坪245万円に納得 コロナ禍で半分以上を成約 三井不動産レジ「柏タワー」
「パークホームズ柏タワーレジデンス」
三井不動産レジデンシャルが分譲中の「パークホームズ柏タワーレジデンス」を見学した。柏駅から徒歩4分の免震21階建て全191戸で、新型コロナ過の6月下旬に分譲開始したにも関わらず、すでに100戸超を成約・申し込み済みとするなど極めて順調に進捗している。
物件は、JR常磐線・千代田線。東武鉄道野田線柏駅から徒歩4分、千葉県柏市柏4丁目に位置する21階建て全191戸。専有面積は40.10~85.79㎡、9月中旬に販売予定の第2期(戸数未定)の予定価格は2,938万~5,798万円(最多価格帯4700万円台)、専有面積は40.10~79.40㎡。坪単価は245万円。竣工予定は2021年8月下旬。施工は三井住友建設。
6月下旬に第1期90戸を分譲、その後追加販売し、これまでに100戸超が成約・申し込み済み。専有面積85㎡の角住戸21戸は全戸完売済みで、79㎡の住戸14戸も残り1戸。
第1期の購入者属性は、柏市内居住者が61%、その他周辺が15%、23区が15%、年代は30代が39%、40代が23%、50代が13%、60代が18%、家族数は1人が23%、2人が34%、3人が25%。
現地は、そごうの駐車場跡地。住戸は全戸南向きで、住戸プランは40㎡台の1LDKが12戸、61・62㎡台の2LDKが41戸、70㎡台の3DLKが103戸、79㎡台の3LDKが14戸、85㎡台の4LDKが21戸。主な基本性能・設備仕様は免震構造、開口部に梁型が出ない「Sulatto3フリーノンビーム」、リビング天井高2450ミリ、ディスポーザー、食洗機、トイレ引き戸(一部除く)、防犯ガラス(一部)、可動式ルーバー、など。共用施設はパーティルーム、スタディルームなど。
販売を担当する同社千葉支店営業室・山本陽介販売事務所所は、「販売は極めて順調。お客様は柏に住むことに抵抗感がないようですし、城東エリアは坪300万円くらいしており、価格的な優位性もあります。競合する物件もありません。『南船橋』も分譲開始しました。坪210万円くらい。好調なスタートを切りました」などと語った。
モデルルーム
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他の物件を取材したとき、「三井さんの『柏』は坪230万円くらい」と聞いていた。小生は内心「それはない。最低坪250万円ではないか。そんなに安く売ったら後発が困る」と思った。大京が6年前に分譲した近接するタワーマンションは230万円だったが、その時も随分安く売ると感じていた。
山本氏に単価を確認して納得もした。同社は郊外物件では高値追及をあまりしないのが従来からの販売戦略だ。設備仕様レベルは他の〝パークホームズ〟と同じとみた。
「南船橋」は今年2月、三井不動産の物流ICT体験型ショールームを見学取材したとき、現地を確認している。「坪単価は200万円を下回ることはない。坪210万円はどうだろう。この単価だったら70㎡で約4,500万円。そんなに的を外していないはずだ。同社は高値追求をしないと読んだ」と書いた。
どうやらその通りのようだ。この物件の取材もお願いすることにしよう。
現地(北側から写す)
縦格子の円形平屋デザインが美しい 安藤忠雄氏の「神宮通公園トイレ」完成 日本財団
「神宮通公園トイレ」
日本財団が安藤忠雄、伊東豊雄、隈研吾、槇文彦氏ら16人の著名なクリエイターを起用し、渋谷区の公園17か所にトイレを建設したうえ市に寄付し、維持管理は同財団と市・渋谷区観光協会が行うプロジェクト「THE TOKYO TOILET」の一つ、建築家・安藤忠雄氏が担当した「神宮通公園トイレ」が9月7日、報道陣に公開された。近く供用開始される。
施設は、渋谷駅から徒歩渋谷駅から徒歩5分(原宿駅から徒歩9分)の渋谷区神宮前6-22-8に位置。先に開業したばかりの「MIYASHITA PARK」に道路を隔てて隣接する。名前は「あまやどり」。直径10.5m、外周約33.0mの円形の平屋建てで、外周に張り巡らせた縦格子(素材はアルミ合金の模様)が美しい。
【あまやどり】 安藤忠雄氏コメント
小さな〝あずまや〟なりに、公共トイレという機能をだけではない、都市施設としての意味、パブリックな価値を持つものでありたい。そのもっともシンプルかつ明快な回答として、円形平面の棟から、屋根庇が大きくせりだし縁側をつくる造形を考えました。安全で安心な空間とするため、外壁は風と光を通すたて格子とし、利用者が円形を描くその壁に沿ってグルリと通り抜けられるようになっています。「神宮通公園」の木々の緑の中にひっそりと佇むこのトイレ、名付けて「あまやどり」です。
多機能トイレ
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記者が見学するのは、完成した7か所のトイレのうち4か所目。みんな素晴らしい。今回の安藤氏が担当した「あまやどり」は、外周の格子越しに光を施設内に巧みに取り込むデザインが美しく、外観は風格もある。縦格子の素材が木だったら、隈研吾氏とひと悶着起きるのではないかと心配になったが、木でも鉄でもなくアルミ合金のはずだ。
街行く人は〝なんだろう〟と立ち止まること請け合いだ。入ったきり出てこない人ばかり…ということにならないことを祈ろう。
値段は、前回の記事を参照していただきたい。
〝カア、カア〟 俺の色を真似るな!俺の塒を荒らすな!と異議を唱えたのか、歓迎の声だったのかはカラスに聞いていただきたい
日本財団 渋谷区公園トイレ整備に17億円 「西原一丁目」完成/真逆の児童遊園(2020/8/31)
東京都 新型コロナ感染者1カ月で大きな変化 20代女性が最多に 20代男性は48%減
冒頭の表・グラフを見ていただきたい。左の表・グラフは8月5日~8月22日間(以下、A)の20代男性・20代女性・30代男性の東京都の新型コロナ感染者の推移で、右の表・グラフは8月23日~9月5日間(以下、B)のそれだ。大きな変化が読み取れる。
感染者は、Aでは20代男性が660人、20代女性が562人、30代男性が500人(全体は3,585人)なのに対し、Bでは20代男性は342人、20代女性は384人、30代男性は308人(全体は2,535人)となっている。感染者が減少していることもさることながら、20代女性の感染者が20代男性を上回っていることが大きな特徴・変化だ。AからBへ20代女性は31.7%減、30代男性は38.4%減なのに対し、20代男性は48.2%減少している。
もう少し詳しく見てみよう。感染者の数を年代・性別に分け、その数を1位、2位などと順位づけるのは感染者に失礼で、小生も違和を覚えるのだが、新型コロナと最前線で戦っているのは間違いなく若い世代だ。分かりやすくするために順位付けしたことを理解していただきたい。
Aでは、20代男性は14日間で間に実に11回トップに立ち、2位は1回、3位は2回となっている。20代女性は1位が3回、2位が9回、3位が2回。30代男性は1位がゼロで、2位は6回、3位は8回だ。(回数がトータルで14日にならないのは同数を同じ順位にしたため)
ところが、Bでは様相が一変する。20代女性が8回トップに立ち、2位は4回、3位は2回。20代男性は1位が5回、2位は6回、3位は3回。30代男性は1位が2回、2位が6回、3位が7回となっている。
この変化は何を意味するか。小生はこの半年間、ほとんど休まず東京都の年代別・性別コロナ感染者数データを記録している。コロナは科学だ。ジェンダー性差を色濃く反映していると思う。読者の皆さんも考えていただきたい。
一つだけ言えるのは、第一波の時も第二波の時も、20代の女性が常に〝主導権〟を握っていることだ。
若い人で溢れかえる 「立体都市公園制度」を活用した三井不「MIYASHITA PARK」
「MIYASHITA PARK」(写真提供:三井不動産)
新型コロナの影響で当初予定の6月から7月27日延期され、その後段階的に開業となった三井不動産の公園・商業・ホテル・駐車場の複合施設「MIYASHITA PARK」を見学した。「立体都市公園制度」を活用したPPP(パブリックプライベートパートナーシップ)施設で、見学した9月3日(木)は平日であったにも関わらず、若い人などで溢れかえっていた。かつて路上生活者の〝住まい〟となっていた公園は一変した。
「立体都市公園制度」は、平成16年に都市公園法を改正し創設された制度で、様々な都市課題を解決するため、都市公園の地下を多目的に利用したり、建築物の屋上や人工地盤上に公園を設置したりすることを可能にした制度。同制度を活用した施設は横浜市の「アメリカ山公園」がある。
事業は、老朽化した宮下公園の再生・利活用増進を図るため、渋谷区が平成26年8月に公募型プロポーザルにより事業者を募集し、同27年2月に三井不動産をPPPによる事業者として決定。同29年4月の都市計画変更を経て、同29年8月に期間30年の定期借地権契約を締結。2020年4月に竣工した。
商業施設名称は「RAYARD MIYASHITA PARK(レイヤード ミヤシタパーク)」で、様々な「ヒト・モノ・コト」が集まり、それらが複層的に交わることで新しい価値が生まれる場所という想いを込め、“層・重なり”という意味の「LAYER」に、「RAY(光)+YARD(庭)」=光の当たる庭という意味を加えて「RAYARD」と名付けられた。同社の公園一体型のブランドだ。
1~3階の店舗フロアには、日本初出店の6店舗、商業施設初出店の31店舗をはじめ業種業態に捉われない様々な店舗約90店が出店。個性豊かな渋谷の新たな「ストリート」となっているのが特徴。
南街区1階には、日本の古きよき横丁文化を発信する「渋谷横丁」を構え、2、3階には公園のアクティビティと親和性の高いスポーツブランドやカルチャーブランドを配置。原宿エリアやキャットストリートと繋がる北街区1、2階には高感度なファッションブランドを揃えている。
施設は、渋谷駅から徒歩1~2分、南街区が渋谷区渋谷1 丁目、北街区が渋谷区神宮前6 丁目に位置。全長約330m、敷地面積約10,740 ㎡、延床面積約46,000 ㎡。商業棟の南街区は1~4階建てS造15,922㎡(駐輪場2階1,404 ㎡含む)、北街区は1~3階建てS造・SRC造・RC造10,649 ㎡(地下駐車場階除く)とホテル棟4~18階(240 室)、渋谷区立公園、駐車場375 台(南街区97台、北街区278台)から構成。プロジェクトアーキテクトは日建設計、設計・施工は竹中工務店。公園は専用使用権を設定し、区が運営する。三井不動産は総額235億2,100万円を支払う。
「RAYARD」ブランド第2号施設として、PFI事業による名古屋市の久屋大通公園「RAYARD Hisaya-odori Park(レイヤード ヒサヤオオドオリパーク)」が9月18日(金)に開業する。
「sequence MIYASHITA PARK」(写真提供:三井不動産)
「sequence MIYASHITA PARK」ラウンジ(写真提供:三井不動産)
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記者は9月3日(木)の14:30~16:30の約2時間、1階から3階の商業施設、4階の屋上公園、ホテルを見て回った。
もともとデパートなどの商業施設は好きではなく、この6か月間は繁華街に立ち寄ったこともないので、混んでいるのかそうでないのか判断できないが、その光景は異様に映った。
当然のこととはいえ、新宿駅や東京駅を行き交う人々とは全く異なっていた。10人のうち7割くらいは20代から40代の若い人で、ファッションショーから抜け出してきたような目も彩な、肌も露わな女性が圧倒的に多かった。小生のようなくたびれたスーツを着た年寄りはほとんど皆無(当たり前か)だった。
カップルだけでなく女性同士で手をつなぐ人も多く、ソーシャルディスタンスとは無縁の世界が広がっていた。昼日中というのに、電車の車両と同じように席がすべて埋まっている飲食・居酒屋なども少なくなかった。
とはいえ、コロナ対策を怠っているようには見えなかった。随所に消毒液が置かれていた。小生が利用したその場で醸造したワインが飲める「渋谷ワイナリー東京」では、マスク1枚がプレゼントされた。
来街者数人におずおずと「コロナは怖くないですか」と声をかけた。友だちが感染した人も含めて口では「怖い」といいながら、顔はみんな「大丈夫」と語っていた。-こういう人たちがafter&withコロナをリードしていくのだろうと思った。
施設エントランス(以下、写真は全て記者。人が少ないように見えるのは、映り込みを極力避けたため)
「渋谷横丁」
店舗の植栽(全て本物の観葉植物だった)
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従前の「宮下公園」にはほろ苦い、甘酸っぱい思い出がある。星降る寒天の夜(当時は都心でも星がきれいに見えた)、公園のベンチに体を寄せたあい(当時は夜ともなると人もまばら)、〝あの星のように永遠に輝き続けるようなあなたにする〟などと永遠の愛を誓った。その数年後には、〝花を愛せる人になって〟の殺し文句、三行半の台詞でもって捨てられるとは夢にも思わなかった。もう50年も昔だ。
あれ以来、あちこちにテントが張られている光景を取材の行き帰りに横目で眺めたことはあったが、公園を訪れることはほとんどなくなった。区がナイキジャパンにネーミングライツ(命名権)を売却するため、路上生活者を排除したときからも10年が経過した。
われら団塊世代やここを塒にしていた路上生活者は、今の「MIYASHITA PARK」を訪れたらどのような思いを抱くだろうか。
隣接の路地裏のんべい横丁(ここだけは50年前と変わっていない)
ナイス 同社元会長・平田氏らと合意 142百万円の支払い受ける 金商法違反問題
ナイスは9月3日、金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書の提出罪)の容疑で、証券取引等監視委員会の強制調査、横浜地方検察庁の強制捜査を受けた問題について、不適切な会計処理を行った元代表取締役会長・平田恒一郎氏、元代表取締役副会長・日暮清氏、元取締役・大野弘氏ら元関係役員に対しその責任を問うため弁護士を通じて協議を行ってきた結果、同社が蒙った損失の補填として平田氏らから現金総額142百万円の支払いを受け、平田氏が100%株式を保有しているゼニヤニシサダ及びエイワ設計などの株式を同社グループ会社が譲り受けることで合意したと発表した。
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この事件の初公判が9月4日横浜地裁で行われ、平田、日暮両被告と同社はいずれも無罪を主張したとメディアが報じた。
三菱地所 生産者-産地-消費者つなげる屋外空間「バスあいのり3丁目テラス」開業
「バスあいのり3丁目テラス」
三菱地所は9月4日、アップクオリティと協業し、日本各地から産地直送で届く食材を活かしたメニューや地域の魅力を楽しむことができる、緑あふれる屋外空間「バスあいのり3丁目テラス」をオープンした。オープンに先立つ3日、報道陣向けにオープニングレセプション&メニュー試食会を開催した。
現地は、新宿通りから一歩入った、伊勢丹新宿店にも近い路地裏のような雰囲気がある二方道路の角地で、広さは約70坪。日本中から届く新鮮で珍しい食材を使用。地域の食文化を発信するとともに、地域と地域の食材を組み合わせたマリアージュメニューも提供していく。食材はバスタ新宿などで受け取り、そのまま施設へ納品される。
新型コロナの影響を受けて日本各地の往来が縮小し、各地の農林水産物の販路も縮小しているなか、旅客用高速バスの空きトランクを活用した新しい地方特産品運搬の仕組み「産地直送バスあいのり便」を活用し、地方の農産物の継続的な消費・購買につなげると同時に、様々なイベントを通じて生産者・産地と消費者をダイレクトにつなげていこうとするもの。
オープニングレセプションの冒頭、主催者のアップクオリティ代表取締役・泉川大氏は、「産地直送バスあいのり便は、高速バスのトランクは埋まっていないケースが多いことに着目し、効率よく地方の産品を東京で流通させようと2018年に立ち上げたプロジェクト。現在、全国の30社のバス会社と連携し50地域56路線とつながった」とプロジェクトの経緯について説明した。
三菱地所エリアマネジメント企画部担当部長・井上成氏は、「新型コロナの影響で消費は伸び悩んでいるが、生産者-バス会社-都市生活者を結びつけることで明るいニュースを提供したい。ここを拠点に日本全体を盛り上げたい」と語った。
施工を担当した東邦レオ代表取締役・吉川稔氏は、「CSVの視点も重視して緑の心地よい空間を作り上げた」と挨拶した。
レセプションでは、山梨県の生産者や直売所とつながる日本初オンライン直売所や、香川県三豊市とオンラインでつながる旅ナビゲーションのプレゼンテーションも行われた。
施設は、東京都新宿区新宿三丁目16 番先に位置する敷地面積約70坪。三菱地所の所有地。営業時間は平日11:00~22:00、土日祝12:00~22:00(年中無休)。設計・施工はNI-WA、東邦レオ。暫定施設として利用するため、建物は移動・撤去ができるように台車の上に乗っているよう施工されており、建基法などの規制の緩和を受けている。
「産地直送バスあいのり便」は、全国農業協同組合中央会、農林中央金庫、三菱地所、大丸有環境共生型まちづくり推進協会、アップクオリティの5者が2018年8月から行っている取り組み。全国50地域56路線(2020年8月現在)と連携し、旅客用高速バスのトランクに配送ルートの確保がネックとなり県外へ出荷できていない希少品や伝統野菜、朝どれの野菜、水産物などを積み、丸の内エリアに定期搬送。丸ビルなど14か所でマルシェを開催・販売している。
メインビジュアル
全景
左からumari 古田秘馬氏、 井上氏、泉川氏、吉川氏
「山梨農業女子」(左)と香川県三富氏の「父母ケ浜」
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記者は第二部(17:00~18:30)に参加した。試食会では、「オリーブ車海老と遠野パドロンのグリーンカレー」(1,200円)「しまししとシャインマスカットのタコス」(580円)「高知わら焼きカツオのスーパーフードサラダ」(980円)とビール(700円だったか)を頂いたのだが、とてもおいしかった。
帰りには山形県鮎川村のバラ、三重県の伊勢茶ティーパック、山梨産農業女子プロジェクトが生産したジュエルマスカットのお土産まで頂いた。
左からサラダ、カレー、タコス
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敷地は70坪で前面道路幅も4~5mくらいしかないから、オフィスビルには不向きで、マンションもリスクが大きい。それでも地価は少なくとも坪5,000万円はするはずで、70×5,000=35億円だ。同社にとって金利負担など微々たるものだろうが、ただではない。施設整備費、運営費などを回収できるのだろうかと疑問に思ったが、さすが三菱地所だ。
単に地方の再生・活性化の活動を支援するCSR(Corporate Social Responsibility)にとどまらず、新たな価値創造に結び付けていくCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)の視座が明確であることは、井上氏の挨拶からも伝わってきた。同社がブランドスローガンに掲げる「人を、想う力。街を、想う力。」の実践だ。
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驚いたのは緑が豊富だったことだ。低木はもちろん、中高木もたくさん植えられており、つくばいも設けられていた。
施工した東邦レオ・吉川稔社長に聞こうとしたら、「わたしは全然分からない。担当者に聞いて」と、一級造園施工技士・屋上緑化コーディネーターの資格を持つクリエイティブリノベーションチームの原田宏美氏を紹介された。原田氏によると、「都心のオアシスにするため雑木林のようなものにした」そうで、中高木はウラジロガシ、モミジ、サツキ、ヤマボウシ、ソヨゴなど30種、下草などを含めると50種くらい植えられている。スズムシも鳴いているという。
植栽
三菱地所ホーム 木造の常識を覆す新構法「FMT」 富裕層・非住宅用途に照準
「ROBRA(ロブラ)」モデルハウス(駒沢公園ハウジングギャラリーで)
三菱地所ホームは9月3日、「世界初!木造住宅の常識を覆す柱や梁に捉われない自由な建築を可能にする新構法&ブランド発表会・内覧会」を行った。世界初の技術特許を取得した木造と鉄骨を組み合わせたハイブリッド「Flat Mass Timber構法(フラットマスティンバー構法)」(以下、新構法)を開発し、設計の自由度を高めたのが特徴で、新商品ブランド「ROBRA(ロブラ)」として9月5日から1棟単価5,000万円以上の富裕層や非住宅向けに販売開始する。
発表会に臨んだ同社代表取締役社長・加藤博文氏は「2015年4月に社長に就任した時から、建築上の制約も多い2×4工法には物足りなさを感じ、他社に先駆ける商品開発にチャレンジしたいと考えてきた。コロナ禍で4月に予定していた発表会は中止せざるを得なかった。今回は満を持しての発表会。新構法は木造住宅の概念を180度変えた。森林問題にも対応できる。住宅のみならず非住宅への展開も可能になる」とアピールした。
新構法と新ブランドについて説明した同社執行役員・月田徹氏は、「構想に5年以上、商品化に3年の歳月をかけた。空間の概念も、暮らしの概念も、デザインの概念も変えた。『木造を、アートにする。』のがコンセプト」と、商品に込めた思いを語った。
新構法は、厚さ150ミリのヒノキ材の集成材厚板パネルにH型鋼と接合金物を組み合わせることで接合部の脆性破壊の問題を解決。耐震等級3を維持しながら構造壁量は通常の2×4工法の1/6から1/7に抑えることを実現。構造壁を外壁に使用する必要もなく、各階層をずらしたり曲線にしたり、木を現しにすることも可能にした。跳ね出しのスラブは最大3.1m、二方向でも最大2.8m×2.3m確保できるようにしたのが特徴。
ラテン語で木を意味する「ARBOR」を逆さにした新商品ブランド「ROBRA(ロブラ)」のモデルハウスは、駒沢公園ハウジングギャラリーに建設。建物面積約104㎡、3階建て延べ床面積約272㎡(82坪)。新構法の特徴を表現するため、各フロアを自由な方向にスライドさせ、木や石を外観にちりばめることで自然素材の経年変化が楽しめるようにしている。室内空間のデザイン・設えは、全館空調「エアロテック」を標準装備し、高級材などをふんだんに用いてはいるが華美な装飾を避けている。
坪単価は約150万円~。同レベルのRC造と比較し2割くらいのコストダウンが図れているという。
壁の重さは450㎏/立方m。4トン車が通れる幅員4m以上の道路でないと構造壁の運搬が難しく、通常の2×4工法と比べ工期は1カ月くらい長くかかるのが難点のようだ。
構造模型
「ROBRA(ロブラ)」模型
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冒頭の写真を見ていただきたい。3層の建物はそれぞれ積み木細工のように捻じれている。しかも1階も2階も3階も正面部分には構造壁は使用されていない。鉄やコンクリなら技術的に可能かもしれないが、「木造一部鉄骨造」の建物ではまず考えられない。読者の皆さんも、このような「木造一部鉄骨造」は見たことなどないはずだ。
いまだにどうしてこのような建物の建設が可能になったのかよく分からないが、訳が分からなかったのは小生だけでなかった。他の一般紙の記者も「分かりやすく説明してほしい」と質問した。月田氏は建基法の規制について語ったが、建築技術に関する基本的知識がない記者が新構法を理解するのは至難の業だ。
実は、小生は似たような経験を最近している。8月19日に見学した大和ハウス工業「Dタワー西新宿」の外殻チューブ構造がそれだ。1辺9本のコンクリート柱を4辺の外壁に取り込み、その間隔を等間隔ではなく、最小1.8mから最大6mまでアトランダムに配置されていた。
設計を担当した日本設計建築設計群主管・淺見泰則氏から「通常の鉄骨鉄筋造のビルは構造計算上不具合が生じるが、外殻チューブ構造を採用したことで偏心が可能になった」と説明を受けたのだが、何のことかさっぱり理解できなかった。
今回の新構法もおそらく技術的には近いものがあるはずだ。
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モデルハウスについては、同社商品開発部商品開発グループ課長・原祥子氏から微に入り細を穿つ説明を受けた。原氏は同社の最高ブランド「オーダーグラン」の設計を担当しており、これまで何度もお会いしている。話はとても分かりやすく、面白い。今回も「設備仕様レベルは『新宿』と同じで、約1,000万円かけた」-この一言でレベルの高さがわかった。
ダイニングテーブルの大理石は文様が左右対称になるよう1枚の石を2つに割って張り合わせた〝ブック張〟を採用しており、ダイニングセットの価格は500万円、来客時に隠したい書籍を隠すことができる書棚は250万円、ケミカル製品に見えるインド産のバンブー(竹)でできたリビングの敷物は34万円、玄関ホールのベンチは北海道産の樹齢98年のナラの無垢材で67万円…。
原氏はナラ材のベンチを「ご注文いただければお家にお届けします」などと記者をからかい、「辛口にしないで」と何度も念を押した。原さん、わたしは「辛口」しか飲まない。
500万円のダイニングセット
34万円の竹が素材のカーペット
見せたくない書籍が隠せる250万円の書棚
67万円のナラ材のベンチ
◇ ◆ ◇
発表会では、ジャーナリストの津田大介氏をゲストに迎え、これからの住生活をテーマに月田氏とのトークショーも行われた。
津田氏は、「声をかけていただいたときは、何でぼくなのか驚いた」「ライフスタイルが多様化し、新型コロナは職住融合を加速させるきっかけとなった」などと語った。
月田氏は「職住融合は新型コロナがあったからではなく、オーダーグランのテーマの一つ」「これまでの2×4の技術では、メーカーと競合すればするほど結果的にみんな同じようになってしまう。今回の新構法には夢とロマンを込めた」などと応じた。
(記者は、時に過激な発言もされる津田氏がなにを話すかも今回の取材の楽しみの一つにしていたのだが、なんだか肩透かしを食らったような気がした。〝表現の不自由と住宅の自由〟をテーマにしていれば、新構法のよさに比してあまりにも貧弱な小生の表現力のその落差の大きさが伝わったのではないか)
左から月田氏、加藤氏、津田氏
大和ハウス 初のオフィスブランド「Dタワー」西新宿に完成 コンクリを外観に魅せる(2020/8/19)
伊藤忠都市開発 マンション総合ギャラリー 第2弾「有楽町イトシア」開設
「ギャラリークレヴィア有楽町イトシア」
伊藤忠都市開発は9月2日、都心・東エリアの新築分譲マンションの販売拠点、「CREVIA(クレヴィア)」ブランドの情報発信拠点となる総合ギャラリー「ギャラリークレヴィア有楽町イトシア」を開設し、2020年10月3日(土)にグランドオープンすると発表した。
2020年2月8日にオープンした「ギャラリークレヴィア新宿」に続く2拠点目で、マンションを販売する施設だけでなく、マンション購入を考えている人や購入されている人も自由に集い、交流し、楽しめる場とする。
「DESERVE.住まいを嗜む、オトナのマンションギャラリー。」をコンセプトに、ホテルのラウンジのようなラグジュアリーな空間をイメージしてデザインした。内装や調度品には、西陣織のクロスや切子照明、組子スクリーンなど、日本の職人が手掛ける伝統工芸を設え、『CREVIA』のブランドカラーであるブルーを基調とした落ち着いた空間になっている。
2020年9月5日(土)に事前案内会開始となる「クレヴィア上野御徒町」を皮切りに「クレヴィア山吹神楽坂」「クレヴィア日本橋水天宮前AMACHORESIDENCE」など5物件の販売を予定している。
ナイス 自然災害に備えた「防災の家」発売 断水時でも3日間の飲料水確保
ナイスは9月1日、一戸建住宅商品「パワーホーム」の新シリーズとして、自然災害に備える「防災の家」の販売を開始したと発表した。
高い耐震性や耐風性を確保することで基本性能を高め、災害発生後、ライフラインが途絶した場合にも安心して暮らし続けられるよう自家発電設備や貯水タンクなどの災害対策設備を備えているのが特徴。また、平時から災害発生に備える収納力の確保など提案している。
具体的には、オリジナル接合金物と集成材を組み合わせ、高い構造信頼性を実現する「パワービルド工法」により、日本住宅性能表示基準における耐震等級3を確保。引き違い窓には耐風シャッターを装備。小窓には高い水密性と耐風圧性を確保したアルミ樹脂複合窓を、屋根材には一般的な陶器平板瓦の約半分の重量となる瓦を採用する。
停電の際には太陽光発電と蓄電池とエネファーム(燃料電池)の三つの電池が連携、断水時にも最大36リットル(4人家族の場合の3日分に相当)の飲料水を非常兼用給水栓から取り出せるようにしている。玄関脇の大容量ストレージ、小屋裏収納、ローリングストックパントリーも備える。
フージャースHD PFIによる大阪府堺市の「原山公園再整備運営事業」オープン
「原山公園再整備運営事業」プール
フージャースホールディングスは8月31日、同社グループのフージャースリビングサービスを代表とする企業グループ原山公園PFIが進めてきた大阪府堺市の「原山公園再整備運営事業」を9月1日にリニューアルオープンすると発表した。
同事業はPFI法に基づき「子どもから高齢者まで誰もが健康づくりを楽しむきっかけを作る公園」をコンセプトに原山公園PFI2017年から再整備を行ってきたもの。
リニューアルオープンする原山公園は、新たにウォータースライダー併設の屋外プールや地域住民の健康増進に寄与するウェルネスパークとしての温水プール、フィットネスエリアを整備し、「住民一人ひとりを元気にする拠点」となる公園に生まれ変わった。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で開業が2か月遅れたが、オープン後は施設維持管理をフージャースリビングサービス、運営をフージャースウェルネス&スポーツが、事業全体のマネジメントをアイ・イー・エーが担当する。
同事業は、敷地面積83,000㎡、設計監理は石本建築事務所、パスコ、建設は大鉄工業、隆栄建設。維持管理は住友林業緑化、フージャースリビングサービス。便益施設運営はジャパンウェルネス。総事業費は約36億円。
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平成11年7月に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)が制定されてから20年経過した。国は平成25年度から令和4年度までの10年間で21兆円の事業規模の達成を目指しているが、平成31年度末で740件、累計契約額は7.4兆円にとどまっている。
デベロッパーが参画したPPP/PFIによる公園再生事業は、三井不動産の「渋谷区宮下公園」「Hisaya-odori Park(ヒサヤオオドオリパーク)」などがあるが、都市公園などの低未利用の公的不動産を有効活用することが期待されている。他のデベロッパーもどんどんチャレンジしてほしい。