定制度を否定し、「開発法」を有名無実化するものでもある。
準備書面はまた、「桝本鑑定士の尋問に対する批判は考慮に値しないこと」の中で「販売単価について」も言及しており、「日本不動産研究所の予想販売価格は、実際の販売価格よりも1㎡当たり15~18万円、割合にすれば20%程実際の価格よりも安く算定していたということである。日本不動産研究所の調査報告は平成28年2月23日付(これは平成28年4月23日付の誤植=記者注)であり、HARUMI FLAGの価格が発表されたのは令和元年7月である。すなわち、日本不動産研究所は、わずか3年5か月後の販売価格について、実際の販売価格と2割もずれた価格を前提に計算していたのであり、この点について水戸部証人は何ら合理的な理由を述べていない」としている。
この指摘も当たらないと記者は思う。そもそもが「開発法」を用いた予想販売価格(鑑定価格)は、先に指摘したように価格時点つまり2016年4月の時点の価格をはじき出したものだ。土地代を1種8万円と想定すれば妥当な単価設定だ。
また、準備書面は「わずか3年5か月後の販売価格について…」としているが、バブル崩壊もリーマン・ショックも3.11も今回の新型コロナも同様だ。一寸先は闇のことなど誰も予測できない。調査報告書はそのような未来予測を含めて価格を算定したのではないのは明らかだ。
ただし、「水戸部証人は何ら合理的な理由を述べていない」というのはよくわからない。記者は民事訴訟のことなどさっぱりわからないが、当事者の原告、被告が嘘をついても罪には問われないはずで、証人も「嘘はつきません」と宣誓しなければ偽証罪に問われないのではないか。
水戸部証人は別の尋問で「覚えていない」を多発されたようだが、不動産鑑定士の資格をはく奪されるのではないかと心配し、金縛りにあって説明できなかったのか。これまた不思議だ。
選手村裁判が結審 「HARUMI FLAG」利益は消費者(購入者)に還元すべき(2021/9/9)